特集 2015年12月5日

とっても小さなイカを釣る遊び

この写真だと大きく見えますが、たった10センチの小さなイカを釣ってきました。
この写真だと大きく見えますが、たった10センチの小さなイカを釣ってきました。
千葉に住む釣り好きの友人達が、最近小さなイカを釣ることにハマっている。ヒイカと呼ばれるそのイカは、全長10センチ程でホタルイカより一回り大きいくらいらしい。正式名称はジンドウイカ。

あまり馴染みのないイカだが、日本中に広く分布しているらしく、こんな場所にイカなんていないだろうという場所でも釣れてしまうそうだ。
趣味は食材採取とそれを使った冒険スペクタクル料理。週に一度はなにかを捕まえて食べるようにしている。最近は製麺機を使った麺作りが趣味。(動画インタビュー)

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その辺の港でイカが釣れるらしい

釣りにはいろいろな楽しみ方がある。人里離れた秘境へ出向いて巨大魚や幻の魚を狙うのもロマンだが、あえて魚なんていないだろうっていう都市部で釣り上げるのもまたロマン。そして今回は後者である。

多くのイカが船に乗ったり、都心から遠く離れたきれいな海までいかないと釣れないのに対して、ヒイカを釣るのは千葉県袖ヶ浦市の堤防。東京湾の岸壁である。

今日はたまたまこの場所だが、別にここじゃなきゃ釣れないという訳では全然なく、日本中にいるイカなので、お台場とかでも狙えるのだとか。
これはヤリイカ。船から水深120メートルとかを狙う。
これはヤリイカ。船から水深120メートルとかを狙う。
おなじみのスルメイカも船に乗らないと釣れない。
おなじみのスルメイカも船に乗らないと釣れない。
防波堤から釣れるイカといえばアオリイカ。だが僕の腕前だと離島とかいかないと釣れない。
防波堤から釣れるイカといえばアオリイカ。だが僕の腕前だと離島とかいかないと釣れない。
この丸いのはシャコをエサにして釣ったスミイカ(コウイカ)。
この丸いのはシャコをエサにして釣ったスミイカ(コウイカ)。
春になると釣れる小型のマルイカ。ヒイカはこれよりもさらに小さいらしい。
春になると釣れる小型のマルイカ。ヒイカはこれよりもさらに小さいらしい。
富山湾で捕まえたホタルイカ。さすがにこれは釣れないので網ですくった。
富山湾で捕まえたホタルイカ。さすがにこれは釣れないので網ですくった。
以上、今までに釣ったり捕まえたりしたイカのコレクションでした。

ヒイカはホタルイカよりも一回り大きい程度で、釣り方はアオリイカ狙いの超小型版なのだとか。といっても釣りをしない人にはピンとこないかな。イカ釣り界の東武ワールドスクウェアといえば伝わるだろうか。

とかいって、正直まだ私も全然イメージがわかない釣りなのだが、それが楽しそうなことだけは確かだ。とりあえずわかる範囲で道具を揃えて、友人と待ち合わせた釣り場へと向かった。

夜に光でおびき寄せて釣るらしい

友人に指定された集合時間は夜8時。なんでもヒイカは夜行性で光に集まってくる性質なので、ライトで水面を照らして釣るそうだ。なんだか夏の虫取りみたいである。
コンビニでクジを引いたらビールが当たったので今日は釣れる気がする。
コンビニでクジを引いたらビールが当たったので今日は釣れる気がする。
釣り場は周囲に工場しかないような堤防で、魚は少しくらい釣れるかもしれないけれど、イカが泳いでいるとはとても思えない。

それでもすでに先客が何組か来ており、水面を照らしてイカを狙っている。私がこの辺で釣っていた10年前は、こんな釣り方は誰もやってなかったような気がする。あるいは知らなかっただけだろうか。
こんな工場地帯の海でイカを釣るんですってよ。
こんな工場地帯の海でイカを釣るんですってよ。
友人が用意してくれた自作の灯光器。常夜灯があればその周りで釣れるそうです。
友人が用意してくれた自作の灯光器。常夜灯があればその周りで釣れるそうです。

ヒイカ釣りの仕掛け

狙うイカがマイクロサイズなので、使う仕掛けもやっぱり小さい。エサ代わりになるルアー(イカ釣り用はエギと呼ばれる)は、一般的なアオリイカ用の半分以下。まるで子供のオモチャだ。

