特集 2014年7月23日

夏は池袋で毒づくし! 毒毒毒毒毒毒毒毒毒展(もうどく展)

ヒョウモンダコのおっさんがキャッチーに!
ヒョウモンダコのおっさんがキャッチーに!
日本一坪単価の高い場所は東京の銀座にあるという。

しかしこの夏、池袋に死ぬ程坪あたりの毒性が高い場所が出現した。サンシャイン水族館の特別展、その名も毒毒毒毒毒毒毒毒毒(もうどく)展。

これは銀ブラしている場合ではない、毒ブラだ。
1975年神奈川県生まれ。毒ライター。
普段は会社勤めをして生計をたてている。 有毒生物や街歩きが好き。つまり商店街とかが有毒生物で埋め尽くされれば一番ユートピア度が高いのではないだろうか。
最近バレンチノ収集を始めました。(動画インタビュー)

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> 個人サイト バレンチノ・エスノグラフィー

ラブリーからのダークネス

大都会池袋のビルの屋上で来る人に癒しを提供している日本初の都市型高層水族館「サンシャイン水族館」。
青空の下、アシカが戯れるサンシャインアクアリング
青空の下、アシカが戯れるサンシャインアクアリング
コツメカワウソのかわいさにしびれる
コツメカワウソのかわいさにしびれる
池袋駅を東口方面に少し歩くとかわいいアシカが青空の下でこちらを見つめる広告が目に入る。
アシカかわいい、ラブリー。
アシカかわいい、ラブリー。
しかし、そんなラブリーもつかの間、同じ水族館とは思えないコントラストで我々をダークネスなポジションに誘う企画展が告知されている。
「毒見してく?」そんなソメイヨシノみたいなこと言われても…
「毒見してく?」そんなソメイヨシノみたいなこと言われても…
サンシャインシティ入口の巨大サイネージも
サンシャインシティ入口の巨大サイネージも
すいません、なんか暗転してますけど。
すいません、なんか暗転してますけど。
こうして道行く人に不安を投げかけている「毒毒毒毒毒毒毒毒毒展(もうどく展)」、毒でDPZデビューした私がこれを見逃す事は毒モラルに反する。取材に行ってもいいですか、いいですよね。
すごい取り合わせ。
すごい取り合わせ。
飼育を担当しているアクアスタッフの二見さんにお話を聞きながら、めくるめく毒の世界を堪能する。
中央が二見さん。ちょっと待って、右のなんですか。
中央が二見さん。ちょっと待って、右のなんですか。
--えーと、中に入りたくてうずうずしてるんですが、その前どうしても聞いておかねばならない事があります。

「はい、なんでしょう」

--このヒョウモンダコ、どうしたんですか。
フグと同じテトロドトキシンという猛毒を持つ、ってこの写真で解説してどうする。
フグと同じテトロドトキシンという猛毒を持つ、ってこの写真で解説してどうする。
「もちろん、このために作ったんですよ」

--なんか蒸気吐いてるんですが…
蒸気に毒はありません。あったら大変ですし。
蒸気に毒はありません。あったら大変ですし。
「本当は空気砲みたいな丸い輪っかをだだーっと出したかったんですが、あんまりやると煙感知器が作動しちゃうみたいなので…」

この企画への意気込みの強さをぴりぴりと感じながら入場。
毒のシェアハウスや!
毒のシェアハウスや!
コンパクトな空間に集められた毒生物達。
壁面にはひたすら「毒」
壁面にはひたすら「毒」
--ここまでするかというぐらい雰囲気出てますね。

「毒のイメージにふさわしい、いるだけで気分が悪くなるような世界観を目指しています。壁面で模様がぐねぐね動くようなプロジェクションマッピングも考えたのですがスペースの関係で断念しました」

--実際に作られた世界もすごいがその構想がまたすごい。

毒スペックに特化した展示にキュンとなる

まず来場者を迎えるのはオーストラリアに住む「リーフスティングレイ」背中の模様が美しいエイの仲間である。
こういうルンバ出たら売れないですかね。
こういうルンバ出たら売れないですかね。
尻尾にするどい毒のトゲを持つ。あやまって踏みつけたりして刺されると大変な事になる。

