特集 2013年3月29日

あの環状2号線はいまこうなっている!

あいかわらずなんだかかっこいいことになってます!(大きな画像はこちら)
あいかわらずなんだかかっこいいことになってます!(大きな画像はこちら
会社で、プロジェクトを途中から引き継ぐのって気が重いだろう。前任者が書いたプログラムやデザインを引き継ぎつつリニューアルとか。

いっそ最初からまっさらな状態ですべてやりなおしたい!と思うことって、仕事をしているとよくある。

東京って、そういうことの繰り返しなのだよ!
もっぱら工場とか団地とかジャンクションを愛でています。著書に「工場萌え」「団地の見究」「ジャンクション」など。(動画インタビュー

前の記事:ビルの名称表示「建て書き」がおもしろい

> 個人サイト 住宅都市整理公団

聞くからにたいへんそうなんだけどかっこいい!

なんのことかというと、すでにいろいろなものが錯綜している都市の中に、新たに、あるいはリニューアルとしてインフラをつくることのやっかいさだ。

「都市計画」なんて一言で言っちゃうものの正体は、調整と忍耐と技術と落としどころの積み重ね。「四苦八苦のミルフィーユ仕立て」なのだ。(ドトールのミルフィーユおいしいよね)。

でもね、このミルフィーユがまたかっこいいんだ!うっとりしちゃう。
東京都建設局のみなさんと現場の建設会社のみなさんに案内していただきました。ありがとうございます!
東京都建設局のみなさんと現場の建設会社のみなさんに案内していただきました。ありがとうございます!
今回あらためてそれを痛感したのは、環状2号線をつくる工事を見せていただいたからだ。
環状2号線外堀通りとして知られている道路に、虎ノ門から先の有明までがつながって完成する環状道路(東京都都市整備局「環状2号線新橋・虎ノ門地区」より【PDF】)
環状2号線外堀通りとして知られている道路に、虎ノ門から先の有明までがつながって完成する環状道路(東京都都市整備局「環状2号線新橋・虎ノ門地区」より【PDF】
環状2号線とは、その名の通り、東京をぐるっと取り巻く道路の内側から2番目の道路のこと。よく耳にする「カンナナ」「カンパチ」のシリーズだ。環状一号線については三土さんの「東京の環状一号線をたずねる」をぜひ。
で、この環2の虎ノ門から有明方面の部分が現在工事中なのだ。というか、こうやって見るとあんまり「環状」じゃないけど、それはいいのだ。問題はそこじゃない。これを問題にする前に俎上に載せるべき議題はたくさんある。「どうして戦争はなくならないのか」とか「どうして愛は終わってしまうのか」とかさ。環2が環状じゃないなんてささいな問題は、そちらをかたずけてからにしようではないか。というか、愛は終わってしまうんですかね。
まずは、勝ちどきと晴海の間の水路に架かる橋の建設現場へ!
まずは、勝ちどきと晴海の間の水路に架かる橋の建設現場へ!
ここ。本記事執筆現在の航空写真では橋脚が水路の中に建ったところだ(大きな地図で表示
すでにかっこいい!
すでにかっこいい!
なんか、橋にしてはずいぶんメカっぽい格好だ。なんだなんだ。
なんか、橋にしてはずいぶんメカっぽい格好だ。なんだなんだ。
まずは南の海の方、新橋から伸びてくる環2が勝ちどきと晴海の間の水路を越えるための橋を作っている現場へ。

写真のように、やたらごつい橋だなーと思っていたら、なんとこれはクレーンだった!
のぼります。こういう仮設の足場のぼってくのってうきうきする。
のぼります。こういう仮設の足場のぼってくのってうきうきする。
上がってみたら…うん、これは橋じゃない!(大きな画像はこちら)
上がってみたら…うん、これは橋じゃない!(大きな画像はこちら
橋より前に、まずはこの緑色のクレーン(このタイプ、日本に数台しかないそうです)を載せるための仮の脚を組んで、それからこいつに実際の橋の桁を吊して、すでにつくってある橋脚の上に載せる、という作業が行われていた。

って言っても「ん?」って感じだと思う。とにかくお伝えしたのは、橋を載せるために橋みたいなクレーンをまずつくらなきゃならない、という「手間」だ。ぼく、ものぐさな人間なんで、こういう手間ちゃんとやる人を無条件で尊敬してしまうわけですよ。
このコンクリートの桁が、この日このクレーンで設置されたもの。こっちがほんとうの橋ってわけだ。(大きな画像はこちら)
このコンクリートの桁が、この日このクレーンで設置されたもの。こっちがほんとうの橋ってわけだ。(大きな画像はこちら
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これが動くなんて信じられない

