特集 2013年1月5日

50年前のガイドブックでカフェ巡り

50年前のガイドブックに載っている喫茶店を巡ります!
50年前のガイドブックに載っている喫茶店を巡ります!
スタバやドトールをはじめとするカフェ。街を歩けば多くのカフェに出会うことができる。またカフェを紹介したガイドブックも本屋に行けば多く並んでいる。

そんなカフェを紹介したガイドブックは、50年前にも出版されている。そこで紹介されているカフェは今どうなっているのだろうか? もし今も残っていれば、絶対に美味しいコーヒーに出会えるはずだ。
1985年福岡生まれ。思い立ったが吉日で行動しています。地味なファッションと言われることが多いので、派手なメガネを買おうと思っています。(動画インタビュー)

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50年前のガイドブック

美味しい料理やこだわりのコーヒーを出すお店を紹介するガイドブック。数多くのガイドブックが出版され、中にはカフェだけを紹介したガイドブックも存在する。そんなガイドブックは50年前にも出版されている。
50年前のカフェだけを紹介したガイドブック
50年前のカフェだけを紹介したガイドブック
上の写真のガイドブックは50年前に出版されたカフェだけ紹介したガイドブックだ。厳密には昭和41年なので47年前に出版されたことになる。丙午(ひのえうま)で出生数が前年に比べ大きく落ち込んだ年であり、ポッキーやカローラが誕生した年でもある。ずいぶんと昔だ。
昭和41年
昭和41年
そんな50年前のガイドブックで紹介されている喫茶店(カフェ)は現在どうなっているのだろうか。もし残っていれば美味しいのではないだろうか。美味しくなければ残っているはずがない。現在のガイドブックより信頼できる気がする。ということで、50年前のガイドブックに載っているカフェを巡ってみようと思う。
まずは新宿にやってきました!
まずは新宿にやってきました!

新宿「うたごえの店・灯」

このガイドブックはカフェだけが紹介されているが、コーヒー、ジャズ喫茶、ムード喫茶のようにカテゴリーで分けられている。そのカテゴリーに「歌声喫茶」なるものがある。そのカテゴリーで紹介されているのは一店だけ。それが「うたごえの店・灯」だ。まずはそこに行ってみようと思う。
唯一、歌声喫茶として紹介されている「うたごえの店・灯」
唯一、歌声喫茶として紹介されている「うたごえの店・灯」
「うたごえの店・灯」は2階がホールになっていて、客層は女性6で男性4だったらしい。そのほとんどが故郷を懐かしむ学生と誠実で寂しがり屋のサラリーマンだそうだ。現代のカフェ(喫茶店)では、考えられない世界観。今もあるのだろうか。あって欲しいとは強く思う。そんな世界観を持つ喫茶店にはぜひ行ってみたいではないか。
西武新宿駅の隣!
西武新宿駅の隣!
地図が手書きという点に時代を感じる。今のガイドブックにも手書きはあるが、それはオシャレな手書き。このガイドブックの手書きは真面目な手書きだ。

地図を見ると西武新宿駅が唯一の手がかりだろう。地球会館なんて僕は聞いてことないし、都電も今はない。そんな少ない手がかりだったけれど、どうにか「灯」にたどり着くことに成功した。
50年前のうたごえの店・灯
50年前のうたごえの店・灯
現在のうたごえの店・灯
現在のうたごえの店・灯
なくなっていた。どこにも「うたごえの店・灯」の文字が見えない。故郷を懐かしむ若者も、寂しがり屋なサラリーマンだって見当たらない。「うたごえの店・灯」はすっかりなくなっているのだ。

その代わりにホールだった2階部分が「ルノワール」になっていた。喫茶店だ。しかし、求めていた喫茶店とは全く違う。ルノワールで歌ったら間違いなく怒られるだろう。50年という時間の流れを感じた。
ホールだった2階がルノワールになっていた
ホールだった2階がルノワールになっていた
しかし、ここが「灯」だった痕跡は残っていた。建物が「灯ビル」なのだ。だから、あの地図からここが「うたごえの店・灯」と分かったのだ。昔ほど大きくは書かれていないが、しっかりと灯の文字を見ることができる。せっかくなら歌声喫茶もやっていてくれたら嬉しかったのにと思う。実に惜しい。
痕跡は残っている。灯ビル
痕跡は残っている。灯ビル
地図の地球会館もなくなっていた
地図の地球会館もなくなっていた
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新宿「ブルーバード」

