特集 2015年8月24日

食べられる雑草の最高峰「スベリヒユ」

このスベリヒユという雑草、食べられるらしいですよ。
このスベリヒユという雑草、食べられるらしいですよ。
友人から「スベリヒユ」という雑草が食べられるという話を聞いた。それは聞いたことの無い名前だが、見覚えはある雑草だった。

試しに料理してみたのだが、収穫の容易さ、下ごしらえの手間の無さ、そして肝心の味の良さ、すべての面で雑草としては最高峰かもしれない。

ただし、好き嫌いのある味かもしれません。
趣味は食材採取とそれを使った冒険スペクタクル料理。週に一度はなにかを捕まえて食べるようにしている。最近は製麺機を使った麺作りが趣味。(動画インタビュー)

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スベリヒユという雑草がうまいらしい

7月に佐渡島を旅行している時に、友人から「現代人はスベリヒユを食べるべきだ!タダだよ!タダ!」という話を聞いた。

まったく聞いたことのない名前の草だが、その辺の畑にいくと、雑草としてモリモリ生えていて、なかなかうまいらしいのだ。

ただ佐渡の人は畑に植えた野菜を食べるので、勝手に生えてくるスベリヒユには見向きもしないそうだが。
「スベリヒユ、食わないとだめだって!」と熱く語る友人。手に持っているのは鶏肉。
「スベリヒユ、食わないとだめだって!」と熱く語る友人。手に持っているのは鶏肉。
なんでも、なんやかんや体に良いと評判のω-3脂肪酸(オメガスリーシボウサン)を含んでいるらしく、トルコやギリシャなどでは一般的な食材とのこと。

健康面での話はまあ置いておいても、その辺に生えている雑草がおいしく食べられるというのは興味深い話なので、ちょっと試してみることにした。
こちらは友人にスベリヒユを教えた仙人みたいな方。釜で作っているのは塩。
こちらは友人にスベリヒユを教えた仙人みたいな方。釜で作っているのは塩。

モリモリと生えているスベリヒユ

スベリヒユの話を滞在先のおかあさんに話したところ、それなら畑にいくらでも生えているから、全部持って行ってくれといわれた。
家の近くでやっている家庭菜園の畑に、山ほど生えているらしい。
家の近くでやっている家庭菜園の畑に、山ほど生えているらしい。
おかあさんに案内をしてもらった場所には、なるほど山ほど生えていた。

スベリヒユという名前は聞いたことがなかったけれど、その姿には見覚えがある。これって佐渡だけでなく、どこにでも生えている雑草じゃないか。
地面を覆うように生えているのがスベリヒユだそうです。
地面を覆うように生えているのがスベリヒユだそうです。
ほらこの草、見覚えがないですか?
ほらこの草、見覚えがないですか?
これだけたくさん生えているので、バケツ一杯分を収穫するのも一瞬である。

野草でも山菜でも、おいしく食べられるものは苦労して見つけるものなのだが、スベリヒユはその辺で引っこ抜くだけだ。

これで本当に美味しかったら凄い話なのだが、さてどうだろう。
その存在を知ると、どこにでも生えていることに気が付くよ。これは奈良県の道路脇。
その存在を知ると、どこにでも生えていることに気が付くよ。これは奈良県の道路脇。
これなんてコンクリートの隙間からこんにちはですよ。
これなんてコンクリートの隙間からこんにちはですよ。
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とりあえず生で味見してみるか

教えてくれた友人の話だと、生でも食べられるらしいので、さっそく柔らかそうな葉っぱ部分を選び、生で齧ってみることにした。
根っこは食べないので不要なのだが、おかあさんから雑草だから根っこごと抜いてねと言われたよ。
根っこは食べないので不要なのだが、おかあさんから雑草だから根っこごと抜いてねと言われたよ。
さてスベリヒユの味はというと、ちょっとえぐみがあって、しっかり青臭くて、歯がギシギシとする感じ。そして酸味とぬめりが特徴的だ。

ええと、まあまあ雑草ですね。
生でそのまま食べるべきものではないかも。
生でそのまま食べるべきものではないかも。
とはいえ、このままでも食べられないことは無い。生で食べたらもっとまずい野菜は山ほどある。今では大好きなクレソンやパクチーを初めて食べた時も、同じような違和感だった気がする。

だがやっぱり、なんらかの料理をした方がよさそうだということで、滞在先で台所を借りて料理してみることにした。

レッツ、スベリヒユクッキング!

