とにかく見てもらおう
構想5ヶ月。がんばって作ったので、そのキリンの群れを見てもらおう。
一列にたたずむキリン。
大きさは手のひらサイズ。
通常航空写真でしか見られないキリンのアングルをお茶の間で!
通常タンカー船からしか見られないキリンのアングルをお茶の間で!
キリン会議。
かわいい。自分で言うのもなんだが。
かわいいんだが、キリンファンのみなさんは「?」と思うことがあるだろう。そう、紅白のシマシマはどうした、と。
工作ってたいへんねえ
前回1匹だけ作ったキリンはちゃんと紅白だった。
ちゃんと紅白。それにしても今見返してもかわいい。
硬い硬い、本来鋼鉄製のキリンだが、それを小さく、かつやわらかくして愛でたかった。やわらかキリン。だからフェルトで作った。
今回の群れの写真は木製に見えるが、実はこれもフェルトなのだ。なぜこんな色になったのか、いかに工作が難航したか、また、これを経験していかに乙幡さんを尊敬するにいたったかをご覧いただきたい。
「フェルトはむずかしいですねえ…」って言われた
前回の難航の様子。とにかく切るのがたいへんだった。
前回痛感したのは「フェルトって切るのすごくたいへん!」ってことだった。
まあ、だいたいフェルトの使い方が間違っているのだ。フェルト本来の「手芸」ではなくて「工作」だからな、これは。
設計ではフェルトの厚みは8mmのものを使いたかったのだが、手芸用のフェルトではせいぜい3mmが限界。前回はしょうがないので何枚も同じ部材を切り抜いて貼り合わせていった。それがすごくたいへんだった。
しかし世の中には「工業用フェルト」というものがある。研磨材やフィルターとしてフェルトは大活躍しているのだ。厚さ18mmなんてものもふつうにある。さすが工業!工業大好き。
しかしこれを自分で正確に大量に切るのは無理だ。3mmでもひいひい言ってたのに8mmなんて!
なのでレーザー切断をやってくれる業者に頼むことにした。
ところが!
こういうふうに切ってほしい、というデータも作った!
ところが「8mmはたぶん無理」って言われた。
1800×1000mmなんていうおよそ家庭的ではないサイズの工業用フェルトを意気込んで注文した。計算では40匹ほどのキリンが出来る。
しかしここで、加工業者から「フェルトでやったことあるのは4mmまで。それ以上のものはたぶんむり」って言われたのだ。がーん!
切れないものはしょうがない。じゃあ、4mmフェルトにしてまた貼り合わせるか…まあ切る手間も今回はないわけだし、貼り合わせるのも1回だけだし、そんなにたいへんじゃないだろう。数も20匹になっちゃうけどまあ十分でしょ。
そんな風に思っていたのだ。思っていたなあ、あの時は。若かったなあ。
かいだことのない香ばしい香りが。
カットされたものが到着!どきどき。
出だしからもくろみどおりに行かず、出鼻を挫かれた格好になったが、ここでひるむわけにはいかない。
で、加工発注してから約1週間後、データ通りに切り抜かれたものが到着した。
開封すると、これまでかいだことのない匂いがした。決して悪い香りではないが、なんか不思議な匂い。
おお-!
そうなのだ。レーザーで切っているので、フェルトの切断面が焦げているのだ。匂いはそのフェルトが焦げた匂い。
そして、その焦げ跡は、まるでチャコペンで力強くくっきりと描いたかのように部品の形を縁取っている。
古代遺跡の壁に書いてありそうな。
チャコペンと異なるのは、洗っても消えないという点だ。しかし「縁取られててなんかすてき!」なんて思っていた。とにかく前回のあの切断の苦労をせずに住むというだけで有頂天になっていたのだ。無邪気に喜んでいたのだ。若かったなあ、あの頃は。
実は、この焦げ跡が後々まで禍根を残すことに。冒頭のキリンの群れの写真が木材っぽいのは、切断面が焦げ茶色だからなのだ。
事前に業者さんからは「焦げますけどいいですか」と確認は受けていた。テスト切断もしてもらっていた。「まあ、塗ればいいんでしょ」なんて思っていた。若かったなあ、あの頃は。
案外めんどくさい
点で残してある。バラバラにならないように、切りきらないようにしてもらったのだ。
その「点」を切っていく。ああー、なんか絶妙にめんどくさい!
業者さんのアドバイスもあり、切断に当たっては、プラモデルのようにしてもらった。つまり、完全に切り抜かずちょっとだけ残してもらったのだ。こうすれば、箱の中でバラバラにならずに、組み立てるときに混乱せずにすむ。なんて頭いいんだろう!
