特集 2014年6月4日

献血は怖くないし、ちょっときもちいい

献血、怖くない!
献血、怖くない!
みなさん献血をしたことがあるだろうか?

ぼくはなかった。

だって、あのクソでかい針を腕にぶっ刺すとか、健康診断の採血でさえ目の前が真っ白になったぼくにはとうてい無理。

街頭で献血を呼びかけている人を見かけても、そんな気軽に「暇だから、じゃあ献血でも」なんて気持ちにはならない。

注射が苦手で、同じような思いをしているひとは多いと思う。
鳥取県出身。東京都中央区在住。フリーライター(自称)。境界や境目がとてもきになる。尊敬する人はバッハ。(動画インタビュー)

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でも気にはなってる

しかし、献血をしたことがある人の話を聞いてみると「リラックスできる」とか「ひんやりする」(ひんやりの理由は後ほど判明します)とか「スッキリする」とか、なんだか楽しそうなことをいう人が多い。

なにその気持ちよさげな感想。合法的な手段で得られるものなんでしょうか?(合法です)

でも腕に針刺すんですよ? ときいても「そんなにいうほど痛くない」という。

あー、注射こわい、こわいけど体験してみたい! アンビバレンツなこの気持ち。嫌いなのに気になる! 女子高生かおれ。

献血に対しては、そんな気持ちがはちきれんばかりにつのっていた。

初体験企画だった

話はかわって、当サイトは今年のゴールデンウィーク企画で「はじめての◯◯」というものを行った。各ライターが初めての体験をしてその様子をリポートするという趣向だ。

「じゃあ、ぼくは献血初体験してみます」

献血への畏怖と好奇心がフィフティフィフティとなっていたところに「取材」だからという言い訳で、好奇心の方が少しあふれた。

では、なぜゴールデンウィークじゃなくて、いま記事を書いてるのか。

それは、取材に行ったけど、献血しなかったから……。いったいどういうことなのか。

未来みたいな献血ルーム

伺ったのは、秋葉原にある「akiba:F献血ルーム」。

秋葉原には献血ルームが2箇所あるが、こちらは駅から少し離れたビルの5階にある献血ルームだ。
隣の派手な居酒屋が目を引くが、そこじゃなくてビルの5階
隣の派手な居酒屋が目を引くが、そこじゃなくてビルの5階
でかい円柱の展示ケース
でかい円柱の展示ケース
座れるのか座れないのか(座れます)よくわかんないシュッとした椅子。宇宙飛行士がコールドスリープしてそうな円柱の展示ケース。
コールドスリープ……
コールドスリープ……
大漁旗みたいな色使いの居酒屋が隣にあるとは思えない近未来デザインである。

ビンビン伝わるアキバらしさ

都内にある献血ルームの充実ぶりはすでに様々なメディアで報じられており有名だが、それにしても、至れり尽くせりである。

ここ、秋葉原のakiba:F献血ルームは室内のスタイリッシュなおしゃれさもさることながら、漫画の充実ぶりがすごい。
「はじめの一歩」と「沈黙の艦隊」は背表紙の色でわかった
「はじめの一歩」と「沈黙の艦隊」は背表紙の色でわかった
これ、読むひといるんだろうか?
これ、読むひといるんだろうか?
秋葉原という場所柄からか、本棚にはコミケのカタログもあった。カタログを読む人がいるのかいないのかは別として、秋葉原に居を構えているんだ、という意気込みは伝わってくる。

もう一つ、秋葉原らしいと感じたものに、らくがきノートがある。献血の感想を自由に描けるらくがきノートがあるのだが。みんなとても絵がうまいのだ。
献血キャラクター「けんけつちゃん」
献血キャラクター「けんけつちゃん」
献血、2回目と書いて8に修正。なぜ6回分も間違えたのか?
献血、2回目と書いて8に修正。なぜ6回分も間違えたのか?
八木アンテナ。電気の街の面目躍如
八木アンテナ。電気の街の面目躍如
いきなりアンテナが登場して困惑してしまうが、秋葉原=電気の街=アンテナの連想なんだろう。筋は通っている。

血がひんやりする

せっかく取材に来たので、献血について色々きいてみたいと思う。東京都赤十字血液センターの辻さんが対応してくださった。
元書店員というかわった経歴の辻さん
元書店員というかわった経歴の辻さん
――献血は初めてなんですが……初心者におすすめの献血なんてのありますか?

