大人がやりたいゲームをさせる
家で子供と一緒に親しむ海外のアナログゲーム。
子供の成長とは早いもので、以前は文字や数字が書いてないものを選ぶなど対象年齢をけっこう気にして遊んでいたが、文字が読めるようになった現在、大概のものはできるようになった。
一方で私のボードゲーム・マニアぶりも進行しており、どこで折り合いをつけるかが最近の課題となっている。
そんな中、うちと同じくらいの歳のお子さんがいる知り合いが、子供相手にけっこうなヘビー級ゲームをやっているという話を聞き、衝撃を受けた。それも姉妹なのに…(分かる人向きに例を挙げると、ワレスの「数エーカーの雪」や「P.I.」、フェルトの「ブルージュ」など)。
いやしかし、子供というのは教えれば案外なんでもできるものだ。大人が勝手に「子供だからこんなもんだろう」と能力を見くびれば、それぐらいの能力しか出てこない。
ということで、大人向けのガッツリ重いゲームをうちでもやってみた。
ステファン・フェルト氏の作品、「アメリゴ」。箱が異常なくらいでかい。
選んだのは、マニアから絶大なる支持を受けているステファン・フェルト氏の作品。
氏のゲームはたいてい、あまりゲームをしない人は近づけないくらい見た目がごちゃごちゃしていて、プレイ時間も長め。とはいえ、半日とか1日では終わらないとかいったレベルの長さではなく、2時間くらいで終わる長さ。
箱に書いてある対象年齢は10歳以上。
ということは、実はそれほど大人向きというわけでもないのかもしれない。実際私も「これは子供にもウケるんじゃないか」と思ってチョイスした。
アメリカ大陸を発見したアメリゴ・ヴェスプッチよろしく、未開の島に船で乗り入れ、そこからテトリスみたいなブロックを敷き詰めていくゲーム。(アメリゴもアメリカ大陸も出てこない)
ボードはモジュラー式になっていて、複数のパネルを組み合わせることで毎回違った地図ができあがる。
できた島々を見て、どこから船を着けていくか考えるのがまず楽しい。
左に置いてある「塔」がこのゲームの肝。
「ホーイ!」と言ってキューブを投げ入れる。
塔の中は複雑な構造になっている。
すると幾つかは途中で引っかかり、逆に幾つかの引っかかっていたコマが一緒に出てくる。結果、緑を6個投げ入れて出てきたのが緑4黒2赤1といった現象が起きる。
その時出てきたキューブの数と色によって、おこなえるアクションの選択肢と数が変化する。
この「塔に入れたら次は何が出てくるかな?」というのを毎回楽しみながら、船を移動させたりテトリスのパーツみたいなものを買ったり、配置したり、また大砲を買って海賊に備えたり、島から取れる産物の価値を高めたり、「あれもやりたい、これもやりたい」という中で、取捨選択して行動してく。
プレイ感:
小道具が多くてパッと見ややこしそうだが、やってみると難しいことは何一つ無く、小2の息子でもすんなり理解できるレベル。
塔の中にキューブを投げ入れる作業はやはり子供たちにとっても面白いようで、喜んでやっていた。が、1時間ほど経ったところで、
「ところでこのゲームっていつになったら終わりなの?」
と娘から質問が。
「全部で5ラウンド。今3ラウンド目に入ったところだからあと3回だよ」
息子は、前半は快調にゲームを進めリードしていたが、大きな島に進出してなかったため、後半は手詰まりに。そこを後半もグングン点を伸ばし追い抜いていく父。
やがて発せられた言葉は、
「このゲームつまんない!」
みんなの感想
息子(小2):ふつう。
娘(小6):×
私:いやいや、これは面白いよ!たくさんの要素がミックスされたゲームだけど、それぞれの要素がしっかり面白い。子供らだって途中までは喜んでやってたくせに、どうして負けるとつまんないとか言うかなぁ。。
教訓:
相変わらず勝ち負けに非常にこだわる子供たちと遊ぶには、大人が負ける要因となる強めのランダム要素が必要なのかもしれない。あと2時間はやっぱり長いと感じるようだ。
特殊なゲーム、囲碁
前のページで「子供が勝つためには強めなランダム要素が必要」と書いたが例外もある。
それが囲碁。
囲碁が子供に人気。
囲碁が我が家で人気なことは
前回の記事でも触れたが、娘はその後、囲碁教室に通うようになり、メキメキ上達して最近は私が負けることも多くなった。
運の要素がまったくない完全アブストラクトゲームで娘に負けるなんて他のゲームではなかなかないことなので、なんとも不思議な感覚。盤上で受ける印象が他のゲームをしている時とはまるで違うことにも驚かされる。
最初はこんな小さな盤でやっていた。
実家に帰省した時はじいちゃんと打つ。
みんなの感想
息子(小2):大好き。
娘(小6):好き。
私:囲碁のすごさをじわじわと感じている。
知的な雰囲気のゲーム出すぞ
囲碁がOKならこういうのだってイケるはずだ。
「インシュ」と読む。ベルギーのゲーム。
ベルギーの人が作ったゲーム。
・二人用
・運の要素ゼロ
・白対黒
と囲碁との共通点も多い。
五目並べ+オセロ?
