特集 2012年11月10日

冷えた体をギュッと抱きしめて温める

寒い冬だから抱きします!
寒い冬だから抱きします!
風は日に日に冷たくなり、街は冬に向けて全力で走り出している。夜に街を歩けば、夏の暑さはもう思い出せず、全てがその寒さを静かに耐え忍んでいる。

そんな季節だからロマンティックなことをしたくなる。冷えた体を抱きしめて温める、なんてロマンティックなのではないだろうか。そこには愛がある。寒い冬は誰しも愛を求めているのだ。ということで、ギュッと抱きしめて温めてあげたいと思う。
1985年福岡生まれ。思い立ったが吉日で行動しています。地味なファッションと言われることが多いので、派手なメガネを買おうと思っています。(動画インタビュー)

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> 個人サイト Web独り者 彼女がいる風の地主恵亮

全てのものに愛を!

冬の足音は日増しに大きくなり、手を伸ばせば冬にもう届いてしまいそうだ。朝起きてベランダに出ると息が白い。初冠雪の便りも届いた。クリスマスのイルミネーションも輝きだしている。街はもう冬支度を済ませつつあるのだ。
夜は特に寒い
夜は特に寒い
夜そんな街を歩くと、夏には感じることができなかった静けさがある。何もかもが静かに寒さを耐え、昼間の日の光を忘れないように目をつぶり、朝を待っている。たとえば、こんな夜に外で1時間の待ちぼうけをくらったらどうだろう。体は芯から冷えてしまうだろう。
体が芯から冷える季節です
体が芯から冷える季節です
芯から冷えた体をギュッと抱きしめられたらどうだろう。きっと温かくなるだろう。もちろん熱いシャワーを浴びてもいいし、温かなスープを飲んでもいい。でも、誰かに抱きしめられて温かくなるそれとは大きく異なる。抱きしめられると心も体も温かくなるのだ。ロマンティックではないか。ぜひ僕もギュッと抱きしめて誰かを温めてあげたいと思う。
ということで抱きしめます!
ということで抱きしめます!

電信柱を抱きしめる

冬へと走り出した街に立っている電信柱。さわるとそこに熱というものを感じない。冬の朝の水道水のように冷たい。だからギュッと抱きしめて温めるのだ。元からこの体温ならいいのだけれど、それは違う。彼女だって昼間はキチンとした体温を持っている。この季節が彼女の体温を奪っているのだ。だったら温めねばなるまい。
昼間の電信柱は人と一緒くらいの体温(計測したいものに近づけボタンを押すと温度が分かる温度計です)
昼間の電信柱は人と一緒くらいの体温(計測したいものに近づけボタンを押すと温度が分かる温度計です)
一方、夜はこんなに体温が下がっている
一方、夜はこんなに体温が下がっている
温めてあげないと
温めてあげないと
寒く静かな夜に頬を電信柱にピッタリとくつけ抱きしめる。僕はコートを着ているが、それでは電信柱に熱が伝わないので、コートのチャックを開け、その下のパーカーのチャックも開け、薄いTシャツが彼女に密着するように抱きしめている。だから僕は思うのだ。明日お腹痛くなるだろうな~と。でも、いいのだ。明日ではない。今が大切なのだ。彼女は寒くて震えているのだ。
何でか目をつぶっていた
何でか目をつぶっていた
車が通る度に、歩行者が通る度に思う、「通報しないでね」という僕の熱い思い。僕の体温と共にそんな思いも彼女には伝わっているのだろうか。彼女とは電信柱のことである。そっちの方が抱きしめ甲斐があるからだ。

ちなみに僕はどんどんと寒くなってきている。どうやら彼女に熱を持っていかれているようだ。そんな中で10分間ギュッと抱きしめた。そしてもう一度彼女の体温を測った。
約4度上がっている。僕の熱が届いたのだ(寒くて10分が限界だった)
約4度上がっている。僕の熱が届いたのだ(寒くて10分が限界だった)

街路樹も抱きしめたい

街を歩いている時、街路樹の緑が僕らに多くの安らぎを与えていると思う。だからこそお礼として冷えた体を温めてあげたいと思った。緑(街路樹)の体温は12.2度。冷たい。人間なら死んでいる体温だ。温めねばなるまい。抱きしめねばなるまい。僕は強くそう思った。
緑の体が冷え切っている!
緑の体が冷え切っている!
抱きしめないと!
抱きしめないと!
電信柱より小柄だから抱きしめやすい。またひんやりした感じも電信柱と比べれば無かった。ただ電信柱より街路樹は肌が荒れているので、僕の頬が若干痛かった。だからこそ僕が抱きしめるのだ。いつも安らぎをありがとう、と思いながら。

ここでも10分間抱きしめていた。その10分間に犬を連れたおばさんが何しているの? と聞いてきたのは誤算だったけれど、それはまた別の問題だ。君さえ温まってくれればそれでいいのだ。自宅の近所でやるべきではなかったと後悔しているけれど、それは今は忘れよう。
抱きしめ続けた結果、
抱きしめ続けた結果、
16度まで上昇!
16度まで上昇!
これが人間ならば、ここから愛が芽生えると思う。木だから何も起きないし、新芽さえ芽吹かなかったけれど
これが人間ならば、ここから愛が芽生えると思う。木だから何も起きないし、新芽さえ芽吹かなかったけれど

掲示板を抱きしめたい!

街の情報を教えてくれる掲示板。この街で生活して行く上でなくてはならない存在だ。だからこそ寒そうにしている姿はみたくない。もう君は一人ではないのだよ、僕がいるのだよ、と優しく抱きしめるのだ。彼女(掲示板)のひんやりとした鉄臭い匂いを感じながら。
掲示板の体温は13度
掲示板の体温は13度
温めてあげるよ!
温めてあげるよ!
今までは抱きしめていただけだったけれど、摩擦を利用した方がさらに温まるのではないかと思った。乾布摩擦というものもがあるように、摩擦により温かく、さらには健康になるのではないだろうか。掲示板の健康が何を指すのかは分からないのだけれど、もしより温まるのならば、そのアイデアはぜひやっておくべきだ。
なんか変な感じになった
なんか変な感じになった
摩擦で温めるというアイデアはよかったけれど、静かな住宅街の夜中にはそぐわない動きになっていた。それに気がつき、再びただただ抱きしめるだけに戻った。掲示板を温めたい一身で抱きしめるのだ。これを人は愛と呼ぶのだと思う。
10分間抱き続けた結果、
10分間抱き続けた結果、
温かくなった!
温かくなった!

世界に愛を届けたい!

電信柱は3.4度、街路樹は3.8度、掲示板は1.6度、それぞれ体温を上げることができた。抱きしめれば温かくなるのだ。摩擦を利用した掲示板はそんなには温まらなかった。ギュッと抱きしめることがポイントなのだ。

もっとも僕の熱はどんどんと奪われ、とにかく寒い夜だった。次の日はキチンと熱を出して一日中寝ていた。この熱でまだ何かを温めたいと思う辺り、僕は愛に溢れる人間だと思うが、それよりも掲示板に不審者注意の張り紙が貼られないかが心配でならない。純粋な愛の行為なのだ。
他にも滑り台を温めたりもしていた!
他にも滑り台を温めたりもしていた!
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