特集 2015年1月14日

ライオン錠コレクション

結局ぶらぶらする記事なんですが。
結局ぶらぶらする記事なんですが。
めちゃめちゃかっこいい百獣の王ライオンは多くの生息地で絶滅の危機にさらされている。アフリカやインドの大草原だけでの話ではない。我が国の住宅の門扉でにらみをきかしているかっこいい生首のあれも、もはや絶滅危惧種となっている。今のうちに観察しておこう。
1975年神奈川県生まれ。毒ライター。
普段は会社勤めをして生計をたてている。 有毒生物や街歩きが好き。つまり商店街とかが有毒生物で埋め尽くされれば一番ユートピア度が高いのではないだろうか。
最近バレンチノ収集を始めました。(動画インタビュー)

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ライオンかっこいい

強者の象徴としてラスコー洞窟の壁画以来、美術から街の看板にいたるまで様々な作品のモチーフとなってきたライオン。射すくめるような鋭い目つき、黄金の輝きを放ち堂々と風になびくたてがみ。王者としての威厳に満ちたそのたたずまいは表現者のクリエイティビティを強く刺激する。
街中で強者としての威厳をはなつ。
街中で強者としての威厳をはなつ。
愚かな人類を導く。
愚かな人類を導く。
たてがみ、もはや髪型。
たてがみ、もはや髪型。
子供の頃、カーブの事をファールと言うくらい野球に疎かったが、西武ライオンズが好きだった。帽子に縫い込まれていたマスコットのレオ目当てである。おかげでテリーという助っ人外人がすごく打つ事までは学習した。

かっこいい分類

そんなライオングッズの中でも群を抜いて渋かっこいいのが住宅の門扉についている「取っ手」で一般的には「ライオン錠」などと呼ばれている。
真ん中の輪っかを加えているやつです。
真ん中の輪っかを加えているやつです。
片方のライオンをくるっと回してがちゃんと扉を閉ざす(直感的な説明)
片方のライオンをくるっと回してがちゃんと扉を閉ざす(直感的な説明)
住宅と外界をつなぐ門に鎮座し、押し売りなどの不審者には無言の咆哮を投げかけ威嚇する。かっこいい、高貴でかっこいい。私と同じアラフォー世代は実家や友人の家の門扉にこれがいたりして「あ~あれね」とピンと来る方も多いのではないだろうか。
我が実家は残念ながらライオンではない、しかもなんだこのずれは。
我が実家は残念ながらライオンではない、しかもなんだこのずれは。
勝手口も守護します。
勝手口も守護します。
一口にライオン錠と言ってもいくつかの種類があり、同じ種でもカラーやテクスチャ、塗装の禿げ方などによって表情も異なって見えてくるから面白い。大まかに分類するとこんな感じ。

ダンディー

匂い立つダンディズム。
匂い立つダンディズム。
もっともクラシカルなデザイン。眉間にシワをよせたどこか憂いのある表情は威厳だけでなく、ギリシャの哲学者のような知性を感じさせる。
たいがい門扉のデザインもエレガントでかっこいい。
たいがい門扉のデザインもエレガントでかっこいい。
青銅も思索の深さを感じさせるカラーリングだ。私が輪っかをくわえているのか、輪っかが私をはさんでいるのか。
青銅も思索の深さを感じさせるカラーリングだ。私が輪っかをくわえているのか、輪っかが私をはさんでいるのか。
かっこいい。もはやライオンというより、一人のおっさんとしてかっこいい。
褐色もいい枯れ具合。たばこはきっとセブンスターだ。
褐色もいい枯れ具合。たばこはきっとセブンスターだ。
50年もののヘネシーで心地良く赤ら顔。
50年もののヘネシーで心地良く赤ら顔。

