コンビニ呑みのプロが認める名店、スリーエフ万世本店
「秋葉原にすごいコンビニ呑みの穴場があるんですよ。今度そこで忘年会しましょう」
そんな温かい誘いをしてくれたのは、私が2015年に書いた当サイトの記事で、一番登場回数が多かったスズキナオさんである。
大阪から4列シートの夜行バスでやってきたスズキナオさん。
彼が紹介してくれたのは、万世ビルの「スリーエフ万世本店」。スズキナオさんといえば、初登場からして「
しみったれた先輩におごられるツアー」という企画のコンビニ呑みである。
いわばコンビニ呑みのプロともいえるナオさんがすごいというのだから、相当すごいのだろう。これは覚悟して挑まねば。
秋葉原における酒池肉林のシンボルタワー(良い意味で)、万世ビル。
ここの1階がスリーエフ&万世のコラボコンビニ。工場のある6階からエレベーターで万かつサンドが直送されてくるのかな。
セブンでもローソンでもファミマでもなく、スリーエフとのコラボというのがいいじゃないか。
秋葉原の万世ビルにて両雄が夢の共演を果たしたのは2014年の10月。1年以上も前のことなので知っている人は多いだろうし、利用したことがあるという人もたくさんいるだろう。私も何度か買い物くらいはしたことがある。
ただ、「肉」と「便利」という組み合わせのポテンシャルを存分に生かし、イートインスペースで「呑む」という発想はなかった。そうか、ここで呑んでもよかったのか。
24時間フリーという太っ腹な空間は酒が禁止されていないのである(呑んでいいとも書かれてないけど)。逆の意味で「アルコールフリー」だ。
ここが奇跡のフリースペース。テーブルの上には赤ちょうちん、まさに我々のための野良ビアガーデンだ。
この場所が未来永劫に渡って開放されること切に願い、注意書きを肝に銘じて、他のお客様に迷惑や不快感を与えないように、きれいに利用させていただこう。もちろん泥酔も致しません。したこともありません。
さてここから先は、日曜日の昼間とかにテレビでやっている、「ディズニーランド好きの芸能人がコッソリ教えちゃう裏ワザ的な楽しみ方」みたいなノリで読んでいただければ幸いです。
お土産屋みたいな品揃えに感動
まずはこのコンビニに入って酒やらツマミやらを仕入れる訳だが、その前の段階でもう楽しかったりする。
入り口が2か所あるのだが、おすすめは奥側にある道路に面していない方だ。コンビニっぽさがゼロで、まるで観光ホテルのロビーにあるお土産屋みたいなのだ。
まさかここがスリーエフだとは誰も思うまいて。
万かつサンドと並ぶペーパークラフトの戦車。これに万かつサンドが入っている訳ではない。
すぐ横にあるラグジュアリーな謎のロビースペース。ここで呑んだら怒られるだろうか。まあ身分不相応ですな。
そしていざ入店してみると、お土産屋みたいというか、お土産屋そのものなのである。
ソースとかカレーとかの万世オリジナル商品は当然として、オリジナルキャラクターであるモーちゃんとブーちゃんグッズが目白押し。
万世の商品っていろいろあるんですね。
共食いキャラかと思いきや、まさかの草食(中身はあんこ)。
冷蔵庫に貼りたいモーブーマグネット。
友人宅の玄関にそっと置きたいオルゴール。
牛(モーちゃん)と豚(ブーちゃん)の饅頭なのに具があんことか、クオリティの高さにうっかり買いたくなるオルゴールとか、本来の目的を忘れて楽しんでしまった。
もし秋葉原土産が必要ならば、ぜひ寄りたいスポットだ。
万世自慢の食材が待っていた!
閑話休題。そろそろ真面目につまみを探さねばと食品コーナーへと向かえば、やはり心が躍るのは通常のコンビニではまず見かけない、万世からの出向組である。
垂涎の万世コレクションから吟味して、屋外での食べやすさ優先で生ハムをセレクト。
これもうまそうなのだが冷たいと切ない。お願いしたらレジで温めてくれるかな。
見事な国産黒毛和牛にどよめきが起こる。この値段ならいっそ生でも食えるんじゃないか?
このように魅力ある商品だらけだが、この店で絶対に外せないものといえば、名物の万かつサンドである。外でビールを飲みながらカツサンドを食べるなんて最高の贅沢じゃないか。青空じゃなくて寒空の下だけどさ。
それにしてもさすが万世の本丸だけあって、種類がたくさんあるのに驚いた。まさかヒレとかハンバーグのサンドもあるなんて!
