緑の森からにょきにょき生える赤い岩山
ラス・メドゥラスへは、ポンフェラーダという町からタクシーに乗る事30分程で到着する。
サンティアゴ巡礼路の途上にあるポンフェラーダ
カッコ良いおっさんのタクシーで山へと向かう
そうして到着したのがラス・メドゥラス
険しい山道をえっほえっほ登って行くと――
この光景がどーん!
どーん!
どどーん!うーん、凄い光景だ
前述の通り、これは自然のものではなく人間の手によって作られた景観である。元々ここには砂金を大量に含む金山があったのだが、それを2000年前に古代ローマ人が採掘した結果、こうなったのである。
その採掘方法がまた凄まじい。なんと、水の力を使って山を壊したのだ。その名も、「山崩し」。
この「山崩し」を何度も繰り返した結果、今に見られるような景観が作り出されたという。賛辞としてあえて言わせていただくと、頭おかしい。
「山崩し」に使われた大量の水は、最大で80kmも離れた複数の水源から引いていたらしい。80kmと言うと、徒歩で3~4日かかる距離である。いやはや、何から何までダイナミックすぎるぞ、古代ローマ人。
水を引いた水路の跡も残っている
古代ローマ人が掘ったトンネルに入る
今でも「ラス・メドゥラス」の山内部には、当時掘られた幾筋ものトンネルが残っており、そのうちの一つに入る事ができる。
受付で貸し出されたヘルメットをかぶり、懐中電灯を手にいざ突入だ。
トンネル内部は本気で真っ暗である
左右上下、トンネルは立体的なアリの巣迷路だ
水の力による破壊の為か、トンネルの出口は広がっている
山肌に見られる何本もの筋は、トンネルの跡なのだ
いやぁ、凄いものである。あまりにクレイジーすぎる「山崩し」の発想にも脱帽だが、それをやってのける土木技術が2000年前にあった事が凄い。
参考の為に述べておくと、ここでローマ人が山をぶっ壊していたその当時、日本は弥生時代であった。
別の視点から見ると、元の山の形がよく分かる
ちなみに、私が歩いたサンティアゴ巡礼路は古代ローマ帝国が整備した街道がベースらしい。ここで取れた金は、その街道を通ってローマへ送られていたのだろう。
ラス・メドゥラスの金は古代ローマ帝国の栄華を支え、一説によるとラス・メドゥラスの金の枯渇が古代ローマ帝国の衰退を招く引き金になったという。
ラス・メドゥラス内も歩く事ができる
そこに広がる木々は、すべて栗の木だ
労働者の食料確保の為、ローマ人が植えたものだそうだ
樹齢が行き過ぎて魂が宿ってそうな大木も見られた
ここにもトンネルの跡が
火薬も重機も使わず、よくやったものである。いや、マジで
実は世界遺産だったりもします
水の力で山を崩すというとんでもない発想の元に生まれたこの景観は、極めて良好に残る古代の鉱山遺跡として、ユネスコの世界遺産リストにも記載されている。
しかもその評価として、通常はヴェルサイユ宮殿やタージマハル、万里の長城や姫路城といった名建築に用いられる、「人類の創造的才能を表現する傑作」という登録基準が適用されているのだ。これが考古的な遺跡に適用される例は多くない。
また世界遺産というと観光客が大勢押し寄せ混み合うというイメージがあるものの、ここは鉱山遺跡という比較的地味な印象の為か、それほど多くの人がおらずのんびり楽しむ事ができた。なによりこの景観、これは一見の価値ありですぞ。
実はラス・メドゥラスは、サンティアゴ巡礼路のルート上でもある(私が歩いたのとは別ルートだけど)