窓から見える景色を想像だけで写生します
引っ越しはワクワクする。
だけどいざ引っ越しをするとなると、不動産屋さんをまわって物件を探して荷物をまとめていろいろ手続をして、それはもう面倒くさい。その前に貯金というフェーズもあるぞ。
今回は引っ越しの一番ワクワクする部分だけを味わうことができる遊びを考えたので紹介したい。気になる物件の窓から見える景色を想像して描いてみるのだ。
説明するとこういうことである。
まずは物件さがしから。
まずは物件を選びます。
ここで役に立つのが弊社提供の不動産検索アプリである。その名も「@nifty不動産アプリ」。色気もなにもない名前だろう。今回はこのアプリのプロモーションということになっている。
ちなみにこのアプリがリリースされるにあたり担当者に、「地獄の」を頭につけるよう提案したのだけれど一蹴されている。
手ごろな物件を選んだら間取り図を入手しよう。
検索アプリから各不動産業者さんの詳細ページへ行けるので、そこから間取り図を手に入れよう。実際に引っ越す予定がなくても間取り図を手に入れるのは悪いことではない。
そしたら地図で周辺の様子を徹底的に調べあげる。
次に住所から周辺の地図を見て周りに何があるのかを把握していく。
家の前に道はあるのか、高いマンションやお店は?線路は?もしかして海が見えたりしない?
しっかりリサーチしたらその結果をもって物件の窓から見える景色を想像で描いていく。
しっかりとリサーチしたらこれらの情報をもとに物件の窓から見える風景を想像して写生してみる。
題して「地獄の、窓からの景色を想像写生」、略して地獄写生である。
ひとりでやってももちろん楽しいが、何人かで描いてみて、できあがったら実際にその物件まで見に行って答え合わせするとさらに面白いだろう。
今日は5人で出来を競うことにした。
左からライター西村さん、地主さん、弊社不動産アプリ担当 羽中田、高田、編集部安藤。男性陣がなぜかラーメン屋みたいなポーズなのに意味はありません。
それではさっそく想像力を働かせて窓からの風景を写生していこう。
迷いのない筆さばきを見せるライター西村さん。
今回は8階建てのマンションの最上階の部屋が空いていたのでここをモデルにする。
まず勢いよく筆を走らせたのがライター西村さんである。
西村「これ、ここはどこでしょう?の逆バージョンですね。」
当サイトの人気企画「ここはどこでしょう?」の管理人をしている西村さんに言われてそういえば、と思った。ここはどこでしょう?は写真一枚から場所を特定するが、この地獄写生は場所情報を頼りに絵を作っていくのでまさに逆のアプローチである。
地図のほとんどは地図好き西村さんが持ってきてくれました。
やってみるとこれが意外とむずかしい。むずかしいポイントとしては
・目線の位置がよくわからない
・建物の壁の色がわからない
・遠くにある建物の大きさがわからない
間取り図からわかるのは部屋の方角と窓の位置、地図からわかるのは周辺の建物との位置関係である。
その他の部分はすべて想像で補完するしかないわけで、今回はヒントとして航空写真も見ていいことにしたのだけれど、当たり前ながら屋根の色しかわからない。ストリートビューを使うのは禁止とした。
想像だけでどこまで描けるか
実際の写生では目の前にあるものを見ながら描くのだけれど、地獄写生は目の前に何もない。自由に想像して描いたらいいや、と思っていたのだけれど、そんな簡単なものではなかった。
よく夢はモノクロかカラーか、みたいな議論があるが、これをやってみてモノクロかもなと思った。想像の中では色はさほど意識していない。
その色について、美大卒の地主さんがやはり頭一つ以上抜けていた。
!!
