特集 2017年9月28日

これが老婆心だ!

本当の老婆は「老婆心ながら…」的な発言をするだろうか
本当の老婆は「老婆心ながら…」的な発言をするだろうか
「老婆心ながら……」という言い方がある。
よけいなお世話ですが、差し出がましいようですが、というニュアンスである。求められてないアドバイスを言うときの枕詞だ。

しかし気になるのは老婆心ながらと言う人が老婆ではないことである。
本当の老婆はどう思っているのだろうか。”老婆心ながら”みたいなことを言うのだろうか。

実際に老婆に聞いてみた。
1971年東京生まれ。デイリーポータルZウェブマスター。主にインターネットと世田谷区で活動。
編著書は「死ぬかと思った」(アスペクト)など。イカの沖漬けが世界一うまい食べものだと思ってる。(動画インタビュー)

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実の母に聞く

実際に話を聞くのは私の母とライター住さんのお母様である。
実の母なので老婆という無礼なくくりで呼ぶことも許して欲しい(と母に伝えた)。
林母(80代)
林母(80代)
住母(70代)
住母(70代)
このふたりにちょっと危ないシチュエーションの写真を見てもらう。そこで気になったことを指摘してもらうのだ。まさにリアル老婆心である。

住さんは「うるさいことは言わずに『まーちゃんの好きにやればいいよ』と言うんじゃないかな」と予想していた。僕も老婆心ながら…というトーンではなく笑うだろうな、と思ったのでおかしな写真を選んでいった。

写真1

林母 「携帯ばっかり見て何かするな!かな。若い人、携帯ばっかり見てるから。あ、これ住さん? いつも短い頭よね。なんでこんな誰もいないところに入れたの?」

---お金が入れば払えば入れるんだよ

林母 「へー。お前の足が意外に太いね。この青いの何? 」

---うちみんな足ふといじゃん。走りやすい舗装してあるんだよ

林母 「だからこんなところで携帯見てなにしてるんだろうって思うわよ」

*

住母「ダメ、危ない。危険。絶対ダメよ、これは。他人に迷惑をかける」

---でも、競技場だよここ。

母「競技場でもダメ。外なんて歩いていたらもっとダメ。自分だって何かにぶつかったり、怪我する可能性があるじゃない。絶対ダメ!」

---これ俺だよ。

母「え! 本当だ。坊主じゃない。もう坊主にしないで、ダメ!」
*

どちらとも「歩きスマホは危ない」という王道の老婆心だった。実際の老婆心は全然違ったりして~という企画の趣旨をひっくりかえすコメントである。林母には住さんの坊主頭は評判が良かったのだが、実母である住母には「ダメ!」と厳しい反応だった。
老婆心
・歩きスマホはだめ
・坊主頭の好みはわかれる

写真2


林母「なにこれ?。ぐるぐる歩くの?」」

ーー そうそうキャタピラみたいに。

林母「ご苦労さんだね。作ったの?」

ーーー うん。レッドカーペットの気分がずっと続くように

林母「腕が疲れそう。そんな面白いコメント言えないよ」

*

住母「スーツ着てやるもんじゃないと思うわ。スーツ着てるとおかしい」

ーーー普段着だったらいいの?

住母「うーん、っていうか、これは何をしてるの?

ーーー永久に続くレッドカーペットなんだけど。これだとずっとレッドカーペットを歩けるでしょ?

母「ちょっとよくわからないけど、それにしてもスーツはおかしいわよ」

ーーーレッドカーペットなのに?

母「場所を取りすぎるわよ。もっとコンパクトにできなかったの?」

*

全体に母の反応は厳しい。ダメ出しの前に何をやっているのかがよくわからないというトーンだった。この記事がそれほどうけなかったのは、分かりにくさに問題があったのかもしれない。
老婆心
・なにこれ?

写真3

林母 「場所がすごいね」

---若者に照明あてさせておれと住さんがかっこうつけた写真を撮ってるんだけど、気になる?

林母「別に。なんで(こんな場所で)ってぐらいかね」

---ほかになんかある?

林母「くーちゃんこっちおいで。こいつは私の睡眠薬。一緒に寝てる」
このあと僕の手をひっかいて噛む
猫のくーちゃん、このあと僕の手をひっかいて噛む
住母「いい雰囲気じゃない、これはいいんじゃない」

---若い子に照明当ててもらってるけど?

住母「違和感何もないわよ。林さん、香取慎吾っぽいわね」

---新しい地図の?

住母「何それ?」

---新しいチームみたいなものかな。

住母「がんばってほしいわね」

---そうだね。

*

若者に照明をやらせているのは特段気にしてないようすだった。年功序列世代だからかもしれない。僕らも40代後半、年功序列の素晴らしさを主張してゆきたい(年下には)。
老婆心
・別に問題はない
・林が香取慎吾っぽい(はじめて言われて嬉しい)

写真4

林母「危ない」

ーーー どこが?

