特集 2012年9月13日

「船橋ソースラーメン」現存3店舗食べ歩き

大輦のソースラーメン
大輦のソースラーメン
正直「船橋」と言われて思いつくものが、ない。
かろうじて「市立船橋」というキーワードが頭に浮かぶが、それが何を意味しているのか全くわからないが、たぶん高校の名前だと思う。
船橋市よりも人口が少ない県出身のぼくにとって、市立の高校が存在するということがまず信じられないことなのだけど、船橋に対するイメージはそれぐらいしかない。
そんな印象空白地帯の船橋市にソースラーメンというラーメンがあるという噂を耳にした。
鳥取県出身。東京都中央区在住。フリーライター(自称)。境界や境目がとてもきになる。尊敬する人はバッハ。(動画インタビュー)

前の記事:そのへんで拾った「サボ」を専門家に鑑定してもらった

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第四のラーメン

ソースラーメンはその名の通りソース味のラーメンで、醤油ラーメン、味噌ラーメン、塩ラーメンに続く「第四のラーメン」としてソースラーメンを推す声もあるほどだ。
印象は薄いが、船橋市一つで鳥取県の人口より多い
印象は薄いが、船橋市一つで鳥取県の人口より多い
しかし現在、店のメニューとして常に提供している店舗は船橋市内にも3軒しかないという。今回はその3店舗をすべて食べ歩きしてみたい。

ひとまず、事前の情報収集はほどほどにしておいて、まだ見ぬソースラーメンに期待をふくらませ船橋に向かう。

「つゆ焼きそば」と、どう違うのか

まず向かったのはJR船橋駅から歩いて10分ほどのところにある「大輦(だいれん)」だ。
白くて新しいJR船橋駅
白くて新しいJR船橋駅
古くて細い商店街をすすむ
古くて細い商店街をすすむ
新しくてキレイなJR船橋駅前とは対照的に、京成船橋駅をこえると少し色あせた感じの商店街がある。その商店街をグイグイ入っていき、ちょうど商店街が終わったかなと思ったあたりに「大輦」はある。
いかにも中華料理店! といった佇まい。
いかにも中華料理店! といった佇まい。
ここのソースラーメンはメディアでも度々取り上げられている有名店だ。
ぶらり途中下車の旅で紹介されました!
ぶらり途中下車の旅で紹介されました!
メニューによるとハムカツのせがおすすめらしいので、ソースラーメンハムカツのせを頼んでみた。
隣で千葉国体のシャツを来た市役所の職員と思しきおっちゃんたちもハムカツのせソースラーメンを食べていた。

実は、ソースラーメンに関してはひとつの疑問がある。
青森県の黒石市などで食べられている「つゆ焼きそば」と何がどう違うのだろうか。ということだ。
当サイトでも「新・つゆ焼きそばを作りたい」で取り上げているけれど、ソース味のラーメンということであれば、つゆ焼きそばとそんなに違わないのではないか?
そんなことを考えつつ待っているとソースラーメンがいよいよやってきた。
見た目が焼きそばっぽい
見た目が焼きそばっぽい
紅しょうが、キャベツ、もやし、青のり……と、具をみると完全に焼きそばだ。スープがなければ完全にハムカツの乗った焼きそばでしかない。

かならずてんかすがのっているという黒石つゆ焼きそばに比べると、焼きそばの雰囲気が色濃く残っている。見た目はつゆ焼きそばと全く違う。
麺が炒められていない
麺が炒められていない
麺を見てみると、普通のラーメンの麺だ、焼きそばではない。

お店の人に確認したところ、麺は炒めたりせず、ラーメンの麺をそのまま使っているという。
ソースラーメンがつゆ焼きそば違う最大のポイントはここだ。

黒石つゆ焼きそばは、焼きそばにめんつゆやラーメンスープをかけて食べるものだけれど、ソースラーメンは、かえしにソースを使うれっきとした「ラーメン」なのだ。

味はどうか?
いけるわこれ!
いけるわこれ!
「ソースとは、主に揚げ物にかけるもの」という狭隘な先入観から、ソースのスープというものに抵抗感はあった。
しかし、一口スープを飲んでみると、そんな先入観や抵抗感がいかに意味のないものだったのかがよくわかった。
ソースのスパイスに、しょっぱい、甘い、酸っぱい、旨いが複雑に絡み合っている。
つきなみな表現で申し訳ないけれど「味に深みがある」というのはこれのことをいうのかもしれない。
醤油、味噌、塩に続く「第四のラーメン」の諢名も実にうなずける。人類はラーメンのネクストステージへ続く扉のドアノブに手をかけてる。
表現が大げさになりすぎた。

ようするにうまいですこれ。
中華料理 大輦
千葉県船橋市本町4丁目20-17‎
047-422-8952
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ソースラーメンではなく「ダイヤキ」

二軒目は、一軒目の店から徒歩で5分程度の住宅街にある中華料理店「利平」だ。
のれんが無ければ見落としてしまいそう
のれんが無ければ見落としてしまいそう
店に入ると、常連のお客さんでけっこう賑わっている。
この店のソースラーメンは、名称がなぜか「ダイヤキ」となっている。一見、ラーメンとは思えない名称だ。
メニューにはダイヤキの文字
メニューにはダイヤキの文字
さっそく「ダイヤキ」をひとつ頼む。

見た目はタンメン?