内容は、五目並べとオセロをミックスしたようなゲーム。
5つずつ持ってる自分の色のリングの中に石をまず置き、その後リングだけを直線上に移動させ、飛び越えた石をひっくり返す。
それを繰り返して5目並べるのが目的。
完成したら、できた5つの石を取り除き、さらにリングもひとつ取り除いて続行。リングの数が減ることで負けてる側が少し有利になる。3回5目を完成させ、取り除いたリングの数が3個になったら勝ち。
白が斜めに5目完成したところ。
みんなの感想
息子(小2):大嫌い。
娘(小6):嫌い。
なんでだよ!!
どうして囲碁は好きでこれはダメなんだよ!
オシャレだから?
そういえば小学校の近くにある名札とか体操着とか売ってるお店が、○○商店という昔ながらの店舗から突然おしゃれな横文字の名前の店へとリニューアルした。すると子供らは「行きづらくなった」と言う。子供っておしゃれなのダメなのかもしれない。
紀元前からあるゲーム
古代からあると言われている「マンカラ」も運の要素がまったくないアブストラクト・ゲーム。
これが学童などで小学生に人気という話をどこかで聞き、うちでもやってみた。
マンカラ。(カラハ)
自分側にある6つの穴から1つを選び、そこにある石を全部取って、反時計回りに1つずつ蒔いていくのが基本の共通ルール。
ローカル・ルール(細かい部分でちょっとずつルールが違う)が数多くあり、「カラハ」とか「オワリ」などといった名前が付いている。うちでは「カラハ」というルールでやっている。
道具はシンプルで、地面に丸を描いて拾ってきた石を使ってもできるから、運動会の練習の待ち時間なんかにもいいと思う。
いかにもアナログな感じがイイ!
運の要素が無いことに加え、非常にシンプルなルールなので必勝法などもありそうだが、少なくとも「棒崩し」みたいな簡単な必勝法はなさそう。子供たちと何戦もしてみたが、「あれ?そんな手があったか!」という感じで、勝ったり負けたりを繰り返した。
なにより、石を取って1つずつ蒔いていく動作がなんとなくクセになり、いつまでもやっていたくなるようなところがある。
みんなの感想
息子(小2):好き。
娘(小6):まあまあ。
私: アナログゲームの良さが充分に感じられて、これはいいゲーム。
ちなみにマンカラを発展させたゲームも幾つかあって、
マンカラの石の動きに買い物要素をプラスした「くだものあつめ」。
こちらはさらにマンカラをこじらせにこじらせ、超複雑にしたゲーム「トラヤヌス」。軍事とか元老院とか出荷とかいろいろあって、「マンカラーッ!!」と叫びたくなるくらい濃いゲームになっている。
見た目で選ぶ
やはり子供はテーマ、ストーリー性があるゲームを「やりたい」と思うようだ。それも宇宙とかドラゴンの絵が描いてある箱に食つく傾向にある。
そこで、たまには子供が好きそうな直球ストライクなやつを一緒にやるか、と寄り添ってみたのがこちら。
ダンジョンクエスト!!