…って思っていた。そう、若かったのだ。
これ切り離す作業がけっこう精神的に堪えた。全部自分で切るのに比べればまったくたいしたことないんだけど、微妙に時間を食う。たぶん「やりようによってはこの作業は省略できたのかも」と思ってしまうところがめんどくさく思う原因だろう。
いらない部分もかわいい。
20匹分を切り終わって、これで1日が終わった。
むむむ。思ったよりたいへんだぞこれは。
この段階で「ちょっと今回しくじったな…」と実感した。
かなり強力な接着剤を使うことに。
さて、ここで4mmの同じ部品を貼り合わせて8mmにする作業だ。
この作業を進めていくうちに「ああー、これはしくじったなあ…」と思った。
前回はとにかく切るのがたいへんだったため、あまり印象に残っていなかったが、貼り合わせるのもけっこう難儀だ。
フェルトって、当然のことながら接着剤を吸い込んじゃうので、なかなかくっついてくれないのだ。
貼り合わせる前に5分ほど乾燥させる。こういうとき、なんだかしらないけど不安定な場所に乗せたりするよね。
なので、なるべく粘度が高い強力な接着剤を使った。これがまた慣れない身にはコントロールが難しかった。そして強力すぎた。
とにかく手が汚れる。いくら洗っても落ちない。
メールチェックのためマウスを触るのもためらわれる。
昼ご飯をつくることもためらわれる。
とにかく手が汚れるのだ。えもいわれぬ強力なべとべとは、いくら洗っても落ちない。いま書いてて気がついたが、手袋をすればよかったのだ。
いや、けっこう細かい作業なので直に手でやりたかったはずだ。
最後はしょうがないのでベンジンで手を洗った。人体に使用していいんだっけ、ベンジン、って思いながら。
なによりこの貼り合わせる工程は8mmフェルトが切断できていれば不必要な工程だったのだ。なのでよけいげんなりする。
もっといろいろ調べあくまで8mmが切断できる方法を採用すべきだったとこの工程で後悔した。大量生産ってたいへんだなあ。
とはいえ形になってくるとテンションが上がる!
貼り合わせてしっかり圧縮したものがこちら。
おおお!いい感じに組み上がってきた!
貼り合わせ終わるのに1日半。ここからようやく組み立てだ。
いろいろ後悔しながらだったが、それでもキリンが1匹形になると、がぜんテンションが上がる。かわいい。やっぱりぼくのやっていることは間違いじゃなかった!
うん、やっぱりかわいい。
20匹全部作るのにもう2日かかった。さて、ここからが問題だ。着色だ。
結論としては「フェルトは塗るべきではない」
さて、キリンがキリンたるゆえんはその紅白シマシマのカラーリングにある。清水港の純白キリンのような例外もあるが、なんといってもシマシマだ。
前回は白いフェルトと赤いフェルトをちまちまつなげて組み立てたわけだが、今回は工程を簡単にするために(結局簡単になってないけど)白一色(焦げたので一色じゃないけど)だ。つまり、塗らなきゃならない。
まずは焦げを消さねば。
紙やすりでやすってみたが、微妙。
焦げは表面だけで、かなり密度の高いフェルトを使用しているので、やすればいいはずだ。
と思ってやってみたのだが、実に微妙。特に貼り合わせた部分がどうしても残る。それにしても焦げがこんなにもたいへんなことになるとは。若い頃遊びで入れたタトゥーを後悔、っていう感じだ。ちがうか。ちがいますね。
しかたがない、塗るか。
段ボールでブースを作り、「フェルトにもOK」というスプレーを使ったのだが…
ぎゃーーー!
ぎゃーーー!なんてこと!フェルト特有のケバケバ一本一本に、まるでマスカラのように!
この後、筆で塗る、っていうのもやってみたのだが、どうもみすぼらしい。塗料を塗るのではなく染めるのが本来なのだろうが、表面が焦げているのでそれもうまくいかない。塗
装職人のお隣さん・岩さんに相談しようかと何度も思った。
この色の試行錯誤で丸1日がつぶれた。
しかも、焦げが消えるぐらいまで塗ると表面が塗料に蔽われて硬くなる。「やわらかキリン」を目指しているのだから、これではだめだ。
ならばフェルトで蔽ってやろう!
急遽板状ではない、ふわふわのフェルトを購入。
巻き付けていく。
石けん水で洗って収縮させてみるも、なんだか「冬毛が抜ける前のキリン」みたいなことに。
うーん、これはこれでかわいいけど、あまりにもガントリークレーンのシャープさが損なわれている気がする。
ええい!もう木目調キリンのままでいいか!
これで完成ということにします。
これで終わりにはしないぞ!次回こそ望みどおりの紅白シマシマキリンを大量生産してやる!
この「木目調キリン」をあさってのコミケで頒布します
フェルトのキリンでもこんなにうまくいかないんだから、ほんもののガントリー
クレーン作るのってさぞかしたいへんなんだろうなー、ってわけ分からない感想をもちました。
で、この「木目調キリン」ですが、この記事がUPされた翌々日2012年8月12日(日)にあのコミケに参加するので、そこでみなさんにお配りします。詳しくは
こちら。