特集 2016年7月11日

タキシードを着たパンダを背負ったカミキリムシ

たしかにタキシードを着たパンダだ!
たしかにタキシードを着たパンダだ!
ツイッターにタキシードを着たパンダの画像が流れてくることがある。そのパンダとはサンリオの新キャラクターとかではなく、カミキリムシの模様なのだ。

模様の個体差でたまたまパンダにみえるだけなんじゃないかと疑っていたのだが、実際に観察してみるとどれも確かにパンダだった。あるいはガイコツか宇宙人。
趣味は食材採取とそれを使った冒険スペクタクル料理。週に一度はなにかを捕まえて食べるようにしている。最近は製麺機を使った麺作りが趣味。(動画インタビュー)

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ラミーカミキリを求めて高尾山へ

パンダ柄の模様を持つカミキリムシの名前は、ラミーカミキリ。ラミーというのは繊維(苧麻)をとるために海外(中国?)から導入されたといわれている多年草。そのラミーと一緒に移入してきたからラミーカミキリ。

もっとも古い記録は1873年らしいので、100年以上前にやってきた伝統ある外来種だ。中国からだけにパンダ柄なのだろうか。

西日本では普通に見られる種であり、近年では西東京あたりまで生息域を広げているとウィキペディアに書かれていた。埼玉育ちの私が見たことないのはそういう理由か。
パンダ柄のカミキリを探しに高尾山までやってきました。
パンダ柄のカミキリを探しに高尾山までやってきました。
都内にいるなら探してみようかなと思ったが、いやでもウィキペデアを盲信してはいけないぞと虫関係の著書が多数ある丸山宗利さんに確認したところ、高尾山とか奥多摩なら普通にいるそうで、食草であるラミーやカラムシといったイラクサの仲間を探せば見つけられるのではとのこと。

観察する時間帯は午前中がオススメらしい。ならばと始発電車でやってきたのは高尾山口駅。どうせ歩き回るなら17年振りに高尾山でも登ってみようかと思ったわけだ。
もし見つからなかったら高尾山でビールを飲んで帰ろうか。
もし見つからなかったら高尾山でビールを飲んで帰ろうか。
さらに駅前に温泉もある。そりゃ高尾山は人気高いよなと実感。
さらに駅前に温泉もある。そりゃ高尾山は人気高いよなと実感。
もしラミーカミキリを見つけられなかったら、高尾山登山入門の記事でも書こうかな。

食草のラミーはたくさん生えている

高尾山を登るには様々なコースがあるのだが、どこのルートにラミーがたくさん生えていて、お目当てのラミーカミキリがいるのかなんて全く分からなかったので、あてずっぽうで登ってみるしかない。

事前にしっかり調べれば、ピンポイントでラミーカミキリのよく見られる場所がわかるかもしれないが、それはそれでつまらないという面倒臭い男心。
こういう看板にラミーカミキリの表示はないみたいですね。
こういう看板にラミーカミキリの表示はないみたいですね。
楳図かずおの描いたような鳴き声のセミ。
楳図かずおの描いたような鳴き声のセミ。
食草であるイラクサの仲間を探しながら適当な登山道を歩いていると、探すまでもなく道端にそれっぽい草がポツポツと生えていた。

これがラミーなのかイラクサなのかカラムシなのかはよくわからないのだが、たぶん吉野家と松屋とすき家くらいの差。きっとこれらがラミーカミキリの食草なのだろう。
これがラミーカミキリの名前の由来であるラミーじゃないかな。確認しようとラミーで画像検索したらボールペンばっかりでてきてイラっとした。
これがラミーカミキリの名前の由来であるラミーじゃないかな。確認しようとラミーで画像検索したらボールペンばっかりでてきてイラっとした。
ところで余談だけど、この日のためにマクロレンズを用意したのだが、望遠にもなってお得そうな安いのを適当に購入したところ、ピントの合う距離が95センチと遠くて驚いた。

カメラのレンズ選びって難しいですね。手持ちだとすげー手振れする。虫撮りには間違ったの買っちゃったかな。
このレンズ、対象物から1メートル離れてないとピントが合わないのかー。
このレンズ、対象物から1メートル離れてないとピントが合わないのかー。
まあラミーさんが近くにいたらコンデジで撮るからいいんだけどね!
まあラミーさんが近くにいたらコンデジで撮るからいいんだけどね!
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ラミーカミキリが見つからない

昆虫採集は得意分野じゃないけれど、きっと食草さえ見つかればもうリーチ。こりゃまさに朝飯前だろうと余裕たっぷりで探すのだが、お目当てのラミーカミキリはまったく見当たらない。あれー。

