わかりやすい県境
日本全国、県境に行けばどこでも県境であるものの、実際に県境ラインが引いてある場所はあまりない。
県境ラインが引いてある奈良県と京都府の県境
上の写真のような親切な場所は非常に貴重ともいえる。
しかし、世の中の県境の99パーセントは下の写真のように、県境であっても県境ラインなんか引いてない。
しかし、世の中の県境の99パーセントは下の写真のように、県境であっても県境ラインなんか引いてない。
県境ラインなんか引いてない福島県と山形県の県境
道路の舗装が微妙に変わっている、マンホールが混在している、用途地域の違いで風景がなんとなく違って見える……など、「なにもない場所に県境の痕跡を見出す
というのが県境趣味の醍醐味ではあるものの、やはり県境がひとめでわかるなにかがあれば……という思いは、県境趣味者にとって切実なものである。
というのが県境趣味の醍醐味ではあるものの、やはり県境がひとめでわかるなにかがあれば……という思いは、県境趣味者にとって切実なものである。
「みえないなら引けばいいじゃない」
そこで、「見えないなら、見えるようにすればいいじゃない」という、マリー・アントワネットメソッドを使い、こんな物を作ってみた。
県境のテープ、完成です
国土地理院の定める県境の地図記号をテープにした。ちなみに、県境の地図記号はこちら。
川の上のラインが県境の地図記号
国土地理院のホームページを見ると、正しくは、「都府県界」と呼ぶらしい。
「都府県」と、地上で他の都府県と接していない北海道の道が入ってないのと、「境」ではなく「界」を使っているところがおもしろい。
Yの字をよこに寝かせて点をうったこのタイプの都府県界は明治27年(1894年)から使われている。
オリジナルテープを作ってくれている業者にデータを送って発注したところ、3日ほどで現物が送られてきた。仕事はえー。見習いたい。
「都府県」と、地上で他の都府県と接していない北海道の道が入ってないのと、「境」ではなく「界」を使っているところがおもしろい。
Yの字をよこに寝かせて点をうったこのタイプの都府県界は明治27年(1894年)から使われている。
オリジナルテープを作ってくれている業者にデータを送って発注したところ、3日ほどで現物が送られてきた。仕事はえー。見習いたい。
県境にどんどんはっていくぞー
さて、この県境テープ。使い方はとっても簡単。
引き出して
県境が可視化されたぞ!
どうだ、県境が一目瞭然。いままで地図記号の県境が実際にひかれたことなんてあっただろうか?
こういうのがいちばん困るのよね……
わぁ! 便利!
さらに、勢い余って作ってしまった県境Tシャツ。
アイロンプリントペーパーで作りました
県境にまたがったときに、ぴったりになるように真ん中に県境のラインがプリントされたTシャツを作ったのだ。
これも使い方は簡単。
これも使い方は簡単。
着込んで
写真を撮るだけ!
県境またぎの写真を撮るためのTシャツである。
「県境を分かりやすく」という一途な気持ちで作った県境テープと県境Tシャツ。冗談半分で発注したものの、おもいのほか、本当に分かりやすくなってしまった。
今まで、撮った写真にいちいちPhotoshopで県境ラインを描きこんでいたけれど、そんなことをしなくてもよくなった。
縄文人が稲作を始めたとき以来のイノベーションではないだろうか?
作ってよかった……。
「県境を分かりやすく」という一途な気持ちで作った県境テープと県境Tシャツ。冗談半分で発注したものの、おもいのほか、本当に分かりやすくなってしまった。
今まで、撮った写真にいちいちPhotoshopで県境ラインを描きこんでいたけれど、そんなことをしなくてもよくなった。
縄文人が稲作を始めたとき以来のイノベーションではないだろうか?
作ってよかった……。
よかった……
ベタ踏み坂おもしろ情報
なお、上の写真のロケ地はあの有名なベタ踏み坂である。
ベタ踏み坂は望遠レンズで写真を撮ったとき、壁みたいになる坂として有名だが、この橋は鳥取と島根の県境でもあるのだ。
※ベタ踏み坂についてはこちらの記事もどうぞ→「上に避けてるのが島根、横に避けてるのが鳥取」
ベタ踏み坂は望遠レンズで写真を撮ったとき、壁みたいになる坂として有名だが、この橋は鳥取と島根の県境でもあるのだ。
※ベタ踏み坂についてはこちらの記事もどうぞ→「上に避けてるのが島根、横に避けてるのが鳥取」
実は県境があるベタ踏み坂
ふつう、海や湖などの水面上には県境は引かれない。漁業権などけっこう複雑な問題があるためだ。
しかし、埋め立てや、地方交付税のなんやかんやの事情で水面に県境が引かれている場所が日本にいくつかあるのだが、鳥取と島根の間にある中海も、県境がひかれている湖のひとつだ。
しかし、埋め立てや、地方交付税のなんやかんやの事情で水面に県境が引かれている場所が日本にいくつかあるのだが、鳥取と島根の間にある中海も、県境がひかれている湖のひとつだ。
中海は、淡水化して秋田の八郎潟のように埋め立てて田んぼにしようという計画があった。
埋め立て計画をすすめるにあたり、県境をどこに定めるかが問題になったが、米子空港の滑走路を延長するさいに県境を確定させた。(1992年)
日本で初めて湖に県境が引かれたのは、この中海である。
その後、中海の淡水化と埋め立て計画は社会情勢の変化を鑑みて中止されたのだが、湖上にひかれた県境は残った。
埋め立て計画をすすめるにあたり、県境をどこに定めるかが問題になったが、米子空港の滑走路を延長するさいに県境を確定させた。(1992年)
日本で初めて湖に県境が引かれたのは、この中海である。
その後、中海の淡水化と埋め立て計画は社会情勢の変化を鑑みて中止されたのだが、湖上にひかれた県境は残った。
実は道路上に県境ラインは引いてある
区境も県境にグレードアップ
さて、この県境テープ。別に県境じゃないところで使ってもいいんじゃないか?