クレーンなので、所定の位置まで巨大な桁を動かす仕組みが当然あるわけです。
クレーンなので、所定の位置まで巨大な桁を動かす仕組みが当然あるわけです。
と思って見ると、車輪がある!
と思って見ると、車輪がある!
そこかしこにある!
そこかしこにある!
しかし、このキュートなちっちゃい車輪がねえ…
しかし、このキュートなちっちゃい車輪がねえ…
そしてクレーンの最頂部にあるこいつから吊り下げられる。
そしてクレーンの最頂部にあるこいつから吊り下げられる。
だんだん全体像が分かってきた。うん、確かにこれはクレーン
だんだん全体像が分かってきた。うん、確かにこれはクレーン
この桁どのぐらい重いんですか?とお聞きしたところ「今回のこれは80tぐらいですかねえ」とのこと。

このあいらしい車輪が80tの重さに耐えながら動くっていうのが信じられない。ぼくなら動けない。

「次に架ける桁は倍ぐらいあって、160tほどのはずですよ」とも!ひゃー!
次はこの続きの桁を架ける。クレーン自体をまず伸ばすところからだそうだ。もうそのクレーン橋にしちゃえばいいのでは?などと思ってしまう。
次はこの続きの桁を架ける。クレーン自体をまず伸ばすところからだそうだ。もうそのクレーン橋にしちゃえばいいのでは?などと思ってしまう。
つなげていく先は有明方面。見ると、すでに架かっている(が、まだ開通はしていない)豊洲大橋が見える。そうか、あそこにつながるのか!
つなげていく先は有明方面。見ると、すでに架かっている(が、まだ開通はしていない)豊洲大橋が見える。そうか、あそこにつながるのか!
豊洲大橋は、これ。この記事書いている現在の航空写真ではまだ舗装もされていないコンクリートむき出しの姿で、なんだかかっこいい(大きな地図で見る
ちなみにこの日載せたこの桁、工場で作られた部品を組み立てている。なぜなら、大きすぎて重すぎて公道を運べないから。ピアノ線を通してその張力でくっつけているそうだ。ピアノ線なのか!
ちなみにこの日載せたこの桁、工場で作られた部品を組み立てている。なぜなら、大きすぎて重すぎて公道を運べないから。ピアノ線を通してその張力でくっつけているそうだ。ピアノ線なのか!
「あそこに見えるのがピアノ線のキャップです」ほほー!
「あそこに見えるのがピアノ線のキャップです」ほほー!

なんでこのクレーンなのか?

それにしても、なんでこんなトリッキーなクレーンを使っているのか。


いままでいくつか架設工事を見てきたが、こんなのは初めてだ。大橋ジャンクションのときも、東金のジャンクションのときも、東京湾においてさえも、いわゆるふつうのクレーンだった。いや、どれもばかでかくてぜんぜん「ふつう」じゃないけどな。というか、架設工事見に行き過ぎじゃないか?ぼく。

原因は、すぐ隣にある水門だった!
原因は、すぐ隣にある水門だった!
「それが、水門とこの運河の水深の浅さのせいで、大型のクレーンが入って来れないんですよ」
ああー!そういうことか!

冒頭で書いた、すでにいろんなものが立て込んでいる中で新しくなにかをつくることの困難のひとつがこれだ。何もない荒野に橋つくるのとはわけが違う。いやー、ほんと都市土木ってたいへん!

場所がない!

都市土木のたいへんさの最たるものは、なにしろ場所がないことだ。

もちろん、道を通すための場所もあるが、作業スペースが潤沢にあるわけではないのもたいへんなところ。
豊洲、有明方面と逆の汐留、新橋方面をクレーンの上から見たところ。高架がずっと続いていく予定だ。
豊洲、有明方面と逆の汐留、新橋方面をクレーンの上から見たところ。高架がずっと続いていく予定だ。
こっちがわにはこっちがわで、また隅田川がある。ほんと、架けなきゃいけない橋がたくさんあるのだなあ、環2。
こっちがわにはこっちがわで、また隅田川がある。ほんと、架けなきゃいけない橋がたくさんあるのだなあ、環2。
で、その高架が隅田川方向に伸びていく一画に、実はすでにつくってある橋脚の基礎が隠されているという。
で、その高架が隅田川方向に伸びていく一画に、実はすでにつくってある橋脚の基礎が隠されているという。
「作業スペースがないエピソード」のひとつが、上の写真。