とりあえず焦点距離の長いマクロレンズに慣れようと、適当な虫を撮りながら探しまくる。コンデジの接写と違って、距離が遠いので虫が逃げなくていいですね。やっぱり買ってよかったと思おう。
バッタの後ろ足は地面についてないんですね。
バッタの後ろ足は地面についてないんですね。
かっこいいクモ。マクロレンズって楽しい。
かっこいいクモ。マクロレンズって楽しい。
かっこいい触角。家の中では見つけたくないが。
かっこいい触角。家の中では見つけたくないが。
苦手なタイプの虫もマクロだとかっこよく見えるが、これよりワイルドな虫は掲載自粛。
苦手なタイプの虫もマクロだとかっこよく見えるが、これよりワイルドな虫は掲載自粛。
釣りの世界だと、達人が言う「誰でも釣れるよ」という言葉の意味が、「初心者でも一日やれば一匹くらいは釣れるよ」という場合もあるが、虫のプロである丸山さんが言う「普通にいる」は、一体どの程度の発見難易度なのだろう。

シマウマとかゾウとかニンゲンっぽい虫はいるけど、パンダはなかなか見つからない。
パンダというかシマウマっぽいシマサシガメ。
パンダというかシマウマっぽいシマサシガメ。
配色はパンダっぽいゾウムシ。
配色はパンダっぽいゾウムシ。
動物と言いうか人間の顔っぽいカメムシ。
動物と言いうか人間の顔っぽいカメムシ。
惜しい、カミキリじゃなくてカマキリだな。
惜しい、カミキリじゃなくてカマキリだな。
箕面まで歩けば一匹くらい見つかりますかね。というかずいぶん長い歩道だな。
箕面まで歩けば一匹くらい見つかりますかね。というかずいぶん長い歩道だな。

いた!ラミーカミキリだ!

虫探しを開始してから一時間が経過するも未だ収穫なし。まだ一時間しかともいえるんだけど、一時間も小さな虫を探し続けると目が疲れる。ちなみにまだスタートから一キロくらいしか進んでないと思う。

もしこのまま見つけられなかったならどうしよう。捕まえるまで再取材するべきか、本当にビアガーデンや温泉の記事を書くか、こっそりお蔵入りとするべきか。

だんだんと不安になってきた頃に、今までバラバラと生えていた食草が群生している場所を発見。ここなら絶対いるぞと俺の狩猟本能がいっている!
ホラホラホラホラ、ここ絶対いそうでしょ!
ホラホラホラホラ、ここ絶対いそうでしょ!
しかし、いない。一匹も。

もしかしたら葉っぱの裏側にいるのかもと下から覗きこむが、やっぱりいない。

通りがかりの登山客の方に、何をしているんですかと聞かれて口ごもる。

わかった、もう俺がタキシードを着てパンダのメイクをしてお茶を濁そう。そして髪を切ろう。それが俺のラミーカミキリだ。
このあたりにいそうなんだけどなー。
このあたりにいそうなんだけどなー。

こんな歩きやすい道沿いではなく、もっと道なき道を分け入らないとダメなのかなと思いながらカーブを曲がったところで、声が出るほど驚いた。

ラミーカミキリ、いた!

今までにみた虫とは違う存在感!
葉っぱの上に何かがいる!きっとあれがそう!
葉っぱの上に何かがいる!きっとあれがそう!
コンデジだとここまでしか寄れない!
コンデジだとここまでしか寄れない!
たぶんあれがラミーカミキリ。でもちょっとイメージより青いからルリボシカミキリかもしれない。

肉眼だと確証が持てないので、望遠レンズで覗いてみる。
かなりそれっぽいけど、横を向いていてイマイチわからん。
かなりそれっぽいけど、横を向いていてイマイチわからん。
角度的に背中がよく見えないためパンダっぽさがわからない。襟の高いマントを羽織った怪人っぽいか。

もっと近づいてみようとしたとき、危機を察したのかブーンと飛んで逃げてしまった。

あー!って思ったら着地地点は離陸地点よりも近く、さらに背中が正面だ!
パンダだ!
パンダだ!
間違いない、ちょっと青っぽいけどラミーカミキリ。きっとそう。やっぱりレンズを買ってよかった!

確かにパンダの顔をしていて、タキシードっぽい上着を着ているように見える。左右の胸ポケットには白いハンカチ。そして下半身は裸に白いエナメルの靴というとこか。人間だったら変態だ。

腕を後ろに組んで直立しているポーズが大変かわいらしく、うまいことキャラクター展開したらお金になりそうな匂いがする。
タキシードを着たパンだって、こういうことか!
タキシードを着たパンだって、こういうことか!
もう少しで近くで別の角度から写真を撮ろうと思ったところで、また飛んでしまった。ラミーカミキリ、パンダなのにすぐ飛ぶな。

今度はどこかに逃げてしまったが、とりあえず写真が撮れてよかった。
両脚(羽根)をパカッと開いて飛んでいった。この角度だとパンダがなんだか怒っているみたいな表情だ。
両脚(羽根)をパカッと開いて飛んでいった。この角度だとパンダがなんだか怒っているみたいな表情だ。
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ラミーカミキリ、かっこいい