「日本だと今の季節アカエイの子供とかが浅瀬に結構いるので潮干狩りの時など注意が必要ですね。エイのトゲはのこぎり状になっていて、刺さると肉をえぐりながら抜けて行くのでものすごく痛みます」
私が所有するアカエイの毒針。やばい。
私が所有するアカエイの毒針。やばい。
毒に関する情報のみを抜粋した説明パネル。斬新!
毒に関する情報のみを抜粋した説明パネル。斬新!
--わー、情報が毒に特化してますね。毒の種類まで解説してるのは見た事がないです。
5段階でわかりやすい毒レベル表示。レベル1から危険。
5段階でわかりやすい毒レベル表示。レベル1から危険。
「毒に関する基本の情報がパッと見てわかるように発信しています。この毒のレベルはあくまでも半致死量(LD50)※に基づく毒自体の強さであって、痛さや危険さを厳密に表すものではありません」

--毒は弱くても刺されると痛い、とか毒は強くても毒の量が極めて少ない(その逆も)とかいろんなケースがありますからね。
※半致死量:毒物を投与した実験動物の約半数が試験期間内に死亡する量。LD050=○mg/kgと表記され、○の量が少ない程、殺すのに量が少なくてすむ=毒が強いという事になる。
セビレや胸ビレに毒棘を持つ美しくてあぶない魚「ハナミノカサゴ」毒レベルは2だが相当痛い。
セビレや胸ビレに毒棘を持つ美しくてあぶない魚「ハナミノカサゴ」毒レベルは2だが相当痛い。
いったん広告です

変化球毒フグ登場

「毒あります」はここではセールスポイント。
「毒あります」はここではセールスポイント。
パフトキシンというかわいい名前の毒を持つ、かわいいやつらとは何か。
このひと達です。
このひと達です。
ミナミハコフグやコンゴウフグ等のハコフグの仲間である。

フグといえば食べると中毒する必殺の猛毒「テトロドトキシン」が有名だが…。

「そういうのはトラフグやクサフグなど体のやわらかいタイプのものです。

ハコフグのグループは内蔵に毒を持つ個体もいますが基本的には敵に襲われたりすると皮膚の粘膜から毒を出します」
コンゴウフグ。水面に姿が映っているのがまたアホっぽい。
コンゴウフグ。水面に姿が映っているのがまたアホっぽい。
「よくある哀しいトラブルは、私たちが水槽掃除中なんかにバケツに魚たちを移しておくとその時に毒を出されて魚達が全滅しちゃうとか」

--へー、他の魚と飼う時は相当気をつかわないとですね。

「そうですね。しかも自らも死んでしまうので…」

--え?

「その毒で。出した毒で自分も死んじゃうんですよ」

--カメムシみたいなやつですね。(カメムシの出す臭いニオイも彼らにとって有害で、それで自死してしまう事がある)

「敵に襲われないでもエサを追っかけて岩の隙間にはまっちゃってテンパって毒を出して水槽全滅なんてこともありましたね…」

--他の魚達からしたら告訴したくなるくらい迷惑ですね。

そして有毒生物の花形といえば忘れてはならないのがイソギンチャク。

「ムラサキハナギンチャクなんかは刺されると痛いですが水深10mよりも深いところにいるので磯遊びレベルではまず出会わないですね」
ムラサキハナギンチャク。見た目痛そう。
ムラサキハナギンチャク。見た目痛そう。
「こっちのハナブサイソギンチャクはたまに沖縄の浅い海にもいますね。これも刺されるとひどい目にあいます」
珊瑚ブロッコリーみたいですね、と言おうとしたがそれは要するに珊瑚みたいだということではないかと思いとどまった。
珊瑚ブロッコリーみたいですね、と言おうとしたがそれは要するに珊瑚みたいだということではないかと思いとどまった。
「毒としてのレベルは2なんですけど刺された時の痛みとしては3、4ぐらいつけたいところですね」
知らないイソギンチャクにむやみに触れるのはやめましょう。
知らないイソギンチャクにむやみに触れるのはやめましょう。