だいたいの食べられる野草は、収穫するのは楽しいけれど、食べられるようにするまでが大変なのだが(ノビルとかゼンマイとか)、その点でスベリヒユは偉大である。

スベリヒユの下処理は、根っこや枯れている部分などをチョイチョイっと捨てて、水で洗うだけだ。他にやりようがない。
葉の厚みからわかるとおり、スベリヒユは多肉植物だそうですよ。
葉の厚みからわかるとおり、スベリヒユは多肉植物だそうですよ。
最初に挑戦したいのは、あえての生食である。畑で食べた時は単体で味付けも無しだったが、サラダにちょっと入れるくらいなら、良いアクセントになるのではなかろうか。
生食ということで、柔らかいところだけを集めてみた。
生食ということで、柔らかいところだけを集めてみた。
冷蔵庫にあったマヨネーズ味のマカロニサラダに、刻んだスベリヒユを加えてみたところ、シャキシャキとした歯ごたえとハーブのような風味が加わって、どこか異国情緒を感じる料理になった。
馴染みのない食材だが、マカロニサラダと合う!
馴染みのない食材だが、マカロニサラダと合う!
生のままでも、しっかりと味付けをして、他の食材と一緒に少量を食べる分には、青臭さやえぐみは気にならないようだ。

スベリヒユが有りと無しの2種類のサラダが並んでいたら、私は迷わず有りを選ぶであろうというくらい、プラスの要素として評価できる。
だったらマヨネーズだけでも大丈夫ではと試したが、さすがにえぐみが勝ちました。
だったらマヨネーズだけでも大丈夫ではと試したが、さすがにえぐみが勝ちました。
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加熱をして食べてみよう

続いては正攻法である加熱してどうなるかの実験。まずは沸騰しない程度のお湯で茹でてみよう。

火を通すことで、太い茎もそのまま食べられると信じたい。
野菜というか観葉植物っぽいですね。
野菜というか観葉植物っぽいですね。
茹でたら水にさらして、めんつゆと鰹節を掛けて完成。スベリヒユのおひたしである。

ちなみに茹でてもほとんど変化がなくて、茹で加減がよくわからない。
普通は火を通すと葉っぱは萎れるものだが、多肉植物らしさ全開で変化無し。
普通は火を通すと葉っぱは萎れるものだが、多肉植物らしさ全開で変化無し。
茹でることで、程よくえぐみや青臭さは抜けていた。ぬめりと酸味と歯ごたえという組み合わせで、今までに食べたことのないおひたしに仕上がっている。

たくさん食べると歯がギシギシとなるような感じが少しあるのは、ホウレン草などにも含まれるシュウ酸だろうか。ワラビのアク抜きみたいに重曹を加えてもいいかもしれない。

好き嫌いはあるだろうけど、私としては独特の風味と豆もやしみたいな歯ごたえが好ましい食材である。

叩くと粘りがすごいです

スベリヒユの特徴は独特の粘り。茹でたものを包丁でよく叩いて粘りを強調してみよう。

粘りの強さは、オクラ以上メカブ未満というところだろうか。モロヘイヤレベルの粘りである。
形がなくなると、急に普通の食べ物っぽく見えてくる。
形がなくなると、急に普通の食べ物っぽく見えてくる。
これはそのまま食べるよりも、粘りの横綱と合わせた方がうまいのではないだろうか。

小粒の納豆と合わせてめんつゆで味付けしてみると、これがまったく違和感なし。このまま食べてもうまいし、ご飯や蕎麦に掛けてもバッチリ。ナイスなペアリングである。
納豆に混ざることで海藻への擬態に成功!
納豆に混ざることで海藻への擬態に成功!
納豆の量が無料のスベリヒユで倍増され、エンゲル係数のダウンに成功。節約好きには堪らない料理だろう。

「雑草」であり「粘り強い」という特徴を持つスベリヒユ。叩き上げのプロレスラーが好んで食べそうな食材だ。

あ、叩いて揚げて「叩き揚げの雑草」っていう料理名もいいですね。
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独特のクセに慣れると、どう料理しても美味しい

