ベトナム人の朝食は、バインミー派かヌードル派
ベトナムがフランスの植民地であった頃にやってきた、フランスパンの製法。それが現地で手を加えられ、米大国ベトナムらしく米粉が入り、カッチカチからモッチモチのフッワフワに仕立てあげられたものがバインミー。で、そこに惣菜を挟んだものがバインミー。んでもって、食パンやコッペパンも「バインミー」。
ベトナムで、パンも、フランスパンも、惣菜入りフランスパンも、すべてが「バインミー」なのである。ただし、もちろん、今回の記事の文脈では、みっつめの「惣菜入りフランスパン」を示します。
中心部では徒歩1分間隔にある、路上のバインミー屋。
日本人でも朝食はパン派かご飯派かという話があるが、ベトナムはそのご飯を麺に加工するので、必然的にパンかヌードル。少数派としてはおこわとお粥。
一般的にヌードルは屋台やお店で座って食べて、パンはバイクや自転車で屋台に乗り付けて買ったら職場や学校で食べるスタイル。
言ってみればベトナム人は、バインミー派かヌードル派に別れる。とは言い過ぎだけど、好き嫌いくらいはあるだろう。
具材と調味料がギッシリと並べられた調理台。
都市部なら、ヌードルは日本円にして130円から200円くらいが相場、それに対してバインミーは50円から100円なので、お手軽な朝食として定番人気。節約に励む学生や、通勤を急ぐ社会人に愛されている。
飾り立てられた唐辛子(具になります)。
このバインミーとベトナムコーヒーのセットがベトナムにおける完全無欠のソウルフード、日本人にとっての「おにぎりとお茶」に対する位置付けに近いのかもしれない。
その、おにぎりの中身や握り方にもいろいろとあるように、バインミーにもいろいろなものがあるのだ。
前置き、終わり!
それではバインミーをかっ開いてまいります~!
超オーソドックス! 基本のバインミー
あそーれ
パッカーン!
具を並べたらめっちゃ入ってた。
具材は、なます(人参や大根の酢漬け)、パクチーなどの香草、きゅうり、ハム各種、チーズ、目玉焼き、レバーパテ、唐辛子、ヌクトゥン(醤油)、チリソース。
タイトルに「基本の~」と書いたが、これはかなりの贅沢トッピング、バインミーとしては破格(高い意味で)の125円だ(それでも125円なのだ)。ここからハムを1種類に減らして、チーズと目玉焼きを抜いたらほぼ基本型。
地域差こそあれど、ホーチミン市内で10店舗中8店舗はだいたいこんな感じ。
ボリュームがすごい。
五年前に初めてバインミーを食べた印象は、「アゴが疲れるなぁ」だった。
いくらパンがフカフカだと言っても、だからと言って食べやすく飲み込みやすい訳でもない。ギュッと圧縮すると当然固くもなるものなので、噛み砕くことも難しくなる。結局慣れの問題ではあるけど。
次からは徐々に、王道から外れていきます。
万人受けにクセを抑えた、人気コーヒーチェーンのバインミー
あそーれ
パッカーン!
並べたらさきほどのボリュームから一気に減った。
こちらはさきほどの基本に加えて、レタスと、レバーパテの代わりにツナが入っている。ツナとは別に、シュレッドチキン、チャーシュー、最近発売されたものとして魚の練り物(さつま揚げ)に肉団子に焼き肉などがあった。
全部100円くらい、場所代も含めるとかなり安いぞ。
ここは全国でも1,2位の規模で展開するコーヒーチェーン「Highlands Coffee」。レジで注文して別のカウンターで商品を受け取る、スタバと同じ形式。気軽に訪れられるということで外国人観光客も多い。
Highlands Coffeeの店構えはこちら。
ここのバインミーは取り立てて特別ということはなく、むしろ、ほかの路上にある店舗のバインミーに比べるとレバーパテを抜いたりパクチーを少なめにしたりと、少しでもクセのあるものを抜いている。
収まり切っていない理由は、一眼レフを使って自撮りしているから。
ガイドブックにほぼ確実に載っている、具材が豊富なバインミー
あそーれ
パッカーン!
