新宿駅すごい
まずはとにかく今回案内してもらった「駅もれ」の数々をご覧頂きたい。
あとであらためてご紹介しますが、「駅もれ」の管理人(やっぱり古くさい呼び方ですけど、じゃあなんていえばいいんだ)萩原さんと新宿東口改札の駅もれ。
これも「駅もれ」。同じく新宿。ダイナミック!(後述する理由で新宿のは見えづらいので際立たせています
黄色いテープが警告を兼ねているのかしら。日本橋駅。
手作りでひとつとして同じ形のものがない
ひさしみたいになってるタイプ。東京駅自由通路。
トラテープが目も彩。シートをねじってチューブにしているのがすごい。浅草。
防煙の仕切りに這わせた事例。苦労がしのばれる。日本橋。
いかがだろうか。おもしろいよね!ね!
そう「駅もれ」とはこのような、駅構内における漏水対策の愛おしい造形物のことだ。特に地下の構内に特徴的だ。地下水が圧力で漏れてきてしまうのだ。雨漏りとはちょっとちがう。それにしてもこうやってまじまじと見てみるとほんとおもしろい。
みなさん一度は目にしているはずだけど、じっくり鑑賞したことはないだろう。ぼくも「駅もれ」を見たとき「ああ!そういえばあるねえ!」と再認識して感動し、やられたー!と悔しく思ったものだ。
そう「駅もれ」とはこのような、駅構内における漏水対策の愛おしい造形物のことだ。特に地下の構内に特徴的だ。地下水が圧力で漏れてきてしまうのだ。雨漏りとはちょっとちがう。それにしてもこうやってまじまじと見てみるとほんとおもしろい。
みなさん一度は目にしているはずだけど、じっくり鑑賞したことはないだろう。ぼくも「駅もれ」を見たとき「ああ!そういえばあるねえ!」と再認識して感動し、やられたー!と悔しく思ったものだ。
ぼくら以外は誰もじっくりみてませんでした。そりゃそうか。
今回萩原さんに「駅もれ巡り」をお願いしたところ、新宿集合となった。なぜなら「新宿はすごいんです」とのこと。いざそういう目で見てみると確かにすごい。さんざん通っていたのに、こんなにも駅もれ天国だとは気がつかなかった。不覚。
だいたい集合場所の新宿駅東口からしてこの巨大駅もれ作品!
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掘ると、出る
今回初対面だったのですが、萩原さんのおしゃれでかっこいいスタイルにびっくりしました。Tシャツの胸もと「駅もれ」ロゴに注目だ。
全国の駅もれが載ってます。すごく楽しい。インターネット万歳。
「以前は市ケ谷に住んでいたので地下鉄の駅もれをよく見てたんですけど、いまは中央線なので駅もれ文化からちょっと離れてしまって…」という萩原さん。駅もれ文化て。
だいたい「駅もれ」というネーミングがすばらしい。「建て書き」に並ぶ名ネーミングだ。「名前を何にしたらよいか友人と案を出しました」とのこと「その友人が言ったのが『駅もれ』でこれを超えるアイディアは出ませんでしたね」。
で、上のポートレイトもJR新宿駅なのだが。この立っておられる脇にある駅もれに関する萩原さんの説明がとても面白かった。
だいたい「駅もれ」というネーミングがすばらしい。「建て書き」に並ぶ名ネーミングだ。「名前を何にしたらよいか友人と案を出しました」とのこと「その友人が言ったのが『駅もれ』でこれを超えるアイディアは出ませんでしたね」。
で、上のポートレイトもJR新宿駅なのだが。この立っておられる脇にある駅もれに関する萩原さんの説明がとても面白かった。
この壁面広範囲に張られたシートも「駅もれ」
戦いの歴史が見える
「いまの前の対策の跡が見えますねー」と言われて見れば、ガムテープの跡が。なるほどこういうところまで観察しているのか!
ここに限らずこういう「駅もれの地層」ってしばしば見かけるという。いっそちゃんと排水設備みたいのつくればいいのに。根本的な対策ってしないんだろか?
「たぶんいま新宿駅がこういう状態なのは、漏水の対策もあると思うんですよね」と萩原さん。「こういう状態」っていうのは下のように駅構内全体が養生で覆われている状態のこと。
ここに限らずこういう「駅もれの地層」ってしばしば見かけるという。いっそちゃんと排水設備みたいのつくればいいのに。根本的な対策ってしないんだろか?
