コラボ企画 2015年3月9日

旗振り通信で大切なことを伝える

これが旗振り通信。
これが旗振り通信。

江戸から明治にかけての時代、人は米の相場を伝えるために旗を振り、それを何人もが中継して遠くまで伝えていたらしい。これを旗振り通信という。

LINEやメールなどなかった当時の通信にかける意気込みを理解するため、実際に旗振り通信をやってみた。ちょうど伝えたいことがあるのだ。


※この記事はイーアイデムとのコラボ企画
じもwww:地元ルネサンス 仕事ルネサンス
との連動企画です。イベントやるので来てください!
デイリーポータルZ:地元の祭典「じもリンピック」

1975年愛知県生まれ。行く先々で「うちの会社にはいないタイプだよね」と言われるが、本人はそんなこともないと思っている。(動画インタビュー)

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> 個人サイト むかない安藤 Twitter

やってみないとわからない距離感

本当かどうか定かではないが、当時の旗振り師たちは三里(12キロ)を一区間とし、大阪から広島までを30分たらずで通信したといわれている。それってちょっとすごくないか。

今回の実験はスタートを含め、中継地点を5か所に設定した。当時のように正確に、速く伝えることはできるのか。
実験には見晴らしのいい海沿いを選びました。
実験には見晴らしのいい海沿いを選びました。
スタート地点となる僕がいる場所から、直線距離で5キロの場所に次の旗振り師ライターきだてさんがいる。たぶん矢印のあたりである。しかしこれは……。

遠い。

肉眼ではまったく判別できない。これでも当時の半分以下の距離というから驚きである。

高倍率のデジカメで撮影してようやくこのくらい。
これで5キロ。
これで5キロかー。
なんとなく人がいるかな、というレベルだ。当時の人はどんな視力を持っていたのか。

対岸で同じく高倍率ズーム機を持って僕を探しているであろうライターきだてさんに、僕のことが見えるかどうか聞いてみた。

きだて「今のところぜんぜん見えないですね」

ですよね。
現代人なのでスマホを使って状況をやりとりしながら進めています。
現代人なのでスマホを使って状況をやりとりしながら進めています。
批判を承知であえて言おう、今回はスマホのチャットツールで状況をやりとりしながら進めた。

旗振り通信が行われていた時代にスマホなんてないから反則だろうと言われたら返す言葉もない。しかしおそらくこの企画、こうでもしないとなにも起きずに終わるな、と思ったのだ。

距離を一気に半分に

直線距離で5キロではまったく判別できなかったので、距離を一気に半分の2.5キロに縮めることにした。こういう決断に躊躇はない。
2.5キロ先だと肉眼でもなんとなく次の地点で待つきだてさんが見える。ただし点。
2.5キロ先だと肉眼でもなんとなく次の地点で待つきだてさんが見える。ただし点。
距離を半分の2.5キロに縮めると、肉眼でもきだてさんらしき点を確認することができた。

カメラを最大にズームして、さらに双眼鏡に押し当てて撮影した写真がこちらである。けっきょく僕がきだてさんだと思って旗を振っていたのは別の人だったわけだけれど。
僕は真ん中の人に向かって振っていたのだけれど、どうやら左に見える帽子をかぶった人がきだてさんだったようだ。
僕は真ん中の人に向かって振っていたのだけれど、どうやら左に見える帽子をかぶった人がきだてさんだったようだ。
でもこの距離ならば旗を振ればもしかしたら伝わるかもしれないぞ。今回の実験で初めて見えた光である。
今回の実験の持ち物。旗振り用の旗、手旗信号のテキスト、双眼鏡、スマホ。
今回の実験の持ち物。旗振り用の旗、手旗信号のテキスト、双眼鏡、スマホ。

旗振り通信開始

相手が確認できたのでさっそく旗を振る。いよいよ旗振り通信の始まりである。

今回伝えるメッセージはもちろんスタート地点の僕しか知らない。早見表だけを事前に全員に配ってあるので、旗振り師たちはそれを見ながら都度メッセージを解読していく。旗の振り方は手旗信号の法則に沿った。

それでは振ってみたいと思う。おーい、僕はここだよー。
ってこれ、あちらからは見えているのだろうか。虚空に向かって旗を振る。
ってこれ、あちらからは見えているのだろうか。虚空に向かって旗を振る虚しさよ。
この時、第二地点でカメラを構えていたきだてさんがとらえた僕の姿がこちら。
おお、見えてる!見えてる!
おお、見えてる!見えてる!

この記事のどこがアイデムとのコラボなのかは次のページでわかります。


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現代人ならではの失敗もある

一文字一文字ゆっくりと、第二地点のきだてさんになんとか僕のメッセージを伝えることができたと思う。

しかしこの「ゆっくりと」が現代人である我々の首を絞める。
第二地点まで伝わった時点で、第三地点にいる西村さんのスマホの電池が切れそうに。
第二地点まで伝わった時点で、第三地点にいる西村さんのスマホの電池が切れそうに。
すでに西村さんのスマホの電池がなくなりそうなのだ。

旗振り通信にスマホは必須である。なにしろ旗の降り始めと振り終わりがわからないとメッセージが解読できないのだ。しかも文字と文字の区切りが明確でないと前後の文字が混じる。これを避けるためいちいち「これから一文字目ね!」と合図を送りつつ進める必要がある。