実は地主さん、下書きの時点ではかなりこなれた感じで鉛筆を走らせていたのだ。
地主「こういうのはまず鉛筆でファジーな線を重ねていくんですよ」
地主「これは美大の授業でいうところの「色彩構成」ですよね。勉強したことがあります」
かっこいい、この時は素直に思った。
しかし彼への好印象は下書きを終え、色を塗り始めた瞬間に一変することになる。
彼は何を見たのか。
今思えば彼は夜景を見ていたのかもしれない。
絵のポイントを聞いた。
「やっぱり富士山ですね」
この物件、住所の地名が「富士見台」という。ということは8階からだと富士山が見えるんじゃないか、これは全員の共通の意見だった。とはいえ地主さんの富士山は上が黄色い。どうした、噴火してたか。
続いて西村画伯。私物のベレー帽で参加である。
ベレー帽は私物。
かなりうまい。
西村「町の作り方はシムシティ(ゲーム)で学びました」
さすがは自分がゲームしすぎて仕事にならないため、息子のゲーム機を妻におねがいして隠してもらった西村さんである。役に立つ技術もゲームから得ている。
そのおかげか、立体感というか遠近感に違和感がなく、全体につじつまがあっている。8階という高さをかなり高めに予想しているような気もするが、そのあたりがポイントになるかどうか。
続いてアプリ担当の弊社羽中田。
人の後姿から描かれているのが特徴。
羽中田は「はなかた」と読むのだけれど、珍しい苗字なので市販のハンコがないのだとか。
羽中田「いちど羽田と中田、ふたつのハンコを買ってきてずらして押してみたんですが、違いました」
違うだろうよそれは。
そんな大胆さが写生にも出ているようだ。目線的には西村さんに比べかなり低めで、ほぼベランダの高さに電車が走っている。
もう一人の不動産担当、弊社高田はどうだ。
かわいい。
なんというかかなりかわいい。素朴で純粋な絵に人柄が出ているようだ(ほぼ初対面なので人柄とかあまり知らないですが)。
富士山の手前にある岩の塊から松が生えたみたいなやつは地図で見つけた大きなお屋敷とのこと。でかい家は山の上に、という昔話をベースにしたような先入観を持つ彼に勝利の女神はほほえむか。
次に僕だが、先に言っておくとまったく人のこと言えない。
ザ・人のこと言えない。
地図によると目の前を鉄道が走っているので、これがポイントとなるはずなのだけれど、考えてみると鉄道の高架がどういう形状しているのか、これまで意識して見たことがなかった。ふだん見慣れた景色と思っている景色ほど、実はよく見ないままやりすごしている景色なのかもしれない。
では描いた絵を持って実際の物件を見に行って答え合わせしてみよう。
手ごろな物件をだらだら眺めているだけでいい暇つぶしに。
物件を見に行って答え合わせ
窓からの景色を想像で写生したら次はいよいよ実際に見に行って答え合わせである。絵を描くのも楽しいけど、実際の景色を見に行くのはもっと楽しい。
なにしろ物件を見に知らない駅に降りること自体たまらない。
駅を降りると知らない町のはずなのになんどなく来たことがあるような感覚がある。
あれ、この高架こんなに高かったっけ!とか。初めて見るのに。
よく初めて行く取材場所まで迷わないよう、あらかじめストリートビューで景色を確認したりするけど、そんな感じである。今回はストリートビューを使っていない分、いっそうまじめに地図を読み込んできた。
おかげで思いもよらない場所に思いもよらないお店を見つけたりすると興奮する。
この八百屋さん、地図ではわからなかった。
駅を降りてしばらく歩くと今回僕たちが想像した物件の本物が建っていた。
右が今回対象としたマンション。この最上階である。
前に立った瞬間の「あー、ここね」感がすごい。ここにいる誰もが初めて見る物件のはずなのに。個人的には「思ったより高いな」と思った。地図では「見上げた」感じは伝わらない。
ワクワクしながら部屋へと向かう。
すでにみんな「8階だと引っ越しが大変だなー」とか「周辺にコンビニとか薬局があって住みやすそうでよかった」とか、越してきた人目線になっているのも面白い。地主さんは本気で最近引っ越し先を探しているらしく、今回物件を案内してくれた日昇ホームの生形さんに値切り始めていた。
今回は特別に不動産屋さんにも協力を頂いているので内見させてもらっているが、ふつうは忙しいと思うので物件の前まで行って確かめる、くらいでもいいと思います。
こちらです!
それではいよいよ実際の物件の窓から景色を眺めましょう。
どうぞ!
「ほら!」「そうか!」
これが窓から見えた正解の風景。
窓を開けた瞬間の「この景色知ってる!」という感動は教科書で見ていたピラミッドを生で見たときと同じである。目の前にあるのがスフィンクスか西武線かの違いだけだ。
さて、みんなの写生した絵と見比べてみよう。
じゃーん。
目線の高さ的には西村さんが一番いい線いっているか。逆に西村さん以外はみな低すぎである。
「だから8階はけっこう高いって言ったじゃないですか。」
僕を含め西村さん以外はみんな西武線の高架を真横から描いているのだけれど、窓から見える景色はほぼ真上から見ているような具合だった。この角度だと線路しか見えない。ここは西村さんのみポイントゲットである。
そしてビルの色に関してはなんと地主さんがいい線いっていた。
「ビルって意外とカラフルなんですよ。」
予想していた景色なのに絵にするとなんでこうも違うのか。
今回、全員が見落としていたのが遠くに見える巨大なマンション群である。まさかあそこまで見えるとは思わなかった。
