特集 2015年6月15日

ヤコウタケの栽培キットを育ててみた

ご家庭で簡単に光るキノコが育てられる時代が到来しました!
ご家庭で簡単に光るキノコが育てられる時代が到来しました!
知人からヤコウタケという暗闇でうっすら光るキノコの栽培キットがあることを教えていただいた。

光るキノコというと、ずいぶん前にデイリーポータルZの林ウェブマスターが、はるばる八丈島まで観察にいったあのキノコ(こちらの記事参照)のことか!あれって家で育つのか!

数量限定だというその栽培セットを、さっそく取り寄せて育ててみることにした。
趣味は食材採取とそれを使った冒険スペクタクル料理。週に一度はなにかを捕まえて食べるようにしている。最近は製麺機を使った麺作りが趣味。(動画インタビュー)

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5月11日、ヤコウタケ栽培キットが届いた

ヤコウタケの栽培キットなんていうマニアックかつロマンティックな商品を開発したのは、薬用や食用のキノコの研究をしている岩出菌学研究所とその販売会社のシエン。

メールでキットの販売に至る経緯をうかがったところ、ヤコウタケは薬用でも食用でもないのだが、研究目的として人工栽培に挑戦し、試行錯誤を重ねて2013年の春に成功すると、この美しい光を多くの人に届けなければと栽培キット化に向けて動き出し、今年の春に初めて販売にこぎつけたそうだ。
栽培キットは2500円也。キノコだと思うと高いが、浪漫とか小宇宙(コスモ)だと思えば安いと思う。
栽培キットは2500円也。キノコだと思うと高いが、浪漫とか小宇宙(コスモ)だと思えば安いと思う。
ついつい栽培キットを販売したくなるほどの輝きか。写真では伝わらない美しさがあるのだろう。うん、とても楽しみだ。

栽培キットをセッティングしよう

栽培キットには2種類の土が入っていた。大きい方が種菌で、小さい方が腐葉土。ふた付きのプラスチック容器とスポイト、そして説明書と記録用紙もついている。

だいぶ前に『きのこ部』という活動で、シイタケやナメコを育てたことがあり、その時はオガクズの塊みたいなやつで育てたが、今回は土っぽいものがベースである。
左が種菌、右が腐葉土。もうこのセッティングをしている時点で楽しい。
左が種菌、右が腐葉土。もうこのセッティングをしている時点で楽しい。
付属の説明書によると、温暖多湿を好むヤコウタケの栽培条件は、温度が20~28℃、そして湿度は70~100%。ただしビショビショではいけないらしい。

この時期の埼玉あたりの気候だと、温度はちょうど良さそうだが、湿度がだいたい50~65%くらいなので若干ジメジメ不足。そこで活躍するのが、種菌の上に腐葉土を乗せ、そこにスポイトで水を垂らして、湿度を保持するというシステムだ。

歌手が喉の乾燥を防ぐために、部屋の中に濡れタオルをたくさんぶら下げるのと同じ仕組みなのだろう。
加湿器としての腐葉土を種菌の上に設置完了。
加湿器としての腐葉土を種菌の上に設置完了。
ところでこの種菌や腐葉土の匂いを嗅いでいると、なんだかカブトムシやクワガタの飼育準備でもしているような気分になる。

この容器の中で、気が付いたらキノコじゃなくて幼虫が発生しそうな雰囲気であるぞ。実は腐葉土の中に虫のタマゴが入っていたりして。

は!!もしやその幼虫に生える冬虫夏草のキノコこそが、ヤコウタケの正体なのでは!

なんていう妄想を楽しみつつ、スポイトで腐葉土に水をあげたり、霧吹きで表面を湿らせて、幼菌の発生をおとなしく待つ。
張り切って温湿度計を買ってきたのだが、デジタルのが既にあった。家にある温度計って、けっこうな確率で湿度計が付いているよ!
張り切って温湿度計を買ってきたのだが、デジタルのが既にあった。家にある温度計って、けっこうな確率で湿度計が付いているよ!

5月25日、幼菌の発生を確認

ヤコウタケを育てる容器はルービックキューブくらいの大きさで(若い人には伝わらないかもしれませんが)、その中には湿度計が入らないため、容器内の湿度はわからない。

乾燥とビショビショの間という、広いようで狭い湿度をキープするというお世話を続けていると、5月25日に小さな白い粒が腐葉土を囲うように発生した。

開封からちょうど2週間経った日の出来事である。
白い粒が点在しているのがわかるかな。
白い粒が点在しているのがわかるかな。
ヤコウタケ栽培の天敵であるカビだったらどうしようと思ったのだが、目を近づけて観察してみると、それは間違いなくちっこいキノコだった。

幼菌の発生に成功したのだ!
まだ油断は禁物。ここからの温度と湿度の管理が大切らしい。
まだ油断は禁物。ここからの温度と湿度の管理が大切らしい。
そういえばこのキノコって食べられるのだろうか。食べられるのであれば、せっかくだから食べてみたい。

食べてみて毒だったら死ぬので、販売元に問い合わせてみよう。

5月28日、幼菌が米粒大に育つ

ここから先の展開は早かった。

幼菌が確認されてから3日目には、米粒大にまで大きくなり、怪しくヌメヌメとたたずんでいる。
家の中にヤコウタケが生えてくるってすごくないですか?
家の中にヤコウタケが生えてくるってすごくないですか?
この幼菌、この時点でも光るのかなと思って暗いところで観察してみたが、白いけれど光っているという感じではない。

