特集 2014年7月11日

4日かけて撮影したムササビが案外可愛くない

これがムササビです!
これがムササビです!
ムササビという生き物がいる。手から足につながるビロンビロンの膜があり、それを広げて夜の山を滑空する動物だ。大きさは座布団ほどなので意外とデカい。

そんなムササビは、東京からそう離れていない山でも見ることができる。ということで、ムササビを見に行こうと思う。
1985年福岡生まれ。思い立ったが吉日で行動しています。地味なファッションと言われることが多いので、派手なメガネを買おうと思っています。(動画インタビュー)

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> 個人サイト Web独り者 彼女がいる風の地主恵亮

ムササビパワー

夜の山を滑空するムササビ。自然豊かなところに生息しているが、山の奥深くに住んでいるわけではない。意外と人里に生息している。木々がえのき茸みたいにあるところでは、滑空できないからかもしれない。
これがムササビです!
これがムササビです!
モモンガと勘違いしやすいが、ムササビはモモンガよりも大きく座布団ほどのサイズであり、日本の固有種となっている。

またムササビと言えば可愛い動物の代表格の一つ。「ムササビ見に行こうぜ!」の破壊力はすごく、田舎に人がやってくる力を持つのだ。
ムササビを見に行きた人々
ムササビを見に行きた人々
東京農業大学に「多摩川源流大学」というプロジェクトがあり、そのプロジェクトのイベントで山梨県にある小菅村を夜に歩くというものが6月に行われた。このイベントの目玉の一つがムササビを見るというものだった。

イベントは一泊二日のため、これに参加するとワールドカップの日本戦は見れないのだけれど、ムササビが多くの参加者を集めた。ムササビパワーだ。
ということで、ムササビを探します!
ということで、ムササビを探します!

赤い光でムササビを

女子大生も可愛いの代表格の一つ。このイベントは農大の学生と一般の方が参加するイベントなので、必然的に女子大生とムササビを探しに行くことになる。

ムササビは見つかるか分からないけれど、かわいいという目線では、もはや見つかったと言ってもいいかもしれない。
ライトに赤いセロハンをはる
ライトに赤いセロハンをはる

夜の山でムササビを探すので懐中電灯が必須となる。ただし光を赤くしないと動物は警戒してしまうのだそうだ。

ちなみにこのイベントが行われる山梨県小菅村の夜は異常に暗い。信号もひとつしかない。

眠らない街という表現があるが、眠るしかない街、が小菅村である。コンビニだってないし、キャリアによっては携帯は圏外だ。
夜の小菅村(光のない部分がほとんど、その光も少ない)
夜の小菅村(光のない部分がほとんど、その光も少ない)
ムササビは木にあいた穴を巣穴としている。日没の前後30分ほどから活動を始め、夜の山に出かけ、朝方また巣穴に戻ってくる。郵便局の深夜勤のような生活だ。

活動中のムササビを見つけるのは難しいので、巣穴から出てくる瞬間を狙い観察することになる。
このような穴にムササビはいます
このような穴にムササビはいます

ムササビがすばしっこい

木々を今まで観察したことがなかったけれど、改めて見ると驚くほど穴があいている。その穴全てにムササビがいるわけではない。ただこのイベントではガイドが付いているので、ムササビのいそうな穴を教えてくれる。
後は穴を観察するだけ
後は穴を観察するだけ
やがて日が暮れ、「グルルルルル」という低い音が響く。ムササビの鳴き声だ。

可愛いと思っていたムササビだったけれど、鳴き声は全然可愛くない。不機嫌な二日酔いのおじさんのような鳴き声だ。
このピンぼけの写真のどこかにいるはず
このピンぼけの写真のどこかにいるはず
予想していた穴とは違う穴からムササビが出てきたので、急いでカメラを移動したが、ムササビの移動速度は速く、写真がブレる、ブレる。進路に迷う高校生以上にブレる。

ムササビはご機嫌に「グルルルル」と鳴いているが、泣きたいのはコチラだ。ただ私はムササビを見た。写真には一切収まっていないけれど、曇りなきこの眼でムササビを見た。
こんな暗い山で移動するムササビにピントが合うはずがない!
こんな暗い山で移動するムササビにピントが合うはずがない!
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リベンジします