「高架橋脚をここから隅田川の方へいくつか立てていくのですが、立てちゃうとこの橋の作業のためのトラックの出入りなどができなくなっちゃうので、いったんこうやって覆ってるんですよ」

ああー、こういう「まずいったんこっちこうやって、で、あっちをこうしてから、こっちを…」って段取り、ほんとぼく苦手で。ほんと尊敬しちゃう!
そして隅田川でも、いま橋を作る工事が!移転予定の築地市場の脇を通っていくのだな。(大きな画像はこちら)
そして隅田川でも、いま橋を作る工事が!移転予定の築地市場の脇を通っていくのだな。(大きな画像はこちら
さて、隅田川を越えて新橋方面へ連れて行ってもらおう。

橋や高架もたいへんだが、次はトンネルなのだ。
新橋は新橋で、地下がこんなことに!(大きな画像はこちら)
新橋は新橋で、地下がこんなことに!(大きな画像はこちら
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「マッカーサーと壁」は、今こんなことに

実は、この日とは別に、新橋とさっきの勝ちどきの間、汐留ジャンクションのあたりで、昨年2012年7月28日深夜から翌29日未明にかけて、環2にまつわる「都市土木スペクタクルショー」が行われた。
首都高八重洲線の桁をはずしちゃう!という大胆なショー。(「高架橋を一晩で撤去する様子を見に行った!」より)
首都高八重洲線の桁をはずしちゃう!という大胆なショー。(「高架橋を一晩で撤去する様子を見に行った!」より)
上のようなこれまたトリッキーな重機(多軸台車というそうです)であらかじめ切断してあった高速道路の一部を取り去る、という工事。
実はこれ、環2がこの下をトンネルで走ることになるんだけど、その工事の際に首都高のこの高架の基礎にあたっちゃうので、それを付け替える、というものだった(長くなるので、詳しくはこちらの記事を→「高架橋を一晩で撤去する様子を見に行った!」)
で、この場所のさらに先の新橋から虎ノ門までのトンネルがすでに掘られているので、そこへと連れて行ってもらった。
新橋駅からほど近い第一京浜沿いに秘密の入り口が!(秘密じゃなくて、ゆくゆくは避難出口になるそうです)
新橋駅からほど近い第一京浜沿いに秘密の入り口が!(秘密じゃなくて、ゆくゆくは避難出口になるそうです)
どきどき
どきどき
おおおお!
おおおお!
舗装も何もしていない、コンクリートむき出しのトンネルはそれだけでもかっこいいんだけど、この先に…
おおおお!?
おおおお!?
おー!!!なんかすごいぞ!(大きな画像はこちら)
おー!!!なんかすごいぞ!(大きな画像はこちら
仮で支えている柱!かっこいい風景!
仮で支えている柱!かっこいい風景!
左右を見渡した様子。柱祭り!(大きな画像はこちら)
左右を見渡した様子。柱祭り!(大きな画像はこちら
いやー、ほんとこの光景はかっこよかった。

こんな風になっているのは一部だけで、この上がまだ完全になっていないため、仮に柱で支えているのだった。すごくかっこいいのでいっそこのままでも良いんじゃないか!?
で、実はこのトンネルにおじゃまするのは今回が初めてではない、読んでくれた方もいらっしゃると思うが、2011年の夏に「都心地下25mの大ジャングルジム」と題して、いまよりもっと柱だらけの状態だった(支保工といいます)この環2のトンネル部分を記事にしたのだ。
当時はさらに仮の柱だらけだった!(「都心地下25mの大ジャングルジム」より)
当時はさらに仮の柱だらけだった!(「都心地下25mの大ジャングルジム」より)
さらに言うと、それ以前の2007年には「壁とマッカーサー」と題して、用地の確保は始まっていたが、トンネルなんてまだ影も形もなかった(トンネルにこの表現って少し変かしら)ころの街の風景の奇妙な感じを記事にした。
あのときはこんな風にいろいろ見せてもらうなんて想像もしなかったなー。ともあれ6年前から期せずして注目してきたことになる。なにか因縁を感じるよ。
で、今回のテーマでいうと、問題はさっきの写真のこの下り坂ですよ!
で、今回のテーマでいうと、問題はさっきの写真のこの下り坂ですよ!
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ほんとたいへんだ!