「おすすめ、かどうかはわかりませんが……初めてでしたら400mL の全血献血がいいのでは?」

――全血献血というのは?

「献血には大きく分けて2種類あるんですが、血を全部献血する『全血献血』と血漿や血小板だけを献血する『成分献血』の2種類あるんです」
ビビりつつレクチャーを受ける
ビビりつつレクチャーを受ける
――どうして全血献血がいいんでしょうか?

「400mLの全血献血は時間がそんなにかからないんです。採血時間は10分~15分ほどで終わるんです、でも成分献血の場合、一回ぬいた血から成分を分離して、必要な部分だけ頂いたら残りは返すんです」

――え、返す?

「そうです、返すので時間がかかるんですよ、40分~90分ぐらいですかね。ですから『全血献血』の方が、ドナー(提供者)への採血時間の負担が少ないんです」
400mLは、ちょうど紙パック(200mL)2つ分
400mLは、ちょうど紙パック(200mL)2つ分
冒頭で「ひんやりする」という献血経験者の感想を紹介したけれど、まさにこの成分献血がそれである。

戻される血がちょっとだけ冷えており、ひんやりするのだ。

ひんやりした血が体の中に入ってくる……文字で書くとなんだかちょっとアレな感じになってしまうが、成分献血のはなしである。なんら後ろめたいことはない。

「ちなみに、成分献血では、脂っこいものが多い食生活を送ってる人だと脂がういたりすることもあるそうです」

ひー、まじか。普段の日常生活の結果がそんなにダイレクトにでるなんて恥ずかしいぞ。
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血って足りてます?

ところで、献血といえばあの街頭の「◯型の血が不足しています!」という呼び込みが頭に浮かぶが、そもそも血液って足りてないのだろうか?

「季節によって変動があったりしますから時期によっては在庫数が少なくなることもあります」

――季節によって変動するんですか?

「そうです、やはり冬場は風邪だったり、春先は花粉症で薬を飲んでしまったりしてドナーの方が少なくなるんです」

赤血球製剤の在庫の推移というグラフを見せてもらったのだが、確かに冬から春にかけて在庫が減少している。野菜の値段みたいだ。
右下のメモは無視して下さい
右下のメモは無視して下さい
さらに興味深いのは、2011年。震災直後の3月から4月にかけて在庫量がグンと上がっている。これは当時、震災の影響で一時的に血液の在庫が増えたのだ。

辻さんのお話によると、一回献血をするとしばらく献血ができなくなるので、できるだけ多くの人がまんべんなく、1年に1回でもいいので献血をしてもらえると、バランスがよくなるのだそうだ。

献血にとりかかるか……

いよいよ献血である。申込用紙を書いて簡単な質問への回答を行う。その後、医師による問診を受ける。
実は朝から頭痛がするんです
実は朝から頭痛がするんです
実はこの日、頭が痛かった。

献血ルームのスタッフの方に「ドナーさんの健康が第一なので、正直に答えて下さい」と言われたので、正直に「今朝から、ちょっと軽い頭痛がしてます」と問診の先生に申し上げた。

「そうですか、それじゃあ今日は大事を取って、やめておきましょう」

――献血はしないということですか?

「はい、やめておきましょう」

ひぇー。

やばい、初体験にならないぞこれ。
献血しないことになりました!(でもちょっと安堵してる)
献血しないことになりました!(でもちょっと安堵してる)
同行してくれたデイリーポータルZ編集部の古賀さんに「献血はしないということになりました」と伝えると、たちまち「てめえ、何しにきたんだ!」と言わんばかりの表情になった(あくまでぼくがそう感じただけであり、実際に言ったわけではありません)

全く弁解の余地もない。申し訳ない。

代わりに献血してもらった

で、代わりに古賀さんが献血することになった。
なんで、私が献血を?
なんで、私が献血を?
古賀さんは、ずいぶん昔に何度か献血をしたことがあるらしいのだが、今回は実に約18年ぶりぐらいらしい。

献血手帳などはすでに紛失してしまっていたらしいけれど、データベースを調べてもらったら、ちゃんと記録が残っていた。さすがだ。
まずは検査の採血
まずは検査の採血
問診のところで、古賀さんは足の小指を骨折していることを申告したが、骨折はとくに問題なかったようだ。
献血前にドーナッツ食べて下さいとドーナッツ券を渡された
献血前にドーナッツ食べて下さいとドーナッツ券を渡された
そして、いよいよ採血。ほぼ水平ぐらいまでリクライニングできそうな、リクライニングの権化のような椅子に座らせられる。
この椅子、家に欲しい
この椅子、家に欲しい
この採血用のゴージャスな椅子はリクライニングだけではなく、テレビやiPod なども装備されている。