「いかにも男子」な箱絵である。
ゲーム内容も見た目の通り。地下迷宮に入って敵と闘いながら財宝をゲットし帰ってくるといういかにもな内容。
なのだが、このゲームは「勇者が簡単に死んでしまう」のがこの手の普通のゲームと違うところ。
一歩進むごとにタイルをめくって配置していくことで徐々に迷宮が明らかになっていく。
元々コマは灰色だったが自分で色を塗った。視認性と愛着度アップ。
いわゆるこの手のゲームであれば、序盤は敵も弱く、冒険が進むにつれだんだん厳しくなるようゲームマスターと呼ばれる人が調整したり、コンピュータゲームであればそうなるように作ってあったりする。
ところがこのゲームは基本的にそのあたりがすべてランダムで、序盤中盤関係なくいきなり殺しにかかってくる。
爆発して死亡。
薬飲んで死亡。
「能力判定」と書いてあったら、サイコロを振る。出目次第でコロリと勇者が死ぬ。
巡り運によっては一歩目でいきなり死ぬ可能性だってあるのだ。
地下に潜って途中から顔を出すこともできるが、地下にはより危険度が高いトラップが目白押しなので、潜らないで済むならその方が安全。
運良く無事財宝がある部屋に辿り着いたとしても、そこにはドラゴンが眠っており、何分の1かの確率で目を覚ます。ドラゴンが起きると財宝をすべて手放した上にボッコボコにされる。
というわけで、カードのめくり運にダイス運と、頭で考えたことが吹き飛ぶほどに運の比重が大きい「複雑な運だめし」みたいなゲームだが、これが不思議なことにとても面白い。
また、「どうせギリギリでクリアできるように調整してあるんだろう…」みたいなところがないので成功した時の達成感も高い。
勇者ムスコが財宝を手にして無事生還。 (裸族なんで家にいる時はだいたい裸)
みんなの感想
息子(小2):大好き。
娘(小6):まぁまぁ。
私:運ゲーだけど随所に盛り上がりポイントがあって面白い。この手のゲームとしてはプレイ時間が短め(1時間以内くらい)なのも遊びやすい。
サイコロゲームはヒット率が高い
サイコロを使ったゲームは受け入られやすいのかもしれない。
「街コロ」
日本人が作ったゲーム。これも子供に好評というレビューがネット上にいくつかあったのと、ドイツの大手ゲームメーカーがこれの海外版を出版し、海外での評価が高いという話を聞き、やってみた。
サイコロを振って、自分が持ってるカードの目が出たらお金がもらえる。
上の写真で言えば、左の青のカードは2の目、右の緑のカードは4の目が出たらそれぞれ1コイン、3コインともらえる。
お金が貯まったらこの中から好きなカードを買うことができる。
カードを買って街を発展させていくことで、より多くのお金が集まるようになる。
たくさんのカード群を見て、マニアはすぐコンボとか複雑な展開などを期待しがちだが、やってみるとサイコロ運の比重が高く、マニアが期待するような展開はあまりない。
しかし運が強いということは子供が勝つことも多いということでもあり、またサイコロ振ってお金が増えてカード買って…という流れは単純に楽しく、子どもと一緒にやるゲームとしてはなかなか悪くないな、と思った。
みんなの感想
息子(小2):好き。
娘(小6):ふつう。
私:若干物足りなさもあるものの、予想よりずっと楽しめた。
競りゲー
オークション・ゲーム、「競り」を中心に据えたゲームは数々の名作があり、ボードゲーム界では一大ジャンルを築いている。
私も大好きなのがいくつかある。それは簡単に言うと、“良いものを安く競り落とす”を何度もできた人が勝つゲームだが、皆も同じことを考えて値を吊り上げてくる中で適正な価格を見出すのは大人でも難しい。
というわけで子供たちとはやったことがなかったが、そんな中、これならどうだろう?とやらせてみたのがこちら。
オークションゲームの第一人者、ライナー・クニツィア氏による作品「オロンゴ」。
イースター島にモアイを建てるゲーム。
競りゲーム。なのだが、競りに使うのがお金ではなく貝殻なのが特徴的。
どっさり入ってる貝殻のフィギュア。子供たちから「ワ~ッ!」と歓声が上がった。
これを好きな数だけ握って全員一斉に開く。
競りは「握り競り」。
貝殻を握って一斉に手を開く。競りの結果に応じて、自分の領土の目印となるチップをボード上に置いていく。
自分の色の透明チップを置いていく。置いたところが自分の領土。
一番多く握った人はチップを3枚置ける。
2位の人は2枚。3位以下は1枚。
だったら毎回たくさん握ればいい?
