風景印とはなにか?
「風景印」とは、郵便局に配備してある消印のひとつである。
普通の消印は、郵便局名と日付ぐらいしかかいてないが、風景印は、その郵便局がある地域の名物や名産などがあしらってある。
とりあえず、どんなものかご覧いただきたい。
金沢駅の中にあるあの人形と兼六園の石灯籠?
東京タワーと増上寺
上記の風景印は、金沢駅構内にある金沢駅内郵便局と、港区の芝郵便局でおしてもらったものだ。
こういった「たくさん種類があるもの」というのは、むしょうに集めたくなってしまう。
そこで、風景印を、普段あまり行くことのない郵便局を巡ってあつめてみたいと思う。
御朱印マニアについてきてもらった
まずは、東京駅の目の前にある東京中央郵便局に向かった。
御朱印マニアのライター井口さん
こんかいの郵便局めぐり、御朱印マニアのライター井口さんに同行してもらった。
御朱印だけではなく、風景印にもご興味を持っていただければという目論見である。
井口さんは、風景印というものがある。ということは、まったく知らなかったらしい。むしろ、そういう人に知ってほしいと思うので、うってつけである。
さて、東京中央郵便局は、数年前にリニューアルして、いまはKITTEというビルの1階に入っている。
最近の郵便局では、さまざまな郵便局グッズを売っている。とくに最近は「ご当地フォルムカード」という絵葉書を販売しており、その地域でしか買えない絵葉書を販売している。
寿司の形のポストカード、120円切手を貼ればはがきとして郵送できる
こんな形のご当地フォルムカードが全47都道府県に一つずつあるのだ。
井口さんは、風景印よりもまずこちらのご当地フォルムカードの方に心惹かれたらしい。寿司のフォルムカードに対し、しきりに「かわいい」を連発していた。
ご当地フォルムカードの件はひとまず置いておいて、本題の風景印をもらいたい。
風景印のもらいかた
風景印のもらい方はいくつかあり、いちばん簡単なのは、風景印のある郵便局に直接行き「風景印を押してください」と言えば、おしてもらえる。
ただし、必ず最低郵便料金の切手(現在は52円)をはった紙か、郵便局で買える52円の通常はがきに押してもらわなければならない。つまり、52円分の切手が貼ってあれば、どんなサイズの紙でもかまわないが、風景印だけノートにおしてもらう。というようなことはできない。
集めたあとの整理のしやすさから、名刺サイズのカードに52円切手を貼って、その横か下に押してもらって集めている人が多い。
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名刺カードに好きな52円切手を貼る
郵便の窓口でおしてもらう
一丁上がり
郵便局で直接おしてもらう手順は以上だ。
郵便局の郵便の窓口が開いている時間であれば、いつでもおしてもらえる。
残念ながら、土日祝日など、窓口が閉まっている日は押してもらえないが、平日であれば、たとえば旅行先でたまたま通りがかった郵便局で記念スタンプの代わりにおしてもらう……ということも可能だ。
風景印は、配備してある局と、配備してない局の差が地域により大きい。
東京23区内でいうと、港区、新宿区などの郵便局は配備してない局が多く、逆に目黒区、豊島区などの郵便局はほぼ全て配備してある。
また、地方の観光地が近い郵便局や大きめの郵便局などでは、配備されていることが多い。
どこの郵便局に風景印があるのかは、全国の風景印を網羅した書籍が出ているのでそれで調べるか、インターネットで「郵便局名 風景印」で調べるとだいたい分かるようになっている。
地域別に全四冊ございます
裁判所の地下にある郵便局
さて、普段あまり行かない場所にある郵便局として最初に向かったのは、裁判所の郵便局である。
来ました裁判所
東京地裁と東京高裁の入っているビル。途中まで窓がほとんどない。
ホントは数年ぶりぐらいにきたけれど、常連みたいな顔をして裁判所に入ると、まず、空港の手荷物検査と同じ手荷物のチェックが行われる。
それを通過すると、裁判の傍聴なり、なんなり好きにしてよいのだが、今回は風景印をもらいにきたので、地下一階の郵便局にむかう。
裁判所の地下一階は、そば屋、食堂、ファミリーマートや本屋、郵便局などがそろっており、ちょっとした村なんかよりもよっぽど使い勝手がよい。
裁判所内にわざわざ郵便局があるのは収入印紙をを買う人が多いからかもしれない。
東京高等裁判所内郵便局の風景印
裁判所の郵便局でおしてもらった風景印は、日比谷公園の噴水と桜田門だった。裁判所だから、判決を言い渡される被告人。みたいな絵とかではなく、常識的な風景である。
裁判所内は撮影禁止なので、こちらで記念撮影
ちなみに井口さんは、江戸前寿司のフォルムカードの裏に風景印を押してもらっていた
総務省のビルにある郵便局
続いて訪れたのは、裁判所の向かいのビル。中央合同庁舎第2号館。
裁判所の向かいのビルだ