ここにようやく一匹いたんだから、探せばもっといるんじゃないかと見回してみると、ほんのすぐ先で無事発見。

もしかしたら実物を一度ちゃんと見たことで、ラミーカミキリという存在を目と脳が認識したのかもしれない。
本物の顔はパンダっぽさゼロ。
本物の顔はパンダっぽさゼロ。
あ、また飛んだ!でもまたすぐ近くに着陸した!
あ、また飛んだ!でもまたすぐ近くに着陸した!
このラミーカミキリはじっくりと観察できたのだが、角度によってはパンダっぽかったり、ガイコツっぽかったり、宇宙人っぽかったり、様々な表情を見せてくれる。表情といっても顔じゃないのだが。

この模様は鳥などの捕食者からまずそうに見えるための進化なのだろうか。ラミーというかダミー。客寄せパンダならぬ鳥避けパンダか。
この角度だとガイコツのマスクをすっぽりかぶっているっぽい。鳥目線でみたら、相当まずそうかもしれない。
この角度だとガイコツのマスクをすっぽりかぶっているっぽい。鳥目線でみたら、相当まずそうかもしれない。
この写真だと七五三の記念写真みたいにシュッとしている。エリとつま先がかわいい。
この写真だと七五三の記念写真みたいにシュッとしている。エリとつま先がかわいい。
グレイと呼ばれる宇宙人っぽくもある。
グレイと呼ばれる宇宙人っぽくもある。
頭側からだと印象がまた違うよね。キン肉マンのティーカップマンっぽさを感じる。
頭側からだと印象がまた違うよね。キン肉マンのティーカップマンっぽさを感じる。
葉っぱの葉脈部分が好物みたいです。
葉っぱの葉脈部分が好物みたいです。
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タキシードの下は意外とマッチョ

続けてもう一匹発見。今度は手に届く場所なので、さらにアップで観察させていただこう。
ようやく手に届く距離で発見。ここからはコンデジでお送りいたします。
ようやく手に届く距離で発見。ここからはコンデジでお送りいたします。
こいつは盲腸の傷跡があるな。
こいつは盲腸の傷跡があるな。
真横から見ると意外とぽっちゃりした体型。うっすらと毛が生えているため、このタキシードが冬服であることが判明。
真横から見ると意外とぽっちゃりした体型。うっすらと毛が生えているため、このタキシードが冬服であることが判明。
なにやら踏ん張っている様子。
なにやら踏ん張っている様子。
おおお、うんこした。
おおお、うんこした。
背中の模様と本物の顔とのギャップがすごい。
背中の模様と本物の顔とのギャップがすごい。
動いている様子を背後から見ると、ラミーというかマミー(ミイラ)が操られて動いているようで怖い。
手を出したら躊躇なく乗ってきた。なんだか野良猫と遊んでいる気分。
手を出したら躊躇なく乗ってきた。なんだか野良猫と遊んでいる気分。
羽根がちょっと開くと、吸血鬼とか黄金バットみたいなロングマントの怪人っぽさが出るね。
羽根がちょっと開くと、吸血鬼とか黄金バットみたいなロングマントの怪人っぽさが出るね。
あとで動画を見てわかったんだけど、飛ぶ瞬間に一瞬だけ見える、鍛え抜かれたボディビルダーのような割れた腹筋がすごい。いや背筋になるのかな。
まさかのメタリックマッチョボディ!
まさかのメタリックマッチョボディ!
飛び立つラミーカミキリ。さらばじゃ!
このパラダイスみたいなポイントを後にして、さらにしばらく登ってみたのだが、ここから先にはもう食草が生えておらず、ラミーカミキリの気配も無し。

憧れのビアマウントの場所だけ確認して下山となった。
これが有名な高尾山のビアマウントか。時間が早すぎて営業前だった。
これが有名な高尾山のビアマウントか。時間が早すぎて営業前だった。

山には登らなくてよかったみたい

さて高尾山口の駅まで戻ってきたのだが、ある程度まで山を登ってからは食草が生えていなかったということは、もしかしたらラミーカミキリは平野の方がいるんじゃないかと探してみたところ、駅の近くであっさりと発見。
田んぼの横にモサモサ生えているじゃないですか。
田んぼの横にモサモサ生えているじゃないですか。
京王高尾線とラミーカミキリ。「普通にいる」っていうのは、こういうことだよね。
京王高尾線とラミーカミキリ。「普通にいる」っていうのは、こういうことだよね。
ラミーカミキリを探すなら、山を登らずに平野の空き地や畦道を歩いた方が効率いいみたい。

結局この日は6匹のラミーカミキリを確認。事前情報通り、高尾には普通に生息しているようです。

今までこういった虫探しはあまり熱心にやってこなかったのですが(食べられないから)、ラミーカミキリは見つける難易度が程よくて満足度も高く、なんだか虫探しに目覚めた気分。まあ無事に見つかったから言えることだろうけど。

ちょっと登山して、虫を探して、蕎麦を食べて、温泉に入ってと、とても楽しい一日でした。
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