「たぶんいま新宿駅がこういう状態なのは、漏水の対策もあると思うんですよね」と萩原さん。「こういう状態」っていうのは下のように駅構内全体が養生で覆われている状態のこと。
どこもかしこも覆われていて、ついうっかり「ぜんぶ駅もれか?!」と見まごうばかり。
本原稿執筆現在JR新宿駅構内、特に北通路はやたら布で覆われている。おそらく大規模な改修が行われているのだろう。南口の再開発と合わせてのことなのかな?
前ページの写真で駅もれ以外の背景を暗くしたのは、どこもかしこも駅もれみたいで見分けがつかないからだ。まあ実際いたるところ駅もれだらけなんだけど。
前出の地層見て「根本的な対策ってしないんだろか?」とは思ったが、考えてみればそもそも全ての駅もれが「その場しのぎの応急手当」なわけで、漏水しました、はいじゃあすぐ根本的な対策しましょう、とはなかなかいかないことを示しているのだ。
ぼくが駅もれをおもしろいなあ、と思った理由のひとつはここにある。つまり「地面を掘ると水が出る」「そしてそれは予想がつかない」「水自体を止めることはできない」というどうしようもなくままならない人間と地中とのせめぎあいがシートとガムテープの手仕事によって現れているのだ。
前ページの写真で駅もれ以外の背景を暗くしたのは、どこもかしこも駅もれみたいで見分けがつかないからだ。まあ実際いたるところ駅もれだらけなんだけど。
前出の地層見て「根本的な対策ってしないんだろか?」とは思ったが、考えてみればそもそも全ての駅もれが「その場しのぎの応急手当」なわけで、漏水しました、はいじゃあすぐ根本的な対策しましょう、とはなかなかいかないことを示しているのだ。
ぼくが駅もれをおもしろいなあ、と思った理由のひとつはここにある。つまり「地面を掘ると水が出る」「そしてそれは予想がつかない」「水自体を止めることはできない」というどうしようもなくままならない人間と地中とのせめぎあいがシートとガムテープの手仕事によって現れているのだ。
これは恒久的な対策を目指したもの。だが手仕事感がすごい。浅草線高輪台駅の壁。「高輪台駅の壁がすごい」より。
大人になるとそういう職業の方以外は、地面を掘る、ということをしなくなる。穴掘り大会に出場でもしない限り。だから忘れちゃうんだけど、穴掘ると水が出るんですよ。これはもうほぼ必ず。地下工事とは畢竟、水との戦いなのだということをぼくはここ数年の土木工事現場の取材で知ったわけです。上の高輪台駅なんて水出ちゃってたいへん!っていうのがまざまざと現れているし、下の外郭放水路だって!
みんな大好き外郭放水路のあの柱群だって、地下水で施設が浮かないための重りだっていうじゃないですか。地下水すごい。(「500トンの柱が59本!」より)
大雨の時に水を貯める地下空間が、そのままだとなんと地下水で浮いちゃうから重しをしてるという2種類の水対策をしてる。ほかにも少し前に話題になったけど、上野駅や東京駅がアンカー打ったり重りを仕込んだりして、地下水で浮かないようにがんばっているというニュースもあった。
とにかく掘ると水が出るのだ。駅にいると分からないけど、壁の向こうには地下水がたぷたぷしているのだ。地下鉄とは潜水艦だ。「駅もれ」はそのことをカジュアルな形で示している。
とにかく掘ると水が出るのだ。駅にいると分からないけど、壁の向こうには地下水がたぷたぷしているのだ。地下鉄とは潜水艦だ。「駅もれ」はそのことをカジュアルな形で示している。
みんなで見ると楽しい
駅もれに群がる参加者一同
と、まあ地下に思いをはせちゃいましたが、そういう小理屈は置いといても、駅もれ鑑賞は楽しい。今回は萩原さんというエキスパートと、同好の士15名で見て回ったのでなおさら楽しい。「駅もれを見に行きませんか」とTwitterで参加者を募ったのだ。そして集まった好事家たち。
駅もれを見ないかと呼びかけると、知らない人たちが集まる。日本ってすばらしいと思う。
駅もれを見ないかと呼びかけると、知らない人たちが集まる。日本ってすばらしいと思う。
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ここすごいですよ!とひときわ布で囲まれたエリアに行ってみると、たいへんなことに。みんなでぷよぷよ触って感触を確かめた。
鍾乳洞みたいになってる。みんなで見ていたら。
「何見てるんだろう」といぶかしがられる。
板を貼り、照明の後ろへ流している。こういうのもあるのか。
照明の裏はどうなっているんだろう?と必死にのぞき込む(どうなっているのか分からなかった)
みんなで見て回る利点は、人目を気にせずじっくり見ることができることだ。ひとりだと、なんか気恥ずかしくてなかなかできない。
みなさんも駅もれを鑑賞する際にはお友達を誘ってのほうがいいと思います。
みなさんも駅もれを鑑賞する際にはお友達を誘ってのほうがいいと思います。
「これはいい、これはいい」とかけよる一同。なかまってずばらしい。
これ、ぼくがかなりぐっときた駅もれ。梁全体にわたる広範囲な駅もれだが、中央を引っ張っている。これはおそらく両脇に向かって水勾配をつけるためだ。けなげ!
