特集 2017年9月17日

ソーセージでバルーンアートに挑戦(デジタルリマスター版)

左がウサギで、右がプードルの子供だよ。
左がウサギで、右がプードルの子供だよ。
先日、手作りのソーセージに挑戦していたら、これってバルーンアートみたいだよなと気がついた。バルーンアートというのは、細長い風船を捻って、動物などの形にするアレだ。

バルーンアートはやったことがないし、やれるとも思わないのだけれど(絶対割る自信がある)、ソーセージを使ったバルーンアートなら、漠然とできるような気がする。

2011年11月に掲載された記事の写真画像を大きくして再掲載したものです。
趣味は食材採取とそれを使った冒険スペクタクル料理。週に一度はなにかを捕まえて食べるようにしている。最近は製麺機を使った麺作りが趣味。(動画インタビュー)

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バルーンのかわりに、羊の腸を使います

ご存じのように、ソーセージは羊などの腸に挽肉を詰めたもの。バルーンは風船に空気を詰めたものだから、概念としては大きな違いなんてないといえるだろう。
通販でとり寄せた羊の腸。1本約4メートル。
通販でとり寄せた羊の腸。1本約4メートル。
まずは普通のバルーンアートで練習してからとも思ったが、それはラグビー選手を目指す人がフットボールの練習をするようなものなので、最初からソーセージでチャレンジする。

ソーセージのタネを作る

ソーセージでバルーンアートに挑戦するといっても、腸にタネを詰めるまでの工程は、普通の手作りソーセージと同じでいいはず。

どれくらいの量があれば成功するのかよくわからなかったので、豚挽肉はちょっと多めに2キロ、約8メートル分を用意してみた。カール・ルイスならひとっ飛びだ。
豚挽肉に塩やスパイス類、タマネギ、氷を加えてよく練る。脂が多い方がおいしいので、安い挽肉が向いているかな。
豚挽肉に塩やスパイス類、タマネギ、氷を加えてよく練る。脂が多い方がおいしいので、安い挽肉が向いているかな。
スパイスは家にあるのを適当にバンバン入れたのだが、気がついたら、青のりや粉山椒まで入れていた。ドンマイ。
スパイスは家にあるのを適当にバンバン入れたのだが、気がついたら、青のりや粉山椒まで入れていた。ドンマイ。
手で丁寧に練っていると、だんだんとタネに粘りが出てくると同時に、熱を奪われて体が芯まで冷え切ってくる。頭痛がするくらいにだ。

だから温かい飲み物をたっぷり用意しておくことを勧める。ホイップクリームを浮かべたコーヒーとか。ウィンナー・コーヒーだ。
こういう作業は特大のステンレスボールが便利。
こういう作業は特大のステンレスボールが便利。

腸にタネを詰めていく

バルーンアートだったら、詰めるものが空気なので簡単だが(やったことないけど)、ソーセージはちょっとやっかい。

そこで腸にタネを詰めるための専用の道具がいろいろ存在するのだが、私が使用しているのは、ピストル型の道具。
引き金を引くと、先端からタネが出てくるマシーン。
引き金を引くと、先端からタネが出てくるマシーン。
容量が少ないので大量に作るのには向いていないが、これなら一人でも簡単にタネを詰めることができる。

でも今日は大量に作るんだよね。
水で戻した羊の腸を、先端のノズルにかぶせていく。この作業が一番やっかいかも。
水で戻した羊の腸を、先端のノズルにかぶせていく。この作業が一番やっかいかも。
腸が4メートルもあるので、だいたい途中でぐちゃぐちゃになる。
腸が4メートルもあるので、だいたい途中でぐちゃぐちゃになる。
うまくノズルに腸をかぶせられたら、先端を結び、空気を抜く穴を針で開け、引き金を引いてタネを詰めていく。

バルーンアートをやるためには、何度も捻る必要があると思うので、タネをパンパンに詰めるのではなく、ちょっとゆるいくらいに抑えておくのが正解のような気がする。
ソーセージ作りで一番楽しい工程だ。
ソーセージ作りで一番楽しい工程だ。
いつもはノズルに腸をかぶせる段階で絡んでしまったり、タネを詰めているときに途中で破れてしまったりするのだが、今回は人生で初めて、羊の腸まるまる一本きれいに詰めることができた。
長さ4メートルのソーセージ!
長さ4メートルのソーセージ!
ものすごい達成感だが、このままだと長すぎてこのあとの工程がやりづらいので、結局1メートルくらいに分割する。

これをバルーンアートにするのではなく、「長さ4メートルのソーセージを作る」という記事でもいいかなと、ちょっと思った。
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ソーセージはバルーンアートになるのか

