チケットが入手困難
お正月の帰省のさい、妻の実家がある青森から東京まで「あけぼの」に乗って帰ろうということになった。
乗車券の購入を命じられたぼくは、乗車予定日の乗車券を駅に買いに行ったものの、チケットは十数秒で売り切れてしまっていた。
あくる朝、改めて出なおし、みどりの窓口に2時間ほど並んでやっと購入できた。
嵐のコンサートチケット並の入手困難さ
昨年秋、あけぼの廃止のニュースが伝えられて以来かなり入手困難になっているらしい。
人気ぶりをあまく見てうっかり帰京する日が一日遅くなってしまったが、仕方がない。
あこがれのブルートレインと対面
ぼくが乗ったのは1月5日18時23分青森発の「あけぼの」だ。乗車日当日、ぼくたちは青森駅に昼過ぎに到着し、駅直結のデパートで出発時間まで時間を潰した。
そして18時すぎ、ホームに列車が入線。
きた!上野行きだ!
跨線橋には記念写真を撮る鉄道ファンがたくさんいた
家族旅行といえばヒルゼン高原センター(※鳥取県民にとってのマザー牧場みたいなもの)に連れて行ってもらえるのが精一杯といった子供時代を過ごしたぼくにとって、ブルートレインといえばあこがれの列車だ。
とくにベッドのカーテンを閉めると秘密基地みたいになる。というその仕様を考えただけでも知恵熱で倒れそうになるぐらいの魅力があった。
そんなあこがれの列車が今、目の前にいる。この列車にこれから乗るのだ。
憧れていたアイドルに対面した高校生のような気持ちで、思わず定番の写真を撮ってしまった。
この位置の写真はおさえとかないと
あぁ、上野に行くんだなおれ。
行き先に表示されている上野の字を見て「あぁ、おれこれから東京に行くんだな」と素朴に思った。上野=東京なのだ。こんなに輝かしい上野ってほかにあるだろうか?
ふるさとの訛りを上野駅に聞きに行っちゃうというほどの、東北の人たちの上野に対する思い入れがちょっと理解できたような気がする。
ブルートレインでやりたいことその1
今回ぼくが乗ったのは開放型B寝台という席(というかベッド?)だ。一般的な寝台列車のベッドといった感じの席だ。
二段のベッドが向かい合わせに並んでいる
ちなみに寝台列車の席はA寝台だとかB寝台だとか個室だとか何とかかんとかといった複雑な区分けがあってややこしい。
そのあたりについては、当サイトで過去に何回か記事(
これとか
これ)にしているので、そちらをごらんいただきたい。
浴衣、シーツ、毛布、ハンガーが準備してある。
ベッド横の通路には窓ごとに引き出して座れる椅子が付いている
ところで、寝台列車に乗ったら必ずやりたいと思っていることがいくつかある。この機会に、そのやりたかったことをできるだけやっておきたい。
まず、弁当をつまみにビールを飲むことと、乾物を肴にお酒を飲むことだ。あたりまえだけど、こういう基本はおろそかにしたくない。
ビールと弁当、基本ですよね、浮かれすぎて笑顔がだらしない
列車は青森駅をゆっくりと出発。動き出すタイミングを見計らってビールを開け、グイッと飲む。うへー、もう、だめだ、楽しい。
汚い写真で申し訳ないです。
浮かれすぎて、弁当を半分以上食べ終わったところで写真を撮ってないことに気づく。あわてて写真を撮るも、食べかけの弁当の写真なんてどう撮っても汚くしか撮れない。
気を取り直して乾物を食べながらビールというのもやりたい。
青森駅前の市場で「開きかんかい」という乾物を買った。氷下魚(こまい)という魚の乾物で、皮から身をペリペリと剥がして食べるのだが、これがやみつきになるうまさなのだ。
開きかんかい
「開きかんかい」をむしるわたくし
外暗くて何にもみえねー
冬の19時なので、外はたまに通りすぎる踏切以外は全くなにも見えないほど真っ暗だったので、車窓を楽しむというわけにもいかなかったが、とりあえず、窓際の椅子にこしかけて雰囲気だけでも味わった。
ブルートレインでやりたいことその2
そういえば、席に準備してある寝台列車の浴衣。あれわざわざ着替える人をあまりみたことない。
寝台列車の浴衣に着替える。というのもやりたかったことのひとつだ。
「JR」の文字が交互に組み合わさった模様がかっこいい
つんつるてんだ
着てみると、ぼくにはかなりつんつるてんで、どうみてもアホの丁稚である。
浴衣すがたでもう一回撮り直し
浴衣を着ると、寝台列車に乗って浮かれてるのがより一層際立つ。しかし、実際に浮かれてるので仕方がない。
ブルートレインでやりたいことその3
唐突で申し訳ないのだが、寝台列車でトランプするイメージはないだろうか?
