食パンの切り枚数でいつでも紛糾できる私たち
冒頭で書いたとおり、食パン何枚切り問題は地域性が高かったり食の好みの話であることから、大人でもそこそこヒートアップできる話題である。
この話題を語るにあたってまず押さえなければならないのが5枚切り食パンだろう。
東京のスーパーは6枚と8枚がメイン
じわじわと関東圏に5枚切りが浸透中?
実は当サイトで2007年に5枚切り食パンについてライター大塚さんががっちり調査している(記事「
関西の食パンは5枚切りなの?」)。
タイトルからも分かるとおり、関西(あとなぜか岡山と記事にはある)で5枚切りは大変にメジャーなのだそうだ。
当時これには本当に驚いた。東京でのメインはあくまで6枚切りと8枚切りである。5枚切りの、私は存在も知らなかった。
しかし大塚さんの記事公開から6年、じわじわと関東にも5枚切りの波が来ているようだ。
じわじわと東京でも
勢力を拡大か
ちょうどいいぞ、5枚切り
そもそも食パンというのは食べる量について常々逡巡する食べ物だ。
・4枚切りだとちょっと厚すぎて1枚食べるのはどうも罪悪感があるのよね
・ とはいえ4枚切り半分だと足りないのよ
・じゃあ6枚切り1枚にしようかしら
・食べてみたら6枚切り1枚じゃ足りないわ
・うーん、食べちゃえ6枚切り2枚目
・あっ! 食べ過ぎた!
ってこと、よくあるでしょう。ありますよね。
私は今まで5枚切りは食べたことがなかったのだが、こんなときこそ5枚切りだったのかもしれない。
買ってきた。おお…厚い? いやそれほどでも…?いや、厚い…!
不思議な5枚切り
それで改めて初めて5枚切りを買ってみた。
さあ、この絶妙なボリューム感を味わおう! とねじり鉢巻きをまいたのだが。
食パンが見たことのない厚み、というこの状況、なんだか気分がおかしい。
4枚切りでもない6枚切りでもない、なんだろう、この見慣れない不安定な厚みは。
ちなみに4枚切りだと安定の迫力
あの4枚切りの迫力ほどではないが、厚い5枚切り。
「食パンが、見たことのない厚みだ」という状況が思った以上に不思議である。
食べたあとも、ちょうどよくお腹がふくれながらも「あれ、なんだったんだろう」というふわっとした気持ちが続いていた。
あまりにも6枚切りや8枚切りを見慣れすぎていて5枚切りに頭がついていっていないのか。慣れない言語に戸惑っているような感覚なのだ。
戸惑うとか気持ちがついていかないとか、J-POPみたいなエモーションだが食パンの話である。
一旦、全部買ってみた
5枚、6枚、7枚、8枚切り食パン。7枚切りは頼んで切ってもらったので枚数のシールがない
5枚切りのしっくりこなさが面白い。それを踏まえて登場していただくのが今日の本丸、7枚切りの食パンだ。
どうだ、聞いたことないだろう。7枚切り。
4枚、5枚、6枚、8枚は普通に袋詰めして売られていたが、7枚切りはお願いして切ってもらって手に入れた。
5枚切りが関東進出をじわじわ進めるなか、いよいよ7枚切りの時代も幕を開けていいはずだ。
あれ誰だよ……、え?! 7枚切り?! そんなやつ今まで見たことないぞ… どっから来たんだ… ライバルの登場にざわざわする食パンたち
興奮するしかない食パン7枚切り
店の方に聞くと、5枚切りは以前からスライスした状態で売っておりそこそこ動く商品だそうだ。やはり東京にも5枚切りの波はきていた。
7枚切りはオーダーがあれば切るが、切った状態で置くことはないという。担当してくださった方はオーダーされたこともないそうだ。買おうと思えばいつだって買えるのに、だれも買わない食パン7枚切り。
知られざる、厚み。それが食パン7枚切りである。
興奮しない方がうそだ。
これが、興奮の、食パン7枚切りだ!
