宇都宮のシンボルといえば餃子像
宇都宮には有名な石像がある。
そう、餃子像だ。
宇都宮駅西口、歩道橋の下にそれはある。前の会社にいたころに出張で来た宇都宮には、もうちょっと別の場所に餃子像があったような気がしたのだがなぜだろう。あれは宇都宮じゃなかったのか。
正確には餃子のビーナス。餃子の皮に包まれたビーナス像、ということである。
調べてみたらこの像、やっぱり以前は駅の反対側にあったらしい。再開発に合わせてこちら側に移設する際、落っことして割れたのだとか。そういえばそんなニュースを見た気がする。
真っ二つになったのでつなぎ合わせた。
落とすなよ!という突っ込みはすでに痛いほど受けていると思うので割愛する。そういう失敗は誰にでもあるし、僕も業者だったら落としていたかもしれない。ごまかして川に沈めたりしなかっただけむしろ偉い。
とはいえ観光客には餃子像が駅の西口にあろうが東口にあろうがさほど大きな問題ではなく、宇都宮はなぜ餃子を石像にしたのかっていうことの方が重要であろう。
そんな餃子像だが、実は隣にでかいカエルの像があることをご存じだろうか。
餃子の横になんかいるだろう。
カエルである。
餃子像の横にはカエルの像があるのだ。縁起がいいから、ということでカエルらしいのだが、でかいだろう。おかげで餃子像がジャバザハットに捕まったレイア姫みたいになってる。
石像の町、宇都宮
ここまででもわかるように、どうやら宇都宮にある石像は餃子像だけではないようなのだ。町を歩くといたるところに石像がある。
餃子屋さんのキャラクターを石で。
ネズミも石。
仁王像だって石でできている。
いったい宇都宮にはメデューサでもいるのだろうか。夜中にビジネスホテルから隣のコンビニに歩いていく途中、下パジャマで上裸のおじいさんが歩いていたがそれは別の話か。
石像の話に戻るが、極めつけはこちら、宇都宮駅の東口を出たところにあるイベント広場である。宇都宮駅東口というと西口に移動する前の餃子像があったことでも有名な場所だが、今はさらにすごいことになっている。
駅を出るとすぐこの祭り騒ぎ。
イベント広場では宇都宮のいろいろな名店の餃子が食べられる。そしてビールが200円である。極楽浄土ここにあり、だ。極楽は都内から新幹線で1時間だった。
しかしうまい餃子とビールで浮かれた僕たちを硬い表情でにらむ者たちがいる。また石像である。
広場の真ん中になぜかいきなり観音様が立っている。
餃子広場にいきなり観音様が立っているのもかなりなものだが、宇都宮の石像傾向はそれだけでは終わらない。
敷地内には気持ちのいい芝生があるのだが、そこにはたったいま石にされてしまったかのような生き生きとした石像たちが乱立している。
猫型ロボット。の石像。
パンの石像。
電気。
妖精。
みんな石像である。
餃子とビールで誘い出して石にしてしまう町みたいだ。その石を使って餃子を焼いていたりするとスティーブンキングの小説である。
話を餃子像に戻そう。
ところでこの宇都宮の餃子像、なんだか質感がざらざらしていて独特なのだ。もっとつるりとした大理石とかで作ってもよさげなのに。
へんな切り取り方になってしまったが表面を見てほしかっただけで他意はないです。
テレ東の番組企画で作られたことがわかる。そしてその下に大谷石材協同組合、と。
餃子像は大谷石でできていた
大谷石については以前にもライター大北くんが
資料館をレポートしてくれているのでそちらを先に読んでおいてもらいたい。宇都宮の特産品として有名な大谷石だが、まさかビーナス餃子までもが大谷石だとは知らなかった。
大谷、移転前後の餃子像を知っている身としてはいっかい行っておくべきだろう。
と思ってタクシーに乗ったら「若い人には面白いかどうかわかんないよ」って言われた。
次のページはほぼ石しか出てきませんが若い人にも面白いと思うので読んでみてください。
大谷石を訪ねて
宇都宮駅から車で約30分、餃子像の生まれた石の町「大谷」がある。
町並みが徐々に変わっていくのがわかります。
このあたりに来ると家の作りが木から石に変わっていくのが本当に見ていてわかる。大谷に入った証拠である。
家の作りが石になったらそこが大谷。
そしてさすが石の名産地、石材店の店構えが普通じゃない。なにしろお店自体が石でできていたりする。
岩山かと思ったら石材店である。
どこかの石材店が社屋を石で作り始めたら、おれもおれもと追従しだしたのか。とにかくこのあたりの石屋さんはみな石でできている。
日本銀行ではない。石材店である。
貫禄の石倉。
タクシーの運転手さんに聞いたのだが、このあたりの石材店の中でも、上の写真の建物は日本一の大谷石の建築物なのだとか。その名も(株)屏風岩。もはや岩の名前である。石材店とかつけない。
大谷石の頂点には観音様が
そんな石の町大谷の中心に位置するのがこちら、大谷観音である。
総本山といえよう。
見てのとおり若者がデートに使う感じの場所ではない。いや、初めてのデートで石を見に行くのはリスキーだが、ある程度慣れてきたら逆に行くべきかもしれない。石について語り合えたら、二人はもう心配ないだろう。
いやむしろ心配か。
まさに岩の都である。
巨岩に取り込まれるようにして建てられたお堂に入ると、中は岩肌がそのまま壁として使われており、正面の岩には人を見下ろす位置に全長5メートルの千手観音像が彫られていた。これは掛け値なしに感動するから若い人も見た方がいい(写真撮影禁止だったから見たかったら行くしかないのだ)。
お寺の中に流れるアナウンスによると、これは空海が彫ったものなのだとか。日本最古の石仏としても有名である。
餃子像と同じ石がでかかったらそれだけで面白いだろう、くらいの軽い気持ちでやってきた大谷だが、しびれるくらい見どころが多い。軽い気持ち万歳である。
寺を出るとさらなる迫力が待っている。
遺跡か。
このレベルの石仏を見たことあるか。
見上げると迫力にくらくらする。
石天国、大谷。宇都宮が餃子天国なので、これで剛柔取り揃えられた気がする。そう考えると石でできた餃子像は的確に宇都宮を表現していると言えるのだ。これは納得である。
餃子と石の町、宇都宮
宇都宮の餃子像のルーツを探っていったら、なんと平安時代のありがたい石仏にまでたどり着いてしまった。宇都宮というと餃子、とすぐ結び付けがちだが、その根底にあるのは平安の仏像である。そういう気持ちでこれから餃子像を見てほしいものです。