ロボットの胸にライオンが
いつからか戦うスーパーロボットの胸にライオンが付くのはふつうなことになっていた。知らない人は知らないかもしれないが、そういうことになっている。しかし、はたして胸にライオンをつける合理性はあるのかは誰も知らない。
いや、人が理由なく恋に落ちてしまうように、人は理由なくロボットの胸にライオンをつけてしまうのだろう。
かっこいいとは思う
そんな強いロボットにあこがれて育ったぼくは、大人になった今も折に触れて胸ライオンを思い出す。かっこいいなあ、と。
しかし憧れたままでいても、胸にライオンは生えてこない。作るしかないのだ。さっそく東急ハンズで発泡スチロールのブロックを買って来た。
買うときは作ってやろうと息巻いているわけだが、こういう塊を家に持って帰ってくると「できるのか???」という気持ちになる。
さて、まずは設計図めいたものを描こう。無軌道な十代の若者は信じられないだろうが、大人はこういうとき三面図を描くのだ。
ライオンズマンションの像を参考にする
しかしネット上の画像を参考にしてみるが、真横から見た図があまりなく、いまいち立体にしたときの感覚がつかめない。
なので自転車に乗って、近所のライオンズマンションの前に座ってる像を見に行った。
ライオン、横から見ると顔がすごくまっすぐである。
ライオンズマンションの像を参考にして、なんとなくの造形の感覚がつかめたので、三面図を描き上げる。
すこし犬っぽくなった
ライオンが露わに
このくらい準備しておけば大きく間違うことはなさそうだ。発泡スチロールに切る位置を下書きをする。
設計図から目視で写したのでさっそく形が変わった。
いよいよ発泡スチロールを切っていくわけだが、失敗すると取り返しがつかない。気が重い。気が重過ぎて実際にカッターの刃を入れるまでに2回仮眠をとった。
仮眠の間に妹が役所に行って入籍したそうだがそれはまた別の話である。
では、すっきりした頭で作業に取り掛かろう。下書きを頼りにおおまかに切っていくところからだ。
ざくざくと進んでいくのがおそろしい
電熱線で切るスチロールカッターも用意したが、やってみるとふつうのカッターナイフでも問題なく切ることができた。幸いロボットである胸ライオンは非常にカクカクしており、加工がしやすい。
適材適所でカッターナイフとスチロールカッターを使い分けながら切っていく。
下あごと鼻筋部分を別パーツにしたのはナイス機転だ。
大きな失敗もなく、おおよそできた。やればできるものである。
なんとなく「ZOO KEEPER」を思わせる四角さを帯びている。
2度も仮眠をとってしまったために夜になってしまった。さっさと終わらせたいので間髪をいれずにスプレーで全体を黄色く塗る。
「この格好で二度寝したんだろうな」という服で色を塗る
3度くらい塗り重ねる
翌朝、塗料が完全に乾いたのを確認
色はちゃんと塗れたので、接着剤でパーツ同士をくっつける。別で作っておいた牙、眼、鼻もわすれずに。
おお、いい感じだ。やっぱり四角いけど。
最後にライオンのたてがみを付けたら完成だ。たてがみがないと虎のように見える。(べつに虎でもいいんだけど。)
ということで完成した。
ガオー
どうも
ぼくです
かっこいいだろう。しかも何か説得力を感じる。妹が結婚した翌日の兄だとは思えないほどの説得力だ。
他のオブジェ(例えば大きなボール)を体に付けていたら、他人からは「何やってるんだろう?」と思われるはずだが、胸にライオンを付けてると「ああ胸にライオンを付けているんだな」と思われる。そういう説得力である。
その証拠に、ふだんこの公園で撮影していても誰も話しかけてこないのに、この日に限ってはおじいちゃんや小学生男子が目を輝かせながら(私見です)話しかけて来た。やはり男子はいつになっても胸ライオンが好きなのだ。
剣を持つ
さて、ちょうど以前
記事で作った剣が家にあったので、スーパーロボットみたいに持ってみよう。
以前作ったパースの付いた剣です
うおおお
ライオンが上を向いてしまっているのがわかるだろうか。剣を持つとライオンのたてがみが腕に干渉してしまうのだ。少し上腕を下げる工夫などが必要になってくる。
これはおもちゃのロボットにポーズをつけるときに、パーツ同士が干渉してぎこちなくなってしうまうアレと一緒だ。アレが我が身に起きている。
なるほど、胸にライオンがついてると生活しづらいこともあるのか。
自転車に乗る
ほかにも生活に支障を来す場面があるかもしれない。
たとえば胸にライオンをつけている人は自転車に乗れるのだろうか。自転車は日常生活の必需品である。不便はなかろうか。
自転車は
乗れますね。
セーフ、という気持ちだ。自転車は正面をむいて乗るものなので、胸のライオンがじゃまになることはない。ハンドル操作もたてがみが干渉することはなかった。
これなら駅前のスーパーに買い物に行くときも安心だ。
ブランコも乗れる。
胸ライオン、麺類は苦手
ものを食べるのはどうだろう。ちょうど昼時だったのでナポリタンを食べた。
麺類は明らかに食べづらい
テーブルの上の皿から口に運ぶ間に、ライオンがいて邪魔だ。一度フォークを垂直に上げる、クレーンゲーム的な動作になってしまう。
とくに麺類は下に垂れるので胸ライオンに向いていない。ラーメンなんて食べたら、ライオンがスープでびしょびしょになってしまうはずだ。
急に胸にライオンがついてる人が来客した際は、寿司とか唐揚げとか、一つずつまとまったたべものを振る舞うのがいいだろう。
スパーリングワインが開けづらい
胸にライオンがついてる人も、ときにはスパーリングワインが飲みたくなることがあるだろう。
スパーリングワインは
手元がよく見えなくて開けるのがむずかしい
コルクが飛んでいってしまった
スパーリングワインを開けるときは、胸にライオンがついてない人に頼んだほうがいいと思われる。
以上、ざっと経験してみた「胸にライオンがついてる人あるある」であった。
胸にライオンを
胸にライオンがついていることでたくさんのデメリットが見えてきた。きっと洗濯物を干すのは難しいだろう。真下が見えないので体重計に乗っても体重が見えなそうだ。靴紐はどうやって結ぶのだろう。
しかし、そういったハードルを乗り越えて、強くたくましく生きているから胸にライオンがついてるロボットはかっこいいのだと思う。
今後は胸にライオンがついているロボットを見たら「強そうだな」と思うとともに、「日常生活たいへんそうだな」と思うようにしていきたい。
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ということで胸にライオンをつけると見た目の説得力とうらはらに、生活の質がだいぶ落ちることがわかった。
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