スマホがないと成り立たない時点で(ならスマホでメッセージ送ったらよくないか)と考えがちがだが、そういうことではないのだ。
大急ぎで2.5キロ先にいる第三地点の西村さんへメッセージを送る。
大急ぎで2.5キロ先にいる第三地点の西村さんへメッセージを送る。
第三地点の西村さん撮影。
第三地点の西村さん撮影。
こうして第二地点のきだてさんから第三地点の西村さんへとメッセージが伝わっていく。

これすごい時間がかかる

順調に伝達できているように見えるだろう。

しかしスマホの電池が切れかけていることからも想像できるように、これ、最初に全員が配置についてからすでに2時間以上が経過している。

まず一区間5キロが遠すぎだと分かってそれぞれの距離を縮めたのだけれど、この調整で1時間半くらいかかった。

そしてようやくお互いを認識し旗を振ることができても、お互い素人なので内容まで理解できない。一文字振ったらスマホで「振ったよ!」と連絡、そのたびに望遠カメラで録画しておいた映像を見直しながら早見表で信号を解読していく、という流れである。

メッセージは7文字なのだが、旗を振り始めてから伝え終わるまでに一区間だいたい30分くらいかかる。
つまり第三地点の西村さんはすでにここに2時間以上待機しているわけだ。
つまり第三地点の西村さんはすでにここに2時間以上待機しているわけだ。
この日は平年に比べて暖かかったらしいのだが、それでも海風を受けながら2時間も立っていると体が冷え切る。加えて西村さんは前日から花粉症をこじらせて鼻をずるずるいわせていた。さぞたいへんだったろう、本当に申し訳ない。

しかしさらにかわいそうな人がいた。次の地点で待ってもらっているライター地主くんである。
カメラを構えてはや3時間。
カメラを構えてはや3時間。
「いっかい寝ました」と言っていた。そりゃあ3時間も待たされたら人はどこででも寝る。
「いっかい寝ました」と言っていた。そりゃあ3時間も待たされたら人はどこででも寝る。

第四地点に届くまでに要した時間、約3時間

結局ここまでですでに2時間半くらいかかっている。

江戸の人が大阪から広島まで30分で伝えたっていうのは本当なのだろうか。本当だとしたらものすごく目がよかったのか、ものすごく空気が澄んでいて見通しがよかったのか、昔は時間が経つのが遅かったのか、どれかだと思う(たぶん3番目)。もしかしたら大阪の近くに広島っていう名前の場所があったのかもしれない。
(なんでおれここにいるんだろう)と今日の趣旨を忘れたあたりでようやくメッセージが届く。
(なんでおれここにいるんだろう)と今日の趣旨を忘れたあたりでようやくメッセージが届く。
旗振ってる!
振ってる!
第三地点の西村さんから第四地点の地主くんへと旗が振られた。待ちに待った瞬間である。
「振ったよ!」「すみません、見えなかったのでもう一回!」これを延々繰り返します。
「振ったよ!」「すみません、見えなかったのでもう一回!」これを延々繰り返します。
ここでもやはり「振った」「見えない」を何度も何度も繰り返しながら情報が伝達されていった。

スタートから8キロ先の第四地点まで情報が伝わるのに要した時間、約3時間。7文字を伝えるのに3時間である。歩いた方が速い(言っちゃった)。
この一振り一振りがメッセージ。
この一振り一振りがメッセージ。
じわじわと伝わっていく情報。
じわじわと伝わっていく情報。

情報は伝わったのか

旗振りを終え、最終第五地点へと集まったわれわれに、第四地点の地主くんから最後の旗振りが届く。

さあ、ここまで情報は正確に伝わっていたのか。
3時間半、距離にして約10キロの道のりを超えてメッセージが伝わる。
3時間半、距離にして約10キロの道のりを超えてメッセージが伝わる。
地主くんから振られたメッセージ、それは
「カルカル314」
正解である。

「カルカル314」。3月14日に東京カルチャーカルチャーでアイデムとのコラボイベント「じもリンピック」が開催されるのでみなさん来て下さい。おもしろプレゼン満載なのにチケットは500円ですし、ライターの地元のお土産が試食できたりしますから。という思いを7文字に凝縮した。

これを伝えるのに要した時間、3時間半。伝達できた距離、約10キロ。その価値はプライスレスである。
旗振りを終えて駆け戻ってくる地主くんの笑顔から撮影の苛酷さがうかがえる。
旗振りを終えて駆け戻ってくる地主くんの笑顔から撮影の苛酷さがうかがえる。

昔の人はすごい

スマホを使ったり距離を縮めたり高性能なカメラを使ったりしながらも、僕たちの旗振り通信はいちおうだが内容を最後まで伝達することができた。ということでここは成功と言い張らせていただきたい。最初10人くらいでやろうとしていた自分を思い出すと怖い。

当時の人がどうやって何百キロも離れた場所まで高速でメッセージを伝えていたのか、やってみて初めてその偉大さを実感したのでした。イベント来てね。
じもリンピック
地元の祭典「じもリンピック」チケット発売中!

●第1部(12時~17時):【 地元のたべもの無料試食会(入場無料出入り自由!) 】
●第2部(18時~21時):【 「地元」をテーマにした豪華メンバープレゼン大会! 】 (第2部のみチケットが必要です)

【 第2部プレゼン出演メンバー 】デイリーポータルZ(林、地主、べつやく、西村、玉置、北村、安藤ほか)、オモコロ(原宿、アインツ・ワッパ)、ライブドアニュース(谷口P)、はてなブロガー(暇な女子大生)、ハイエナズクラブ、ほか。

旗振り通信で地元の親に元気ですと伝えたい。


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