と思うところだが、一位の人は、出した貝殻を全部サンゴ礁のところに置く。2位以下の人は出した貝をそのまま懐に戻す(減らない!)。また貝をひとつも握らなかった人はチップを1枚も置けない代わりにサンゴ礁にある貝を全部もらえる。
一番多く握った人だけが、貝をサンゴ礁のところに置く。貝をひとつも握らなかった人は、ここにある貝を全部もらえる。
つまり2位になるのが美味しいが、ここぞという場面では1位を取って一気に3つ置きたかったりもする。
条件を満たしたらモアイ建造。こうしてチップを置いてモアイを建て、手持ちのモアイを建て切ってさらにもう1体ダメ押しのモアイを建てたら勝ち。
どっさり入っている貝殻フィギュアのおかけで異例の食いつきを見せた子供たち。ルールもすぐに飲み込んでくれた。
が、息子はモアイを建てることよりも貝を集めることに夢中になり、競りで貝を1つも握らない行為を繰り返した。
貝は銀行等からの補充はなくプレイヤー間でやりとりするのがすべてなので、誰かが貝を貯め込むと次第にデフレになってくる。貧乏にあえぐ父と娘。
しかしいくら貝を持ってても、モアイを建てなければ勝てないので、最終的には私が勝利。
見た目もカラフルで楽しい。
みんなの感想
息子(小2):ダメ。
娘(小6):嫌い。
私:「競り」というと難しい印象だが、このゲームでは1位の人だけが支払う仕組みなので、かなりラフにできる。握った手を開いた瞬間は毎回盛り上がった。子供らだって楽しんでいたはずなのに、最後の勝ち負けだけを取って酷評するなんて頭悪いぞ。
テーマ重要
最後に、うちの子供らに現在一番ウケているのを紹介したい。
「指輪物語・対決」
我が家では今、遅ればせながら指輪物語ブームが来ている。で、映画「ロード・オブ・ザ・リング」を見た子供らがゲーム棚から見つけて引っ張り出してきた。
斜めにボードを使う。互いのコマは相手からは見えない。
指輪物語のゲームは数多くがあるが、これは2人専用の軍人将棋みたいなゲーム。
コマ(=人物)はすべて物語に登場する人物。
それを互いにまず盤面に配置するところから始める。
コマは立てて置き、相手からは見えないようになっている。
敵のコマと同じマスに入ったらオープンし、そこではじめて相手のコマの正体がわかる。
コマにはひとつひとつ、そのキャラに合った能力と数値が付いている。
カードで勝負!
キャラ同士の勝負は、手札からカードを1枚出し、その数値とコマに書いてある数値の合計が大きい方が勝ち。同点なら相打ちでどっちも死亡。
すべてのコマには特殊能力が付いていて、それによってはカードを出す前に勝負がついたり戦闘を回避できたりする。
フォトショ技を駆使して日本語化。 すごくわかりやすくなった!と思いきや…
ちなみに私が持っているのはオランダ語版だが、それだとテキストがわかりづらいので日本語化した。
が、息子(小2)は「こっちの方が色が濃くてかっこいい」と言って、オランダ語でプレイしている(テキスト暗記してる。カードは抜き差しできるので裏にすると原版)。
序盤からレゴラス、ギムリ、ボロミア、アラゴルンといった重要人物が次々に死んでいくという映画なら絶対ありえない展開。
ボードにも「裂け谷」、「モリアの坑道」など
指輪物語を知ってる人にはお馴染みの地名が描かれている。
ゲームはひたすら読み合い。
そこにあるコマは何か?
戦闘になったら相手はどのカードを出してくるか?
先の展開を考えるとある程度予想がつくが、ウラを掻かれるとものすごく悔しく、それが非常に悩ましい。大人同士で真剣にやると楽しいを通り越して「ちょっとキツい…」と感じてしまうほどだ。
が、子供らは例によって気楽にホイホイやっている。
子供たちだけで何戦もやっている。(ずっと姉が白で弟が黒)
みんなの感想
息子(小2):大好き。
娘(小6):大好き。
私:キッツい。でも子供たちのお気楽プレイを見てちょっと見かたが変わった。
映画という入り口があるとこれほど子供たちが食いつきがこんなにも違うのか、と驚く。そういえば囲碁熱が上がったのも「ヒカルの碁」を読んでからだったな…。
ちなみに娘は分厚い原作を読むほど指輪好きになっている。
そういえば私は子供の頃、小学2年生の時から友達同士で「モノポリー」をやっていた。モノポリーは土地の権利書を交渉によって売買したり、抵当に入れて資金を捻出したりと、今思えばけっこう高度なやりとりをやっていた。
モノポリーは逆転する要素が無く、長い時間かけて弱者が強者に飲まれていくというゲームなのでボードゲーム愛好家からの評価は非常に低いが、お金の使われ方について考えるにはなかなか良いゲームだったと思う。
今度はそういう類のものもやらせてみよう。