異文化における「野菜」が気になる
野菜の概念って込み入っているのだ。
たとえば、豆は野菜だろうか。芋は、きのこは。
「野菜」の定義は学問、生産、統計、法律、流通などそれぞれの分野で違うという。
一時ずいぶん気にしたこともあったが、複雑すぎるので美味しく食べられればいっかというところに落ち着き生きてきた。
それぞれの業界、さらにひと一人一人の心の中に野菜の定義がある。それでいい。
ちなみに農林水産省の「指定野菜14品」には芋(じゃがいも、里いも)も入っております
それでも「食文化が違うと米も野菜として扱うことがあるらしい」というあの伝説は気になる。だって、ごはんだよ。あれが野菜って。
実際に聞いてみました
いよいよ気になってきたのでついに聞いてみた。
外国人の方と結婚している友人数名に「おたくのダンナさん(奥さん)、ご飯を野菜だと思ってるって本当?」と聞き込み、アメリカ、イタリア、ドイツ、エジプト、スウェーデンの各パートナーからの声を聞くことができた。
米の野菜性とは無関係ですが、アメリカ人のご主人を持つKさんに衝撃のご飯を使ったデザートレシピを教えてもらったので作りながら話を聞いていきましょう
実際に聞いてみました
国を代表しての意見というわけではないというところはご理解いただきつつ結果から言うと、「概ねご飯は野菜としては扱わない」ようなのだ! え、そうなの?!
ざっくりだがまとめてみた。
アメリカ
・中国人、韓国人が多いのも手伝ってか、お米が主食との意識は高い。
・保守的な田舎に行けば、お米に慣れてない人も確かにいるかも(ネットで「お米は野菜?くだもの?」なんて質問もあるにはある)
・日本におはぎがあるように、お米をデザートに使うこともあって、そのレシピが結構すごい(これを間の写真で作っています↓)
ご飯に砂糖、塩、シナモンをまぜる
イタリア
・お米を使うリゾットはオートミールに近いイメージで食べる。やはり(野菜ではなく)主食。
イスラエル
・ペルシャ米など日本とは品種は違うものの主食としてお米はめっちゃ食べる。食べ方も日本同様、炊いて食べる。
ドイツ
・夫個人はお米は完全に炭水化物として食べる。ドイツに住む人たちはお米をそもそも食べつけない人も多いかも。
チョコレートソースを作る。溶かしたチョコアイスで代用可能とのことなので、
チョコ味のpinoをレンジであたためた
スウェーデン
・ひき肉のつなぎにお米を使うことはあるけど、野菜として使っているかは不明。
・サラダにお米を入れることはあるが、お米の量が多ければそのサラダが主食になりパンは食べない。
ご飯は世界的にも炭水化物
なんと、概ねご飯はきちんと炭水化物と目されているようなのだ。
もちろんご飯の種類が日本で食べられるジャポニカ米か、タイ米のようなさらさらしたインディカ米、もしくは東南アジアやイタリア、スペインで食べられるジャバニカ米かでまた考え方も食べ方も違うとは思う。
さきほどのご飯に溶かしたpinoをかける! ちなみにこのレシピもそもそもはインディカ米を使うのが前提のもの
さらに各国のだんなさんのお話を聞いて感じたのは、年齢や住む地域(都市部か郊外か)によってもお米に対する意識に違いがありそうだなということか。
地域を問わず一食に複数の炭水化物を採るのは普通だよね、といった話もあった(スパゲティとピザを一緒に食べたりということは日本でもある)。
ご飯を何らかの別の炭水化物と一緒にとることはあっても「思った以上にお米は野菜じゃないぞ」ということは確かなようだ。
異論は認めつつとりあえずそう結論させてほしい。
さらにホイップクリームにチェリーを乗せて完成。我が家の居間に異文化がやってきた
日本のお米じゃダメかなとも思ったが、甘党なら問題なく美味しく食べられるデザートでしたわ
芋が野菜って本気ですか?
