贈る方もとても楽しいのでまたやりたい。誰か結婚しないかなー。
Congratulations!
まずは完成したメッセージをご覧頂こう。
みんなでこつこつ歩いて書いた様子を早回しで。実際には全部書き終えるのに4時間かかっている。全移動距離は合計80kmほど。
墨痕鮮やか、武蔵野台地に映える "Congratulations!" の文字。ご両人、あらためておめでとう!
その長さ9km。"C" は西武線の南、上石神井駅と武蔵関駅のあいだ、最後の "!" は落合のあたりである。でかい。
最初の動画に加え、これを制作する様子を撮影・編集し、結婚パーティーでお披露目上映した。もちろん新郎新婦には対しては極秘裏のうちに進められたプロジェクトである。
二次会出し物の定番として今後広まるといいと思う。
二次会出し物の定番として今後広まるといいと思う。
北東から富士山を背景に見たところ。結婚祝いとしては破格のサイズである。
30名、全7チームで心を込めて街をうろつきます
GPSロガーを使って絵を描くのはぼくのライフワークで、これまで制作したGPS地上絵についてはいくつか記事にしたことがある(→「体長1kmのガチョウを描く~GPS地上絵オールスターズ~」)。ロンドンでも描いた。
これは昨年の夏、山形で描いたヨーダの絵。フォースとともにあらんことを。
もちろん現地に線が残っているわけでも何でもない。データが得られるだけだ。パソコンでちょちょいといじれば同じデータは作れるわけだが、それをわざわざ現地に出かけていって数時間かけて獲得する。この「デジタルなんだかアナログなんだか」な感じが気に入っている。
カーナビだけでなく、スマホやカメラにも当然のように搭載されるようになったGPS。これはトレッキング用のGPSロガー。これを持ってあらかじめ設計されたコースの通り歩いて絵を描くというわけです。
上記の山形ヨーダ(通称「YY」)は体長3kmとかなり小さかった(ヨーダにしてはかなりでかいが)が、それでも道のりは40kmあった。レンタルサイクルを使ってひとりで描いたが、ものすごくたいへんだった。
今回は道のりが倍以上ある。とうていひとりでは描けない。しかし今回は総勢30名で描くのだ。ちょうどいい。
今回は道のりが倍以上ある。とうていひとりでは描けない。しかし今回は総勢30名で描くのだ。ちょうどいい。
祝うべく集まった30名の友人一同。高田馬場駅前に集合。設計者として描画の説明を行うわたくし。真剣である。(実施されたのは半年前の冬のさなかでのこと。みんな厚着なのはそのためです)。
文字ごとに各チームに分かれ、念入りな打ち合わせが始まるBIGBOX前。
実は、過去におおむね同じメンバーで描いた結婚お祝いGPS地上絵の実績がある。この指輪を差し出す絵がそのときのもの。ロマンチック。ちなみにこのときの新郎新婦が、今回のお祝い地上絵プロジェクトのリーダーです(おふたりナイス仕切りでした。おつかれさまでした!)。
今回は、全7チームに分かれ、それぞれがGPSロガーを片手に街を歩くことにした。"C" "on" "gr" "atu" "la" "tio" "ns!" の役割分担である。
参加者友人みんなtwitterアカウントを持っているので、スケジュール調整ツール「Meity」を使って事前のやりとりをした。
上のMeityにもあるように、"Congratulation" の文字は西武線沿線に設計されているので、高田馬場に集合し、そこからそれぞれの文字の最寄り駅に移動し描いた後、ふたたび高田馬場に再集合してGPSデータを回収、という段取りである。
遊びじゃないぞ!