採血中はテレビを見るなり、ネットを見るなり、何をしてもよい。もしかして最近話題の「人をダメにする椅子」ってこれのことかもしれない。

「古賀さん、採血中になにか読みたいものありますか?」ときいたところ「じゃあ、暗殺教室」とリクエストされたので急いで持ってくる。
さて、暗殺教室でも読むか……と思ったらもう終わりだ
さて、暗殺教室でも読むか……と思ったらもう終わりだ
座っている椅子の装備の充実ぶりにはしゃぐうち、採血時間も残り少なくなってきた。漫画なんかゆっくり読む時間も無いぐらい、400mLの全血献血はあっという間だ。
自分の血を持ってみての感想「あったかい」
自分の血を持ってみての感想「あったかい」
そして採血終了。古賀さんは注射に対し、こわいとか恐ろしいといったネガティブな先入観をまったく持っていないため、無邪気にはしゃいでるうちにあっという間に終わってしまったようだった。

「ぜんぜん平気。ちょっと気持ちいいぐらい。今度子供と一緒にきますわ~」と、こともなげに言う。ここでもでた、気持ちいい発言。ほんとかー?
「いい出しっぺが献血しないって、どういうことなんですかね」
「いい出しっぺが献血しないって、どういうことなんですかね」
この後、古賀さんはしばらく休憩し、ジュースをいくらかのんで、何事も無かったようにアウトバックにブルーミン・オニオン(ステーキ屋のデカイ玉ねぎの唐揚げ)を食べに行ったので、ほんとうに平気なんだろう。

以上、献血はこわくなかったとさ、めでたしめでたし。

……で、終わるわけにはいかない。やっぱりぼくが献血しないと格好がつかない。
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心強い仲間たちといっしょに行く

というわけで、日を改めてもう一度別の献血ルームを取材させてもらいつつ、私も献血を初体験する。ということになった。

こうなったら意地だ。注射針こわいとか弱々しいことを言っている場合ではない。ライターとしての矜持がかかっている。(こわいので大げさなことを言って奮い立たせている)

実は、再チャレンジの取材では心強いことに、漫画家のカラスヤサトシさんと、秋田書店の駒林さんも一緒についてきてくれることになった。
左から、カラスヤさん、私、駒林さん
左から、カラスヤさん、私、駒林さん
カラスヤさんは献血に何度か行ったことがあるらしいのだが、駒林さんは献血初体験らしく実に頼もしい。というか、道連れができてうれしい。

白すぎる献血ルーム

東京ソラマチ®にある献血ルームfeelは雲の中をイメージしたという。
ふぁー、まっしろだ! ※ホワイトバランスのせいでちょっと黄色くみえるけど、白いです
ふぁー、まっしろだ! ※ホワイトバランスのせいでちょっと黄色くみえるけど、白いです
とにかく白い。ジャミロクワイの床が動く部屋ぐらい白い。

そして、壁面にある編集工学研究所がプロデュースしたという本棚もすごい。
ここの本は貸出もしてくれる
ここの本は貸出もしてくれる
三人ともけっこう本好きなので、時間をロスしがち
三人ともけっこう本好きなので、時間をロスしがち
さらに、この献血ルームの特徴は、なんといってもカフェコーナーだ。
スタッフが準備してくれる
スタッフが準備してくれる
ここは他の献血ルームのドリンクコーナーと違い、ちゃんとカフェスタイルになっており、スタッフが注文を受けて飲み物を提供してくれるのだ。(もちろん無料)

どんと来い、献血

さて、私もいよいよ年貢の納め時である。
確定申告なみに正直に申告するぞ
確定申告なみに正直に申告するぞ
今回は体調も万全でどこも悪いところは無い。逃げも隠れもしない。どんと来いという心境だ。
採血だって怖くない
採血だって怖くない
相当な覚悟で臨んだので問診でも特に問題なく、検査の採血に。