ちなみにスウェーデンからは
・日本ではポテトサラダをご飯のお供に食べるけど、芋も主食として食べるスウェーデンでは信じられない食べ方
という話も聞いた。「お米を野菜だと思ってるって本気?」と聞いたら「芋を野菜だと思って食べてるなんて、まじで?」と刺された形である。
ポテトサラダがご飯のおかずという状態は、スウェーデンでは「お好み焼きにライス」みたいな状態だということなのだ。
芋が少なすぎると我が家で不評だったポテトサラダ(写真)だが、これだったらスウェーデンでもおかずとして受け入れられるかもしれない
ちらし寿司はサラダです
ご飯は概ね主食。となると、語り継がれた「外国ではお米は野菜として使う」というあの伝説はどうなったのか。
どうやら、実際「サラダにお米を入れる」という行為は存在するようなのだ。
サラダの中のお米の量が少なければお米を野菜という感覚で食べるし、お米の量が多ければサラダでも炭水化物→主食として食べるということらしい。つまり「サラダ」の語義が広いのだ。
スウェーデンの友人はパーティーでちらし寿司を作ったら「おいしいライスサラダだね!」といわれたそうだ。
サラダ
ちらし寿司がサラダである地平。
野菜よりも「サラダ」の概念を調べたほうがよかったかもしれない。
ライスサラダってチャーハンかピラフじゃないの
そんなライスサラダ、イタリアやスペインを中心に欧米ではかなりメジャーな食べ物のようだ。日本語のレシピも多くネットで見つかった(
画像検索)。
どれもたっぷりとお米を使う、主食になるレシピだ。見た目はチャーハンやピラフっぽいが、どういう味わいなんだろう。
で、実際にライスサラダを作ってみることにしました。まずは日本語で日本人向けに書かれたレシピから。ご飯にオリーブオイルを混ぜる、こりゃ人んちのレシピだわ
まず試したのは、普通に炊飯したごはんを使って作る日本人向けにアレンジされたライスサラダのレシピ。
いろいろなレシピを確認すると、ごはんにパプリカやきゅうりなど彩りの良い野菜とハムなどを混ぜ、オリーブオイルとドレッシングや甘酢で味付けするものが多いようだ。
生野菜を使った混ぜご飯という感じ
これは…冷やし中華だ!
ドレッシングを甘めにしたのが決定的だったのだと思うのだが、食べたら完全にごはん版冷やし中華であった。
甘しょっぱいベースにきゅうりとハム。よく考えたら冷やし中華始まらざるを得ない組み合わせである。
実家では決して口にすることのなかった味わい。そうだ、友達の家に行ったらサンドイッチが焼いた状態で出てきたあの驚きに似ている。こんな食べ方もあるのか! という。
チャーハンぽく盛り付けてみたがまさか冷やし中華風味だとは
湯取り法のご飯だったらどうだ
日本語のレシピだと炊いたご飯を使うのがほとんどだったが、英語のレシピを(苦手なのでふんがふんがいいながら)読み比べてみるとお米はインディカ米を茹でて使うことが多いようだ。
湯取り法という調理方法である。日本のお米には合わない方法だが、できないこともない。やってみよう。
英語レシピのライスサラダを作ります
具はさきほどとあまり変わらないが、英語レシピではチーズをブロックで入れよというパターンが多いように感じたので従った。
さらにイタリアではライスサラダ用として刻んだ野菜のピクルスが売られているらしい。ミックスベジタブルをピクルス液で漬けたもので代用してみよう。
お米を茹でてざるに上げ、軽く水で洗う
ゆで上げて洗うと、日本のお米もパラパラしてちょっと異国のお米のようになる。
具を混ぜる感じも、炊いたご飯とは違ってかなりサラサラしていて混ぜご飯とは違う感覚だ。
サラサラ
ちょっとクスクスっぽい感じに
米もサラダの具になるような気がしてきた
なんといったらいいのだろう。茹で加減がよくなかったか、お米にちょっと芯が残ってぽそぽそした部分がある。ご飯としては失敗だが、まずくはない。この感覚が絶妙に野菜っぽいではないか。
さらにチーズだろう。チーズのおかげで一気にサラダ感覚が高まった。
米もサラダの具になるような気がしてきたぞ。ミイラとりがミイラになったぞ。
とりあえずそこまでは強引にだが理解できたので今日はよしとしたい。
おなか一杯米を食うという形での既成概念の破壊
米をサラダの具として扱う。
うまれてこの方、ご飯を主食として食べてきた私にとってはとんだ既成概念の破壊作業をした今回である。
しかし「既成概念の破壊」などというと大げさだが、単にお米をいままでにない手法で美味しくいただいただけなのだ。理屈はいろいろあるが、やってることは「ご飯を食べたよ」という記事になっていて一気に肩の力が抜けたのだった。
さらっと書いたがやっぱりこれは結構ショックだったのでアップの写真を載せておきます