特集 2017年9月20日

遣唐使が訪ねた都市に行ってきたぞ

みんな大好き遣唐使の記事だよ
みんな大好き遣唐使の記事だよ
ことしの7月、メイカーフェア西安に招待されて西安に行った。

かつての名前は長安、平城京や平安京のモデルになった都市である。1400年前に遣隋使や遣唐使が訪れた都市だ。

遣唐使!

教科書でしか見かけないその言葉を日常会話で使える場所に行くなんて興奮する。

フォッサマグナぐらいわくわくする。
1971年東京生まれ。デイリーポータルZウェブマスター。主にインターネットと世田谷区で活動。
編著書は「死ぬかと思った」(アスペクト)など。イカの沖漬けが世界一うまい食べものだと思ってる。(動画インタビュー)

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メイカーフェアでは人気でした

メイカーフェアでは顔が大きくなる箱を展示した。その反応は動画でプープーテレビにアップした。
中国とアメリカでは顔が大きくなる箱はやたらとうける。

中国:顔が大きくなった人を見て子どもが跳ねる。
アメリカ:顔が大きくなった人が踊り出す。

といった特徴がある。どちらの国も鼻歌まじりのごきげんな人が多いのも共通している。国土の広さなのか景気の良さなのか、アメリカと中国は似ている。
笑いながら跳ねてどっか行ってしまう子ども。見ているこちらも笑ってしまう。
笑いながら跳ねてどっか行ってしまう子ども。見ているこちらも笑ってしまう。
顔が大きくなる箱の国ごとの反応はいつかまとめてみたいものだが、それは別の機会に譲って西安である。

西安の場所

西安の場所はざっくりこのあたり。
上海まで飛行機で2時間ぐらい、そこからまた飛行機で2時間。
西安、かつての長安はシルクロードの出発地である。ヨーロッパとの陸運が盛んだったのでこんな内陸に首都があったのだろう。(いま栄えている都市はどこも海運がベースになっているので海沿いである)

西に100キロも行くと砂漠が始まっているような場所である。だからすごく暑い。
40度以上になると聞いていたので温度計を持っていった
40度以上になると聞いていたので温度計を持っていった
西遊記の出発地でもある。猿はお供にしてなかったらしいが、三蔵法師は実在したので西安には三蔵法師が持ってかえってきたお経を収めた塔がある。

いまなら宅ふぁいる便で送ってもらってダウンロードフォルダに保存だが、昔だしありがたいので保存は塔である。その塔には行ってないが、観光地には孫悟空がいた。
実在はしないが観光地にはいる。柴又の寅さんやタイムズスクエアのスーパーマンと同じ生き物である。
一緒に写真を撮ろうと言われた
一緒に写真を撮ろうと言われた
写真を撮ったあと、10元ですと言われた。これまたスーパーマンと同じである。
だが10元はWechat pay(というスマホ決済が中国では浸透している)でも支払いできたのはさすがである。進化している。
あと、市内を走るバスの柄がシルクロード!
あと、市内を走るバスの柄がシルクロード!
逆に言うと孫悟空とバスぐらいしかシルクロード要素はなかった。写真を見返してみてもシルクロードというか、ただ気になったものばかり撮っている。
鳥の足と美女、暗号のような組み合わせだがつまみだった
鳥の足と美女、暗号のような組み合わせだがつまみだった
茶πというペットボトルのお茶。
茶πというペットボトルのお茶。
中国には阿Q正伝や卡拉OK(カラオケ)のようにアルファベットを混ぜる文化があるのかもしれない。だとしたら佐藤B作も相当クールである。
猫尿珈琲というショッキングな名前
猫尿珈琲というショッキングな名前
猫のおしっこくさいアイスだと面白いのだが、猫の糞からとれる豆を使ったコピ・ルアクという超高級コーヒーのことだった。食べたがきちんとおいしかった。
タクシーの走りはリッジレーサーのようだった。

きびのまきび、って声に出したのはじめてかもしれない

コネタでお茶を濁したところで、いよいよ地味な本題、遣唐使である。西安には遣唐使がやってきていたのだ(隋の時代は遣隋使です)。
メンバーは小野妹子、山上憶良(やまのうえのおくら)、吉備真備(きびのまきび)、空海など日本史のスターばかりである。そして西安市内には空海記念碑と吉備真備記念園があるというのだ。

きびのまきび!