見た目はタンメンっぽい
見た目はタンメンっぽい
利平の「ダイヤキ」は、見た目は茶色っぽいタンメンの様で、焼きそばという雰囲気はない。しかし、香りは確実にソースの匂い。うまそうである。
しかしスープの色はソース色
しかしスープの色はソース色
まずはスープを一口。
ソースの風味がはっきりしている
ソースの風味がはっきりしている
スープはさきほど食べた大輦のスープよりも酸味が効いていて、ソースの味が濃い。しかし、もやし、人参、キャベツなどの野菜とあわせて食べるとちょうどよい塩梅でうまい。
炒めてない麺
炒めてない麺
野菜や豚肉の具はしっかり炒めてあるものの、麺は炒めてないので、焼きそばのような感じは全くない。ソース味のラーメンとして完成している。

ダイヤキの由来は……

食べ終わった時に「かつ入」メニューがあることに気づいた
食べ終わった時に「かつ入」メニューがあることに気づいた
ところで、このダイヤキという名称はなんなのか? なぜソースラーメンがダイヤキなのか? 店のおばちゃんに聞いてみた。
ーーあの「ダイヤキ」ってソースラーメンのこと……ですよね? どうして「ダイヤキ」なんですか?
「さぁ……今はもうなくなったんですが、もともと「花蝶」っていう店で「ダイヤキ」として出されてたソースラーメンを教わってうちでも出したのがはじめで……ダイヤキの由来はちょっと……」
ーー分からない?
「えぇ……」
店の人にも由来は不明だった。

しかし、お店にきていた常連のおっちゃんが、いろいろと教えてくれた。
そのおっちゃんの話によると「花蝶」は京成船橋駅にほど近い場所にあった雀荘のビルにあり、5、6年前まで営業していたとのこと。
「花蝶」の「ダイヤキ」は冷やし中華のみたいな皿に入っており、もっと焼きそばに近い見た目で、カツが入っているのが本来の姿らしい。
そして「ダイヤキ」とは「大焼きそば」のことじゃないかなあ?と教えてくれた。ただそれはあくまでおっちゃんの推理らしい。
おっちゃん達は「なに? 取材? がんばってねー」と言い残すとさっそうと去っていった。
おっちゃん達は「なに? 取材? がんばってねー」と言い残すとさっそうと去っていった。
見かけはラーメンに近くなっても、もともとの原型であった焼きそばの名前だけが残っているのは、全員おっさんになっても「少年隊」みたいな感じで面白い。
利平
千葉県船橋市本町3丁目28-6
047-422-5182

あと一軒あるのか……

さて、ソースラーメンはあともう一軒あるのだけど、ぼくの胃袋は限界が近くなってきた。
次の店はここから少し歩いた場所にある。
そろそろ胃袋が限界に近くなってきた
そろそろ胃袋が限界に近くなってきた
ひとまず、ゆっくり歩いているうちにまた少しは入るようになるのではないか? そんなことを目論見ながら船橋の海老川沿いを歩く。
海老川の河口付近ではボートや小舟がたくさん係留されている
海老川の河口付近ではボートや小舟がたくさん係留されている
船橋という地名は、日本武命が東征のおりに、海老川の河口付近に船を並べてその上に板を並べ、橋として使ったという伝説が元になったという説があるだけに、たくさんの船が係留してある。
東京湾の漁村っぽい風景がいまだに残る趣のある風景だ。そんな川沿いをとぼとぼと歩き、ついに最後の三店舗めに到着!
さっさと来ればよかった……。
さっさと来ればよかった……。
……しかし、昼の営業は到着の10分ほど前に終わっていた。

このままスゴスゴ帰るわけにもいかないので、すぐ近くにある船橋ららぽーととIKEAで時間をつぶして夕方にまた来ることにした。
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「花蝶」から教えてもらった作り方を守っている