新宿にいるので、他に新宿で喫茶店はないかと探したら「ブルーバード」というお店が紹介されていた。「お店の前に立つと自動ドアがあく」から始まる紹介文。この時代ではまだ自動ドアは珍しかったのだろうか。ご自慢のコーヒーはドリップ式で90円。今の感覚だとすごく安い。
自動ドアが売りの「ブルーバード」
自動ドアが売りの「ブルーバード」
地図に目印となる物が多い
地図に目印となる物が多い
地図を見ると多くの目印となる建物が記されている。ただトロリー通りは今はないだろう。トロリーバスは現在は廃止されているからだ。大映もない。今は角川映画だ。第一銀行もない。現在はみずほ銀行だ。50年という月日の長さを感じる。いろいろと変わっている。そんな中でブルバードは残っているのだろうか。
50年前のブルーバード
50年前のブルーバード
現在のブルーバード(ガイドブックとは撮る方向が逆だった)
現在のブルーバード(ガイドブックとは撮る方向が逆だった)
ブルーバードはなくなっていた。どこにもブルーバードという文字は踊っていない。ないのだ。「お店の前に立つと自動ドアがあく」という紹介文も通用しない。喫茶店のブルーバードがあった場所は、喫茶店のプロントになっているが、自動ドアではないのだ。今は自動ドアだ、と書いた方が50年の長さを感じるが逆なのが実に憎い。
東宝はH&Mで、大映はコメ兵に!
東宝はH&Mで、大映はコメ兵に!
先の「うたごえの店・灯」の時もそうだったが、このブルーバードもまた喫茶店の跡に喫茶店となっている。コチラとしては「今はもうコーヒーの匂いは漂っていない」と書きたいのに漂っている。確かに変わったいるけれど、大きなくくりで見ると変わっていないのかもしれない。
第一銀行はみずほ銀行に、かねまつは携帯ショップに!
第一銀行はみずほ銀行に、かねまつは携帯ショップに!
他は大きく変わっている。喫茶店の跡に喫茶店ではなく、別の何かになっているのだ。東宝はH&Mになっていたし、大映はリユースデパートであるコメ兵となっている。かねまつはディズニー携帯を売るお店に変わっており、近くを歩くとエレクトリカルパレードの曲が聞こえた。現代だ。50年前はまだ流れていなかったと思う。
末広亭は健在です!
末広亭は健在です!

目黒「珈琲野郎」

次は本を変えて昭和48年に出版された「続東京の味 ヤングのムードと味覚の店」に載っている「珈琲野郎」というお店に行こうと思う。先の本と比べれば7年ほど新しいが、それでも40年前。タイトルの「ヤングのムード」に時代を感じる。
ヤングのムード
ヤングのムード
この本には今では普通になったマクドナルドやケンタッキーも紹介されている。現代のガイドブックではまず紹介されないお店だ。そんな中で紹介されているのが「珈琲野郎」。変わった名前なのでぜひ行ってみたいと思いここを選んだ。
珈琲野郎という店名のインパクトがすごい!
珈琲野郎という店名のインパクトがすごい!
珈琲野郎は目黒駅の近くにあるらしい
珈琲野郎は目黒駅の近くにあるらしい
ガイドブックの紹介文を読んでみると、店名が変わっているとある。今も昔も「野郎」という店名は変わっているようだ。そういう感覚は変わらないらしい。

ちなみにこのガイドブックには地図が無い。ただし「国電目黒駅ターミナルビル裏手の陸橋ぎわ」と書かれている。それに従い、その場所に歩みを進めた。「珈琲野郎」は今もあるのだろうか。
50年前の珈琲野郎
50年前の珈琲野郎
現在の珈琲野郎
現在の珈琲野郎
あった。「珈琲野郎」は今も営業しているのだ。ただし50年前は「珈琲野郎」で現在は「珈琲屋ROW」。店名が変わっている。しかし声に出して読めば50年前と一緒だ。どちらも「こーひーやろう」。声に出して読みたい店名だ。50年という時間の流れがこのような変化をもたらすとは予想外だった。
声に出すと50年前と同じ!
声に出すと50年前と同じ!
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ダジャレになった店名

