記事がニュースになった
「ファミマのチャイム」とか「ファミマ入店音」などと呼ばれていたあのチャイム音。作曲の経緯などをうかがった記事のネタとして作曲者の稲田さんにタイトルを「大盛況」と決めてもらった。(「
『ファミマ入店音』の正式なタイトルは『大盛況』に決まりました」)
このことが、一部で話題となり、ネットニュースなどでも取り上げられた。挙句、海外のサイトでもニュースになっていた。
自分の文章が
中国語に翻訳されてるのおもしろい。「给人以温婉→空虚→安心的印象」なるほどー。どうでもいいけど、ファミマの前で撮った写真にセブンイレブンの広告が入ってるな
やはり、ファミリーマートで鳴るあのチャイムはみんな気になっていたのだ。
稲田さんは元気だろうか?
さて、話題となったあの記事だが……稲田さんはお元気だろうか?
私が『大盛況』作曲者です
前回インタビューした喫茶店で待ち合わせ、お話をうかがった。
――その節はお世話になりました。あの記事、いろいろと話題になりました。稲田さんの方でなにかございましたか?
「ほらマツコデラックスのやつ(「月曜から夜ふかし」)とか、あと「スクール革命」だったかな? テレビに何度か出て、わたし、あんまりテレビ見ないから、マツコの時は弟から電話かかってきましたよ」
2015年7月28日放送の「月曜から夜ふかし」より。イケてないラーメン屋の「テレビで紹介されました」みたいな貼り紙っぽいな
――テレビで紹介されましたね、こちらにも連絡きました。しかしテレビの影響力ってすごいですね。
「じつはね、3、4年前からテレビで取り上げたいって取材の申し込みは何件かきてたんですよ、でもね、都合のいいように取り上げられてイジられておしまいみたいな感じになったら嫌だなとおもって、断り続けてたんですよ」
――そこでよくデイリーポータルZの取材を受けてくださいましたね……ある意味テレビよりひどくなりそうなのに。
「いやでもね、これなら受けてもいいかな? という感じで西村さんからのメールがきたので、そこは受けたんです、それがうまい具合に広がってね、結果的によかったね」
あらためて話をきくと、冷や汗ものである。ただ、純粋に、あれだけよく聞くチャイムの作曲者はどんな人なんだろう? という好奇心しかなかった。
「あと、来年かな? 大阪の方のテレビ局が話ききたいって言ってて、ほら、あの女優と結婚してすぐ別れちゃった芸人いるでしょ」
――えーと、陣内智則ですかね?
「そう、それ、そのひとが来て取材するとかしないとか」
――今までは、デイリーポータルZの写真素材そのまま使わせてくれって話でしたけど、今度はちゃんと稲田さんを取材するやつなんですね。関西ローカルの番組かな? ちょっときになりますね。
ネットでの反応をみてもらった
――インターネット上の百科事典のウィキペディアってサイトがあるんですが、それのファミリーマートの項目にもこの「大盛況」の件が書かれてるんです(
こちら)。
「ほう、こんなのもあるんですねえ」
ネット上での反響をみてもらった
――ただ、出典元の表記で私の名前が間違ってるんですよね。
「あぁ、これはちょっと残念ですね(笑)」
――まあ、ウィキペディアはいい加減だから別にいいんですけど、稲田さんのお名前が間違ってなくてよかったです。
おもしろいから別に直さなくてもいいです
――ネットでの記事を見たよみたいな反応はございましたか?
「いやもう大変ですよ、ほら、僕はオケで振ってる(オーケストラで指揮者をしている)でしょ、もう30年やってるから、オケの楽団員とはふつうの仲間じゃないですか、でもあの記事がでてから『稲田さん一緒に写真撮ってくれる』って、バカ言うなって、いまさら何言ってんだおまえって」
――あはは、急に有名人になったみたいな話ですね
「他にもコンサートで、解説しながらやることも多いんですが、やっぱりね、『私がファミリーマートで使ってるあのチャイム作ったんだよ』っていうと、何よりもウケけるんです」
――でしょうねー、みんな気になってるんですよ
「この前、京都で秋川雅史さん(「千の風になって」のひと)とコンサートやったんですけど、舞台上での彼とのやり取りの中で、あのチャイムの作曲したんですよって話になったら、お客さんがウオーってなって、大変でしたね」
ウケけるんですよとおっしゃる稲田さん。写真がブレるほどウケるんです
何度もくり返すけれど、あの曲はやはりみんな気になっていたのだ。そこに「あ、あの曲の作曲者です」となると、今まで暗かった部分に光があたったような妙な明るさがあるのだ。
――ニコニコ動画で、杵家七三(きねいえなみ)さんが三味線で「大盛況」を演奏されている動画に稲田さんがちょっと映ってますよね。
「あぁ、あれね、彼女は日本音楽集団ってところで、昔から知ってるすごく才能のある女性なんですけど、彼女が『稲田さんちょっといいかな?』って、それで撮ったんですよ」
「日本音楽集団」は邦楽器を使用した演奏グループで、稲田さんはそこの指揮者でもあるのだ。
この他、稲田さんによると、なぜか奥様やお子様も喜んでくださっているという。稲田さんのご家族に明るい話題をご提供できたと思うと、ぼくとしても実にうれしい。
残りのチャイムのタイトルを決めましょうか
――さて、せっかくこうやってまたお話をきける機会があったので、できればで構わないんですが……インターフォンのチャイム、他にもふたつありますよね? それにも正式なタイトル付けませんか?
「えーっ、あれかー。タイトル考えるのもけっこう大変なんだよなあ」
ちなみに「大盛況」以外のチャイムとはこのふたつだ。
パナソニック「EC5227WP」チャイムその1
パナソニック「EC5227WP」チャイムその1
つい「大盛況」の方に目が行きがちだが、こちらのチャイムもなかなかの佳作である。タイトルがついてないのはもったいない。
――あの「大盛況」以外のチャイム音って、著作権登録されてるんですか?
「うーん、それはどうだろう? ちょっとわからないなあ」
――いずれにせよ、作曲された稲田さんにしかできないことなので、ぜひお願いします!
「そうですか、わかりました。ちょっと考えて後ほどお送りします」
――ありがとうございます!
……ということで、後日、チャイム音の正式タイトルが送られてきた。
西村様へ
先日は取材ありがとうございました。
メロディーチャイムの命名ですが。長い方のチャイムは「イルミネイション」、短いほうは「まいど」と命名しましたので宜しくお願いします。
稲田康
パナソニック「EC5227WP」チャイムその1
パナソニック「EC5227WP」チャイムその1
決定しました。
短いほうが「まいど」、長い方が「イルミネイション」。
「大盛況」がクラシック風のタイトルだったのに対し、「まいど」は演歌風、「イルミネイション」は完全に80年代のニューミュージック風である。
ということなので、今後、様々な場所でこのチャイムを聞いた時は「あ『まいど』が鳴ってるな」とか「この店は『大盛況』ではなく、あえて『イルミネイション』の方を使ってるのか!」などと、思っていただければ幸いです。
取材できて僥倖でございました
こういった個人の取材は、「ウェブの記事」だと言っても通じないことが多く、取材を断わられることが多いので、最初に送ったメールは半日かけて慎重にしたためたことを思い出した。
正直に告白すると、稲田さんから返事が来たときは小さくガッツポーズしてしまった。
剣道は勝った時にガッツポーズしたら負けらしいけど、これ剣道の試合じゃなくてよかった。