私はこの4月から東京農業大学の非常勤講師をしている。その権力を最大限に使い、ムササビ撮影のリベンジを行うことにした。

イベントではムササビは見れたので、参加者もみな喜んでくれていたのだけれど、コチラとしては写真が撮れてないと困るのだ。
場所を変える
場所を変える
小菅村に住むある方の家の裏にムササビが住んでいると聞いたので、そちらを訪れ、ムササビの撮影をさせてもらう。

家にネズミが出る、という話はよくあるけれど、そのネズミがムササビというのが村のすごさだ。
ただただ見張る
ただただ見張る
毎週末に小菅村に行くので、その夜に穴を観察をさせてもらう。ただし毎回雨で、家主曰く「出ないな」とのことだった。

その通りで、一回目出現せず、二回目出現せずとムササビがもはや幻と化していた。ムササビとはみんなの心の中にいるネズミなのかもしれない。
農大の方々と、
農大の方々と、
何度も観察に行くが、
何度も観察に行くが、
穴は穴のまま!
穴は穴のまま!

ムササビでました!

二回目の観察では二時間半粘るという、超大作映画のような時間をかけたが、穴は穴のままで何の反応もなかった。しとしと降る雨からカメラを守るだけで時間は過ぎた。

ただ三回目のチャレンジで女子大生が変化に気がつく。
いますよ、あの穴
いますよ、あの穴
女子大生が「地主さん」と呼ぶので、「いた? ユウナちゃん」と私は返す。ドキドキする。

それはムササビ発見についてのドキドキではない。女の子を下の名前で呼ぶことにたいしてだ。村には同じ名字の人が多いので、下の名前で呼ぶのが普通だ。
ムササビいました!(ウルトラマンの敵みたい)
ムササビいました!(ウルトラマンの敵みたい)
その下の名前文化が学生にもあるようで、みんな基本的には下の名前で呼ぶ。「ユウナちゃん」「シンゴさん」「ユウキちゃん」のように。

私の人生では誰かを下の名前で呼ぶことがなかったので、呼ぶ度にドキドキするのだ。そんな中で私は「地主さん」と呼ばれる。きっと高い壁があるのだろう。
とりあえずムササビは出現しました!
とりあえずムササビは出現しました!

可愛くないな

下の名前問題を一旦忘れてムササビである。

木の穴からコチラを見ている。顔は小さなタヌキのようだ。またこんなに近くでムササビを見るのは初めて。手が伸びれば届く距離だ。伸びないので届かないが、とにかく近い。
出てきた!
出てきた!
興奮する我々一同
興奮する我々一同
現場はかなりの興奮に包まれた。興奮する非常勤講師2人と25歳女子と女子大生各1人。しかし、大きな声を出すと逃げるので、声を押しつぶした興奮だ。

しかし、皆が心のどこかで思っていた。思ったほど可愛くないな、と。でも野生のムササビに興奮である。
カメラ目線のムササビ!
カメラ目線のムササビ!
帰りの車で「思ったほど可愛くないですね」と言ったら、「そうなんだよね」とみな言っていた。モモンガの方が目がクリクリでかわいいそうだ。しかし、興奮はしている。かわいさを越えた興奮がムササビにはあるのだ。

あと、帰りにシカがいた。以前は野生のシカにも興奮していたが、小菅村は感覚的には村民よりシカが多いので、あまり興奮しなくなってきている。
シカ!
シカ!

幻のムササビ!

ムササビの写真を撮るために4日を要した。撮影できた時の興奮はすごい。野生のムササビの素晴らしさだ。だって動物園に行けばムササビはいるのだ。野生パワーはすごいのだ。

ちなみに私は非常勤講師として多摩川源流大学に関わり出してから、明るくなったね、と周りから言われるようになった。これは村パワーと大学パワーだと思う。村と大学は人を明るくするのだ。

協力:多摩川源流大学
http://genryudaigaku.com
本当のモスバーガーを作ったり、滝の威力を調べたりしています。
ムササビ探しの途中のあきらめ感はすごい
ムササビ探しの途中のあきらめ感はすごい
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