特集 2015年1月13日

魚の醤油入れで作るスイミー

「みんな集まって大きな魚になるんだ!」はたしてスイミー(醤油入れ)の運命は?
「みんな集まって大きな魚になるんだ!」はたしてスイミー(醤油入れ)の運命は?
なぜか魚型の醤油入れが家に1000個ある。邪魔でしょうがないので何かに使えないか……魚、たくさん、あ、スイミーか。

小学校の国語の教科書に載っていた物語『スイミー』だ。小魚がたくさんあつまって大きな魚の形になって悪い魚を追いちらすのだ。

あれは実際にやったらどんな感じなんだろう。醤油入れでやってみた。
1980年生。明日のアーというコントのユニットをはじめました。動画コーナープープーテレビも担当。記事はまじめに書いてます(動画インタビュー)

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> 個人サイト Twitter(@ohkitashigeto) 明日のアー

年末年始の特別企画で醤油を入れる内職という場面を撮った。そんな内職なさそうだ。(記事『迷惑メールを実写化してみた』はこちら)
年末年始の特別企画で醤油を入れる内職という場面を撮った。そんな内職なさそうだ。(記事『迷惑メールを実写化してみた』はこちら

醤油入れが1000個ある

昨年末、動画コーナー・プープーテレビで内職をしてる場面を撮った。そこで小道具として使ったのが魚の醤油入れ。1000個で2800円くらい。

参考 記事『迷惑メールを実写化してみた

「はいオッケーです」と撮影が終了したその瞬間、魚の醤油入れは小道具からゴミに変わった。わが言葉が発端ながら、ガラガラガラと音を立てて価値が崩れていくような瞬間だった。

もう一度こいつらを蘇らせたい。今度はそう、魚として。あのスイミーを演らせてやりたい。

せっかく買ったんだからという貧乏くささを監督心みたいなものでカムフラージュしてスイミーを作ることにした。
1袋200個入りが5袋。全部で2800円くらい。
1袋200個入りが5袋。全部で2800円くらい。
中央化学という日本を動かしてそうな名前の会社で魚の醤油入れは作られていた
中央化学という日本を動かしてそうな名前の会社で魚の醤油入れは作られていた

まずは赤いキャップをはめよう

まずはキャップを全部はめる。

原作で黒いスイミー以外は「赤い魚」という設定になっている。キャップが赤いので一応はめたほうがいいかなと思ったのだが、「ほうがいいかな」ではめるには1000個は多すぎた。

内職1セット分くらいあった。(弟を学校に通わせるために…)と思い込んで地道にやった。
はい、はめました。普通の内職でした
はい、はめました。普通の内職でした
これがスイミー。谷川俊太郎訳だったのか(作=レオ・レオニ 訳=谷川俊太郎 1969 好学社刊)
これがスイミー。谷川俊太郎訳だったのか(作=レオ・レオニ 訳=谷川俊太郎 1969 好学社刊)

スイミーとは?

準備は整った。さあ、スイミーである。小学校の国語教科書に載っていた物語である。

話はこうだ。黒い魚スイミーは赤い魚たちと出会う。彼らと遊びたいのだが、みんな大きなマグロを怖がって穴から出ようとしない。スイミーは赤い魚を集めて1匹の大きな魚の形で泳ぐように提案し、自分は体の黒さをいかして目となった。彼らはマグロを見事に追い返した。

一人だけちがってもいいんだとかみんなの力を合わせればとかの教訓を得られもするが、全体的に魚版欽ちゃんの仮装大賞みたいな話である。
かつて赤い魚の兄弟がいたスイミー。しかしスイミーの兄弟はマグロにたべられてひとりぼっちに
かつて赤い魚の兄弟がいたスイミー。しかしスイミーの兄弟はマグロにたべられてひとりぼっちに
ある日同じ赤い魚の仲間を見つけた。しかし仲間たちはマグロをこわがって外であそぼうとしない
ある日同じ赤い魚の仲間を見つけた。しかし仲間たちはマグロをこわがって外であそぼうとしない
スイミーは「みんなで集まって大きな魚になるんだ」と声をかけた。はたして作戦はうまくいくのか……それにしても仲間が多い。何もしなくてもマグロ逃げそうだ
スイミーは「みんなで集まって大きな魚になるんだ」と声をかけた。はたして作戦はうまくいくのか……それにしても仲間が多い。何もしなくてもマグロ逃げそうだ
ちなみにこの先にめんどくさい作業が待ってるのがわかってるため、物語再現写真はこれくらいのテンションでお届けしています
ちなみにこの先にめんどくさい作業が待ってるのがわかってるため、物語再現写真はこれくらいのテンションでお届けしています

くっつけて大きな魚を作るだけ!

