ハロウィンの仮装で本(ブックカバー)を作った
ことの発端はこの記事だ。
地味な仮装のハロウィンパーティー用に作った紀伊國屋書店のでかいブックカバー。これを息子の太郎が着て、友達と一緒にハロウィンイベントに参加したという記事だったのだが、記事の最後にこう書いたのだ。
書いてるね「差し上げます」と。
ほんとに冗談のつもりで「ご連絡いただければ差し上げます」と書いた。
まさか、こんなふざけた記事に、昭和二年創業の老舗書店であり、大企業である紀伊國屋書店が公式に反応するわけはないよな。と、ナメてかかってた。
が、メールが来た。
うぁー、ほんとにきた!
うわ、ほんとにきた。ほんとにきたぞこれっ。
しかも、紀伊國屋書店さん(以降さん付けになります)は、巨大ブックカバー譲渡式を行ってくれるという。
譲渡式。なんだそれ、聞いたことないけど式っていうぐらいだからセレモニーだな多分。
うっわー、えらいことになってきた。
譲渡式は、紀伊國屋書店新宿本店の一階のイベントスペースで大々的に挙行していただけるとのこと。こちらのボケに全力で乗っかってくる紀伊國屋書店さん。けっこう肝の据わったところあるな、この会社。
ただ、ぼく一人で譲渡式に向かうのは心もとないので、息子の太郎と、友達のすばるくんにも来てもらうことにした。
当日、新宿に向かうべく、三人は地下鉄に乗り込んだ。
ブックカバーの方が息子の太郎で、サンタ姿の方がすばるくんです、すばるくんがなぜサンタのかっこうなのかは
前の記事をご確認ください
あの記事のメインであった息子と友達こそがセレモニーに出る資格があるのではないかと思うので来てもらった。
紀伊國屋書店さんに引き渡すためのブックカバーを新宿まで持って行くという重要任務であるが、電車の中ではゲームをしていた。
すばるくんは、このためにわざわざおしりが破けていないサンタ服を買ったとのこと、なんか無駄な出費をさせてしまってすまん!
新宿につきました
意味のわからなさは負けてねえぞ
気に……なりますよね……すみません
しかし、ブックカバー(でかい)、サンタ、タキシードである。前も思ったけど、本当に意味がわからない。そりゃおっさんも振り向くと思う。
『オズの魔法使い』の、ブリキ人形、かかし、ライオンも「なんでその三つなの?」という脈略のなさはあるけれど、こっちも負けてねえぞという意気込みだけはある。
ライオンと記念写真!
ふだん、子供たちと一緒に新宿になんてめったに来ない。
子供たちと新宿にやってきたという、それだけでもボルテージが高まっているところにライオンの像である、たまらず記念写真を撮ってしまった。
妙な踊りを踊り始めるすばるくん。メーターふりきっちゃってるよね
羽生結弦に勝ったぞ!
つきました、紀伊國屋書店新宿本店!
今回、譲渡式を仕切って下さった紀伊國屋書店新宿本店店長の西 根さん
紀伊國屋書店一階の靖国通りに面した広場にこれから会場を設営し、譲渡式を行ったあと、巨大ブックカバーは、次の日から店のショーケースに展示してくださるという。
ここのショーケースにブックカバーを展示してくださるらしい
ショーケースには、おばさま方に絶大な人気を誇る羽生結弦氏の写真集などが展示してあるが、これを撤去して、ぼくのブックカバーを展示してくれるという。
ソチ五輪金メダリストを押しのけて、ぼくの冗談が展示される。金メダルに勝ちました! 感無量です!
後日、ホントに飾られてました
うわー、本気だ!
このステージを見て、やっと事態が飲み込めたような気がした。紀伊國屋書店さんは本気だ。
なんで後ろにハゲたおっさんの絵があるんだろう? と思ったところ、どうやらこれは紀伊國屋書店創業者の田辺茂一氏のイラストであることが判明。 すみません!
わざわざ経緯をパネルにまとめてくださった。紀伊國屋書店さんの配慮の細かさ!