例えば、区境に貼って、区界を県境にグレードアップさせることだってできるのではないか?
というわけで、数寄屋橋にやってきた。
例えば、区境に貼って、区界を県境にグレードアップさせることだってできるのではないか?
というわけで、数寄屋橋にやってきた。
銀座インズ
ちょっと見にくいが、高速道路のところに描いてある「―・・―・・―・・―・・―」というやつが区境だ。
これを「・>―<・>―<・>―<・」の県境にかえるのだ。
これを「・>―<・>―<・>―<・」の県境にかえるのだ。
心の目が開かなければ、境目がわからない。
じゃーん
区境が……県境に……はならないんだな、やっぱり。ここは区境だから。
でも、境目がどこにあるかはわかりやすくなった。
でも、境目がどこにあるかはわかりやすくなった。
じつは境界未定地である
ところで、この銀座インズの中央区と千代田区の区境は、実はっきり決まっていない。
もともと境界が定められてなかった外堀を、境界を確定せずに埋め立てて高架道路を作り、その下に店舗を作ったためだ。
もともと境界が定められてなかった外堀を、境界を確定せずに埋め立てて高架道路を作り、その下に店舗を作ったためだ。
埋め立て前の地図を見ると、堀と本当に橋だった頃の数寄屋橋がしっかり描かれている。分かりやすく堀は水色に着色。(1/25000「東京南部」昭和22年資修・昭和22.7.30発行)
はっきり境界を決めずに店舗を作ったので、銀座インズの住所はなんだかちょっとおかしい。
銀座西2-2?
「銀座西」という地名は、1969年に消滅した住所であるにもかかわらず、境界がはっきり決まっていないので、銀座インズでは今でも便宜的に使われている。
さらに、「先」の文字は、住所が決まってない場所をあらわすときに使われる書き方だ。国有地で、地番が振られておらず、住居表示もされていない「無番地」に手紙を差し出すときに近くの住所を書いて、便宜的に「その先の場所」という意味で「先」と書く。
ちなみに、「網走番外地」というのは、網走刑務所の土地が国有地で地番が振られてなかったため住所に「無番地」とあったのを、受刑者の家族などがいつの間にか「番外地」と呼ぶようになったのが始まりだという。
話が脱線しすぎたけれど、脱線したまま、まとめます。
というわけで、埋め立てするつもりで水上に境界を決めた中海が結局埋め立てをせず、境界を確定させる暇もなく堀を埋め立てをしてしまった銀座は、今でも境界がきちんと定まっていない、というのもなんだが皮肉だ。
さらに、「先」の文字は、住所が決まってない場所をあらわすときに使われる書き方だ。国有地で、地番が振られておらず、住居表示もされていない「無番地」に手紙を差し出すときに近くの住所を書いて、便宜的に「その先の場所」という意味で「先」と書く。
ちなみに、「網走番外地」というのは、網走刑務所の土地が国有地で地番が振られてなかったため住所に「無番地」とあったのを、受刑者の家族などがいつの間にか「番外地」と呼ぶようになったのが始まりだという。
話が脱線しすぎたけれど、脱線したまま、まとめます。
というわけで、埋め立てするつもりで水上に境界を決めた中海が結局埋め立てをせず、境界を確定させる暇もなく堀を埋め立てをしてしまった銀座は、今でも境界がきちんと定まっていない、というのもなんだが皮肉だ。
ルノアールの机も県境っぽくなる
県境テープ。県境に貼るだけでなくそのへんの机に貼るのも趣深い。
有るのに無くて無いのに有る県境がみえる。けれど、この県境はほんとは無い。ということは、無いものを有るかのように見せているわけで、ここには県境が無いのに有るということになるのだ。
無いものが有るように見えるなんてなんと豊潤なことか。
なにを言ってるのかわからなくなってきたので、このへんでやめておきたい。
有るのに無くて無いのに有る県境がみえる。けれど、この県境はほんとは無い。ということは、無いものを有るかのように見せているわけで、ここには県境が無いのに有るということになるのだ。
無いものが有るように見えるなんてなんと豊潤なことか。
なにを言ってるのかわからなくなってきたので、このへんでやめておきたい。