写真見返すとやっぱすごい
2014年2月8日、東日本を大雪が襲った。東京都心では実に45年ぶりとなる積雪27cmを記録。
「ソチより雪あるよ!」とか言ってましたね。
未明より降り始めた雪は午後より一層激しく、時おり風に吹き上げられながら際限なく落下し、辺りを埋めつくしていた。
公園の池もこのとおり。
よりにもよってこんな時に家に食料の備蓄が米一粒すらなかった。
このままでは空腹のあまり外に飛び出し降り積もる雪にかぶりつき、「んん、んまい、んまい。まいうー。天空からの落下エネルギーが粉雪に絶妙たるうまみをもたらしておる。見上げればほら、うまみが空を回しながら無限に降臨してくる、おお、体温が下がってきた。進化じゃ、物質との同化じゃ。生きられる、まだ生きられるぞ、うはははは」とか自分を見失ってプラトーンみたいに両手を広げながら絶命してしまう。
嫌だ、そんなの耐えられないと思い、食料を買いに外に出た。
公園では子供達が「速いチャリンコみたいにしようぜー」と嬉々として自転車のスポークに雪を詰め込んでいた。
まざりたい…
臨時休業を集めよう
アムンゼンのような気持ちで20分程ざっくざっくと雪を踏みしめて歩き商店街へたどりつくと、いくつかの店はこの大雪のために臨時休業しており、閉ざされたシャッターにお知らせが掲示してある。
お茶屋さんだけあってきれいな緑色
この雪では無理もない。ていうかそもそも客足も無いだろうし。
整骨院。こんな日は通うだけで骨格にやばそうだし。
突如襲いかかる大自然の脅威を光子力バリアーのごとくシャッターで食い止める至急の策、臨時休業の貼り紙をしみじみと(こごえながら)見つめていると、ひとつの衝動が沸き上がった。
何十年ぶりといわれているこの大雪。何十年ぶりというからにはこの先こんな大雪に見舞われるのはまた何十年か後ではないか。
目の前の貼り紙が突然プレミアムな輝きを放ちだした。
ぼくらの町のアムンゼンは食料購入そっちのけで、臨時休業を収集するというアタックを開始したのだった。
パン屋さん。営業日のすぐ上に配置。シンプルでユニバーサル性にすぐれた臨時休業。
ブティック。シャッターの模様がかわいい。
花屋さんも臨時休業。枠一杯のダイナミックなタイポが大雪の臨場感を表している(うそ)
花屋ならではの雪だるまが素敵!
やはり服飾、宝石、貴金属や嗜好品関係は早々に臨時休業を決めている店が多い。
宝飾店。整然として誠実なレイアウト。やっぱSECOMのステッカーが目立ちますね。
ここまですっかすかの吉祥寺はなかなかない。
さすが吉祥寺。臨時休業のデザイン性もあがる。
ものすごくトロピカルな感じのお店もこの豪雪には勝てず。
どんよりくすんだ雪景色の中でひときわビビッドに臨時休業。
あいさつも元気!
リア充のいない井の頭
吉祥寺駅南口に広がる井の頭恩寵公園。1月の終わりに「かいぼり」のために池の水を抜いた井の頭池に雪が敷き詰められ、柵の向こうがなんだかフランスベッドとかシモンズのポケットコイルマットレスみたいにシルキーな感じになっている。
ハクチョウのボートが今日ほどハクチョウに見えた日があっただろうか。
池の底に沈んでいた自転車がまた雪に沈む。
いつも池を囲むリア充の鎖も気配すら存在せず、辺りの飲食店も次々と閉店していく中で、気になるあそこはなんと営業中だった。
井の頭自然文化園(井の頭公園にある動物園)
人気のない園内は所々雪が未踏のまま高く積もっており、足を踏み入れると雪がブーツの高さを乗り越えて侵入してくる。
遠目に見てたらあんなにフランスベッドみたいだったものが冷気の針のように我が身を襲うのだからたまらない。
園内にペギラいますよこれ。
オシドリも寒そう。
一部をのぞいて動物たちはバックヤードへと移されている。
「なんでこんなフランスベッドみたいな事に…」
園内の遊園地「スポーツランド」
マグネットクリップの2点止めがポイント。
リスは元気だった。
おそらく馬鹿だと思われていたせいか、もはや近づいても中にいた鳥が逃げなくなっていた。そんな自然文化園を後にして更に探索は続いた。
安政二年創業の老舗も臨時休業。45年前もこうして…(たぶんちがう)
唯一の木札タイプ。常備していますという余裕が垣間見えてすごい。
かわいいイラスト付き。
この時間になってくると、開けてはいたが早めに営業を終了する店もかなり出てきた。臨時休業とはまた違ったライブ感をもって雪の激しさを物語っている。
5つ星も無念の閉店。
クリーニング店は16時まで。
自転車店は逆に開いていたのがすごい。
すっかり夜も更け、マッチを擦ったらシャッターにほっかほかのオードブルが現れる幻覚も見えてきたので帰路についた。
もうクリスマスと思うことにしていた。
家の近所のスナックの「営業中」の輝きが雪を切り裂いていた。
護摩業のように燃え上がる営業中。
夏に冬の、冬に夏の記事を上げればほら快適(なにが)
現在はかなり多様化しているとはいえ、お盆休みは毎年やってくる。そんなルーティン休暇中に極寒のイレギュラー休業を眺めて涼を取るのもまた一興ではないだろうか。
「いやー、次はいつになるかわからない貴重なもん集めたわー」と悦に入ってたら翌週もガンガン降りそぼったのも記憶に新しいところだ。