パチもんが来た!
この企画、いきなり「デジモノをパチもんに!」と思いついて風呂から飛び出たわけではなく、先月末出演させていただいたイベント「おバカ創作研究所」からのお題なのである。
このイベントでは、出題されたお題に沿って、出演者たちがトンチのきいた工作・制作・アイデアを持参し披露するのだが、そのお題のひとつがこの「パチもん」だったのだ。
これぞパチもん、というサイケなパパ(後述「パチモン大王」より引用)。
パチもん?と何のことかわからない方に説明すると、ほら、ウルトラマンやらガンダムやらドラえもんやら、好きなキャラクターのグッズを買ってきたつもりが、何か微妙な出来だったり、まったくニセモノだったりしたことがあるだろう。そういった、正規品でないもの、怪しいもの、ニセモノなどをだいたい「パチもん」と呼ぶようだ。
と、言葉で言うよりも、図版をご覧いただいたほうがわかりやすい。ここで、パチもん本といえばこれ、唐沢なとき氏による「パチモン大王」から数箇所、引用させていただこう。
一気にほぼ全巻買ってしまった。パチもんの嵐は、あるとき突然に。
いくつかの作品から適当に集めたエッセンスを、これまた適当にアレンジ。
画力があるのかないのか。
つい「目ん玉」に目が行ってしまうが、この色使いに注目だ。
フィギュア台紙に思いっ切り手書きのコピー。売り物じゃなくて、なんだか友達がくれたような雰囲気。
最初、このお題を出されたときは、正直「?」という思いだった。パチもんのことは幼き頃から見聞きしてはいるが、そのものにフォーカスして興味を持ったことはない。なので上記の本を取り寄せて研究したわけだが、すっかり「パチもん」の面白さにとりつかれてしまった。
そこで今回は、冒頭申したような最先端のギアを、ぜひこの「パチもんフォーマット」でパッキングしたいと考えた。ただ、絵心のない筆者、膨大な情報を前にどうしたらいいかまとまらないので、私の理解した範囲での「パチもん図絵たる要素」を箇条書きにしてみたい。
・手書きのふらふらした線。
・正規品に対する、アクロバティックな解釈と改変。
・よくわからないデザインの構図。
・唐突な言葉使い。
・無駄にどぎつい色合いと、未熟な技術ゆえの印刷の揺れ具合。
そしてもうひとつ付け加えるなら、「パチもんであること・絵心のないことをまったく恥じてない、勢いあるデザイン」とでも言おうか。ともすれば現代のアートワークが失ったような、その勢い・・・と書くとなんだかかっこいいがこれは今考えた。
まあ、とにかくやってみよう。
パチ化計画キックオフ
ところで私はiPhoneを持ったことがない。よって、パッケージのことはあまり知らないのだった。
でもiPod Nanoなら持っている。買った当時、驚愕したそのパッケージがこれである。
見てるだけで右脳が豊かになる心持ち。
白雪姫が寝かされていそうではないか。もううやうやしく口づけするしかありませんな。
iPhoneのパッケージも、心憎し、だ。
開ける人がうらやましくなるってもんですよ。
それでは、こういったオシャレパッケージにしばしさよならをして、「これ本当に正規の品か」と購買者を大いにいぶかしめるようなパッケージを考えよう。
大枠では「ブリスターパック」を採用し、台紙でパチライズ(パチもん風にすること。今考えた)してみよう。
ブリスターパックとは、品物の形どおりに透明プラ板を成型しパッキングする、おなじみのもの。
ところでプラ板を成型するにはバキュームフォーム(プラ板を熱して、真空の力によって成型する)用の道具があればいいのだが、持ってないしiPhone薄いし、手で押さえつけて良しとしちゃおう。
ちなみにiPhone持ってない私が何にプラ板を押し付けるかというと、「iPhoneの写真を貼り付けたスチレン板」であります。
ものすごくゆっくり熱します(ガスコンロだと熱しすぎて一気に溶け散ってしまうので)。
ぎゅううー。私の工作なんて、まあだいたいこんなもんです。
何度も上2枚の動作を繰り返したのち、薄っすらとiPhoneの形が浮き出た。もうこれでいいや。
熱でプラ板が多少伸び、微妙にではあるがiPhoneを格納してくれる余地ができた。問題は台紙である。台紙を間違うと、パチもんテイストが台無しだ!
