終点の方向転換にバスが回転する
バスは、終点で折り返し運転をするばあい、方向転換をしなければいけないが、バスを回転させるための場所が狭かったり、方向転換するための道路がない場合「ターンテーブル」が設置されている場所がある。
バスのターンテーブルは、目白や竹ノ塚、高尾など東京都内にいくつかあるのだが、南善福寺のターンテーブルは、バス車内に客を乗せたままターンテーブルで回転する。
つまり、バス停留所で、バスに乗ったまま遊園地のコーヒーカップ気分が味わえるわけである。
これはなかなか味わえないスペシャル感である。ぜひとも体験しておきたいので、荻窪駅に向かう。
関東バス「荻36 南善福寺行き」
終点にターンテーブルのあるバス路線は荻窪駅発の関東バス荻36、南善福寺行きバスである。
荻36は、本数が多い
本数はやたらある
荻36は、日中は10分間隔でバスが出ており、土日でも同じぐらい本数があるため、いつ行っても必ず乗れる。
青梅街道を西に向かって進む
でかい神社の横を右折すると……
荻36は、始発から終点の南善福寺まで15分ほどである。荻窪駅で満席であった乗客は、ポツリポツリと降りて行き、終点の南善福寺にはぼくと女性がひとりだけ乗っていた。
終点だ!
静かな住宅街の中に、回転するバス停はあった。
子供の頃、車に乗ったままガソリンスタンドの洗車機で洗車してもらうのが好きだったのだが、あのワクワクに近いものがある。
高まる期待!
バスが横に動いてるー
あの丸いのがターンテーブルだ
バスがターンテーブルに乗る
バスはゆっくりと転車台の上に乗り、停車する。
すると、ガコン。と軽い振動があったと思うと、バスがおもむろにまわりはじめた。
おぉー動いてるー
外からみるとこんな感じである
30秒ほどでバスは回転し終わる。ちなみに、客を乗せたまま回転するのは、事故防止のためらしい。
回転が終わると、バスに乗っている乗客は下車し、バスは行き先が「荻窪駅」にかわり、客扱いを始める。
なんてことはない日常の風景であるが、バスが回転する部分に関しては日常とは言いがたい。
はい、回転完了。
客を乗せたままターンテーブルを回るバスは愛媛の松山にもあるらしいが、関東近郊ではここだけのはずだ。(たぶん)
バスの上にある四角い箱からひもが垂れ下がっており、それを引っ張ると、ターンテーブルが回転をはじめる
ターンテーブルの動きは、エンジンの振動がない、モーター的な動きであるため、動きがなめらかで、ここちがいい。
ターンテーブルの、のりごこちなど、誰からも求められてない情報かもしれないが、南善福寺のターンテーブルのここちよさを後世へ文字情報として残すため、ここに書き記しておきたいと思う。
終点停留所の最果て感
南善福寺の停留所は、住宅街の中にあるといっても、バスの終点停留所にありがちな最果て感がある。
バス停のまわりはアパートや一軒家などが立ち並んでいる
かなりデカイ鉄塔。音がすごい
停留所の後ろにある巨大な鉄塔は、「ジジジジジ……」と、かなりデカイ音が鳴っていた。
いい最果てだ。
航空写真で見ると、住宅地に覆いかぶさるように送電線が渡されているのがわかる。
このあたり、昔は一面の田畑だったところを、住宅地として開発されたのではないか?
昔の航空写真を見てみる。
やはり周りは畑だらけだ(矢印は停留所) (国土地理院「地図・空中写真閲覧サービス」より・整理番号・MKT636/コース番号・C6/写真番号・4/撮影年月日・1963/06/26(昭38))
1963年の航空写真だと、バスの停まっている停留所らしき敷地は広く、ターンテーブルもないように見える。
停留所の話とはあまり関係ないけれど、停留所の南側は練馬区、杉並区と武蔵野市の境目になっており、写真の南側は武蔵野市になるのだが、武蔵野市側は庭の広い一軒家がすでに立ち並んでいるのに比べ、杉並区側は農地が広がっているのがおもしろい。用途地域に違いがあったのだろうか?
さて、時代をいっきにすすめ、1984年の航空写真をみてみる。
農地は消えた (国土地理院「地図・空中写真閲覧サービス」より・整理番号・CKT843/コース番号・C9/写真番号・13/撮影年月日・1984/10/31(昭59))
停留所の敷地の半分は、アパートになった。そしてこの頃にはすでにターンテーブル状のものも見える。鉄塔も存在する。
ターンテーブルは、周囲の宅地化に合わせて停留所の敷地が狭くなり、設置されたようである。
バスは昔から回転していた
ターンテーブルに乗って回転するのは、今や糖質制限ダイエットに成功したひとばかりといったありさまだ。
しかし、バスは、糖質制限ダイエットが流行するずっとまえからターンテーブルの上で回っていたことも、心の隅に留めておいていただきたい。