もしかしたら、すでにうっすらと光っているかもしれないが、その輝きはまだ人々の目に届かないレベルなのだ。

なんて結成したばかりのバンドのように、今後の展開を頭の中で煽ったりするわけですよ。
大胆なほどの濡れっぷり。
大胆なほどの濡れっぷり。
横から見ると、傘の中央部分がぷっくりとしてアダムスキー型。
横から見ると、傘の中央部分がぷっくりとしてアダムスキー型。
このヤコウタケが食べられるのかという件について、毒性の有無は調べていないが、食べない方がいいいですよという返信をいただいた。まあそうですよね。

ちょっとネットで検索してみても、毒はないけど水っぽいとか、食えなくはないけどカビくさいとか、食用には適していないという話ばかりだった。

とかいって、実は食べたらうまいんじゃないかなと、まだ疑っていたりする。

5月29日、傘が開いてキノコが光った!

5月29日は菌曜日。いや金曜日。プックリとしていた幼菌は一気に育ち、直径1センチほどの小さな傘を広げていた。

エノキやエリンギとも違う透明感のある白さが美しい。傘の上に乗っている土をとってあげようとも思ったが、触ったら崩れてしまいそうな繊細さだ。
きれいに傘が開いた!
きれいに傘が開いた!
ガラス細工のような繊細さとカブトムシみたいな土臭さ。
ガラス細工のような繊細さとカブトムシみたいな土臭さ。
光る、これはきっと光るね。
光る、これはきっと光るね。
容器を撮影場所へとそーっと移動させる。部屋に落ちていた週刊プロレスで足をすべらせて全部台無しになりそうになったが、どうにかグッとこらえた。

ドキドキしながら電気を消すと、ヤコウタケは緑色にモワーンと光った。いや、光っていたというのが正解だろう。電気を消したことで、その輝きが現れたのだ。
モワーン。肉眼でもだいたいこれくらいの明るさです。
モワーン。肉眼でもだいたいこれくらいの明るさです。
すごいぞ、ヤコウタケ。予想以上にちゃんと光っているじゃないか。この美しさを見ると、岩出菌学研究所がどうにか世に広めなければと思ったのがよくわかる。これは人に自慢したい。

私がもし宮崎駿監督だったら、この小さな容器の中の出来事で映画が1本撮れるんじゃないかと思ってしまうくらいの感動がここにある。
真上から見ると、傘の筋がかっこいいぞ。
真上から見ると、傘の筋がかっこいいぞ。
夜中にひとりで部屋の電気をつけたり消したりして、何度もこの輝きを確認する。

食用のキノコではないけれど、この美しさで酒が飲めるな。いやでもこの光にうま味があるのかも。
ほら、たのしいでしょ!
ほら、たのしいでしょ!

5月30日、昼間でも輝いている!

まさかあんなにくっきりと光るとは思わなかったヤコウタケだが、翌日に明るさのピークを迎えたようだ。

昼間でも日陰のちょっとくらい場所なら、明らかに光って見えるほどに発光しているのだ。
ちょっとどうなってんだっていうくらい光が強いぞ。
ちょっとどうなってんだっていうくらい光が強いぞ。
携帯のカメラで適当に撮影しても、ちゃんと光っている様子がわかる。
携帯のカメラで適当に撮影しても、ちゃんと光っている様子がわかる。
光が強すぎて、逆にニセモノっぽい気もする。何も知らない人に見せたら、オモチャだと思われるかもしれない。こういうドクロのおもちゃを持っていたな。

この神々しいまでの光りっぷりは、ぜひ夜を待ってきちっと撮影しなくてはと思ったのだが、うっかりこの日は寝てしまった。

5月31日、もう腐ってしまった

さあ今日こそは光りまくる夜のヤコウタケを撮影してやろうと張り切って覗いてみると、なんだか様子がまるで違う。

ヤコウタケは倒れ、モサモサっとしたなにかに覆われていた。ガーン。

風の谷のナウシカでいうところの、腐海の菌糸にやられてしまったようだ。現実世界で言えば、カビだろう。
儚く、そして脆い。
儚く、そして脆い。
原因は昨日水をやりすぎたこと、フタを開けた状態での撮影でカビの菌糸が容器内に入り込んでしまっていたこと、そしてここ数日天気が良くて、室温が30度を越えてしまったためと考えられる。

そもそもヤコウタケが光っていられる期間は僅か2~3日らしいので、たとえカビなくても萎れてしまっていただろうが、これで食べるという選択肢は完全になくなった。

うまくいくと2,3回の発生が期待できるいうことなので、ダウンしたヤコウタケは取り除き、次の発生に期待したいと思う。

9月に再販売するみたいです

こんな魅力的な商品を紹介しておいてなんなのだが、ヤコウタケ栽培キットは適正温度の問題で期間限定商品となっており、販売は5月末で一旦終了している。

だが適温となる9月頃にまた販売する予定らしいので、育ててみたいというチビッコは、今からお小遣いをためておこう。
ブナシメジにサイリウム(折ると光るやつ)の中身を掛けてみたが、やっぱりヤコウタケの方が美しいな。
ブナシメジにサイリウム(折ると光るやつ)の中身を掛けてみたが、やっぱりヤコウタケの方が美しいな。
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