午後7時。ソースラーメン三店舗目の「浜町一番」はそろそろ夜の営業が始まっているはずだ。
夜の営業が始まってた
夜の営業が始まってた
ここも店内は常連のお客さんで賑わっていた。さっそく、ソースラーメンを注文。
ありました! ソースラーメン。
ありました! ソースラーメン。
キャベツ、豚肉のシンプルな具材
キャベツ、豚肉のシンプルな具材
前出の二軒に比べ、具はキャベツと豚肉だけというシンプルさ。しかし、ここのスープもソース風味がしっかり効いていて、焼きそばではないソースラーメンとしてのアイディンティティがしっかりとある。
麺はもちろんラーメンの麺だ
麺はもちろんラーメンの麺だ
麺はモチっとした歯ごたえがあり、食べごたえがある。
昼の営業時間に遅れてから4時間ちかく、近くにある船橋ららぽーとと、IKEAをウロウロとさまよったお陰でスルスルと食べられる。
あの満腹の状態のまま食べていてはきっとおいしく感じなかったに違いない。怪我の功名である。
ソース味のラーメンに舌が洗脳された
ソース味のラーメンに舌が洗脳された
この店のソースラーメンも、元々は「花蝶」で出していたダイヤキの製法を教わってメニューに加えたらしい。
その時に教わったレシピはしっかりと守っているそうだ。
ダメ押しの1枚
ダメ押しの1枚
らーめん 浜町一番
千葉県船橋市浜町1-5-3
047-434-7595
以上、船橋ソースラーメンが食べられる3軒をめぐって思ったのは、ぼくたちはウスターソースの実力を見くびっていたということだ。
ソーススープのラーメンは、ラーメンとしてまったく違和感なく食べることができるし、なによりもうまい。
醤油、味噌、塩に続くラーメンの定番としての「ソース」の可能性は計り知れないということがわかった。
ソースラーメンうまかったな……
ソースラーメンうまかったな……

やっぱり家でも食べてみたい

で、うまかった食べ物は、家でも再現してみたくなるのが人情というもの。
市販の生麺で作るタイプの焼きそばで簡単に再現できそうなので、やってみたいと思う。
うまさがちがう!! と自信たっぷりだけど、今日はラーメンになってもらいます
うまさがちがう!! と自信たっぷりだけど、今日はラーメンになってもらいます
通常このタイプの焼きそばは、フライパンで野菜と一緒に麺を炒めて付属の粉末スープをふりかけて……という工程になるけれど、今回は麺を茹でて、粉末スープをお湯でといてかけて食べてみたい。
ほんらい炒めるべき麺を茹でてしまうという背徳感……
ほんらい炒めるべき麺を茹でてしまうという背徳感……
ダシが心配なのでわかめスープを足してみた
ダシが心配なのでわかめスープを足してみた
付属の焼きそばソースのみでは味が物足りなさそうなので、家にあったわかめスープを具も兼ねて足してみた。
ぼくたちは何も間違ってないはずだ!
ぼくたちは何も間違ってないはずだ!
やっちまった……
やっちまった……
見た目は100点でいいと思う
見た目は100点でいいと思う
わかめスープを足した以外はなんの工夫もしていない。家にあった紅しょうがを彩りとして入れてみたらなかなかのレベルに仕上がった(見た目は)。

しかし、肝心の味である。
んー……
んー……
まず、味が薄い。
これは水の分量が多すぎたというのもあるけれど、思いの外ソースの味があまりしなかった。味がピンと来ない。
それから、麺がなんだかモサモサしている。やはり焼きそば用の麺はラーメンの麺とは違うのだろうか?
けっこうドボドボ入れちゃった
けっこうドボドボ入れちゃった
ただ、全くダメというわけではない。味が薄いのであればウスターソースを足すまでよとばかりに目分量でソースをドボドボと追加。
あ、うまくなった!
あ、うまくなった!
やはり、ウスターソースが足りなかったようだった。

焼きそば添付の粉末スープは意外とソースの味がしない。家でソースラーメンを再現するときは別途ウスターソースをスープに追加したほうがいい。

麺のモサモサ感はやはりどうしようもない。本来炒めて食べるべき麺は、茹でて食べるにはあまり向いていないようだ。ただ、茹で時間をもっと短くするなどの工夫でなんとかなるかもしれない。

以上、市販の焼きそばをソースラーメンにする際の注意点でした。

ソースラーメンの可能性

ハムカツ入れるとうめえ!
ハムカツ入れるとうめえ!

船橋ソースラーメンに関しては、現在「船橋ソースラーメンプロジェクト」というイベントが行われており、10月31日まで今回巡った3店舗以外でもソースラーメンが期間限定で提供されている。
ぜひ「第四のラーメン」としての可能性を体験して、ウスターソースに対する概念を覆してほしい。
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