続いてはしっかりと茹でたスベリヒユを、ニンニク、ショウガ、胡麻油、醤油、粉末鶏ガラスープで合えて、ナムルっぽくしてみた。

これはきっとうまいだろうと予想はしていたが、やってみると大正解。石焼きビビンバの上に、豆もやし、ぜんまい、スベリヒユとナムルが並んでいても、なんら違和感がないはずだ。

濃い目の味付けをすることで、雑草っぽさを全く感じなくなった。
胡麻油との相性が良いような気がする。
胡麻油との相性が良いような気がする。
ナムルにしておいしいのであれば、胡麻油で炒めただけでもうまいだろうと試してみたら、柔らかさの中に歯ごたえもしっかり残っていて、これもなかなかのものだった。

味付けはシンプルに醤油を使ったが、オイスターソースやナンプラーなどを使って無国籍料理を気どってもよさそうだ。
独特の酸味がだんだんとクセになってきた。
独特の酸味がだんだんとクセになってきた。
このスベリヒユの話を山形在住の友人にしたら、あちらでは「ヒョウ」と呼んで、茹でたものをカラシ醤油でよく食べているらしい。

先日も草むしりをしていたお隣さんが、「ヒョウ食うべ!ヒョウ!」と、洗面器一杯のスベリヒユを置いていったとか。ただやっぱり、食べない人は「草なんて食わねえず~」と、絶対に食べないらしい。
確かにカラシ醤油もさっぱりしておいしいですね。
確かにカラシ醤油もさっぱりしておいしいですね。
また沖縄では「ニンブトゥカー」という名前で食べられているそうで、解熱や解毒の民間薬としても利用されているのだとか。

私が知らなかっただけで、スベリヒユを食べることって、実は「普通」なのかもしれない。

スベリヒユは干しても乾いてくれない

スベリヒユの茎部分は食感が山菜のゼンマイやワラビに似ているので、天日で干してカラカラに乾燥させたものを戻したら、よりうまくなるのではないだろうか。

長期保存が可能になれば、新たな名産品になるかもしれない。素材ならいくらでも手に入る。

そう考えて干してみたのだが、これが意外な結果となった。
こちらが干す前にスベリヒユ。きっと数日で萎れることだろう。
こちらが干す前にスベリヒユ。きっと数日で萎れることだろう。
そしてベランダで一か月以上干したスベリヒユがこちら。
そしてベランダで一か月以上干したスベリヒユがこちら。
普通の野菜は1週間も干せばカラカラに乾くのだが、さすがは多肉植物のスベリヒユ、ぜんぜん乾燥してくれないのだ。

茎から落ちた葉っぱこそ乾いてはいるが、残った葉っぱはまだ青々としている。なんという生命力なんだ。
水に浸けたら、干されていたことを感じさせない復活っぷり。
水に浸けたら、干されていたことを感じさせない復活っぷり。
乾物っぽさはないのだが、一応水に浸けて水分補給をさせてから茹でてナムルにしてみると、少し瑞々しさと粘り気が弱くなったかなというくらいで、ほぼオリジナルの味だった。

もしかしたら宇宙ステーションで育てるべき野菜は、このスベリヒユなのかもしれない。

不思議に思って山形の友人に確認したら、生のままではなく、一度茹でてからカラカラになるまで干したものを煮て食べるとうまいそうで、乾燥したものが商品としても売られているとのこと。

なるほどー。
君の生命力に乾杯。
君の生命力に乾杯。

探してみよう、スベリヒユ

スベリヒユは日本国内に自生する食用植物の中で、一番簡単に採取できるかもしれない。探せばきっと半径3キロ以内に生えているだろう。もし無人島に流れ着いたならば、まず探すべき食材はスベリヒユなのかもしれない

もちろん食べ過ぎはなんでも毒なので、どうかバランスの良い食事を心がけ下さい。って私がいっても説得力ないですが。

告知:佐渡島で製麺体験ワークショップをします

スベリヒユを教えてくれた友人が主催する「HELLO! BOOKS(ハローブックス)」というイベントで、佐渡産の小麦粉を使った製麺ワークショップをやることになりました。ちょっと遠い場所ですが、どうぞ海を渡って山を越えて来てください。メインゲストは平野レミさんだよ。

Hello! Books 2015
■2015年9月20日、21日
■新潟県佐渡市下川茂130-1(旧川茂小学校)
■昨年のレポートはこちら
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