やはり燃費の良さが素晴らしい
実用車として盛んに用いられていることからも分かる通り、カブはとにかく頑丈、そして燃費が良いのが特徴だ。
現在、私が乗っているのはリトルカブである
去年までは中古のスーパーカブ50に乗っていたのだが、テキトーなバイク屋で買ったのが悪かったらしく、とんでもなく状態の悪いものをつかまされてしまった。
具体的にいうと、普通に走っているだけでもエンジンオイルがどんどん減っていくという有り様である。RPGでいえば、常に毒のステータス異常がかかっているような、いつ死んでもおかしくない代物であった。
そんな瀕死のカブでも、北海道2/3周に耐えきりました
この先代カブの状態について、旅行中にお世話になったバイク屋に見てもらったところ、「これはありえない。普通なら廃車レベルだね」と苦笑されたのが印象的であった。
それで新車に買い替えたのだが、スーパーカブの現行モデルはデザインがあまり好みではないため、少し車高の低いリトルカブを購入した。今度は信頼のおけるバイク屋を選び、費用は全部コミコミで20万くらい。
旅行の給油レシートは、全部取っておいてある
さて、肝心の燃費である。
今年の5月に行ってきた13日間の中部旅行では、総走行距離が2047.2km。消費したガソリンは29.51リットルで、燃費は約70km/Lだ。
この旅行では険しい山道を走ることも少なくなかったのだが、それでもこれである。一般的な原付は30km/Lほどらしいので、倍以上の燃費の良さ。改めて思うが、カブ、最強。
ちなみに、総ガソリン代は4859円。約二週間、毎日散々走り周ったのにも関わらず5000円足らずのガス代とは。
キャンプ泊で宿泊費も節約
カブ旅行では、宿泊にキャンプ場を利用すれば、さらに費用を節約できる。
ビジネスホテルが一泊4000円以上であるのに対し、キャンプ場は一泊1000~1500円程度。中には無料のキャンプ場も存在する。
特に北海道は無料のキャンプ場が多く、大変ありがたく利用させていただいた。
無料のところはテント場と水道、トイレがあるだけだが、それで十分だ
キャンプ場はおおむね山の中にある。特に無料ともなると、さらにアクセスが不便であることが多い。
公共交通機関を使う旅行では、キャンプ場まで行くのが大変だし、なによりテントや寝袋が荷物になってしまう。
その点、カブは荷物がさほど気にならない。荷台に乗せるか、またはザックに入れて背負い、荷台にその重量を預けてしまえばOKだ。
たまには宿を取って体力の回復を
とはいえ、毎日テント泊を続けているとさすがに疲れも溜まる。運転もなんだかんだで疲れるし、たまには宿を取ることも肝要だ。
私は雨が降っている日など、テント泊が億劫な時に、体力の回復を兼ねて宿を取ることにしている。
気になるモノがあったらすぐ見に行ける
カブは普通のバイクほどスピードが出ないが、その分、なにか気になるモノや良い景色に遭遇した際、すぐに停車させることができる。
スピードの出る車やバイクだと、停車させるのが大変なので、どうしてもそのままスルーしてしまいがちだろう。カブはよりきめ細やかな旅行が可能なのだ。
徒歩より圧倒的に機動力が高く、車よりもこまわりが利く。いわば、徒歩旅行と車旅行のいいとこどり、それがカブ旅行である。
「ん?」と思ったらすぐに路肩に寄せて停車できる
ちょっとした寄り道は、嬉しい発見が多いものだ
良い感じの景色に遭遇したら、その度に写真をパチり
とまぁ、ここまではカブ旅行の利点ばかりを挙げてきたが、もちろんそればかりではない。なにごとにも長所があれば短所もある。長所だけを並べ立て、短所を述べないのは詐欺師のやることだ。
というワケで、次はカブ旅行の短所、留意すべき事柄をお伝えしよう。
大型トラックが怖い
日本の物流を支える運送会社の皆様方には大変申し訳ないのだが、カブ旅行において大型トラックは恐怖の象徴そのものだ。
路側帯が狭い国道であっても、どんなにローカルな県道であっても、大型車両が通過可能な道路であれば、もれなく大型トラックは入り込んでくる。
このくらいのトラックならまだかわいいものだ
特に地方と地方を結ぶ国道となると、全長何メートルあるんだ! と叫びたくなるようなトラックが背後からぐぉーっと迫ってくる。
追い越されるその際、まず最初に外側へと押し出されるような空気の力が働き、そして追い越された後には内側に吸い込まれるような力がカブを襲う。
カブは風の影響を受けてブレやすいので、その度に緊張と恐怖が襲う。これはいつまでたっても慣れることがなく、ひたすらプレッシャーに耐え続けるのみである。
トラックから逃れるため、細い道を選ぶようになる
いわゆる酷道のような険しい道は大型車両が通れないため、必然的にそのような道を選んでいくことになる。むしろそちらの方が景色が良い場合が多く、トラックの恐怖もないのだから良いことづくめである。
先の中部旅行でいえば、長野県飯田市と岐阜県岐阜市を結ぶ国道256号線(キリの良い数字だ!)はそのような区間が多く、走っていて楽しかった。