注射が苦手ならば、針が腕に刺さるとき、「針を見ないほうがいい」と周りにすすめられたのだが、ぼくはこわいからこそ針が刺さるところを見ないと安心できないのだ。

で、見たときの顔がこんな顔だった。
針が刺さった!
針が刺さった!
我ながら、うっかりすごい顔をしてしまっている。

珍しい血液型は教えてくれる

この事前の検査で、血液型の検査や貧血の検査を行う。

献血をするメリットとして、自分の血液型がハッキリわかるというものがある。

自分の血液型が分からないというひと、実はけっこういる。ぼくも、学校の健康診断でA型と判明するまで、親に「お前はO型だ」といわれ続けてきた。
血液型検査、どっちが凝集するかで何型かわかる
血液型検査、どっちが凝集するかで何型かわかる
ドラマなどでよく聞く希少な血液型「Rhマイナス」という血液型はたしかに数はすくないものの「たまに見かける」ぐらいはいるらしい。

辻さんの話によると、本当に希少な血液型の場合は後ほど個別に登録と再検査のお願いの連絡が来るという。

――なんですかその選ばれし者みたいなカッコイイ話は。

「もし、輸血などでその血液型が必要になった場合、ご協力お願いする可能性もあるんです」

まさに「血で選ばれた人」だ。「血筋が良い」とは本来こういうことなのではないだろうか?

いよいよ採血するぞ!

野菜ジュースなどで水分補給しつつ、待つこと数分、ついに呼び出しがかかった。もう、覚悟はできている。
心臓バクバクいってる
心臓バクバクいってる
スタッフの方に言われたのは、注射でめまいが起きたり、目の前が真っ白になったりするのは、心理的な要因も大きいので、本当にダメな時は直前でも取りやめることができますからね。ということだ。

しかし、ここまで来て引き返すわけにはいかない。古賀さんも、カラスヤさんもなんの気負いもなくサクッと採血していた。

ぼくにできないわけがない!
んー……
んー……
採血用の注射針は17ゲージという大きさのものを使っており、直径が約1.4ミリメートルある。見た目の感覚でいうと、パスタ(スパゲティー二)ぐらいの太さがある。

これは、採血するさいに赤血球などの組織を潰してしまわないために太くなっている。
このパスタの太さが1.3mmなので、これよりちょっと太いのが腕に刺さる
このパスタの太さが1.3mmなので、これよりちょっと太いのが腕に刺さる
ちなみに、ゲージは数字が大きくなるほど針が細くなっていき、予防接種に使われる針は23ゲージで直径が約0.6ミリメートルしかない。
ひー
ひー
採血中はただひたすら腕の違和感に耐えながらアワアワしていた。この採血用の椅子にはiPadがついていてネットも見られるようになっていたので、せっかくなので見たのだが、全く頭にはいってこなかった。

体中がスーッと軽くなった感じがする

採血の時間なんて本当に短い。あっという間におわってしまった。
おわったー
おわったー
終わってみると、緊張がいっきにとけたせいなのかわからないけれど、とたんに体中がスーッと軽くなった感じがした。こころなしか心地よい清涼感も感じる。ほんとにちょっときもちいいのだ。

この感覚いいのかな。これ合法なんだろうか。合法なんだけど。

なんだろう、献血にハマっているひとってこの感覚を味わうためにきてるのだろうか?

今まで印象があまりよくなかったぶん、楽しいへの振れ幅がでかいというのは否めないけれど、たしかにビビりすぎてたというところはあるかもしれない。

献血、悪くない。
隣で採血していた駒林さんは「採血はもういいかなー」とあまりお気に召さなかったようだった
隣で採血していた駒林さんは「採血はもういいかなー」とあまりお気に召さなかったようだった

また行きたくなった

ぼくが献血にたいして抱いていた漠然とした不安や畏怖の念は今やすっかり取り払われた。
なんなら、もう一回行きたい。と思っているぐらいだ。

しかし、献血は一回すると、その後しばらく間を置かなければならず、一年間にできる回数も決まっている。(詳しくはこちら

今回400mLの献血をしたので、次に最短でできるのは8週間後の成分献血からだ。

採血が終わった時に感じた気持ちよさが本物なのか、気のせいなのか、早く確かめたい。
献血をすると、後日、血液検査の結果が送られてくるのもうれしい。以前はγGTPが70ぐらいあったけれど、お酒をやめたので47まで下がっていた。体は正直だな……
献血をすると、後日、血液検査の結果が送られてくるのもうれしい。以前はγGTPが70ぐらいあったけれど、お酒をやめたので47まで下がっていた。体は正直だな……
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