「キラーシェル」と呼ばれる貝

中へ進むにしたがって毒レベルも上がってくる。

--すごいスコアきましたね。イモガイチーム。
タガヤサンミナシ。みょわんと伸びている吻部から毒銛を発射して貝類を捕食する。
タガヤサンミナシ。みょわんと伸びている吻部から毒銛を発射して貝類を捕食する。
きました満票!仕事人のようなコピー。
きました満票!仕事人のようなコピー。
「ここにいるのはタガヤサンミナシとアンボイナの2種、どちらも人間の死亡例が確認されています。銛のような毒針を相手に撃ち込んで麻痺させる方法は一緒なんですが、ターゲットが違っていて、タガヤサンミナシは貝類を、アンボイナは小魚を捕食します」

入口でオブジェクトになっている毒スターのヒョウモンダコ。フグと同じ猛毒を持つが、タコならではの墨を吐く機能が退化しているという、ありがたくないトレードオフを実現している。
体は小さいが拡大してみると貫禄すごい。
体は小さいが拡大してみると貫禄すごい。
「最近、生息域が広がったりしてヒョウモンダコが警戒されていますね。ただ、意外と知られていないのですが、マダコにも毒性を含む唾液があり、2回以上咬まれるとアナフィラキシー(アレルギー反応)を起こす危険があるので注意が必要です」

寿司の人気ネタにも毒が

個人的にかなりグッと来たのはマアナゴ。

ウナギと同じく血液と粘膜にタンパク毒を持つ。基本的に生食はNGである。
きらびやかなモンスター達にくらべてこのシブさ。
きらびやかなモンスター達にくらべてこのシブさ。
「アナゴは言われてみればって感じかもしれないですね」

--なんかこう、スター級の中に混じってアナゴが地味にいるといいなあって思います。

陸の生き物こわい

このもうどく展、ポスターのスローロリスからもわかるように、水族館という枠組みをこえ、陸の生物も紹介されている。
ベトナムオオムカデ(いちおうモザイクしておきます。マウスオーバーでくっきり)
ベトナムオオムカデ(いちおうモザイクしておきます。マウスオーバーでくっきり)
ダイオウサソリ(マウスオーバーでこわい)
ダイオウサソリ(マウスオーバーでこわい)
無双の知識で海の毒生き物の生態をレクチャーしてくれていた二見さんの表情がわずかに曇った。

「私ね、魚の動きとかは大体わかるんですけど、陸の生き物は動きが読めないですね…ほんとこわいですね…」

--二見さん今なんか面白い弱音をつぶやかれましたね。
ここの生き物を見る目が一番おそろしげだった。
ここの生き物を見る目が一番おそろしげだった。
「いやね、なにが怖いって、こいつらは水から出ても生きてられるじゃないですか。水から出たら終わりじゃないですか魚は」

なんかすごい名言じゃないだろうか。魚の生態を熟知した者でなくては出てこない台詞だと思う。

今回の取材をセッテイングしていただいた広報担当の方がぼそりとつぶやいた。

「ムカデ…はやいですよね」
「うん、はやい」


うなずく二見さん。ムカデはこのうっすらとしたアウェイ感を察知しているかのようにケージの隅にじっとしていた。
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あの魔草まで!

--有毒植物まであるんですね。あ、これは!
マンドレイク!
マンドレイク!
別名マンドラゴラと呼ばれ、根に幻覚性の強い毒を含むナス科の植物である。その不気味さから、伝説上では古くから呪術や毒薬として登場してきた。

根の先が2つに別れて人の形となり、地面から這い出して徘徊したり、地面に埋まっているのを引き抜こうとすると不気味な叫び声を上げ、それを聞いたものは発狂して死んでしまう等、これでもかという程禍々しいエピソードを持つ。
毒レベル不明ってなにげにこわいですよね。
毒レベル不明ってなにげにこわいですよね。
ちなみに中世の頃には、人が抜くと死んでしまうので犬を茎に結びつけて引っ張らせるという収穫法も提案されている。そんなもんソリューションしてどうするんだ人類。
河出文庫版 澁澤龍彦「毒薬の手帖」の表紙を飾るのもマンドラゴラ
河出文庫版 澁澤龍彦「毒薬の手帖」の表紙を飾るのもマンドラゴラ
--マンドラゴラが展示してある水族館ってすごいですね。