特徴的な風景の一つといえる。
そしてもうひとつ特徴的な景色が富士山である。
富士山については想像よりもかなり大きく見えた。
富士山ってこんな大きいんだ!と感動するビュー。
さすが富士見台である。名前のとおり立派に富士山が見える。これだけで家賃が高くなってもおかしくないほどのいい眺めである。
総合的に見て初戦は西村さんの勝利と言っていいだろう。目線の高さと線路の見え方、そして向かいの建物のスケール感をほぼあてたのがすごい。
もう一件描いてきているので次の物件に行ってみたい。
「2月3月が物件数のピーク、5月以降はお得な物件が出始めます。」不動産屋さん情報。
二回戦は1階
次の物件は建物の1階である。
同じように不動産アプリから間取り図を入手、窓のある方向を地図で調べて窓からの景色を地獄写生する。
みんな最初よりも描くスピードが上がった。
間取り図と地図から目の前の風景を割り出す。
今回の物件は目の前に道が走っていてその後ろが空き地になっているのだ。しかし地図だけではこれが空き地なのかグラウンドなのか畑なのか判断できない。ここで想像力が物を言う。
さっそくだけど出来上がった絵を見ていこう。まずは前回覇者、西村さん。
ちょっと自信なさげ。
目の前に広がる畑、その向こうにあるマンションだろうか、建物がかなり詳しく描かれている。
西村「目の前にある空き地、これ畑だと思うんですよ。練馬って大根が有名じゃないですか。こういう畑が多いんですよね。」
西村さんの長年蓄えた地理の知識が想像力に確かさを与えている。
次はアプリ担当高田くん。
また可愛い絵を描いてきた。
これ以上ないというくらいぼんやりとした絵である。赤い車は苦し紛れだろう。僕も埋め草的に車を描いたのでわかる。空き地は西村さんと同じく畑と予想。
続いて地主画伯の作品。地主さんは他の4人とは違い、東側の窓から斜めに空き地を眺めているのだとか。
叫べ。
ムンクもびっくりの色彩である。子どもがこの絵描いてきたら一度じっくり話を聞く必要がある。
弊社羽中田の作品。
ポイントはこの花壇。「ほら、こういう場所ってだいたい花が植えられていないですか」と。それぞれに想像力が加速し始めている。
またしても自信ない。
ポイントは窓枠から描いたこと。1階の道沿いということもあって、窓は高めに、そして小さく設定されているんじゃないかと思ったのだ。僕も空き地は畑と予想した。うわっているのはなんとなく人参である。
それでは今回も答え合わせの内見会、行ってみよう。
いざ内見へ。
地主さんのお父さんは最近物件を「現物を見ずに」決めたらしいです。そんな猛者にもこのアプリ。
興奮の答え合わせ、再び
不動産屋さんの車の後ろ席に乗せてもらっての内見というのはどうしてこうも興奮するんだろう。
知らない道をしばらく走るとなんとなく見たことのある景色が現れた。
あ!この畑しってる!
物件の前に着いた瞬間、ここだとわかった。
全員が初めて来たはずなのに、見たことのある景色に思えてくる。人工的デジャヴュ。この瞬間が地獄写生の醍醐味でもある。
あー、ここ知ってる知ってる!ってなるけど実は全員初めて来ています。
さて、今回も描いた絵と実際とを見比べて答え合わせしてみよう。
おじゃましまーす。
おかげで間取りも知ったものである。一番奥の部屋に南向きの窓があるはずだ。
あった!でも意外と小さいぞ!
窓が意外と小さい。これは僕が予想したとおりではないのか。
窓が意外と小さい。それを予想していた僕の絵。
怖い!自分の才能が怖い。
窓から見える風景はどうか。
これが実際の物件の窓から見た風景。
どうだろう、想像通りだろうか。
まずは東側のベランダから斜めに畑を見た景色を描いた地主さんから。
「僕はこっちを見ていました。」
絵のタッチとかそういうことはこの際置いておいて、ベランダのすぐ横にある植え込みが描かれていないのは大きな減点である。隣にもマンションがあるのは地図でわかっていたはずだ。ならば目隠しがあると予想できてしかるべき。
同じミスをしたのが弊社羽中田。
やはり植え込みを予想できていない。
それともこのチューリップが植え込みのメタファーか。
一方、今回もかなりいい線行っていたのが西村さんである。
畑の向こうにある建物の形状まで完全に予測。
色は違うが感じはかなり似ている。
向かいの建物の前にある駐車場に止まっている車の向きまで当ててきた。なんでだ、前この部屋に住んでいたのか。
そしてさらにこの畑に植わっているものだが
まさかの
大根!
西村さんの言うとおり、大根だったのだ。すばらしい。
一問目に続いて二問目も西村さんに取られた形である。
しかしこの結果に異を唱えた男がひとり。
高田「でも目の前の道を赤い車が通れば僕の勝ちですから。」
アプリ担当弊社高田である。適当に描いた赤い車にすべてを賭けた。
しかしその直後、無常にもわれわれの前を通り過ぎたのは黒い原付だった。この道は細いので車どおりはさほどないのだとか。
ぶーん。
この時点で西村さんの二連勝が決まった。次回やるときには西村さんだけ地図抜きのハンデを課したい。
現地に行った時の興奮がすごい
地獄写生は描く段階で間取り図と周辺地図をかなり熟読するためか、現地の駅を降りた瞬間から「ここ知ってる」感がおもしろい。
この道、一方通行なんだ、とかこんなところに八百屋があるぞ、とか、想像と実際とのずれを現地で確かめるのもまた一興である。
引越しを考えている人も、そうでない人も、地獄写生、お勧めです。
焼肉屋さんでした。においまでは想像できないので行かなきゃわからない情報。