これを超細い糸の先につけて海底付近まで沈めて泳がすと、エビか小魚かなんかだと思ったヒイカが抱き着いてくるのだ。
下がヒイカ用の小さなエギ。ガンダムでいったらSDサイズ。
下がヒイカ用の小さなエギ。ガンダムでいったらSDサイズ。
エギだけでもいいのだが、友人がすすめるスッテというルアーを上に付けた仕掛けにしてみた。糸が細すぎて見えないので黒くしました。
エギだけでもいいのだが、友人がすすめるスッテというルアーを上に付けた仕掛けにしてみた。糸が細すぎて見えないので黒くしました。
ちなみにスッテは「おっぱいスッテ」とやらをセレクト。触れば解るソフトな抱き心地というコピーがずるい。
ちなみにスッテは「おっぱいスッテ」とやらをセレクト。触れば解るソフトな抱き心地というコピーがずるい。
ちなみにこれらの仕掛けや釣り場に関しては、教えてくれた友人も去年始めたばかりで特別詳しいという訳ではないので、参考程度ということで。

生きた小エビをエサにしたり、何個もスッテを組み合わせたりと、いろんな流儀があるらしいよ。
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友人がヒイカをまずゲット!

一緒に竿を出す友人のPさん(ぴーぴーの釣り日記の管理人)、そしてKさんの話だと、去年の良い時期なら一晩で10匹くらい釣れたそうだが、今年はまだヒイカの顔を見られれば御の字くらいの状況で目標はとりあえず1匹らしい。

去年始めたばかりなので、時期も場所も釣り方もデータ不足だよと笑っているが、迷いながら釣るくらいの頃が一番楽しかったりするよね。

もちろん釣りたいターゲットはヒイカだけど、なにも釣れないと寂しいので、一応アナゴ狙いで投げ竿も用意してみた。釣りに行くと、とりあえずいろいろやってみたくなるタイプなのだ。
手首くらい太いアナゴが釣れないかなー。白焼きで食べたいなー。
手首くらい太いアナゴが釣れないかなー。白焼きで食べたいなー。
なんて欲張ってアナゴ釣りの準備をしていたら、さっそくPさんが早くもヒイカを釣り上げた。

あわあわあわ。
「ノルマ達成!アナゴよりも早くイカの竿を出した方がいいですよ」
「ノルマ達成!アナゴよりも早くイカの竿を出した方がいいですよ」
うわー、小さい。

ヒイカが小さいというのは知識として知っていたのだが、実際に見ると精巧なミニチュアのようだ。小さくて驚く。

それでもこれはヒイカの中では大きい方らしく、「今日のヒイカはでかいねー!」「今シーズン最大サイズじゃない?」と、友人達は大きくて驚いていた。

ちなみにこれでも子供のイカじゃなくて、立派な大人なのである。
こんな小さなイカが、ちゃんとエギで釣れるのか。
こんな小さなイカが、ちゃんとエギで釣れるのか。

俺もヒイカを釣ってやる!

よし、きっと今がチャンスタイム。いわゆる「時合い」というやつだ。

こうなれば呑気にアナゴを狙っている場合ではない。いやアナゴも食べたいが。とにかく大急ぎでイカ用の竿を用意して、灯光器が照らすエリアにエギとスッテのミックス仕掛けを投げ入れる。
最初の一投って緊張しますよね。
最初の一投って緊張しますよね。
ヒュルルル、ポチャン。

あ……。

ヘッドライトの明かりを頼りに細い糸を結んだせいか、いきなりスッテが外れてしまった。

30年以上釣りをしているけれど、いまだに糸がちゃんと結べない自分に驚く。まあよくあることなんだけどさ。
海面に浮かんだスッテを網で保護してもらいました。恥ずかしい。
海面に浮かんだスッテを網で保護してもらいました。恥ずかしい。
そんな感じでモタモタしているうちに、もう一人のKさんも見事にヒイカをゲット。

これまたマイクロサイズなのだが、やっぱり「いやー、今日はでかいなー!」「こんな大きいの釣ったことないよ!」と、謎の盛り上がり方をしている。

なんだこのイカ釣りのアナザーワールドは。
大きめの握りずし一貫分くらいの大きさです。
大きめの握りずし一貫分くらいの大きさです。
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どうにか一匹釣りました

せっかくここまで来たので私も一匹くらいは釣らねばと焦るのだが、この日は海側から吹く風がかなり強く、なかなか釣りづらい状況となっている。

それでも遠投してから寄せてきたり、ライトの真下でピョコピョコ動かしてみたり、光の明暗部を狙ってみたりと、思いつく限りの戦略を試し続ける。

しばらくしてPさんは遠投して暗い場所で、Kさんはすぐそこの明るい場所で、それぞれ2匹目を釣り上げた。一体正解はどこなんだ。
ヒイカが光に集まるとはいえ、どのくらい明るい場所を狙うべきか迷うんですよ。
ヒイカが光に集まるとはいえ、どのくらい明るい場所を狙うべきか迷うんですよ。
糸が風で煽られてうまく底がとれないので、金具をぶら下げてエギを無理矢理重くしてみた。
糸が風で煽られてうまく底がとれないので、金具をぶら下げてエギを無理矢理重くしてみた。
風はだんだんと強くなり、そろそろ雨も降るんじゃないかという頃、一瞬なにかがエギだかスッテだかに触ったような気配を察知。だが竿を上げるが掛かってはいない。

そこで5秒ほど待ってからもう一度持ち上げてあわせてみると、今度はハッキリとした重さを感じた。よし、乗った!