そして、なかまがいっしょならその水勾配の具合をぺたぺた触って確かめることだってできるのだ。
新宿駅で一番興奮したのはこれ。改札口の係員さんのブース
これもひとりだとまじまじと見ることができないだろう。なかまってすばらしい。
さて、今回萩原さんに教えてもらった駅もれの見どころを紹介しよう。
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駅もれの裾
駅もれといえば、しみ出してきた水を受け止め、人に当たらないように流し、下のバケツに導く、というのを想像するだろう(ふつう何も想像しないですかそうですか)。
今回案内してもらって、まずびっくりしたのは、最終的にべつに水を貯めないケースが多いことだ。
今回案内してもらって、まずびっくりしたのは、最終的にべつに水を貯めないケースが多いことだ。
かなり大きな駅もれだったのだが、最終的にはラフな裾の仕上がり。
「番線表示を避けるようになっているのがいい」と萩原さん。なるほど、駅って表示だらけだから駅もれもたいへんだ。で、この裾も…
てきとうにぐるっと巻いて止めておしまい。オブラートに包まれた粉薬みたい。
そんなにじゃばじゃば水が出るわけではないので、これでいいのだろう。流す、というより蓋をする、という感じか。
「バケツを置かない理由はほかにもあります」と萩原さん。
「バケツを置かない理由はほかにもあります」と萩原さん。
新宿にはめったにないという、バケツに貯めてるタイプ。蓋が置かれているその理由は。
かならずそこにゴミ入れるやつが出てくるから。駅ってたいへん。(これは浅草地下街)
これは東京駅。こうやって平常時は逆さまにすることでゴミ投入を防いでいる。
チューブで導いて、袋へ、というものも。
大量に水が出る場合は、こうして「バケツ問題」が起こる。ゴミ捨てる輩が出てくるからだ。それ以外にも、人通りが多いので蹴飛ばしてしまう、という問題もあるだろう。
駅もれがこんなに苦労しているとは思わなかった。
駅もれがこんなに苦労しているとは思わなかった。
広い通路のど真ん中にものなどは、しょうがないのでしみ出したところで吸収、という手段に出ている。女性の生理用品的な解決策だ。なるほど。
いろいろなものを避ける
本ページ冒頭で萩原さんが好きだという「表示を避ける駅もれ」を紹介したが、これに限らず、多くの駅もれがいろいろなものを避けた形になっている。
さっきのと違って番線表示は光って透けて見えるので覆っちゃってもよし。
たとえば上のものは監視カメラを避けている。これはシビアだよねえ。
この「避けるのに必死問題」は場所を移して東京駅でご覧頂こう。
この「避けるのに必死問題」は場所を移して東京駅でご覧頂こう。
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東京駅と新宿駅の違い
東京駅。みんなが「これはすてき!」と盛りあがった優秀作。
消火栓を避けた結果、台風の進路のようなチューブ曲線に。なぜ左に避けなかったのか。
「東京駅もいいんですよー」と萩原さん。新宿から東京駅へ。駅もれを見るために。15人がぞろぞろと。
で、出逢ったのが上の駅もれ作品。これは満場一致で「すてき!」との高評価。ぽかんとしないでください。いいんですよ、これが!
で、出逢ったのが上の駅もれ作品。これは満場一致で「すてき!」との高評価。ぽかんとしないでください。いいんですよ、これが!