とくに寝台列車で修学旅行に行った人は席で友達とトランプをしたってひとがいるかもしれない。
そんなイメージ無いよ!と言われるかもしれないけれど、寝台列車の中でトランプしたいと思ったのでやった。
といっても、トランプを準備できなかったので、iPadのトランプゲームを、息子と一緒にすることにした。
二段ベッドの上でトランプ(iPad)に興じる浴衣姿の親子
7並べ!
得意な7並べで2連勝したところ、息子はそうそうに飽きてしまい、iPadでYouTubeを見はじめた。
YouTubeを見る息子
手加減すればよかったと反省。
まあいい。次にやりたかったことにとりかかりたい。
ブルートレインでやりたいことその4
次はブルートレインの設備をすべて使い倒したい。
といっても、そんなにあるわけではなく、トイレ、洗面台、飲料水のウォーターサーバーぐらいしかない。
じゅうぶんな設備の洗面台
洗面台で歯磨き
洗面台はトイレの前に二つならんであり、家にあるような普通の洗面台として全く問題なく使える。下にコンセントもあったので、たぶんドライヤーなども使えるはずだ。
ステンレスの便器が列車っぽい
トイレも古さは否めないものの、きちんと清潔に清掃されており、使うのに全く抵抗はなかった。
昔の列車のトイレは便器の奥にバラストの砂利が見えたものだが、最近はそんなこともなく、ちゃんとした水洗トイレだ。
そして肝心のウォーターサーバー。
備え付けのコップがかわいい
必ず手に持って飲まないと溢れる
備え付けの紙コップは、紙コップというよりも、袋だった。一枚づつひっぱり出して袋の中に水を入れて飲む。
寝台列車のウォーターサーバーの飲み方を、こんなに写真たっぷりで紹介しているサイト他にはないのではないか?
そして寝る
以上、ひと通りブルートレインでやってみたかったことはやり終えた。あとは寝るだけである。
おやすみなさい
ベッドのカーテンをしめた状態
ベッドのカーテンを閉めると、秘密基地っぽさがグンと上がる。うへー、たまらない。押入れしかり、カプセルホテルしかり。人間はそもそも狭いプライベートな空間が好きなのかもしれない。
そういう意味でぼくは宝くじ売り場のBOXの中にいちど入ってみたいと思っている。
目が覚めると埼玉県
次の日、目が覚めるとすでに列車は埼玉県に入っていた。
やはり足を伸ばして横になって寝られるというのはポイントが高い。夜行バスや新幹線で窮屈な思いをして仮眠するよりもだんぜん目覚めが良い。シュウマイとギョウザぐらいの違いはあるのではないか?
すでに起きて着替えていた息子
列車は住宅街を抜け、上野駅に近づいてきた。一晩の寝台列車の旅も終わりである。
そして列車はゆっくりと上野駅のホームに入る。
ブルートレインのおしり
いつのまにか先頭の機関車が変わっていた。マジックみたい
ブルートレインは、夜に出発して、翌朝目的地に到着する。
しかもしっかり睡眠もとれるので、移動手段としてけっこういいんじゃないかと思うけれど、所用時間や金額でバスや飛行機と比べた場合、どちらも中途半端だったのかもしれない。
3月以降、もう乗れなくなるのだと思うとやっぱりちょっとさみしいし、純粋に移動手段の選択肢がひとつ減るというのは残念なことだ。
今のうちに乗っておいた方がいい
以上、とりあえず、ブルートレインでやりたかったことをできるかぎりやった。
子供の頃からの夢を実現できてうれしい。
今回ブルートレインに乗って改めて思ったのは、ぼくは狭い空間が好きなんだなあということだ。
猫が段ボールに入るように、子供は押入れに入り、ぼくはブルートレインに乗った。
しかし、時代の趨勢かブルートレインは次々と廃止の波にさらされている。
「あけぼの」は定期便としては3月14日で廃止されてしまうが、臨時便としては残るということらしいが、いつまで残るのかは不透明だ。
上野~札幌間の「北斗星」も、青函トンネルを新幹線が走るようになると廃止されるのではないかとも言われている。
いつまでもあると思うな親とブルートレイン。乗るなら今しかない。