今日やることはかんたんである。醤油入れをくっつけて大きな魚をつくるだけ。

なんせもともとが魚がやるくらいのかんたんさだ。最終学歴がめだかの学校でもできたことだろう。大学に行かせてくれたお父さんお母さんすいません。

くっつけるのはホットボンドを使った。ところがこれがカッチリとはくっつかない。お父さん、ぼくはめだかに勝つために院に進めばよかったです。
ホットボンドでくっつけようとするも塩ビがつるつるしすぎてくっつかない。接着剤を店に買いに行く
ホットボンドでくっつけようとするも塩ビがつるつるしすぎてくっつかない。接着剤を店に買いに行く
プラスチック用両面テープ、ホッチキス、接着剤、などいろいろためして結局ホットボンドに戻ってきた。魚の醤油入れは地球史上一番くっつきにくいものだ。
プラスチック用両面テープ、ホッチキス、接着剤、などいろいろためして結局ホットボンドに戻ってきた。魚の醤油入れは地球史上一番くっつきにくいものだ。

地味、地味、地味!

ホットボンドでカッチリくっつかないので何かないかと店に行ったらどの接着剤もポリエチレンはNG。これそもそもがくっつけにくいものなのだ。

ここにきてスイミーの苦労を知る。作家のレオ・レオニは「スイミーは赤い魚たちをくっつけるのにいい接着剤がないことを知った」とちゃんと書いておくべきだった。
寝た。「…スイミーやらないと」と夜2時頃起きだした。最近、人生についてよく考えるようになった
寝た。「…スイミーやらないと」と夜2時頃起きだした。最近、人生についてよく考えるようになった
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半分くらい使った。ここから大きくしていくだけだ
半分くらい使った。ここから大きくしていくだけだ

朝までスイミーを作る

なんせ1000個である。うまく魚に見えるように、よくくっつく場所を探しながらの1000個。花が、花が、花が咲く。面倒の花がまた咲いてしまう。

魚をくっつけて、ご飯を食べて、うっかり寝てしまってまた起きて魚をくっつけて。昼間にあった嫌なことを思い出して、憤ってちくしょうちくしょうと思いながらも醤油入れの魚でずスイミーを作っていた。

朝日が部屋にさしこむころ、スイミーの魚はできた。出来上がりのタイミングだけは絵本っぽかった。
ホットボンドを2セット使い切った
ホットボンドを2セット使い切った
ちょうど娘が起きてきた。ちょっとスイミーの物語をきかせてやろうか。この醤油がスイミー。小さな魚
ちょうど娘が起きてきた。ちょっとスイミーの物語をきかせてやろうか。この醤油がスイミー。小さな魚
スイミーは仲間たちに声をかけたんだ。海で一番大きな魚のふりして泳ごうって。
スイミーは仲間たちに声をかけたんだ。海で一番大きな魚のふりして泳ごうって。
そしてスイミーは一人だけ黒いから目になった
そしてスイミーは一人だけ黒いから目になった
大きな魚はできた。マグロもびっくりして逃げていった
大きな魚はできた。マグロもびっくりして逃げていった
スイミーの話どう思った?「でっかいねー!」そうだね、醤油入れにしてはでっかいよね
スイミーの話どう思った?「でっかいねー!」そうだね、醤油入れにしてはでっかいよね

醤油入れでスイミーの大きな魚ができた

魚の醤油入れでスイミーができた。4歳の娘が「でっかい魚がいる!」とさわいでいた。たしかにでかい。これが醤油入れだとは。一升瓶3本くらい入りそうだ。

もちろんマグロに比べたら小さい。スイミー自体もう少し大きな魚なのだろうか。10cmくらいあったら魚も3mくらいになったろう。(そもそも仲間が1000匹なのかもわからない)

しかし怖い。魚の目はそもそも丸いがスイミーは魚なので細長い。できた魚もヤンキーみたいな顔をしていた。威圧感も相当だ。これでマグロは逃げていったのだろう。

よかれと思ったやったことだろうが、実際のスイミーは目つきが悪い。
魚の醤油入れでスイミーができましたよー
魚の醤油入れでスイミーができましたよー
ほーら、ぴっちぴちの、とれたばかりの、スイミーが
ほーら、ぴっちぴちの、とれたばかりの、スイミーが
おほーっ(やることがない)
おほーっ(やることがない)
これが魚の醤油入れでできたスイミーです
これが魚の醤油入れでできたスイミーです

こうしてまた要らないものに戻っていく

ホットボンドの接着はやはり甘く、外に撮影しに出かけるとぽろぽろ醤油入れが落ちていった。寿司屋に生まれたヘンゼルとグレーテルみたいだった。

そして撮影は終了。

もういいかなと思った瞬間にまた無用の長物と化した醤油入れ。無駄なものから一瞬だけ花を咲かせてまた無駄なものに還っていく。ああ、こんなことをしてていいのだろうか。

要らなくなった瞬間にスイミーを急に重く感じる。醤油入れといえど総重量は2kg近い。大変だった。

これだけ集めて泳ぐのはスイミーも大変だったろうと思うが、あいつはポリエチレンをホットボンドでくっつけたりはしなかったろう。おれの方が大変だ。勝った。しかし、人生ではどうだろう。こんなことをしていて、いいのだろうか。
彼がスイミー。相当にしょっぱい。
彼がスイミー。相当にしょっぱい。
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