「まあ、特別展ですから特別すぎるくらいがいいんじゃないでしょうか。本当はもうちょっと人に似てるのが欲しかったんですけどね」

--魔女の方にもぜひ来てもらいたいですね。

有毒植物は他にもトリカブトやキョウチクトウの猛毒コンビが華やかさではなく、毒々しさを競っている。
どちらも毒レベル5!
どちらも毒レベル5!

哺乳類代表は寝てたしガガを咬んでた

そして会場内でひときわ大きなケージには、広告で強烈なインパクトを与えていたスローロリスが控えている。

上腕の内側のリンパ腺より毒を分泌し、それを舐めて唾液に毒を含ませて毛づくろいをし、毒を全身に広げて身を守る。いわば毒バリアーである。
ぐっすり寝てました。
ぐっすり寝てました。
負けずにやる気がないドクトカゲ。
負けずにやる気がないドクトカゲ。
「レディー・ガガがスローロリスに咬まれた事があるそうですよ」

--え?ほんとですか?

「ええ、撮影の最中に咬まれたみたいですね」

--きっと…こわかったんでしょうね。ガガが。

「毒とか、効かなそうですけどねえ…」

ベストオブトキシンはオニダルマオコゼ

最後に二見さんに「今回の展示で特に好きな毒はなんですか?」とよくわからない質問をしてみた。

「え、毒で、ですか。なんでしょう、毒で言うとオニダルマオコゼですかね」
何がどうなっているのかよくわからないビジュアル。背びれのトゲからストナストキシンという、まったくもってやばい毒を分泌する。
何がどうなっているのかよくわからないビジュアル。背びれのトゲからストナストキシンという、まったくもってやばい毒を分泌する。
「海洋生物の毒って、ハブ(蛇)の毒液みたいにはっきり見えないのが多いんですけど、これは死んだやつのトゲをこぞると見えるんですよ。ミルク色っぽい感じの液体が、ピンセットでぎゅーっとしぼると出るんですよ」

--おお、それは興奮しますね!
骨格が半魚人にしか見えない。
骨格が半魚人にしか見えない。
「生き物でいうとやはり実際刺されたりしたものには愛着があります。ガンガゼ、ハオコゼ、ゴンズイとかですね。

業務的に痛かったのはハコフグです(毒で他の魚をやられたから)」


--今回展示を進める中で「これ嫌だなー」っていうのはやはり…

「はい、ベトナムオオムカデです。先ほども言いましたがサメだって恐ろしいけど海から出ちゃえば平気じゃないですか。これは陸でも…」

--もはやサメを超えましたか、ムカデのおそろしさ。
みんなでオオムカデを応援しよう!(やっぱりモザイク)
みんなでオオムカデを応援しよう!(やっぱりモザイク)

王道から「そうくるか!」まで、いろんな毒が楽しめます

「今後は可能であればハブクラゲの展示などにもチャレンジしたいと考えています。また、これからトリカブトもきれいな花を咲かせますし、植物関係ではヒガンバナも球根に毒がありますので加えていきたいですね」と二見さんはこれからの展望を語ってくれた。

学習コーナーでは毒生物のふりをして生きる無毒生物の話など、毒について学べるコンテンツも用意されている。

大人も子供も、会社員も学生も、魔術師や錬金術師も、毒見にゴーだ。
水族館内ではヤドクガエル達もサイケデリック全開で活動中!
水族館内ではヤドクガエル達もサイケデリック全開で活動中!
※イベントや展示内容は変更になる場合があります

サンシャイン水族館<特別展>
毒毒毒毒毒毒毒毒毒展(もうどくてん)

●期間:9月28日(水)まで
●時間:10時~20時(7/19~8/31は21時まで・8/9~17は9時から営業)
詳細はWEBサイトにて→こちら
サンシャイン水族館WEBサイト:http://www.sunshinecity.co.jp/aquarium/index.html
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