13年前には、林さんと一緒に大島で川柳を詠みながら観光地を巡った。
「
川柳100本ノック! イン・大島」
このような川柳ハンターとしての活動においてターゲットとなる川柳はいずれも意図的なものであった。タバコ屋さんが考えたり、僕が考えたり、林さんが考えたり。そこには「うまいこと言いたい」的な気持ちが少なからずともあるような気がする。
偶然575になっちゃった! そんな川柳があったら、逆に心に沁み入るのではないだろうか。
街角で「偶然川柳」を探すことにした。
渋谷でフィールドワーク
「偶然川柳」を探す場所として、ビッグ・シティー渋谷を選んだ。飲食店にファッションブランド、金融機関や大人の遊び場に至るまで、渋谷には無数の看板がある。きっと偶然575になっている場所があるはずだ。
センター街、道玄坂、公園通りに明治通りなど。カメラを持って渋谷の街を歩き回ったが、思っていたよりも簡単ではなかった。
例えば、次の看板を見ていただきたい。
金の蔵 シェーキーズ ファミリーマート
と、並びが557になってしまっている。
シェーキーズとファミリーマートが入れ替われば、
と「偶然川柳」が成立する、惜しい物件である。
看板に限定せず、雑居ビルの店子表示にも注目することにした。
すると、
この店子表示の中に
575発見
一応、575を見つけることが出来たが、575以外の要素が多すぎる。もっとシンプルにスパーンと575になっているものはないのか?
この店子表示の
上の右側を隠すと
と少し字余りだが、「偶然川柳」が浮かび上がってくる。
しかし、右側を消さないといけないのは本意ではない。
より精度の高い「偶然川柳」を求めて、さらに渋谷の街を調査した。
偶然川柳が見つかり始める
看板と店子表示だけに注目して渋谷の街を歩いて2時間。ポツポツと「偶然川柳」が見つかり始めた。
(店名は「赤から」だが、「赤から鍋」が名物ということで「赤から鍋」を採用)
この「偶然川柳」は真ん中に見えている「鳥貴族」の看板を使っても成立する。
鳥貴族の台頭
鳥貴族は渋谷に点在していて、店名が5文字ということもあり「偶然川柳」になりやすい。
他にも、
「鳥貴族 やきとりセンター 肉酒場(エコヒイキ)」
と、鳥貴族だけで合計4つの「偶然川柳」を見つけることができた。
変則的な解釈を用いて
読み取り方によっては、「偶然川柳」と言えなくもないものもいくつか見つかった。
マクドナルドを「エム」と発音し、3回繰り返すと川柳っぽくもある。
また、577ではあるが、声に出すと気持ちがいい「偶然川柳」として、
一番右の「アサミ美容外科」の「アサミ」と真ん中の「和民」をくっつける手法により、「偶然川柳」が誕生した。
となる。
本来であれば「ねぎし」だけを読まないといけないが、「ねぎし」と言えば「牛たん」であり、看板にも「牛たん とろろ 麦飯」と小さく書いてある。真ん中に「牛たんねぎし」と持ってきても罰は当たらないだろう。
渋谷で見つけた「偶然川柳」
それでは、残りの「偶然川柳」渋谷編を全てご覧いただこう。
「エバーグレイス スペーストラスト キリンシティ」
この物件は、「だしや」の下にある「富士そば」をドトールの代わりに使用することもできる。
夜が来る前に
店名が凝縮している次のような店子表示に注目していると、
偶然川柳が生まれやすそうな場所
客引きから「店は決まってますか?」と声をかけられた。
声をかけてきた客引き
いや、そうじゃない。僕は今、フィールドワークの真っ最中なのだ。
どの店にしようか吟味している訳ではない。
客引きを無視して場所を変えた。
この奥に偶然川柳がありそうだ
渋谷中央街の奥の方に、小さい看板が沢山見えた。
ふと目線を下げると、僕の方を見ている女性二人と目が合った。
呼ばれているような気がする
行ったらダメだ! お店に引かれる!
渋谷の街を歩き始めて4時間、すっかりと日が傾きだした。夜の街を看板を見ながらフラフラ歩くのは危険である。
ここで、今回のフィールドワークを終了することにした。
もし、僕が渋谷区の区長になったら「店名は5文字もしくは7文字にすること」という条例を発行したい。そうすれば、「偶然川柳」が生まれる可能性がグッと高まる。と、フィールドワークの途中に入った神座(カムクラ)でラーメンを食べながら考えていた。となると「カムクラ」は「カムクラン」でいいと思う。