ナイスガイ

これはイケメン。読モにスカウトされるタイプだな。
これはイケメン。読モにスカウトされるタイプだな。
一見、先に挙げたダンディと同じに見えるが、肌が滑らかで表情もいくらか柔和、角度によってはアルカイックスマイルを浮かべているようにも見える。
カルマを積むと額にサードアイが開く(塗装はがれ)
カルマを積むと額にサードアイが開く(塗装はがれ)
サードアイ開きがち。
サードアイ開きがち。
あ、これでおでこが擦れるからか(右側)
あ、これでおでこが擦れるからか(右側)
このダンディとナイスガイのデザイン性を持ち合わせながら独特の進化をとげた種が存在する。
建物がすでに取り壊され、門扉だけの状態で発見。
建物がすでに取り壊され、門扉だけの状態で発見。
結構なレアもので私はまだ2個しか見た事がない。
ディテールはこちらの写真のほうが見やすいかな。
ディテールはこちらの写真のほうが見やすいかな。
これもまたわかりにくいのでちょっと並べてみよう。
並べてみると、ほら!
並べてみると、ほら!
ほら!というほどの事かどうかわからないがこのモデルは取っ手をくわえていないのだ。

大きい鈍角の牙とヒゲ部分の毛穴のせいでだらしなく笑うおっさんに見えなくもないが、使命から解放され自由となったその口から、饒舌にマクロ経済学など語りだしそうではないか。

ワイルド

さんざんライオンを紹介しておいて今さら「ワイルド」というのもアレだが、若々しさと攻撃性にあふれる表情が売りのモデル。
なに見てんだコノヤロー。
なに見てんだコノヤロー。
いまにも噛み付きそうに口角をあげ、まなじりを裂いてこちらを威嚇する、ライオン本来の野性味がエクステリアにほどよい緊張感をあたえる。
門扉との上品なコントラストに怒り面のアクセント。
門扉との上品なコントラストに怒り面のアクセント。
すてきなカスタマイズ。ウェルカムカラーに。
すてきなカスタマイズ。ウェルカムカラーに。
ここまでの3種がわりとよく見るライオン(わっかをくわえていないのは別)、次は、出現率が低いレアライオン達である。
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(たぶん)希少種

表情がクール。完全に仕事と割り切って輪っかくわえてます。
表情がクール。完全に仕事と割り切って輪っかくわえてます。
見つけて喜んでいたら、このクールな眼差しに「なにが楽しいんですか」と言われたような気がした。
ナショナルのロゴ入り。寄り目がかわいい。
ナショナルのロゴ入り。寄り目がかわいい。
石彫のようなカッティング
石彫のようなカッティング
シーサー。沖縄で見つけた後,厚木でも見つけた。
シーサー。沖縄で見つけた後,厚木でも見つけた。

ライオンを数えたい

ライオン錠は30年以上前の製品で、メーカーに問い合わせたところ現在は廃盤となっているらしい。友人の実家では15年ほど前に改築した時にライオン錠にしたという。結構ロングセラーだったのかな。どうなんだ。

私の実家近辺がちょうどいい状況になっていたのでぶらぶら数えてみよう。1972年に神奈川県厚木市の奥地の山を拓いて造成し、団塊世代がこぞって入居、そこで生まれたジュニアたる我々が坂道だらけの住宅地で鬼ごっこをしたところである。築30~40年の住宅が多い。
建て替えた住宅も増えてきた。
建て替えた住宅も増えてきた。
25年ほど後、すぐ隣の山をけずって新しい住宅地が造成される。こちらは少し間をおいて入居者が増え、築10年~15年くらいの住宅が多いと思われる。
道幅は広くなり、歩車分離も徹底される。
道幅は広くなり、歩車分離も徹底される。
要は古い住宅地と新しい住宅地を歩いてライオン錠がどのくらい少なくなったか見てみよう。まあぶらぶらする口実である。

まずは古い方からスタート。私が幼少の頃を過ごしたところだ。
荒涼とした自転車置場。
荒涼とした自転車置場。
誕生日のプレゼントでもらったキノボリトカゲをこの自転車置場の裏の林で逃がしてしまった苦い思い出が蘇る。