国鉄目黒駅はJR目黒駅になっていたが、ガイドブックの紹介文が示す場所に「珈琲野郎」はあった。正しくは「珈琲屋ROW」。以前の店名を知っていればダジャレと分かる。またマークみたいものも似ている。店構えだって大きくは変わっていない。
当時のマーク
当時のマーク
今のマーク(似ている!)
今のマーク(似ている!)
話を聞けば、「珈琲野郎」からオーナーが変わり「カフェ・アイン」になり、さらにオーナーが変わり「珈琲屋ROW」となったそうだ。働いている人は珈琲野郎時代と一緒。

50年という時間の長さを感じた。一度は珈琲野郎はなくなったけれど、その時間の長さが再び珈琲屋ROWを取り戻したのだ。時間の流れの面白さだ。古いガイドブックで街歩きをする醍醐味かもしれない。
落ち着いた店内
落ち着いた店内
建物は変わっておらず、内装も模様替え程度の変化らしい。ガイドブックで勧めている「カフェアレキサンダー」と「カフェキャリオカ」は今も提供している。というか、今では珈琲メニューが150種類ほどあるそうだ。当時はなかったが、時間の流れとともに増えたとのこと。歴史あるお店のならではのエピソードだ。今回はガイドブックで勧めている2つを頼んでみることにした。
カフェアレキサンダー
カフェアレキサンダー
カフェキャリオカ
カフェキャリオカ
当時、カフェアレキサンダーは280円で現在は880円。飲んでみると生クリームの甘さとコーヒーの苦みがマッチして、コーヒーの持つ美味しさがじっくりと口の中に広がってくる。コーヒーとはこんなに美味しいものなのかと驚いた。

カフェキャリオカは当時の値段は分からないが現在は850円。オレンジの皮とラム酒の芳醇な香りが飲む前から楽しませてくれる。飲んでみると苦みは軽く、キレのいい味がする。やっぱり美味しい。

問題があるとすれば若干高いことだろうか。800円台と言えば定食の値段だ。その値段でコーヒー一杯。白ご飯も生姜焼きも付いていない。若干高い。これくらいの値段を安いと言えるように頑張ろうと、古いガイドブック片手に思った。
味は文句なし!
味は文句なし!
歴史あるお店ではあるが、ファッション誌を読む女性や、パソコンを広げて何か作業する男性など、よく見かけるカフェのそれと変わらない雰囲気がある。ずっといたくなる空間なのだ。

ちなみにガイドブック当時はお客が多すぎて、この建物の5階で会員制のコーヒーサロンもしていたそうだ。下で飲めば120円程度のコーヒーがサロンでは550円くらい。それでも人は多かったそうだが、現在の5階はミャンマー料理のお店になっていた。
ミャンマー料理
ミャンマー料理

上野「ナイル」

再びガイドブックを「東京横浜おいしい喫茶と甘党の店」に戻し、上野にある「ナイル」というカフェに行ってみようと思う。食券を買う喫茶店というところに惹かれた。喫茶店で食券とはあまり聞かないシステムだ。コーヒーは80円で、バナナゴンドラ(80円)というケーキがオススメらしい。
食券という松屋みたいなシステムの「ナイル」
食券という松屋みたいなシステムの「ナイル」
駅からすぐ!
駅からすぐ!
地図を見ると上野駅からすぐの場所にあることがわかる。そのため、駅を出たらすぐに今もあるか否か分かってしまう。角にある玩具屋も残っているか気になる。店名は分からないが、最近は玩具屋を見かけることも少なくなっているからだ。
上野駅にやってきました!
上野駅にやってきました!
あ、ない!
あ、ない!
早かった。「ナイル」はもうないのだ。玩具屋の横には別のお店が見える。つまり玩具屋は残っていたわけだ。今も人だかりができるほどのにぎわいを見せている。当時は都電が走っていた大きな道を渡り一応近づいてみる。
当時のナイル
当時のナイル
現在のナイル
現在のナイル
ナイルは椿屋珈琲店になっていた。またしても喫茶店の跡に喫茶店。僕が知らないだけで、そういう決まりでもあるのだろうか、と思いたくなるほどに喫茶店の跡に喫茶店だ。ただしナイルではない。食券でコーヒーを飲んでみたかった。バナナゴンドラも食べてみたかった。
郵便局はマルイになっていた
郵便局はマルイになっていた
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銀座「千里軒」