林母「 息ができない。この前、うちの孫達が家でビニールかぶったから。」

ーーー 大丈夫だよ

林母「手に持ってるものは何?」

ーーー タンバリン

林母「はははは。周りの人は見る?」

ーーー 東京の人は見ないね

林母 「恥ずかしいね。私も横にいたら何してんだろうと思うけど見ないね」

*

住母「え? 何これ!(笑)。街中でちょっと奇妙だわね。人が見たら。こういう人が普通に歩いてたら怖いじゃない」

ーーー未来の人なんだけど?

住母「やだ!そんな風に見えないもの。こんな未来嫌よ」

ーーーでも、こういう風になるっぽいよ。

住母「まぁ、わたしはそこまで生きないから大丈夫ね」

ーーー大丈夫っていうか…。

*

セレブキャタピラなみの不評。どの発言を見てもネガティブである。
老婆心
・窒息するから危ない
・恥ずかしい
・こんな未来はいやだ
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写真5

林母「椅子からひっくり返りそう。もっとうしろに乗れ、って言いたい」

ーーー それ老婆心じゃん

林母 「落ちたら面白いけどね。その瞬間の写真を撮ってほしい」

ーーー 老婆心っぽくない

林母「話は別だけどおまえの髪、短くていいね」

ーーー 今より短いよね

林母「雄司は頭のかたちがいいわけよ。奥に長いから。」

ーーー そう言ってくれるのお母さんだけだけどね

*

住母「やだ!(笑)面白い! こういう茶目っ気のある生活っていいと思うよ。いくら年取ったからって、キチッとばかりしないで、ふざけ心持ってる方が楽しいじゃない」

ーーーまぁ、そうだね。ふざけ心ね。

住母「こんな馬鹿げたこと、47歳で普通やらないじゃない。お茶目心が見える。これはいい」

ーーーなんか褒められてる感じしないけど。

*

住さんが椅子から落ちたら面白いかなというのは実は僕も撮影のときにちょっと思っていたことなので、老婆心というよりも林の血筋かもしれない。住さんのお母様がほめていることに申し訳ない気持ちになる。
老婆心
・椅子から落ちそう
・落ちたら面白い
・お前は頭の形がいい
・茶目っ気があってよい

写真6

林母「これどっかで見たな。デイリーに載ってたでしょう?」

ーーー 危ないって思う?

林母「思わないけど…だって足元を見てるでしょ 。海の向こうに電話してるのかなって思う。」

ーーー 国際電話ってこと?

林母 「国際電話は海の近くに行かなくても通じるんだよね」

--- 電話ってそういうものじゃないから

林母「 すごくいいところだけど、これどこだろう」

---千葉

林母 「 あーそう、千葉ってこんなところもあるの。じゃあ美味しいお寿司が食べられるね。昔修理工場にごちそうになったよ」

*

住母「やだ!(笑)サスペンスドラマには見えないわね」

---サスペンスドラマじゃないんだけど。

住母「ふざけてる感じが写真にでてるわね。でも、そういうのは私は好きよ。遊び心好きだから。ふざける人は好き。人を傷つけないで、楽しい雰囲気に持ってく人はいいじゃない」

---この林さんも香取慎吾みたい?

住母「これは違うわね。でも、誰かに似てるわね。誰だろう?」

*

僕の母の国際電話のイメージが発見だった。拡声器のようなものだと思ってないか心配である。住さんのお母様の反応はとてもよくて安心だ。
老婆心
・国際電話だ
・楽しい雰囲気にしている

写真7

林母「辛いもの食べたね」」

--- 食べると危ないぐらいの香辛料を食べちゃった時の写真

林母 「体に悪い。食道痛めるよ。辛いものはやめた方が良いよ。 」

--- このあと住さんしゃがみこんでたから

林母「これ住さん? いつも短い頭をしているイメージがあるので意外だね。」

*

住母「やだ!(笑)。そんなに無理することないじゃない。やだ!」

---世界一辛いやつだよ。

住母「馬鹿げてるわよ。辛いって分かってて、ちっとも偉くないじゃない」

---偉くなるためにやってる訳じゃないよ。

住母「こういうのは私は嫌いよ。馬鹿げてる!」

*

老婆心全開である。ふたりの母ともに危ないからやめろ、とのことだった。この激辛香辛料を食べたあと、住さんが「ばかなことをした!」と叫んでしゃがみこんだのを見て僕もそう思った。
そして僕の母は僕と住さんの髪型のことばかり言っている。
老婆心
・危ない
・やめなさい

老婆心は存在した

僕らの予想に反してわりとオーソドックスな老婆心だった。老婆心ながら…と心配する気持ちは実在したのだ。我が子だからいっそう厳しかったというのもあるだろう。

住「何かに載る、と察したらしく。いいことを言わなきゃモードに入ってました。」
林「僕の母も、なにかおもしろいコメントを言わなければとプレッシャーになっていたようです」
住「老婆の老婆心、結構本当だなって思ってしまいました。」
林「老婆の考えることは老婆心である。という一周回った結論になりました」

林「住さんのお母さんは後半、すべての第一声が「やだ!」でしたからね。」
住「嫌だ!ではなく、笑いの入ったヤダーです。」
林「息子を否定しているわけじゃないんですね。」
住「否定ではなかったですが、バカなことやっていることへのダメだしっぽくて少し切なかったです。」
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