なんだかんだで5種類もあるのか。
コンビニのカツサンドの倍くらいする高級サンドを前に、さてどれにしようかと小銭を握りしめて熟考するナオさんと私。普段だったらなかなか買わない値段である。
そこにやってきた編集部の古賀さんが、「なに悩んでるんですか!ナオさんには大変お世話になったんだから全部いきましょう!全部!」と全種類を積み上げた。
これが流行語大賞になった爆買いというやつか。
かつサンドでジェンガでもする気だろうか。右はもう一人の参加メンバーで、
肉豆腐の記事などで大変お世話になったパリッコさん。
そんな感じで通常のコンビニ呑みではありつけないゴージャスなツマミをたっぷりと購入。主に肉である。たまにはこんな日があってもいいよね。
お酒選びもまた楽しい
つまみを選んだところで、酒もほどほどに購入。さすがはフリー酒場併設のコンビニだけあって、酒の種類も潤沢だ。
足りなくなったら何度でも買いに来られるし、いつでもビールが冷えているという安心感が気持ちにゆとりを与えてくれる。ここなら屋外呑みでも宴会中の酒切れにおびえる心配は無いのだ。
別にアル中ではないですよ。
「これが俺の冷蔵庫なんですよ」と、彼の秘密基地に案内してくれナオさん。
「ほほう、キンミヤの飲みきりボトルがあるなんて気が利いてるじゃないの」
「いきものがかり」ならぬ、「のみものがかり」みたいなアー写。
飲み過ぎたらウコンの力にヘパリーゼ、風邪を引いたらルルにカコナールと、アフターフォローもバッチリだぜ。
「コンビニのコーヒーってうまいですよねー」とアイスコーヒーを購入。これがまさかあの伏線になるとは。
店員さんがビシっとした服を着ているのも万世コンビニならでは。まさかこの大量購入客がそこで呑み始めるとは思うまい。
滞在時間は30分近かったかもしれない。
個人的にはたぶんコンビニ最長滞在記録である。
幸せが欲しければカツサンドをたくさん買えばいい
しっかりと重いレジ袋をぶら下げて、お目当てのフリースペースへと移動。こんなに素敵な場所なのに、他に利用者はいないようだ。超ラッキー(たぶん寒いから)。
さあ、万事準備が整ったところで、アウトドアな忘年会のはじまりである。スリーエフ万世本店という最高のハードウェアに対して、俺たちなりの最高のソフトウェアで答えようではないか。
いそいそと席を用意するメンバー。ここが俺たちのオープンカフェ。
とりあえずビール的なもので乾杯。ナオさんの服に「M」のロゴがあるけれど、別にイニシャルじゃないよ。
まずは5種類を完全制覇した万かつサンドシリーズから。誰の誕生日でもないのに、こんな贅沢をしていいのだろうか。
箱の大きさがバラバラなんですね。
全部の蓋を開けると、みんなのテンションがわかりやすく急上昇。そりゃそうだ、万世のカツサンドをコンプリートなのである。
テーブルの上が仮面ライダー大集合みたいになっている。あるいはプリキュアオールスターズ。
目の前には食べ切れない程のカツサンド。広がるソースの香り。冷たく冷えた缶ビール。轟音で通過する頭上の電車。これは夢か。
たぶんこの日のことを全員が一生自慢するんだろうなと勝手に思った。だって万世のカツサンド全種類だよ!
「なんすかここ!秋葉原が好きになりました!」と目を輝かせる古賀さん。
人生で一度の万世カツサンド食べ比べ
それではさっそく5種類のラインナップをじっくりと食べ比べてみようではないか。
ベーシックな「万かつサンド」はロースカツ。キャベツ不要のザ・カツサンドだ。
「おれ、これが大好物で腹いっぱい食べるのが夢だったんすよ~」
カツを2枚挟んだ「弐万かつサンド」はパンの耳あり。こんな贅沢な食べ物が世の中にあったのか!
「ナオくん、まだカツが一枚なの?時代は2枚カツなんだよ」と金持ちの子供風にからかうパリッコさん。
「すごい!カツが柔らかいから2枚でも噛みきれますよ!甘いソースが最高!」と古賀さん。
「すごい発見したかも!ほらほら、二つに割ったらオープンサンド!所得倍増計画!」と私。
続いては「ヒレかつサンド」。素材も調理もちゃんとしているからしっかりとうまい。
「ボリュームヒレかつサンド」は全体が1.5倍のボリュームであり、1切れあたりだと2倍の大きさ!遠足に持っていっても周囲に「一切れちょうだい」と言わせない存在感!