次の工程は、タネを詰めた羊の腸を捻って、動物の形にするという作業。

なんといっても、これが今回の肝である。
完成予定図。
完成予定図。
作るモチーフは、豚肉のソーセージなので、当然ブタだ。羊の腸に詰めた豚肉でブタの形か。どうせなら豚の腸でやればよかったかな。

ブタの頭の大きさを決めたら、何回かそこでねじる。やぶれそうだが、全然やぶれない。
もう少し丸っこくした方がよかったかな。
もう少し丸っこくした方がよかったかな。
つづけては耳。バルーンアートの基本的な作り方をネットで勉強しながら、頭のすぐ後ろで二つねじって、それを折り重ねてさらにねじる。

多少失敗しても、何度でもタネの量を調整してやり直せるのがいい。やっぱりバルーンよりもソーセージの方がアートは簡単だと思う。あとで食べられるし。

ただ、腸は風船に比べて摩擦が少ないためか、ねじったところがいつの間にか戻ってしまうことがよくあった。やっぱりバルーンのほうが簡単なのかな。
おお、ちょっと耳がでかいけど、ブタの顔っぽいぽい。
おお、ちょっと耳がでかいけど、ブタの顔っぽいぽい。
ソーセージでオリジナルの動物を作るのはとても楽しい作業なのだが、どことなく呪いの藁人形を作っているような後ろめたさがあるのはなぜだろう。

ブタのはずがウサギになった

自分が描いた完成予定図を見ながら、そこだけ太い胴体が絶対に再現できないことにいらだちを覚えたりもしたが、三本のソーセージを束ねることで解決。 あとは野となれ花となれ。

どうにかできあがった姿がこれだ。
これ、何に見えますか?
これ、何に見えますか?
おかしい。ブタを作ろうと思ったのだが、どちらかというとウサギだ。耳も尻尾も体のバランスもウサギ。

羊の腸に豚肉を詰めて作ったウサギ。なにやら混沌としているが、かわいいからいいか。
バックショット。わかりにくいけれど、左側が頭で、右側がお尻。こっちからだと伏せをしているプードルに見えるかも。
バックショット。わかりにくいけれど、左側が頭で、右側がお尻。こっちからだと伏せをしているプードルに見えるかも。
これがブタじゃないにしても、なんらかの動物に見えるかどうかが不安になって、友人にこの写真を送ってみた。

「うーん、星座みたいな感じ?」

なるほど、うまいことを言われた気分だ。

これが動物に見えない人は、自分の想像力で、足りないものを補っていただければ幸いだ。
やり直してみたけれど、なにがなんだか。
やり直してみたけれど、なにがなんだか。
もっとコンパクトに作ればブタっぽいかなと思ったが、子供のプードルみたいになった。かわいくはある。
もっとコンパクトに作ればブタっぽいかなと思ったが、子供のプードルみたいになった。かわいくはある。
後ろから見ても、前から見ても、パーツ構成が同じというところに、完成度の低さが伺える。AKIRAのバイクってこんなんじゃなかったっけ。
後ろから見ても、前から見ても、パーツ構成が同じというところに、完成度の低さが伺える。AKIRAのバイクってこんなんじゃなかったっけ。

平面的にやってみよう

バルーンとソーセージの一番の違いは、中に詰めるものの比重なのかもしれない。空気と違って豚肉は重いので、立体的に作るのは無理があったか。

ならば平面的なデザインはどうだろうと、頭とソーセージを捻ってみた。バルーンアートの基本である「イヌ」である。

羊頭狗肉ならぬ、羊腸豚肉狗姿だ。

じゃーん。
…イヌ?
…イヌ?
普通のソーセージ作りのクセが抜けずに、各パーツがなんだか長い。結果として、馬や鹿のフォルムになってしまったようだ。あ、バカということか。

しかし、これはこれでアリだろう。バーベキューなどにこれを持っていったら、ちょとだけ人気者になれそうだ。
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燻製にする

羊の腸で動物の形を作るという点からすると、すでにやりきった感もあるのだが、せっかくなのでソーセージとして完成をさせることにする。

いくつか作り方はあるけれど、私の場合は、燻製にした後に、茹でるという方法をとっている。
中華鍋にスモークチップを入れて、弱火で炙る方式でやってみた。
中華鍋にスモークチップを入れて、弱火で炙る方式でやってみた。
中はこんな感じ。人が入った箱に剣を刺す手品に失敗したみたい写真だ。
中はこんな感じ。人が入った箱に剣を刺す手品に失敗したみたい写真だ。
ダンボールの中にたっぷりの煙を充満させ、20分ほど燻す。程良い煙臭さがソーセージと台所全体に染み込んでいく。

あとでファブリーズをしよう。
ここで火を通す必要はないので、スモークの時間は短めにした。見た目はあまり変わっていないが、肉眼で見ると質感が結構違う。
ここで火を通す必要はないので、スモークの時間は短めにした。見た目はあまり変わっていないが、肉眼で見ると質感が結構違う。

