細かすぎて伝わりにくい街のディテール
街を歩きながら、なるべく万遍なく辺りを見渡すようにしている。物体そのものが持つ面白さだけでなく、物体が置かれた状況、周囲との関わり合いの中にも面白さは潜んでいる。そういうのを見つけるのが楽しいのだ。この記事が言いたかったのは、そういうことです。
「神は細部に宿る」と、ある人は言った。作品の本質は、目には見えにくい細やかな部分にこそ現れるのだと。
街を歩いていると、ふとした瞬間にそんな「細部」が見えることがある。意識しないと見過ごされがちな、でも制作者のこだわりが見え隠れする部分。特に気になった風景たちを一挙紹介していきたい。
人工物を作っているのは、言わずもがな人間である。その辺に存在するどんなに些細な物にだって、必ず制作者がいる。街の風景を形づくっているのは、各人が膨大な時間をかけて生み出してきた作品たちなのだ。
そのなかでも、特に制作者の思いが透けてみえる物件がある。私はそういう物件を愛している。
こんな風に、いろんな風景に隠されている「こだわりや作り込み」に注目していきたい。上手く言葉にできないけれど、制作者が手をかけたであろう部分に目がいくと、理屈を超えた美しさを感じてしまうのだ。きっとそこには、神が宿っているのである、たぶん。
細部にこだわるということ、それはすなわち几帳面さと同義である。
物体は放っておくと乱雑な状態になるのだけれど、そこに人間の意思が介在することによって、秩序が築かれる。思うに、物には収まるべき場所があって、ぴったりハマるポイントがある。細部にこだわるということは、きっと無意識にその「ぴったりハマるポイント」を目指して手を動かしているのである。
そう考えると、これまで見た風景が美しいと感じるのも納得できる。物体が本来あるべき形で、あるべき場所に収まったという、そんなピッタリ感を心地よいと感じているのだ。以前に紹介した「ぴたん機」と、本質的には同じかもしれない。
ぴったりハマるためには、凹と凸が必要である。日常にひそむ凹凸に注目してみた。
大阪に住んでいると、いたるところに鳥居が置かれている。「小便よけ」のおまじないである。基本的にすべてが手作り品なので、細部を観察してみると面白い。これも制作者が「しっくりくる」形状を模索しての結果であろう。
細部が美しいものの王道は、配管・配線である。異論は認めない。
配管・配線とは少し違うけれど、雨樋の形状にも目を見張るものがある。機能性と収まりのよさを両立した、独特なフォルムを堪能したい。
店舗の軒先にある装飾テント。標識や電柱、室外機といった「他者」との関わりによって、柔軟に形状を変化させている。
最後に、細部にこだわった看板を見ていきたい。
街を歩きながら、なるべく万遍なく辺りを見渡すようにしている。物体そのものが持つ面白さだけでなく、物体が置かれた状況、周囲との関わり合いの中にも面白さは潜んでいる。そういうのを見つけるのが楽しいのだ。この記事が言いたかったのは、そういうことです。
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