店によって違いはあると思うが、一般的に「食パン1斤」というのは340g前後だそうだ。いわゆるスーパーで売られる袋食パンのサイズなどはそうである。
カットをお願いするためにベーカリーで買ったが、サイズはいわゆる袋食パンと同じものを選んだ。
比較のために5枚切り、6枚切り、8枚切りとサンドイッチ用の10枚切り(そんなのもあるのですね)を買ったので並べてみよう。
単純に、厚みがいろいろだなあという感想(こうなると9枚切りも気になるが今はおいておこう)
こう並べてしまうと、きれいに厚みの変化があるなあくらいの感想だろうか。
7枚切りは個人的には6枚切りと一見ほとんど変わらないように見えた。8枚切りよりも断然6枚切りに見える。
4枚切りや5枚切りと違い、厚みの差が少なくなってくるためスライサーの具合で同じ切り枚数でも個体によっては厚みの誤差もあるだろう。
6枚切りに見える…(7枚切りです)
つい食パンを見てばかりいた
概ね「食パンを見る」だけで1ページ目が終わろうとしている。なかなかに風情ある時間が過ごせたとは思うが。食パンは食べ物なのだ。
7枚切りの食パンは、どんな食パンなのか食べて知ろう。
7枚切りはサンドイッチに使えるか
薄いようなそうでもないような7枚切り。この正体はなんだろう。サンドイッチにするには厚すぎるだろうか。
私は8枚切りパンがあったら迷わずトーストで食べるが、8枚切りならサンドイッチに使うという意見も多いだろう。8枚切りがサンドイッチ用ならば7枚切りでもサンドイッチに使えるんじゃないか。
むしろちょっと厚みがあって食べごたえが出ていいかもしれない。
8枚切りサンドイッチと
7枚切りサンドイッチを用意しました(具はツナときゅうりなのですが、マヨネーズが切れておりチーズのドレッシングで調味しております)
7枚切りはサンドイッチには厚い
パンが厚いと具の味が薄まるのだ。
8枚切りサンドも7枚切りサンドも具の量と味付けは同じにした。当然だが、7枚切りの方がパンにボリュームがあるので味が薄いと感じる。
サンドイッチを食べているというよりも、これは明らかに食パンを食べている感じである。
パンだ…! 食パンだ!
7枚切り食パンはサンドイッチには厚すぎる。
また一つ人類は大きな英知を手に入れた。
ちなみに先ほどちらと写真に登場したが、ベーカリーでは10枚切りという食パンも売られていてこれをサンドイッチ用に購入する人が多い&お店でもそのようにお勧めしているそうだ。
また、スーパーなどにあるパンの耳が切り落とされているサンドイッチ専用パン(よくプラパックに入っているやつ)は1斤の厚みに直すと12枚切りくらいだそう。
10枚切り、12枚切りが活躍するサンドイッチ界。すまん7枚切り、きみでは厚すぎた。
やっぱりトーストだろう
ということは、やはり7枚切りの活動の場はトーストだろう。食べてみよう。
7枚切りトースト
おお、トーストだ。8枚切りトーストに感じる薄さがなく、なじんだ。食べてみよう。
お。見た目よりも食感が薄い。なるほど、これは7枚切りだ。おなじみ6枚切りじゃないのがすぐ分かる。
ただ8枚切りのザクっとして噛んだ途端に歯が噛み合わさるあの独特の感じはないのだ。
薄すぎず薄い。これが7枚切りか。
頭に定着している4枚切り、6枚切り、8枚切りの世界観とはやはり違う。
5枚切りを食べたとき同様、やはり自身のなかにある食パンの世界がゆるぐ感じがあった。
ちなみにこちらが6枚切り。安定感
トースト以下、サンドイッチ未満
サンドイッチには分厚すぎ、トーストだと若干物足りない。それが7枚切りということでいいだろうか。
トースト以下、サンドイッチ未満。これが食パン7枚切りの正体である。なるほど売られないわけだぜ!