さて出発だ。
以下からはぼくが参加した "ns!" チームが街をうろうろして描いた顛末をお伝えする。
われらがこのチームは、もっとも長い12kmのコース。この数字には、行って戻ってなどが含まれていないので、実際の道のりはプラス数キロある。つまり、たいへんだ。
案の定、7チーム中、いちばん時間がかかった。
以下からはぼくが参加した "ns!" チームが街をうろうろして描いた顛末をお伝えする。
われらがこのチームは、もっとも長い12kmのコース。この数字には、行って戻ってなどが含まれていないので、実際の道のりはプラス数キロある。つまり、たいへんだ。
案の定、7チーム中、いちばん時間がかかった。
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チーム内で協議の結果、スタート地点は "n" の右下(後述するように、このスタート地点の選択が実は間違っていた)。中野駅を最寄りとすることにした。
駅北口を出てスタート地点を目指す。中野、ひさしぶりだ。
中野ブロードウェイを抜けて行く。ひさしぶりで寄っていきたい店などがあったが、ぐっとこらえる。今日は遊びじゃないんだ。真剣だ。
慎重にスタート地点を目指す。なんせ間違ってしまったら、その軌跡が残ってしまうのだ。こういう現地の看板ってけっこう役に立つ。
どうやらこの商店街の途中に "n" の右下の地点があるようだ。はじめて来た。
ここがスタート地点。なんてことない場所だが、ぼくらにとっては特別な場所である。
GPS地上絵がおもしろいのは、しばしば選ばれた道の重要性と現場の雰囲気がまったく噛み合わない、というところにある。絵の一部としての特別さは、実際のその街の成り立ちと関係がないので「えっ!? こんな場所なの?」ってことがよくおこる。このスタート地点もそうだ。
特に一人で描く場合、スタート地点とゴール地点は同じで(地上絵は一筆書きだから。なんびとも瞬間移動はできないし、同じ時間に一箇所にしかいられない。生まれてから死ぬまでぼくらは一筆書きで移動し続けるのだ。人生は一筆書きのログなのである。GPS地上絵をやるとそれを実感する)、そこが特別な場所に思えてくるが、だいたいがなんてことない街角である。あの変な感じ、すごく好き。
特に一人で描く場合、スタート地点とゴール地点は同じで(地上絵は一筆書きだから。なんびとも瞬間移動はできないし、同じ時間に一箇所にしかいられない。生まれてから死ぬまでぼくらは一筆書きで移動し続けるのだ。人生は一筆書きのログなのである。GPS地上絵をやるとそれを実感する)、そこが特別な場所に思えてくるが、だいたいがなんてことない街角である。あの変な感じ、すごく好き。
すぐ迷うので注意
なんかそれっぽいことを言ってしまった。
さてさてここからゴールまで十数キロである。現在13時。がんばるぞ。
さてさてここからゴールまで十数キロである。現在13時。がんばるぞ。
毎回そうだが、はじめるとすごく楽しい。
地上絵でなければ絶対に歩かないだろう場所を行くことになって、ほんとうに楽しい。こういう急に狭くなる道とかちょう楽しい。
危険なのは、知らない街を歩く楽しさにかまけて、道を間違ってしまいがちな点である。
GPS地上絵を描く時の動きは、およそ普通の移動ではありえないルートを行くので、気を緩めるとすぐコースから外れてしまうのである。なんせ絵を描いているのであって、散歩ではない。
つまり、とても不自然な動きをするということだ。これもまたGPS地上絵をやる楽しみである。
GPS地上絵を描く時の動きは、およそ普通の移動ではありえないルートを行くので、気を緩めるとすぐコースから外れてしまうのである。なんせ絵を描いているのであって、散歩ではない。
つまり、とても不自然な動きをするということだ。これもまたGPS地上絵をやる楽しみである。
不自然な移動は楽しくはあるのだが、すぐに迷う。
迷う。
迷う。
迷う。
みんなで迷う。
たとえば "s" はこんなコース。ふつうはこういう移動はしない。初めての街であることも手伝って、慎重に歩かないとすぐに間違う。 (© OpenStreetMap 協力者. Tiles courtesy of Humanitarian OpenStreetMap Team)
「ちょっとまて! その道であってるか?」と仏も見守っている。
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アップダウンが激しい
実はいつにも増して今回のこのお祝いGPS地上絵は迷いやすい。
なぜなら「無理やり」設計しているから。
前述の山形ヨーダ(通称YY)もそうだが、ふつうは地図を眺め、どこかに絵が隠れていないか、と探す作業を行う。
ところが、今回はお祝いである。時間もあまりない(絵が「降りてくる」のを待つのがぼくのスタイルだが、パーティーに間に合わせるためにはそういう悠長なことをやってはいられない)。
絵でお祝い感を出すのはなかな難しいので、これはもうメッセージを文字で書くしかないな、と早い段階で決めていた。
だけどねえ、文字って難しいんですよ。絵と違ってちょっとした歪みが気になる。
なぜなら「無理やり」設計しているから。
前述の山形ヨーダ(通称YY)もそうだが、ふつうは地図を眺め、どこかに絵が隠れていないか、と探す作業を行う。
ところが、今回はお祝いである。時間もあまりない(絵が「降りてくる」のを待つのがぼくのスタイルだが、パーティーに間に合わせるためにはそういう悠長なことをやってはいられない)。
絵でお祝い感を出すのはなかな難しいので、これはもうメッセージを文字で書くしかないな、と早い段階で決めていた。
だけどねえ、文字って難しいんですよ。絵と違ってちょっとした歪みが気になる。
来る日も来る日も、暇さえあれば地図とにらめっこ。
往年の文豪のように「だめだ……! 書けない……!」と地図を丸めては投げ丸めては投げ、を繰り返した(あとでシワを伸ばしてリサイクルに出した)。
こうしてどうにかつくりあげたのが今回の "Congratulations!" だったのである。