「中央合同庁舎第2号館」というよりも、総務省、警察庁、国土交通省が入ってるビルといえばいいかもしれない。むかしの内務省系の省庁が入ってるビルだ。郵便事業は民営化前までは総務省の管轄だったので、このビルには郵便局があるのだろう。
このビル、関係者以外は立ち入り禁止だが、受付で「郵便局に行くため」と理由を書いて入館証を貰えば中に入ることができる。
御用があるので、入館証をもらえば入れる
総務省のビルの中にある郵便局
また桜田門だー
憲政記念館の時計塔と桜田門。このあたりの郵便局の桜田門好きは異常だ。
この郵便局では、押印を担当してくれたおばちゃんは「インクが濃すぎて汚くなるかも」となんども断ってきた。
郵便局の人も、客の買った切手にスタンプを押すわけだから、かなり緊張するかもしれない。事前にそういった断りをいれたくなる気持ちもわかる。
幸いにもそんなに汚くなることはなかった。
ただ、普段あまり風景印を押印しないと思しき郵便局では、にじんだりかすんだりすることがたまにあるが、それはもうしかたがない。
井口さんの風景印
ところで、井口さんの一枚のハガキに風景印を集める。というのも、スタンプラリーっぽくてなんだかうらやましくなってきた。
この隙間に旅行の思い出なんかを書き込んで、持って帰るというのも楽しみ方のひとつとしてありかもしれない。
ちなみに桜田門は工事中でした
国会内郵便局は自由に入れるぞ
続いて向かったのが、国会内郵便局。
国会の中に、吉野家をはじめ、さまざまな店舗があるのは有名だが、郵便局も存在する。
ノーチェックで入れます
とはいうものの、完全に国会内というわけではなく、出入り口が開いているので、一般客もなんのお咎めもなく利用することができる。
国会内郵便局では、国会議事堂のフォルムカードを売っていた。
国会議事堂のフォルムカードかっこいい
裏に押印してもらう
ところで、風景印を押印してもらうさい、風景印の絵柄と切手の図案を関連付けてあわせることを「マッチング」とよぶ。
国会内郵便局の風景印は国会議事堂だ。そこで、ここは2000年に発行された「議会開設110年記念」の切手を使ってマッチングさせてみた。
かっこいい
うーん、かっこいい。
ただ、この切手、すでに郵便局では売っていないので、スタンプショップに行って150円で購入した。
こういうマッチングは他にもいろいろ工夫できる。例えば、京橋郵便局の風景印だと……。
助六と助六
最高裁の郵便局
最後は、最高裁判所の郵便局にむかう。
悪徳企業の本社ビルっぽい
遺跡みたいな裁判所のビルの後ろっかわに最高裁判所の郵便局はある。
ピラミッドの入り口みたいだけど、郵便局
最高裁判所の郵便局は、一応警備員のいるゲートの内側にあるけれど、警備員に「郵便局行きます」とひと声かければノーチェックで入れる。拍子抜けするほどあっさり入れる。
法廷内の様子と建物の外観
以上、普段あまり行かない場所にある郵便局をまわって風景印を集めてみた。
風景印の集め方はひとそれぞれではっきりいってどんなふうに集めても構わない。
井口さんのやっていたように、一枚の台紙に、少しづつ風景印をおしてもらうのも、スタンプラリーみたいでおもしろい。
複数の風景印を眺められるのでこれはこれで楽しい
しかしながら最初に書いたとおり、直接行っておしてもらう。というのは、郵便局が開いている平日の昼間に行かなければいけないので、会社勤めだとすこし難しいかもしれない。
しかし、そんなひとたちに福音である。
風景印、実は郵送で押印をお願いすることができる。
郵頼すれば、日本全国の郵便局の風景印をもらうことができる
これは「郵頼」とよばれる方法で、郵便局に「風景印を押してください」という文面の手紙と、台紙、返信用の封筒を郵送すれば、郵便局が風景印を押印して返送してくれるというサービスだ。
試しに、日本最北端の郵便局、最南端の郵便局、そして、一般人は立ち入ることができない宮内庁の郵便局に郵頼を出してみたところ、ちゃんと返ってきた。
わー、本当に返ってきた!
最北端と最南端の風景印がいっぺんに手に入った!
宮内庁は、郵送した翌々日には返事が返ってきたが、波照間島は5日ほどかかった。
この台紙が北海道と沖縄にそれぞれ行ったのかと思うと、感慨深いものがある。
バーチャル旅行ここにありといわざるをえない。
ストリートビューで知らない町をぐるぐるまわるのも面白いけれど、行ったことのない土地の郵便局に手紙を送って風景印をあつめるのもなんだかわくわくする。
楽しみが増えた
実際、風景印をあつめはじめると、郵便局が見える度に「おぉ!」と色めき立ってしまう。
代わり映えしない繰り返しの毎日であったのが、とつぜん「郵便局探し」という新たなミッションが追加されるのだ。
当初、フォルムカードに惹かれていた井口さんであったが、たぶん風景印の面白さにも気づいていただけたことと思う。(本人に聞いてないのでわからないが)
すくなくとも「今まで知らなかった世界を知ることができて面白い」というようなことは、言ってくれた。
お世辞だとしてもいちおう額面通りに受け取っておきたい。