他にも、福井県の海沿いを走る国道305号線もトラックがあまり通らず、なおかつ景色の良いゴツゴツした海岸の道なので、なかなかにゴキゲンであった。
トンネルが怖い
短いトンネルならまだしも、1000メートル以上の長いトンネルとなると、これがまた恐ろしい。「まだか? まだ続くのか!? 早く終わってくれー!」と祈るばかりだ。
トンネルはおおむね薄暗いことが多く、車道の左寄りを走るカブにとっては路肩にぶつからないかと神経を使う。むっとする匂いや、反響によって増大された車のエンジン音も苦手だ。
車に追い越されるのも恐ろしく(たぶん、追い越す側も怖いのだろうが)、それがトラックともなると発狂しそうになる。
嫌です、トンネル
また、暗いトンネル内に規則的に並んだ照明は、トンネル内で陰と陽の縞模様を作り出す。等間隔に配された光の輪を幾度となく潜り抜けているうちに、まるでワームホールの中に吸い込まれていくというか、なんというか、意識がトリップしそうになる。
またトンネルは年間を通して気温が一定なので、夏は物凄く寒く感じる。北海道旅行の際、道内最長のトンネルである「えりも黄金トンネル」(全長4941m)を通過したのだが、その時はTシャツ一枚だったので、あまりの寒さに途中から体が震えだした。
逆に冬はトンネルが温かく感じるらしいが、寒い冬にカブ旅行などしたくはない。
雨ほど惨めなものはない
カブ旅行で雨に降られると悲しくなってしまう。ダイレクトに雨を被り、水浸しになるからだ。
もちろん、ゴアテックスのレインウェアを着込んでいるワケだが、小雨程度ならまだしも結構な雨を長時間浴びていると、たちまち服内に浸水してくる。
またレインウェアのポケットはジッパーとマジックテープ付きの蓋で保護されているが、強い雨のもとではそんな防水策など意味はなく、ポケットが水袋と化す。
以前、うっかりレインウェアのポケットにiPhoneを入れたままゲリラ豪雨に遭遇してしまい、水没してお亡くなりになってしまった。
iPhone4は水に濡れるとライトが光りっぱなしになる
まぁ、それは単に私がマヌケだっただけではあるが、いずれにせよ雨の中カブを走らせるのはよろしくない。
スリップの危険があるし、また車が跳ねた水を顔に受けると酷いことになる。バイクのスピードで水を被ると、ビンタされたくらいに痛いのだ。
雨が一日中降るような日は、宿やテントに引き籠っているのが吉である。
カブ旅行を楽しむのは思いつき
カブ旅行は機動力の高さがそのまま楽しみに繋がる。地図を見て、「あ、ここ、行ってみよう」という思いつきが、楽に実現できるのだ。
先々月に「
国道152号線の未開通区間を歩いた」という記事を書かせて頂いたが、これは先月書かせて頂いた「
天空の里『下栗』を目指し、遠山郷へ行ってきた」の副産物である。
浜松に到着した私は、遠山郷へのルートを地図で確認したのだが、その際に酷道152号線が最短ルートであることに気づき、「そういえば、この道って未開通だったよな……行ってみよう!」となったのだ。
その思いつきのお陰で、なかなか貴重な体験ができた
またその後に飯田から大平街道を使って南木曾に出たのだが、これもまた思いつきである。本来は遠山郷から中津川へ向かう予定だったのだ。
大平街道を使ったお陰で、個人的に思い入れの深い大平宿(参考記事「
廃村に泊まる」)に立ち寄ることもできたし、その近くで無料のキャンプ場を見つけることもできた。
大平宿へは4年ぶり、3度目の訪問である
このように、カブ旅行ではあまりしっかりした予定を立てず、ファジーなスケジュールの方が、より楽しむことができるだろう。
道路情報だけはしっかりチェック
私のカブは原付なので、自動車専用道路を走ることができない。そのために足をすくわれることもあった。
遠山郷から飯田へ出る際、矢筈トンネルという長いトンネルを使うつもりだったのだが、このトンネルが見事に自動車専用道路であった。
延々と走ってきて、通行できないと知った時の絶望たるや
迂回路として赤石トンネルを使う峠道もあるのだが、このルートもまた道路工事中で見事に通行不能であり、結局は30km以上戻って遠山郷の南から天竜川へ抜けることになった。
Google Mapは自動車専用道路も普通の国道と同じ表記なので、自動車専用道路を走ることができないカブ旅行だからこそ、なおさらしっかりとした道路地図が欲しいところである。
無事故無違反、楽しいカブ旅行
カブは自分でシフトチェンジしなければならないし、原付にしては少しお高めということもあり、普通のスクーターより敷居が高いかもしれない。
しかし、私のように「できるだけお金を掛けず、できるだけ長くあちらこちらを周りたい」というような人間にとっては、ホント素晴らしい乗り物だと思う。
ちなみに前述の中部旅行について、私がtwitterで呟いていた発言をまとめて下さった方がおります(
→こちら)。もし興味がありましたらご覧頂ければと思います。
次のカブ旅行の予定としては、暑さのピークが過ぎた9月中旬ぐらいから一ヶ月くらい、九州を周ろうと考えています。東京から北九州までフェリーで行き、目指すは鹿児島県の屋久島!