つまり、文字が先にあり、場所もだいたい決めて(あまり遠くだとみんなが集まれない)、という順番だったので、設計が「無理やり」だったのである。
無理やりだと何が起こるか。
地形に逆らうのである。
つまり、文字が先にあり、場所もだいたい決めて(あまり遠くだとみんなが集まれない)、という順番だったので、設計が「無理やり」だったのである。
無理やりだと何が起こるか。
地形に逆らうのである。
ほかのチームもそうだったと思うが、ぼくらのコース、すごく坂が多かった。
ちょっとした崖のまわりを行ったり来たりした。
そしてだいたい崖には寺があって、墓地を行くことになったりする。仏が見守るゆえんである。
通常のGPS地上絵の「降りてくる」のを待つスタイルだと、絵は地形に沿ったものになる。なぜなら多くの通りが地形にそってできあがったものだからだ。
ところが今回はそうではない。結果として凹凸を横断する場面がしばしば発生する。
ところが今回はそうではない。結果として凹凸を横断する場面がしばしば発生する。
ぼくらのチームのコースを標高断面で見ると、こんな。すごくアップダウン。(地形好きにはたまらないすばらしいアプリ「スーパー地形」で表示したものをキャプチャ)
上のグラフはわれらが "ns!" の標高断面。見てぼくもおどろいたが、なんと累積標高差118mである。
迷いやすい上にアップダウンが多い。GPS地上絵設計師としては、もうちょっとエレガントな設計ができたのではないか、と反省しなければならない。
迷いやすい上にアップダウンが多い。GPS地上絵設計師としては、もうちょっとエレガントな設計ができたのではないか、と反省しなければならない。
あと、けっこう惑わされたのが公園。さしかかった時点では、ちょっとしたリフレッシュで良い感じ、とか呑気に思ってた。
しかし、問題はこの公園のなかをざっくばらんに斜めに引かれたルートである。(© OpenStreetMap 協力者. Tiles courtesy of Humanitarian OpenStreetMap Team)
いざ現地公園に来てみたら、これが非常に困る。なぜなら街中と違って、沿うべき道路がなくまた目印もないため、どのように歩いていいのか分からないのである。
だれだこんなコースにしたのは。
しかもなんだかなごやかに楽しむ集団の中をつっきらなければならないのでは。
これは実際に歩いたログ。なんとかうまくいった。公園あんがい要注意。覚えておこう。
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「仕様です」
何度やってもさまざまな反省要素が待ち受けるGPS地上絵。でもすごく楽しくて、楽しいばっかりにその反省を忘れちゃうんだけど。
そして最大の反省は「道がないじゃないか!」である。これも毎回必ず発生する。
そして最大の反省は「道がないじゃないか!」である。これも毎回必ず発生する。
世の中に、車両が行けないルートはたくさんあるが、歩行者ならたいていのところに行ける。GPS地上絵が徒歩に向いている由縁である。
しかし、「どんな細い道でも歩きなら行ける」ことにたよって設計すると、こういうことが起こる。地図で見たら行けそうだったんだもん! なんか道みたいなのがあったんだもん!
行ってみてだめで引き返したら、その軌跡が残ってしまう。なので、GPSロガーを持っていないメンバーに斥候を頼む。
今回、ぼくらのチームだけで3箇所ほど「行けなくない?」という場面があった。完全に設計者のミスである。
上の路地は結局行けなかった。すまん。
他のチームでもこういうこと起こってたんだと思う。なんか申し訳なくて詳しく聞いてないけど。
上の路地は結局行けなかった。すまん。
他のチームでもこういうこと起こってたんだと思う。なんか申し訳なくて詳しく聞いてないけど。
ここも「行けないじゃん!」のひとつ。斥候担当と化した彼女が様子を見て言った、「だめです!」。すまん。
設計者がすっとこどっこいだったという理由以外にも、行ってみたら工事中だった、とか再開発で道路が変更されてた、というようなこともよくある。
GPS地上絵では必ずこういうことが起こるのである。むしろ、こういった時にその場でアレンジをいかにきかせるか、というのも楽しみである。時にはコースを変更したことで元の設計より良いできあがりになったりすることもある。
などと言い訳を言ったものの、さすがに下のルート変更はすっとこどっこいすぎた。
GPS地上絵では必ずこういうことが起こるのである。むしろ、こういった時にその場でアレンジをいかにきかせるか、というのも楽しみである。時にはコースを変更したことで元の設計より良いできあがりになったりすることもある。
などと言い訳を言ったものの、さすがに下のルート変更はすっとこどっこいすぎた。
途中でメンバーのひとりから「ここってどうなってるんですか?」との問い合わせに「あっ! そうだった! そこな!」と焦った。
最後の感嘆符の右上。ここは設計時にかなり悩んだ末に「保留」にしていた場所だった。そうだった。忘れてた。「でもまあこの場所をスタートとゴールにすれば渡れなくてもどうにかなるだろ」とか思ってた。(© OpenStreetMap 協力者. Tiles courtesy of Humanitarian OpenStreetMap Team)
大慌てで、その場で別ルートを考えます。
軌跡が残ってしまうのでコース上の路上で作業するしかない。
結果、エクスクラメーション・マークがやや太ることに。
結婚式二次会の定番になったらいいなと思う
そんなこんなで完成したのが冒頭の "Congratulations!" なのである。他6チームでもそれぞれさまざまなドラマがあったのだと思うみんなよく頑張った! 描き終わった後の打ち上げで飲んだビールはうまかった。
もう一回ご覧ください。こうしていまあらためて見返すと、感慨もひとしおです。
パーティーでのお披露目上映のみんなの様子。新郎新婦含め、みんなすごく驚き、喜んでくれました。よかったー!。
後日、新郎新婦からメンバー全員に送られた感想。喜んでくれたみたい。ほんとうにやってよかった。末長くお幸せに!