ボリュームひれカツサンドだけおみくじが付いていた。ヒレかつサンドなのにラッキーミートがもも肉で悔しいぞ。
ハンバーグサンドは衣が付いているので、これってメンチかつサンドではとざわついたが、食べてみると確かにハンバーグなのである。
どのサンドも素晴らしく、自分用ならどれがいいとか、友達が怪我で入院したらこれにするとか、初孫に食べさせるならあれにするとか、思いのほか万かつトークに花が咲いた。もう満開である。
ただ中学生ならともかく中年気味の4人に5箱はボリュームがありすぎだ。でも大丈夫。余った分をお持ち帰りしやすいのも箱に入ったカツサンドの長所なのだ。
コンビニ呑み2015年スタイル
このようにカツサンドをつまみに呑んでいたら、1杯目のビールを飲み干したナオさんが、「カツサンドにはコーヒーもいいよね」と、アイスコーヒーを取り出した。
ただし、入れるのは砂糖でもミルクでもなく、キンミヤ焼酎である。
スズキナオ流コンビニ呑みの奥義、焼酎のコーヒー割りが炸裂だ。
「ガムシロップもいいけどね、僕は焼酎派かな」とご機嫌のナオさん。
「ほら、これなら仕事中の昼間に飲んでも後ろめたくないですよ」と力説するナオさんを、なにいってんだとばかりに見つめるパリッコさん。
「こ、これ、私が勤めていた飲み屋で出していたコーヒー焼酎と同じ味ですよ!」と興奮する古賀さん。確かにうまいんですよね、なんだか悔しいけど。
「僕はお茶がいいかなあ。ちょっとそのナカ(焼酎)もらっていいですか?」と、ホットのお茶に焼酎を注ぐパリッコさん。そんな二人は「
酒の穴」というユニットをはじめたそうです。
だいぶ昔に「孤独のグルメ」というマンガを読んで、下戸の主人公が秋葉原の公園で万かつサンドを食べながら缶コーヒーを飲む姿に憧れたことを思い出した。
俺流コンビニクッキング
このあたりで温かいつまみが欲しくなったので、私からコンビニクッキングのご提案をさせていただこう。
辛いタイプのカップスープを買ってきて、そこに万世のソーセージを入れましてですね、レジ横のポットからお湯を注いで作る、ちょっとリッチなソーセージスープなんてどうでしょう。
ほら、「カップスープ+追加の具」という組み合わせなら、いくらでも展開がありそうでしょ?
温めないと食べられないものを、どうやって温めるかがアウトドアクッキングにおける永遠の課題である。
しかしコンビニなら必ずあるポットのお湯を使うことで、火を起こして怒られることもなく、なんなく暖を取ることに成功。これぞアーバンスタイルアウトドアクッキング。
ちょっと芯がぬるいけど、寒空の下では十分うれしい温もりなんだな。
みんなもレッツコンビニクッキング!(怒られない範囲で)
「ちょっと~、これ以上私を泣かさないでくださいよ~」と古賀さん。
チキンラーメンに生卵を入れるのが常識なら、こんなのだってありのはずだ。
次はカップうどんにあの黒毛和牛の薄切りを入れて、超豪華な肉うどんなんていうのもやってみたい。
そう、お湯さえあれば僕たちの可能性は無限大だ。夢はなくてもお湯はある。
最高のコンビニ呑みでした
それにしてもこのコンビニは最高の場所だ。きれいなトイレがあるのもうれしい。万人におすすめできるかと言われたら人を選ぶよと答えますが。
なにごとだろうこっちをチラ見していく通行人と、数分おきに頭上を通るやかましい電車は、この場所だからこそのスパイス。
ちなみにBGMとして、キャッチャーなんだけど誰も聞いたことのないという、UKロックっぽい曲がずっと流れていた。ちょうど良い選曲。
電車の音で会話がさえぎられることも多々あるが、さえぎられて困るような会話はしていない。
なんとテレビまであるのだが、ついついその下の店舗紹介映像の方を見てしまう。
すぐそこでは手品みたいなラーメンがずっと上下していた。がんばれ透明人間。
うっかり3人で買い出しにいってしまうと、残された人がとても寂しそうに見えておかしい。
生ハムをつまみながら「近所の人はここのありがたさをわかっているの!最高なんだよ!」と力説する古賀さん。
すぐ横はリーズナブルな立ち飲み屋だし、ビルの地下には「大人のドリンクバー」を謳う30分390円の店もあるんだけど、この寒さが今日の俺には居心地いいんですよ。へっくしょん。
さっきからうつむいて足元を気にしているパリッコさん。なにやってんの?
イスの前脚2本だけで支えながら呑むという一人遊びをやっているらしい。うまいこと段差があってバランスがとれるんだそうだ。
ちょっと自慢げなパリッコさんと、真剣に感心してやり方を教わるナオさん。お酒を飲みながらも中2の魂は忘れない。いやこれは小4くらいか。
絶妙なバランスで成り立つ3人の関係。物理的に。※危ないからマネしないでください。
こうして秋葉原の夜は更けていった。
ということで、2016年もよろしくお願いいたします。
すぐそこにはメイドが呼び込みをする電気街。どっちが現実なんだろう。
一人になった帰り道、パリッコさん、ナオさん、そして私で、もし「ズッコケ三人組」の実写をやるとしたら、誰が誰の役をやるだろうかと、ずっと考えていた。
きっとそのうちやるであろうこの場所での新年会では、時間を忘れてダラダラと飲んで、静かになった電車の音で終電がもうないことにようやく気が付き、デヘヘとだらしなく笑っていたい。でもきっと終電で帰るけどね。
万世ビルの道路の向こうには、万かつサンドを食べながら「電車でGO!」ができる店もあったよ。
冬コミの告知します
大晦日におこなわれる冬コミ三日目に新作「趣味の製麺 第4号」を持って参加します。ブースは「東5ホール”へ”01a 私的標本」です。よかったらきてね。