ソーセージを茹でる

スモークしたソーセージをこのまま焼いて食べるのもいいけれど、立体的な形状をしたソーセージは焼きづらい。

そこで70度のお湯で30分間掛けて、ムラなく火を通すことにする。これでヴィジュアル的にも生肉っぽさがなくなって、さらに愛らしくなるはずだ。
この茹で汁が薄味ながらおいしかったんだけれど、どうしようこれ。
この茹で汁が薄味ながらおいしかったんだけれど、どうしようこれ。
茹であがったソーセージを取り出すと、きっちりと縛ったはずなのに、ハラハラと結び目がほぐれてしまった。豚の形をしていたはずが、真珠のネックレスのように。

これを「豚が真珠」という。
あらあらあら。
あらあらあら。
釣りをしていて、糸の結び方が甘かったために、掛かった魚に逃げられたことが何度もある。そんな感じ。

ただ、茹でたソーセージはバルーンと違ってそのままの形で固まってくれるので、捻り直したら簡単に元の形に戻ってくれた。

それでは、できあがったソーセージによるバルーンアートを見ていこう。
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作品ナンバー1:腹巻きをしたブタ

最初の作品は、当初から目指していたブタ型ソーセージである。

残念ながらソーセージだけではどうしてもブタに見えなかったので、ケチャップで目を、ベーコンで腹の肉を追加してみた。

見どころは、結び目で作った鼻である。
腹巻きをした豚
腹巻きをした豚
できあがってから気がついたのだが、目のつもりで追加したケチャップを、耳として鑑賞すると、よりブタっぽいかもしれない。するとソーセージの耳は余計だったか。

ケチャップを目と観るか、耳と観るかで、だいぶ印象が違うはず。ルビンの壷のだまし絵みたいだ。
こうやってみると、完全に豚の顔だ。鼻の形状が完璧。
こうやってみると、完全に豚の顔だ。鼻の形状が完璧。
後ろから見ると、リアルなカッパのようでもある。やっぱり各パーツが長すぎるな。
後ろから見ると、リアルなカッパのようでもある。やっぱり各パーツが長すぎるな。
ベーコンで作った腹はいい感じなので、次回があれば、よりブタらしいフォルムを再現できそうである。

作品ナンバー2:ウサギとプードル

次の作品は、ブタを作ろうとしたら、いつのまにか生まれてしまった想定外の作品。

作ろうと思って作ったものではないが、この完成度の高さは、「偶然から生まれた必然」といってもいいだろう。
ウサギとプードル
ウサギとプードル
惜しむべきは、ウサギの尻尾がどっかにいってしまったことだろうか。これの耳がなくて、私がエジプト育ちだったら、スフィンクスだといっていたかもしれない。

プードルの顔が、ラーメンマンみたいで気にいっている。

作品ナンバー3:トナカイのグリル

3作品目は、馬のような鹿のようなソーセージを焼いたもの。もうすぐ年末ということで、トナカイということにしてみた。

あの頭についているのは、大きさ的に耳というよりは角だろう。クリスマスディナーを彩る一皿にどうだろうか。
トナカイのグリル
トナカイのグリル
唯一の平面作品ということで、フライパンで焼いてみたのだが、やはりソーセージに焼き目はよく似合う。

このソーセージをひっくり返すときに、頭部分をちょっと捻ると、別の形に見えることに気がついた。
ケンタウロスのグリル
ケンタウロスのグリル
ちなみにこの状態だと、線対称の図形となっており、反時計回りに90度回すと、右を向いたケンタウロスとなる。

今日の俺、冴えている。

作品ナンバー4:ポトフ畑のウサギちゃん

最後の作品は、ソーセージの茹で汁がもったいなかったので、それで作ったポトフである。これがカールスモーキー石井。ではなく、軽くスモーキーでおいしいのだ。

ソーセージの旨みをたっぷり含み、深い味わいとなったポトフだが、一緒に煮込んだウサギモチーフのソーセージも、なかなかの味わいの作品となった。
ポトフ畑のウサギちゃん
ポトフ畑のウサギちゃん
ちょっと首を曲げさして、足元のタマネギを食べているしぐさを表してみた。

これは新しい形の共食いなのかもしれない。

翌日、カレーにして食べたらうまかった。

食べられるバルーンアート、おすすめです

結論を言うと、ソーセージのバルーンアートは簡単にできる。それも相当楽しいし、なんといってもおいしい。素人の私がここまで遊べるのだから、バルーンアートの心得がある人なら、もっと完成度の高い作品も容易にできるだろう。

キャラ弁の次は、キャラソー(セージ)の時代がくる!

なんとなく断言してみた。
作ったソーセージは、私がおいしくいただきました。
作ったソーセージは、私がおいしくいただきました。
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