軽いんだけどちゃんと僅かにプラスされた重量感が伝わってくる。元の仕掛けが軽いからこそ分かる重さだ。

ドキドキしながら一定速度でリールを巻くと、海面から小さなイカが上がってきた!
釣れた!やっぱり小さい!でもナイスサイズ!
釣れた!やっぱり小さい!でもナイスサイズ!
ヒイカはおっぱいスッテに掛かっていた。なるほどやっぱり。

ようやくヒイカを釣り上げて、一人だけ解けなかった問題の答えがようやくわかったような爽快感。俺のポケットモンスター、ゲットである。

いやー、うれしいなー。
ライトに照らされた透き通るヒイカの地球外生物っぽさ。
ライトに照らされた透き通るヒイカの地球外生物っぽさ。
小さいけれど、とってもイカらしい姿をしているのだ。
小さいけれど、とってもイカらしい姿をしているのだ。
釣れたヒイカを手に乗っけてみたら、吸盤の吸いつく力は強いし、黒い歯でか噛みついてくるし、小さいながらもなかなかワイルドなやつだった。
意外と悪そうな面構えをしている。
意外と悪そうな面構えをしている。
寒空の下で味わう友人がくれたホットコーヒー。
寒空の下で味わう友人がくれたホットコーヒー。
このあとすぐに雨が降ってきてしまったこともあり、私の釣果はこの1匹のみで終了。

初挑戦のヒイカ釣りだったが、細い糸と小さいルアーでちっこいイカを釣るという箱庭っぽさが、チマチマしていてとっても楽しかった。

なんとなく釣り方もわかったので、次は風のない日に再チャレンジしたいと思う。今度はもっと小さいのを釣ってみたいかな。
せっかく来たんだからと友人が貴重なイカをくれたので、お持ち帰りは5匹。ありがたや。
せっかく来たんだからと友人が貴重なイカをくれたので、お持ち帰りは5匹。ありがたや。
そういえば投げておいた竿には、小さなアナゴが掛かっていた。
そういえば投げておいた竿には、小さなアナゴが掛かっていた。

新鮮なヒイカ、最高にうまいです

さて釣ってきたヒイカだが、新鮮なうちに皮ごと刺身にしてみたところ、これが絶品だった。

今までに釣りたてのイカをいろいろ食べてきたが、その中でも屈指の旨さといえるだろう。小さな体には繊細な甘みが秘められていたのだ。

身には意外と張りと歯ごたえがあって、これが子供ではなくれっきとした成魚であることを物語る。ちなみに肝はほとんどなく、塩辛には向かないようだ。
皮の模様がまだ点滅しているくらい新鮮なヒイカの刺身。
皮の模様がまだ点滅しているくらい新鮮なヒイカの刺身。
ゲソ部分はサッと茹でて食べたのだが、程よい弾力でこれまた美味。

あとの3匹は小麦粉をまぶして丸ごとバター焼きにしてみたのだが、こちらもやっぱり最高だった。どう料理してもうまいイカなのだろう。
火を通しても柔らかくてうまいんですよ。
火を通しても柔らかくてうまいんですよ。
この小さな体に旨味がギュッと詰まった感じが素晴らしい。小振りなミカンの皮をむいて丸ごと一口で食べるような充実感が味わえる。

文句があるとしたら量が少ないことくらいだ。いやでもこの少なさがいいのかな。

ヒイカは買うと安いです

後日、海のない埼玉県内のスーパーでヒイカを発見。ちょうど大人3人でがんばった釣果くらいが入ったパックが212円だった。安い。できたら超高級イカであってほしかった。

スーパーで売っていたヒイカも、焼いて食べたらちゃんとうまかった。違うのは少しの鮮度の差と、手に入れるまでの物語。やっぱりわざわざ釣りたいんですよ。
うまいイカなので新鮮なのを見かけたら買ってみてください。とびきり新鮮がよければ釣ってください。
うまいイカなので新鮮なのを見かけたら買ってみてください。とびきり新鮮がよければ釣ってください。
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