社長命令だった
さて、ついにセレモニーが始まる時刻になった。
はじまったぞー
この譲渡式の様子は、紀伊國屋書店さんの公式You Tubeチャンネルと、ニコニコ動画で公開されているのでぜひご覧頂きたい。
西根さんによると、ぼくのあの記事は、紀伊國屋書店社内で大変な話題となり、その話は高井昌史社長まで届き「記事の最後のお譲りいただけるとの申し出をあたたかくお受けするように、さらに、記事の最後で写ってた紀伊國屋書店新宿本店で譲渡式を行うように」と、社長直々の指示であったらしい。
ひーっ!
動画を見ていただけるとわかるが、このクダリを聞いているぼくは、恐縮の塊となって、ただただ頭を下げているのみである。
恐縮しかない
ふざけて投げた変化球を、紀伊國屋書店さんに、きもちいいぐらいにしっかり打ち返されたような話である。
紀伊國屋書店創業者の田辺茂一氏は、粋でかつ茶目っ気のある人物であったらしく、立川談志とのエピソード(※)などは伝説的でもあるのだが、その精神がしっかりと受け継がれてるのではないか。
※
田辺茂一氏のウィキペディアが大変おもしろいのでぜひご覧頂きたい。
紀伊國屋書店さんが他の書店とちょっと違うというのは、こういうところなのかもしれない。
ブックカバーは英文学者のデザイン
さて、いよいよブックカバーの譲渡……の前に、感謝状と記念品を頂いた。
感謝状と記念品を頂いた
ちなみに、この譲渡式を行うにあたり、西根さんが紀伊國屋書店の社史をひもといたところ、このブックカバーは田辺茂一社長の友人であった英文学者の古沢安二郎氏が、世界最大と言われる大学出版社のオックスフォード出版社のシンボルマークをモデルにデザインしたもので、戦前から変わらず使われ続けているらしい。
オックスフォード出版社のシンボルマーク
そして、いよいよブックカバーの譲渡。紀伊國屋書店新宿本店店長がこのブックカバーを装着して譲渡完了である。
譲渡完了
娘を嫁にやる。というのはこういう気持ちなのだろうか? いや、もともと紀伊國屋書店のブックカバーなんだから、帰るべきところに帰ったというべきか。
いずれにせよ、紀伊國屋書店さんは、このブックカバーを、イベントのときにぜひ使わせていただきますとおっしゃっていたので、大切にしていただけるだろう。
もともと、こちらが勝手に作ったもので、デカデカと「紀伊國屋書店」の文字が入っているものを、家で保管するのは邪魔だからと捨ててしまう、というのはある意味、「捨てられたくなかったら引き取れ」という逆の脅迫に近いものがあった気もするが、紀伊國屋書店さんは譲渡式という形で答えてくださった、よかった。
好きな本を選んでいい!
セレモニーも無事に終了し、いただいた記念品を見ると……なんと商品券が入っていた!
せっかくなので、商品券をもらった今、それぞれが好きな本を1冊選んで購入した。
えー! こんなにも!
左から広辞苑、絵の描き方の本、子供向けドキュメンタリーの読み物
広辞苑、第2版から5版までは持っていたのだが、最新版は持ってなかったのだ。この機会に購入できてほんとによかった。
いつまで付き合ってくれるだろうか?
えらい人まで届いて、感謝状のみならず、記念品までいただけた。
紀伊國屋書店さんの懐の深さには本当に恐れ入ってしまった。
それに加えて、思いつきみたいな仮装に付き合ってくれた子供たちにも感謝したい。
このイベントのあと、息子はどうしても野球やりたいというので、地元の少年野球チームに入団した。
ぼく自身は1ミリもやりたいなんて思ったことなかった野球を、息子は自らやりたいと言い出した。もう10歳だもんな。成長したな……と、感心してしまった。
その一方、少年野球なんか始めたら、もうお父さんとはあんまり遊んでくれなくなるだろうな。と、子供の成長にすこし寂しさも感じてしまった。