話し合った結果「看板に描かれた曲線に合わせたに違いない」という説が。
で、萩原さんがおっしゃるとおり、東京駅がまたすばらしくて。
新宿がダイナミックさを信条とするならば、東京駅は繊細さで勝負、といったところだ。
新宿がダイナミックさを信条とするならば、東京駅は繊細さで勝負、といったところだ。
うっとりと見つめる一同。
新宿にはなかった繊細さ。
このように東京駅はチューブ使いが目立つ。おそらく人が歩く空間を必死に避けようとした結果、このような仕事ぶりになったのだと思われる。新宿の大味な作品群を見たあとからすると、その繊細さにうっとりする。しまいには参加者の中からは「このチューブほしい!」という声まで。おちつけ。
「新宿の担当者は東京に研修に来たらいいんじゃないですか」
「いや、あれはあれで」
「東京の人が異動になったらすぐ分かりますね」
など駅もれ担当者妄想話まで。
そうそう、そもそもこれらの駅もれをだれがつくっているか調べたことありますか?と萩原さんにきいたところ「一度終電直後に作業している現場を見たことがありますが、ふつうに駅員さんがやってました」とのこと。やっぱりそうなんだー。手作りだもんなー。
「新宿の担当者は東京に研修に来たらいいんじゃないですか」
「いや、あれはあれで」
「東京の人が異動になったらすぐ分かりますね」
など駅もれ担当者妄想話まで。
そうそう、そもそもこれらの駅もれをだれがつくっているか調べたことありますか?と萩原さんにきいたところ「一度終電直後に作業している現場を見たことがありますが、ふつうに駅員さんがやってました」とのこと。やっぱりそうなんだー。手作りだもんなー。
柱がせめぎ合う場所にあるこの駅もれもすばらしく
こっちと向こう、2箇所の漏水箇所からなるべく人の邪魔にならないように一直線に柱に向かって滑空し、
交差して着水。
さて、すでにこの記事5ページ目だが、まだまだ紹介したい駅もれがたくさんある。今計算したら10ページぐらいになっちゃうので、ぐっとこらえて今回見たものの中からびっくりしたものを3つだけご紹介して終わりにしよう。
まずは萩原さんをして「今までで一番すごいと思った」と言わしめた東京駅の作品。
まずは萩原さんをして「今までで一番すごいと思った」と言わしめた東京駅の作品。
一同が歓声を上げた作品。さすが東京駅、といった感じだ。
「東京駅の矜持が感じられますねえ」と萩原さん。「新宿駅だったら全面覆っちゃうよね」。
繊細すぎて写真では強調してある。実物は総武線乗り場へと続く丸の内側の地下中央口にあるのでみなさん鑑賞しに行ってほしい。個人的にはこれを「駅もれ界のグランスタ」と呼びたい。
残りふたつは浅草地下街と、浅草線の東日本橋駅のものだ。これがすごかった。
繊細すぎて写真では強調してある。実物は総武線乗り場へと続く丸の内側の地下中央口にあるのでみなさん鑑賞しに行ってほしい。個人的にはこれを「駅もれ界のグランスタ」と呼びたい。
残りふたつは浅草地下街と、浅草線の東日本橋駅のものだ。これがすごかった。
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手作り感きわまれり
ご存じ浅草地下街。デイリーポータルZでは「時をかける地下街」などに登場している実に味わい深い地下。
神田、三原橋とあいついで古い地下街がなくなってしまって、ちょっと心配だったのだが変わらずたたずまいで安心。左に見えるのは「浅草にある700円の床屋さん」の店。
日本で一番古い神田の地下街、二番目の三原橋地下街がなくなった今、現存する最も古い地下街となった浅草地下街。ここの駅もれは、ある意味もっとも駅もれらしい作品だった。
みんな大喜びの逸品
傘の再利用!
「なんといっても水を防ぐにはうってつけの材料ですからね」と萩原さん。ときどきこういうものがあるそうだ。ぼくは初めて見た。
しかも傘の一部に穴を開け、そこにじょうごを取り付けた後チューブで導くという手の込んだ仕掛け。
駅もれの面白さが「専門家でない人による手作りの暫定的対応っぷり」にあるとすれば、浅草のこの作品はまさにキング・オブ・駅もれといえるのではないか。東京駅のもいいけど、こういう素朴なやりかたもいい。
かと思えば駅もれなしで漏水の下にバケツを置いただけの対応も。新宿や東京駅ではありえないおおらかさ。
さて最後。これは実は駅もれとはいえないかもしれないが、衝撃の作品だったのでぜひ見てもらいたい。都営浅草線の東日本橋駅である。
浅草線の改札出てすぐの、対向ホームへ行くための通路にそれはある。
なにかと覗くと…
なんと漏水を見せるための窓!鍾乳洞のようにミネラルが固まっている。
さらに内部には造花が置かれている。
これは参加者のお一人に教えてもらったもので、萩原さんも知らなかった。駅もれとは違うが、漏水対策ではある。見せる漏水。いわゆる「見せ漏」だ。これからは待ち合わせ場所などに活用したらどうだろうか。「東日本橋の見せ漏に13時ね!」とか。
あらためて、地下ってたいへんだなあ、と思った。
みつけたら「駅もれ」に送ろう!
とても楽しかった「駅もれ巡り」。またお願いして開催してもらおうと思います。とりあえずみなさん見つけたら「駅もれ」さんに送ろう!
こういうふうに恒久的対策を施されるものもあれば
これから新たに生まれるであろう駅もれ予備軍もいる。