ここでもうお見せしてしまうが、こんな感じにしてみた。オリジンを主張してやまない「元祖アイフォーン」。
こんな風に屋台で売っていたら、たぶんMapは「たからのちず」とかになっているだろう。
よくよく考えたら、これ怒られたりするんじゃなかろうか。まあそれはさておき、先に述べた「パチもんである要件」、つまり
・手書きのふらふらした線。
・正規品に対する、アクロバティックな解釈と改変。
・よくわからないデザインの構図。
・唐突な言葉使い。
・無駄にどぎつい色合いと、未熟な技術ゆえの印刷の揺れ具合。
このあたりを常に意識しながら、手描きで取り組んでみた。が、それは初心者には想像以上に大変な仕事だった。
アメリカ人っぽい少年が、なんか電話しながらスマートって言ってりゃいいんだろ的な。社名も逆鱗に触れない範囲で描いちゃうなど。
コピーも手描きで、訴求効果アップだ。
いや、もう本当に疲れました。絵に関しては自分、初心者なはずだが「ヘタ絵」を「うまく」描けるかというと、それは別の物差しでの話だ。ヘタに描こうと思っても「味のあるヘタ」には程遠い、半端なものになってしまう。
絵だけでなく、「どこまでくだけていいのか」のさじ加減が難しい。失敗・書き損じはそのままのほうがいいのか?それともそのままだと本当にダメなものになるのか?
いろいろ頭を悩ませるが、手描きでパチもん風に描くこと自体は大変楽しい作業ではあった。なのでもうちょっとパチもん化計画に携わってみたい。
もっとパチっぽくする方法を思いついた。幼い頃の我々を一喜一憂させた、あのシステムに置き換えてみよう。
スチレン製モックも、種類を大幅に増やす。ああ怒られやしないか。
Shuffleばかり引いていたあの頃
そのシステムとは「くじ」だ。あの、ずらっといろいろな品が台紙に貼り付けられ、くじを引くとその番号の商品を駄菓子屋のおばあさんがべリッと取ってくださる。いいものが当たったためしが全くない。だいたい、隅のほうに付いている、いかにも外れとして企画された品ばかり回ってくるのだ。
その「くじ」だが、やはりここはいろいろな商品をぶら下げたいので、勝手にApple社のラインナップに登場してもらうことにする。
スチレンボードに貼り付け、切り取る。
豪勢。ちなみにiPad等画面への「写り込み」は元の写真からあったのだが、そのせいでうっかり自然な出来。
これらのモックを袋に詰めて、ホチキスでヘッダーごと留めたい。ヘッダーには、それぞれ機器の名前を書こう。慣れないけどしっかり書こう。目立つように書こう。パチもん製作者の意図をなぞるように。
そうやって取り組んだ結果が、変な色合い、ちゃちゃっと組んだ適当な見出し。ちなみにアイパッドのイラストはクリップアートから拾ったフロッピーの絵。
幼稚園のときの「お店屋さんごっこ」のようで、本気で楽しくなってきた。くじ作り、来るぞ。
三角くじ自体も作らないとな。内側に、番号を記しておくのだ。そして表から見えないように黒く塗りつぶす。ああ、これもちょっと楽しい。
こういうの本当に当たらない子供だった。
ガンタッカーで、商品を台紙に打ち込む。ここだけ急に精悍な作業となった。
これらのブランドを表しつつも怒られないよう、なるべく表現をぼんやりさせた意匠を台紙に施せば、完成だ。Apple製品がこうやって近所で売られていたら、どんな気分?
やっぱり駄菓子屋に徹夜の列ができるんだろうか。でも買うときはくじ引き。
アップルじゃなくてりんごです。んで、シリーズなんですよシリーズ。
くじの番号はこのように対応。空くじ無し!
本来の意図である「イケてるものをパチもん風にして台無しに」とは違うところで、楽しんでしまった。iPhoneが胡散臭くなろうがなかろうが、手描き台紙やくじシステムは魅力的である。
特に、くじ。夕飯の支度とかクリスマス会用プレゼントに応用できそうである。そう、パッキングが大変だろうけど、ね。
【告知】
神田警察署裏の元東京電機大学キャンパスで行われるアートイベントに出展します。
TRANS ARTS TOKYO
10月21日~11月25日
http://www.kanda-tat.com/
一部屋借りて展示をさせていただきます。
「
針金ハンガーの巣」をがんばって移築(まだうちのベランダにある!)しますので、よろしければ見にいらしてください。
(本人在廊は不定期になると思いますので、ブログ・ツイッター等で逐次告知いたします)