トンネル壁に貼ってあった資料。浅草線すれっすれ!
トンネル壁に貼ってあった資料。浅草線すれっすれ!
前出「都心地下25mの大ジャングルジム」にも書いたが、このトンネル部分いろんなものをすれすれに避けて掘られている。これにぐっとくる。
前ページ最後の「下り坂」は、浅草線を越えるためにトンネルが盛り上がっている部分なのだった!
こちらも貼ってあった資料。なんと浅草線がむき出しに!まさかこういう形で再び人の目に触れることになるとは思わなかっただろうなあ、浅草線。しかしこの光景見たかった!
こちらも貼ってあった資料。なんと浅草線がむき出しに!まさかこういう形で再び人の目に触れることになるとは思わなかっただろうなあ、浅草線。しかしこの光景見たかった!
浅草線との間にほとんど土はないのだ。
浅草線との間にほとんど土はないのだ。
さらに、浅草線だけではないのだった。
一度浅草線を越え終わって、いちど下ったトンネルが、ふたたび登り始める。(大きな画像はこちら)
一度浅草線を越え終わって、いちど下ったトンネルが、ふたたび登り始める。(大きな画像はこちら
というか、なんなのこの照明演出!?(大きな画像はこちら)
というか、なんなのこの照明演出!?(大きな画像はこちら
「これ、そういう意味があるんですか!?」って訊いたら「あー、たまたま蛍光灯の色が違っただけですねー」とのこと。なんだよーびっくりしたよー。
「これ、そういう意味があるんですか!?」って訊いたら「あー、たまたま蛍光灯の色が違っただけですねー」とのこと。なんだよーびっくりしたよー。
そしてまた下り始める。
そしてまた下り始める。
照明があまりにドラマチックなのに気をとられてはいけない。問題は、浅草線に続いてのこのアップダウン。

これ、また地下鉄を避けているのだ。三田線を!
この下を三田線がねえ…!
この下を三田線がねえ…!
見れば、壁には三田線の時刻表。「これは通過する時に作業を停めるためとかですかっ?!」って訊いたら「いやー、耳を澄ますと三田線の音が聞こえるので、見学される方を案内する時のために…」って、ええー!
見れば、壁には三田線の時刻表。「これは通過する時に作業を停めるためとかですかっ?!」って訊いたら「いやー、耳を澄ますと三田線の音が聞こえるので、見学される方を案内する時のために…」って、ええー!
微妙な蛇行も、微妙なアップダウンも、すべて既存のインフラや建築をすり抜けるが故の造形なのだ。ほんと、何度も言うけどこれこそ東京で今なにかをつくるということなのだと思う。つぎはぎの中で、限られた予算でベストを尽くす。ままならなさとの格闘。それが都市をつくるということなのだろう。
アップダウンするとなにがたいへんって、雨水が窪んだところにたまっちゃうので、ポンプを使ってくみ出さなきゃならないのだ。ほんと、ままならないよねえ、東京って。
アップダウンするとなにがたいへんって、雨水が窪んだところにたまっちゃうので、ポンプを使ってくみ出さなきゃならないのだ。ほんと、ままならないよねえ、東京って。
ときには水道管を付け替えたり。これも壁に貼ってあった。おもしろいなー。
ときには水道管を付け替えたり。これも壁に貼ってあった。おもしろいなー。
要所要所に地上の風景の写真も貼ってあって、おもしろい。
要所要所に地上の風景の写真も貼ってあって、おもしろい。
ただ、これはどうなんだ。
ただ、これはどうなんだ。

開通したらアップダウンに注目してください

かつて、仕事で、ある制作物を引き継いでつくるのが我慢ならず、ゼロからやり直してしまってひんしゅくを買ったことがある。

たぶん、前任者がやったことをひきうけてよりよいものをつくる覚悟を「大人」と呼ぶのではないか。お、なんか良いこと言ったぞ、ぼく。
お世話になりました!ありがとうございました!
お世話になりました!ありがとうございました!

【告知:大阪で写真展&イベント開催します!】


2012年にすったもんだで開催しつつも(→デイリーの記事:「個展をひらいてみたらたいへんだった」)大好評だった写真展を大阪で開催することになりました!2013年3月31日(日)~4月20日(土)です。初日31日にはイベントもやります。これまでデイリーポータルZで書いてきたネタについて総ざらえでトークしようと思ってます。詳しくはこちら
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