8,964円の枕崎鰹節の本枯れ節
猫まんまの予算は1万円。まずは一番高級な鰹節を買ってやろうと『鰹節 高級』とネットで検索するが、1本2,000円程度のものばかり。
これでは今の私には安すぎるのだよとさらに調べて、枕崎水産加工業協同組合の『枕崎鰹節の本枯れ節』に決定。そのお値段は2本セットで8,964円(代引き手数料含む)。
8,964円の枕崎鰹節である。1986年のマリリン(本田美奈子のヒット曲)みたいだ。さらにちょっと良い米と醤油を用意して、しめて材料費1万円也。
いつもは最安値を調べるために使う検索機能を、最高級品を探すために使うという人生初の贅沢をしました。
はるばる枕崎から届いた鰹節。
箱の中からはさらに箱!マトリョーシカ!
暗記したい説明書き。カビという文字が頼もしく読める数少ない食材だ。
写真の上が背側の男節、下が腹側の女節。
625グラム(ビニール込み)で8964円。1グラムあたり14円くらいか。
乾物屋だったらそのままゴロンと売られている鰹節だが、さすがは8964円の値段をつける枕崎の本枯れ節である。
開封するまでの道のりが長く、そしてワクワクしっぱなし。もうすでに買ってよかったと心から思っている。
久しぶりに鰹節を削る
鰹節は男節と女節の2本。猫まんまに使うのであれば脂分の多い腹側がよいだろうと女節をセレクト。
鰹節に同封されていた削り方マニュアルを確認し、数年間使われていたかった削り器を取り出す。刃が錆びていなくてよかった。
さあ削ってやるぜと袋を破ったら、さらにもう1枚ビニールが被っていた。さすがである。
ビニール袋の中からビニール。『宮尾すすむと日本の社長』というバンドを思い出した。
鰹節に密着した最後の封印を破り、その匂いを嗅いでみると、「とっても手間が掛かっているんだぞ」っていう説得力のある香りがした。
いつも使っている安いパックのものと嗅ぎ比べてみると、良い意味でしっかりと枯れている感じ。これが本枯れ節の香りなのか。
バナナじゃないですよ。
女節を包むビニール袋をすべて剥ぎ取り、両手でしっかりと握りしめて、削り器の刃に押し当てて、乾いた鰹節が少しずつ削れていく手ごたえを楽しむ。
さすがは枕崎の本枯れ節、握り心地も削る手ごたえも最高だ。
カシュカシュカシュ(楽しい)。
大理石のような艶のある断面。本当にこれが魚なのか。
削り器の引き出しを開けると、フワフワっと漂ってくる削りたての鰹節の香り。削る前がつぼみの状態だとすると、削ることで香りの花が開花した。
これこれこれ、この香りですよ。
鰹節を削るのは久しぶりだったが、どうにかちゃんと削れてくれた。
高級猫まんま、最高だよ
猫まんまのもう一方の主役であるご飯は、千葉県産の新米を土鍋で炊いたもの。水はスーパーで汲んでくる逆浸透膜システム濾過水、唯一の調味料である醤油は開封したての丸大豆醤油。
これらは最高級の鰹節に対して格が落ちるかもしれないが、まだ我が人生は続いていくのだ。猫まんまに対する米、水、醤油へのこだわりは、今後の伸びしろとして残しておこう。
ちょうどジャパネットで高級炊飯器に佐渡のお米をオマケしていたので、うっかり買いそうになったが今回は我慢。
炊き立てのご飯を茶碗によそい、削りたての鰹節を14グラム乗せて、開封したての新鮮な醤油を掛けたらできあがり。
鰹節、醤油、新米の香りが立体的になって漂ってきた。
ある意味、カツオ丼である。
鰹節の存在を知らなければ、木の削りかすにしか見えないだろうな。
猫まんま、食べます!
うめえっす!
素晴らしいね、この猫まんま。鰹節の旨味がすごいので、醤油を多めに掛けても全然味が負けない。どこまでも醤油を抱きしめる鰹節の奥深さ。もちろんご飯との相性は最高だ。
ほったらかしていた鰹節削り器をまた使うきっかけにもなったし、やっぱり買ってよかった。
他の料理は想像だけでいいかもしれない
今回は猫まんまにしたけれど、これだけの鰹節であれば、どんな料理に使ってもツーランク上の味になるだろう。
絶対にうまいという確信があるで、もう想像だけで楽しめる。いや想像だけで十分だ。さあ一緒に想像しましょう。
豆腐におろししょうがを乗せ、そこにたっぷりと鰹節を掛けた冷奴。絹ごしでも木綿でも。
茹でたてのうどんを冷水でしっかりと締め、どっさりと青ネギと鰹節を掛けて生醤油でいただくぶっかけうどん。
昆布と鰹節でとった出汁を掛けていただく、時鮭と揉み海苔の出汁茶漬けに本山葵を添えて。
手に乗せた鰹節を夢中になって食べている、ちっとも懐いてくれなかった実家の猫のザラザラした舌。
このように8,964円の鰹節を買ったわけだが、もちろん1回で食べ切るようなものではない。1食あたり15グラムと考えれば40回分、各200円程度なので、実はそこまで高ものでもないのかなというい気もする。まあ次に買うのは1本2,000円以下のになると思うけど、今後も塊の鰹節を積極的に削っていこうと思う。
こういう記事を書いた上で、木の削りかすを乗せたニセ猫まんまを誰かに食べさせてみたいという気もしているので、僕に「高い鰹節食べてみない?」と言われたら気を付けてください。