墾田永年私財法、六波羅探題とならぶ声に出して言いたい日本史用語のひとつである。おぎやはぎぐらい語呂がいい。

吉備真備は期待が大きすぎるのであとにして、まずは空海の碑を眺めて気を静めよう。
空海の碑は青龍寺というお寺の中にある
空海の碑は青龍寺というお寺の中にある
不自然に横長の画像になっているのは、手前に車が停まっていたからである。
奥の車はどうやって出すのか
奥の車はどうやって出すのか
イベントを手伝ってくれた地元の大学生に聞くと花見で有名な場所らしい。空海が来たのか聞くと
「?(笑顔)」
とのことだった。
手伝ってくれた大学生。手荷物を運ぶおっちゃんに値段ふっかけられて「こわい~」と言っていた。地元の若者もやっぱりこわいのだ。
手伝ってくれた大学生。手荷物を運ぶおっちゃんに値段ふっかけられて「こわい~」と言っていた。地元の若者もやっぱりこわいのだ。
記念碑と言っても棒1本だろう。これまで教科書で聞いたことがある場所に行ってみると、たいていは棒1本である。
六波羅探題の跡
六波羅探題の跡
墾田永年私財法(恭仁京跡)
墾田永年私財法(恭仁京跡)
室町幕府跡
室町幕府跡
どれも見事な棒1本だ。棒を見て、うわーこれだけかーと困惑するこそ旅の醍醐味である。今回も困惑してやろうと手ぐすね引いて向かったが、
立派だった
立派だった
このパターンは初である。お寺のなかは閑散としているので、これは棒1本パターン!と期待したところ立派な碑が現れた。近くにあった説明によると(日本語で書いてあった)香川、愛媛、徳島、高知の4県が建てたらしい。日本によるものだったか。
あほっぽく記念写真
あほっぽく記念写真
夜店でやたら長い自撮り棒を買ったので使いたかっただけだが
夜店でやたら長い自撮り棒を買ったので使いたかっただけだが
この写真を見て思うのは僕がパスポートをウエストポーチに入れてTシャツの中に隠しているのがバレバレだということである。腹が四角い。
そして残念ながら遣唐使みやげや空海という店はなかった。
毛みたいな電線はあった。
毛みたいな電線はあった。
来られた方としては日本からの留学生をそんなに意識してないのかもしれない。
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いよいよ吉備真備記念園に

さて、いよいよ吉備真備記念園である。これまで10回も口に出したことがないことば「吉備真備」だ。吉備真備記念園は都市中央にある城壁の脇にある。
都市中央部はビル4階ぐらいの高さの城壁で囲まれている
都市中央部はビル4階ぐらいの高さの城壁で囲まれている
こりゃ遣唐使はびびっただろうと思ったがこれは1300年頃に作られたものらしい。びびっていたのは僕である。城壁のまわりにはお堀があって、細長い緑地になっている。
おっちゃんが寝てる東屋も立派である
おっちゃんが寝てる東屋も立派である
代々木公園の東屋と違う。
そのかたわらに吉備真備記念園があるのだ。
いい石出てきた!
いい石出てきた!
いよいよ登場した石ひとつに興奮したのだが、ここもまた立派だった。僕は旅先でがっかりスポットを探していることに気づいた。
立派だ!
立派だ!
日本風の庭園になっている。この記念園でいちばん興奮したのはこのししおどしっぽいやつである。
なんかおかしい
なんかおかしい
本来であればこのオブジェの向かいに可動するししおどしがあるのだが、それがなく、ちょっと変わった蛇口になっている。撤去されたてこうなっているのかもしれないが、いいものを見た、という気分である。

旅行サイトに載ってないリアルである。
おれしか面白くないだろうという記念写真を撮って帰った
おれしか面白くないだろうという記念写真を撮って帰った
ちなみに碑の説明を読むとやっぱりこれも日本が設置した記念碑だった。記念碑建立実行委員会会長は岡山県知事だった。そこまでか。
城壁の内側には書の道具ばかり売っている街があった。
城壁の内側には書の道具ばかり売っている街があった。
中国のオカリナを吹く子供がいて、その悲しげな音色が街の雰囲気にあっていた。振り向いたらものすごい笑顔で吹いていた。
意外。

帰りを1日伸ばしてまで見た

西安まで飛行機乗り継ぎで1日かかった。朝、東京を出発して西安についたのは夜だった。こんな遠いところまで1000年以上前の人が来てたというのが驚きである。船と歩きでだ。
実際、ちゃんと帰ってくる確率は6割程度だったというのも納得できる。

だから僕が滞在を急遽1日伸ばして、そのせいで帰国後の打ち合わせがリスケになっていてもなんらおかしいことはないのである。
おなじみの三色のビニールシートがあった。これは万国共通なのだろうか。
おなじみの三色のビニールシートがあった。これは万国共通なのだろうか。
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