でも私は会えてうれしかったよ、7枚切り
以上、すっかりひとりで興奮してしまったうえに「トースト以下、サンドイッチ未満」などと無碍な言葉を投げつけてしまったが、7枚切りは多くの人にとって未知の食パンには違いない。
この興奮を、みんなでもっと分かち合おうじゃないか。
この食パンに何か感じませんか
私はあらかじめ分かった状態でこの7枚切食パンを手にしたが、もし何も知らない状態で出されたらあの子どんな顔するだろう。
「えっ!何この厚み!」って、なるのだろうか。
当サイト編集部の面々、トゥギャッター社 吉田さん、ライター馬場さん、現在デイリーポータルZ編集部が間借りしている渋谷ヒカリエaiiima3を擁するクリエイティブラウンジMOVのスタッフのみなさんに見ていただいた。
さあ、この食パンに何か感じませんか。
……? 食パンだよね?(編集部 橋田)
……?? 食パンですか?(MOVスタッフOさん)
……? 食パン…ですよね?(編集部 安藤)
……?? 食パン?(ライター馬場さん)
……? おいしそうな……食パンですね。(MOVスタッフDさん)
……? おいしそうな……食パンだと思いますが……。(トゥギャッター 吉田さん)
一部の人から「おいしそうだ」とという感想が聞かれたが、基本的には「?」というリアクション。
一様に、完全に戸惑っている。
申し訳なくなってあわてて付け加えた。「厚みとかどうでしょう!」
……6枚切り?かなあ…
6枚切り…ですよね?
あー……、6枚切りよりちょっと薄い?
6枚切りよりも…薄いですか?
……え? 8枚切りですか…?
……? 8枚切り……?
なんと、きれいに意見が分かれた。
ちなみに6枚切りではと踏んだ編集部 橋田とMOVのOさんはともに6枚切りの食パンを食べて育ったそう。対して8枚切りだと判定したMOVのDさんは8枚切りで育ったという。
自分に一番身近な食パンと間違えがちだということだろうか。
編集部安藤とライター馬場さんは見事に異変に気付いた2人だ。
とくに安藤は普段6枚切り食パンを食べているそうで「なんとなく、この厚みじゃ足りない気がする」と胃袋から厚みを計測していた。やるな。
これじゃたりないよ
これ、7枚切りの食パンなんです!
概ね「?」という感想を得、さあいよいよ発表である。
「実はこれ、7枚切りの食パンなんですよ!」
どうです、珍しいでしょう。
うーん。あー。
そうなんですかー。
へー。
ほー。
ほほー。
あ、なるほどー。
リアクション……の……薄さよ!
あれ、もしかして7枚切りの食パンてそんなにみんな興味ないですか。
そんなばかな
Ustreamも静かである
実はこの日はヒカリエで公開中の当サイト移動編集部から平日毎日お送りしている編集部の生中継Ustreamでも7枚切り食パンを放映していた。
「今から世にも珍しい7枚切り食パンを映します」というTweetとともに食パンを中継画面に映し出した。
これが7枚切り食パンです!
ナウオンエアしてるのに?!
誰も見たことのない未知の厚み、食パン7枚切り。
サンドイッチには厚すぎ、トーストには薄すぎるそんな絶妙に微妙な食パン。
確かに珍しいものではあるが、珍しいだけでは人の興奮は起こせないのだということを改めて知りました。
でも、私は興奮したんだ!
憧れの食パンと幻の7枚切り
実は、私は子供のころそれほどこの手の食パンを食べた覚えがないのだ。
母が健康志向で本気の天然酵母的な全粒粉パン的なかなりぼそぼそしたものを自宅でスライスして食べるのが常であった。きっと高かったろうし大人の今なら美味しく食べられると思うが、子どもの私にはちょっと食べにくいものだった。
近所のさっちゃんちに泊りに行くと朝出してもらえる6枚切りトーストにジャムと甘いピーナツバターを半分づつ塗った食パンは憧れの食べ物であった。
憧れの食パン、しかも見たことのない7枚切り! 私の興奮の理由をお分かりいただければ幸いであります。
うちの実家は7人家族だったこともあってより興奮したのかもしれない