キノボリというくらいだからとてつもなく木登りが上手なのだろう、どれどれと木の幹につかまらせたら瞬速で登っていってしまった。まじですげえ!と感動したあとで取り返しのつかない事に気付いた。阿呆だな俺。
はい、発見~
はい、発見~
まあ快調にライオン錠が見つかる。場所によって差はあるが20軒~30軒ごとに1個見つかるかなあといったところ。
またしぶい逸品が
またしぶい逸品が
目にクマが出来て寝ずの番状態に。
目にクマが出来て寝ずの番状態に。
アクロバティックな態勢で主人の帰宅を待つ。
アクロバティックな態勢で主人の帰宅を待つ。
坂ばかりなので体力の消耗ははげしい。
坂ばかりなので体力の消耗ははげしい。
大学卒業まで暮らした実家近隣を徘徊してあらためて感じた事は「住宅地の隅(端)っていいなあ」という事だ。
隅のひとつ、左手の山に入って行くのが小学校の時の通学路。
隅のひとつ、左手の山に入って行くのが小学校の時の通学路。
ここもいい隅だ。
ここもいい隅だ。
かわいくておそろしい。
かわいくておそろしい。
この無用感まんさいの試み。しかし神様は見てくれているもので、なんと新種のライオンに遭遇することができた。
なんか激しい怒りを感じる!針金が炎のようだ!
なんか激しい怒りを感じる!針金が炎のようだ!
今までのものより丸顔。しかし同じ顔でも色が違うだけで随分印象が変わるなあ…(左が恐ろしすぎる)
今までのものより丸顔。しかし同じ顔でも色が違うだけで随分印象が変わるなあ…(左が恐ろしすぎる)
結局、624軒見た中で32個のライオン錠を発見する事ができた。
休憩した公園でライオンと目があった。
休憩した公園でライオンと目があった。

■ 旧住宅地:32ライオン

予想より多かったのと、予想より足がしびれた。
予想より多かったのと、予想より足がしびれた。
続いて新興の住宅地へ向かう。
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門扉がないじゃないか

ざっと歩いて25年という時の流れを痛感する。ライオン錠がどうというより門扉自体が激減している。
道路に面した2台ぶんの駐車場の先にすぐ玄関。オープンマインドな感じ。塀の存在を感じない。
道路に面した2台ぶんの駐車場の先にすぐ玄関。オープンマインドな感じ。塀の存在を感じない。
なんていうか、縁側からウッドデッキへみたいな。
なんていうか、縁側からウッドデッキへみたいな。
室外機カバーもウッディ。
室外機カバーもウッディ。
門扉があってもトレンドの移ろいはそのデザインを繊細な、曲線主体のものに変貌させており、ライオンがガオーと吠えて絵になる環境ではない。

そこには彼らに取ってかわってあの著名すぎるネズミキャラが跋扈し、生態系の下克上状態になっていた。
まだところどころに空き地が。
まだところどころに空き地が。
徘徊中に出会った地元のおじいさんから話を聞くと、やはり切り拓いた山から猿、イノシシ、ハクビシンなどの動物が住宅地に降りてくることが度々あるそうだ。彼らから庭の草花を守るためにも、怖い顔のライオン錠はきっと必要なはずだ。はずですよね。
集中が切れてジョウビタキを追っかける。
集中が切れてジョウビタキを追っかける。
頼りなさすぎる理屈をとなえ躍起になって歩き回った結果、なんとか1個発見。
レッドデータブックに登録!
レッドデータブックに登録!
野生動物ならば残念ながらもう増加はみこめないだろう。ここまで無いとは思わなかった。残念だ。しかし別に乱獲とかが原因とかじゃないので怒りの持って行きようもない。

旧住宅地:1ライオン

くやしいのでジョウビタキ(鳥)をカウントした。
くやしいのでジョウビタキ(鳥)をカウントした。
膝の裏が死にそうに痛くなってGPS塗り絵状態に。
膝の裏が死にそうに痛くなってGPS塗り絵状態に。
でもやっぱり隅のほうにはいい光景があった。歩いてよかった。
でもやっぱり隅のほうにはいい光景があった。歩いてよかった。

ライオン錠はその数を大きく減らし、これから住宅の建て替えなどが進めば生息数はますます減少の一途をたどる。そりゃそうだろうそんなものという事を身を持って感じただけとなったが後悔はしていない。ライオン錠を愛おしむメンタリティがいっそう強固になった。彼らが末永く門扉でかっこいい状態にありますように、そして笑いまくっている私の膝が回復しますように。幸運を祈ろう。
わーがんばれ(何を)
わーがんばれ(何を)
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