並べた。
人参、きゅうり、香草、はこれまでのように規定路線。でもってここから玉ねぎが参戦! 確かに合いそうだ、むしろどうして今までなかったのか。そしてデンと存在感を漂わせる、肉団子のトマト煮である。
買ったお店、左端では外国人観光客が撮影している。
ちょうど購入中の方も欧米人(オフィスワーカー風)だった。
このバインミーはNhu Lanという店で買ったもので、日本人を含めた観光客がひっきりなしに列をつくっている。ガイドブックに必ずと言っていいほど載っている有名店で、もちろん具材は肉団子だけでない。
さつま揚げ、ソーセージ、ベーコン、鯖のトマト煮…。 見づらい点は勘弁してください。
ただしこういう、肉団子が抜け落ちるという欠点もある。 今さらだが、バインミーは具がポロポロこぼれてめちゃ食べづらい。
もう辛い(アゴもお腹も)
バインミー界に新風吹くか?カレーパン風バインミー
あそーれ
パッカーン!
並べ…は、無理だな。
見ての通り、カレー。といってもベトナムと日本のカレーは味付けがまるで違うので(前者はココナッツミルクが入っている)、メニューでは明確に「日本のカレー」のバインミーだと説明されている。
左中央にある「Nhat Ban」は「日本」の意味です。
カレーだけじゃない、照り焼きやチョコレートまで…これはバインミー界の異端児だ!
おいしいんですよ。おいしいんだけど、アゴがもう辛い。
バインミーは冒頭でも説明した通り、フランスパン単体(直訳すれば「パン」ではあるが)の呼称でもあるので、いくら中身を変えようともそれは確かにバインミー。それならもう少し幅を広げてもいいと思うけど、一世紀以上続く伝統的食文化のためか、これほど大きく手を入れられてはこなかった。
その経緯を踏まえると、このカレー入りバインミーは、おにぎり界におけるかつてのツナマヨみたいなものなのかもしれない。おにぎりの具といえば、こんぶにおかかに梅干しに…という時代の中に颯爽と切り込んで、いつの間にか盤石の地位を築いたツナマヨ。
個人的に、バインミーの自由化は、ベトナムの食文化が世界へ飛び出すためにも望んでいるところである。ま、そう考えると、日本でオシャレ属性を伴って知られることも、良いといえば良いのかな。
今回調べて分かった、バインミーの具材はこの通り。
■基本
・なます(人参や大根の酢漬け)
・パクチーなどの香草
・レバーパテ
・チャーシュー
・シュレッドチキン
・レタス
・きゅうり
・たまねぎ
・肉でんぶ ※豚肉を乾燥させて細かく割いたもの。今回の4つにはたまたま入っていなかったが、よく使われる。
・唐辛子
・醤油
・チリソース
■贅沢トッピング品
・チーズ
・玉子焼き
・肉団子
・ベーコン
・ソーセージ
・さつま揚げ
・鯖のトマト煮
■新しい風
・カレー
・照り焼き
・チョコレート&果物
自由研究らしく模造紙に書きたかったのですが、ベトナムでは簡単に見つかりませんでした。調べたら、あれって日本生まれなんですね。もしかしたら存在しないのかも。そりゃ無理だ。
最後に。今回のタイトルは「これしかない!」と思い、松本圭司さんの記事からフォーマットを頂戴しました!
『コンビニサンドイッチ解体新書』
バインミーを食べるときはパンくずに気をつけてね!
バインミーは、ふっくらとしたパン生地にパリッとした薄皮がコーティングされている構造だ。
それがおいしい食感の秘訣ではあるのだけど、食べれば食べるほどとてつもない量のパンくずがこぼれてしまう。室内で食べるときはお気をつけください。
あと、願わくば、パン工場(といっても民家であることが多い)の近くで探すといいです。焼きたてのパンとかもはやあれ、うますぎて、完成された一品料理だから。
余談ですが、以前買った世界最大のバインミーがこれ、記事は
これ。