最後は銀座にある「千里軒」という喫茶店に行こうと思う。紹介文を読むと「派手を嫌い、静けさと安堵を漂わせる」とある。やはりカフェ(喫茶店)にはこういう雰囲気を求めたい。だからこそのチョイスである。
静けさが売りの「千里軒」
静けさが売りの「千里軒」
目印が多い
目印が多い
地図を見ると並木座やパチンコ、安田信託など目印となるものが多い。これは迷わずにたどり着けるのではないだろうか。

ちなみにこのお店には「自分の家の茶の間にいるようなやすらぎ」があるそうだ。自分の家のようなやすらぎ、ぜひそれを体験してみたい。カフェは落ち着く空間でないといけないのだ。
ということで、銀座にやってきました!
ということで、銀座にやってきました!
銀座駅から有楽町駅の方へ向かって歩く。この日は休日でメインの通りが歩行者天国になっており、多くの人でにぎわっていた。そんな通りを一本ずれて並木通りを歩く。地図には書かれていないが、並木座があるということは、並木通りだと思うのだ。
並木通りを歩くと「千里軒」が見えた! 読み通り!
並木通りを歩くと「千里軒」が見えた! 読み通り!
並木通りを歩きしばらくすると目的の場所である「千里軒」が見えた。千里軒は今も残っているのだ。大きな看板も出ている。静けさと安堵を漂わせる店・千里軒。

ただし、ガイドブックとは大きく変わっていた。一目瞭然なのだ。こんなにも一目瞭然は過去にないかもしれない。一目瞭然のお手本のような一目瞭然だ。
当時の千里軒
当時の千里軒
現在の千里軒
現在の千里軒

静けさ漂わぬ千里軒

「喫茶店・千里軒」が「カラオケ屋・千里軒」に変わっていた。話を聞くと20年ほど前に変わったらしい。こういう変化もあるのかと50年という月日に驚く。静けさの真逆を行くカラオケ屋だ。ただし入り口のドアを見ると「ミルクホール」と書かれていて、ここが歴史ある喫茶店だったことがわかる。
よく見ると「ミルクホール」と書かれている
よく見ると「ミルクホール」と書かれている
でも、中に入ると間違いなくカラオケ屋!
でも、中に入ると間違いなくカラオケ屋!
ガイドブックにあった「自分の家の茶の間にいるようなやすらぎ」はない。だってカラオケ屋だ。我が家の茶の間はこんなに明るくなかった。

聞こえる他の部屋からの歌声。AKB48を歌っている。紹介文にあった静けさもないようだ。だってここはカラオケ屋だ。静けさがある方がおかしい。

ただし部屋に入るとメニューにはコーヒーが並んでいた。
コーヒーを発見!
コーヒーを発見!
コーヒー(カップがオシャレ!)
コーヒー(カップがオシャレ!)
コーヒーカップがしゃれている。カラオケ屋のコーヒーカップではない。話を聞けば、カップは喫茶店時代のものだそうだ。カラオケ屋になったけれど歴史あるお店ならではのエピソード。

そんな歴史あるカップでコーヒーを飲みながら熱唱である。ガイドブックが出た当時はこうなるとは誰も思わなかったのでないだろうか。でも、それが50年という時間のロマンかもしれない。
歌う
歌う
飲む
飲む
歌う
歌う

時間を知る旅

珈琲野郎が「珈琲屋ROW」になっていたり、静けさが売りだった喫茶店がカラオケ屋になっていたり、昔のガイドブックで街歩きをすると楽しい。喫茶店の跡が喫茶店というのも面白かった。ちなみに最後に行った千里軒の地図に書かれていたものは、千里軒をのぞいて全てほかのものに変わっていた(千里軒もカラオケ屋になっていたけれど)。50年の長さを改めて感じながらの熱唱だった。
千里軒に貼られたランキングが手書きでなんだか懐かしい!
千里軒に貼られたランキングが手書きでなんだか懐かしい!
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