特集 2012年5月10日

一級の袋小路はどこだ

行き止まり
行き止まり
このところ、行き止まりや袋小路について考えている。

順調に歩んでいたはずの道が、なぜ袋小路になるのか?どんな局面でぼくたちは行き詰ってしまうのか?

人生じゃなくて、道路の話だ。
1976年茨城県生まれ。地図好き。好きな川跡は藍染川です。(動画インタビュー)

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袋小路は抽象的だ

袋小路。道の一種だ。ふだんあまり考えることもない。

そもそも具体的なイメージができない。「人生の袋小路」みたいな話は聞くものの、「ローソンの角の袋小路で待ってるね」みたいな具体的な話は聞いたことがない。

具体的な袋小路のイメージ

そんな状況を、一片の地図が変えた。
目白付近の閉じた道
これは東京の目白駅付近。

ライターの西村さんに教えてもらったのだが、中央の四角い道が、行き場を失って閉じたとても面白い形になっている。

この独特さは、たとえば東京の上野付近と比較すると分かりやすいだろう。
上野付近の開いた道
ふつう、街中の道は互いにつながり、どこからどこへも自由に行ける。

目白のように閉じた道があったら不便なだけだ。まさに袋小路じゃないかと思った。
現地は私有地だった
現地は私有地だった
目白の袋小路に行ってみると、そこは月々の家賃が100万円もするような超高級住宅地で、関係者以外は立ち入り禁止だった。

元々は徳川家の屋敷で、いまでもゆかりの人々の敷地となっているとのこと。なるほど、地図から伝わる違和感にはそういう理由があったのか。

袋小路にも等級があるのでは

目白の地図をじっと見ていて、こう思った。この袋小路には、出入口が2箇所ある。
ここからしか入れないし出れない
そうすると、出入口が一箇所しかない、真の袋小路というのが考えられるんじゃないか?
右下しか出口がない
右下しか出口がない
さらに、出入口の数に応じて、等級を定めることもできそうだ。
左上から、1級、2級、3級、4級。級数は出口の数。
左上から、1級、2級、3級、4級。級数は出口の数。
出口が1つしかない1級の袋小路から、もはや袋小路じゃないふつうの道の4級まで。

1級の袋小路なんか見たことない。あるならぜひ行ってみたいけど、ほんとにあるんだろうか?
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神楽坂にあった

探してみると、一級の袋小路っていうのはなかなかない。

でも、神楽坂にやっと一つ発見した。それがここ。
この奥が袋小路
この奥が袋小路
分かりにくいが、この道を奥へ行くと一周して元に戻ってくるしかないようになっている。

地図で見るとこう。
たしかにくるっと一周するような袋小路になっている。

ただ気になるのは、どうしてこの道が西側につながってないんだろうということだ。

道は、できるかぎり繋がろうとする。なにかここに道をつくれない事情があるんだろうか。
ここに道をなぜ作らない?
答えは、行ってみると分かる。
どーんと崖っぷり
どーんと崖っぷり
袋小路の裏は、崖になっていた。なるほどそれじゃあ道を作れない。
中央に袋小路。その奥は崖、という立地。
中央に袋小路。その奥は崖、という立地。
僕はこれを見て、たぶんこういう事情がない限り、袋小路はなかなかできないんだろうなと思った。

ここでは崖だった。他はどうだろう。

高輪 一級袋小路

東京近郊の地図をくまなく調べてみたところ、山手線の内側に限ると、一級の袋小路は数件しかない。

そのなかでも高輪にある物件はおそらく一番美しい。
中央に燦然と輝く長方形
中央の小さな四角い道がそう。

改めてみるとやっぱりこんな道へんだ。なんかここに秘密の施設でもあるのかと思うが、行ってみるとまあ普通のマンションだ。

ここはなんで裏に道がないかというと、北と東と南を寺と緑地に囲まれてるからだ。
裏には寺と緑地
そして更にどうしてお寺ばっかりかというと、ここが台地の際、つまり崖だからだ。
真ん中が袋小路。右は崖。
真ん中が袋小路。右は崖。
また崖かという感じだが、袋小路自身が崖にじゃっかん落ちこんでるのが面白い。神社仏閣は昔からこういう台地の際、ちょっと高いところに作られた。

結局こんなふうに、なにか事情がない限り袋小路はできないんだろう。
ここまでのまとめ

崖は袋小路をつくる
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優等生 クルドサック

さっきから崖沿いみたいな渋い物件を紹介してきたが、じつは袋小路にはフランスからやってきた青い瞳のフクロ=コージ的なものがある。

それがクルドサックである。
これです
これです
そもそも袋小路とは、単に行き止まりのことだ。

でも文字面的にはちょっと袋みたいな広がりがあって欲しい。ということでさっきから輪っかみたいな袋小路を紹介してきた。

その点クルドサックは袋小路の優等生だ。
画面中央。まさに袋
この袋状のところで、やってきた車をUターンさせ、住宅地を車の抜け道にさせないという意図がある。

東京近郊だとこの常盤台のものが有名だが、千葉の柏にもいいのがある。
当サイトライターの大山さんに教えてもらいました
ここは袋小路という意味では完璧なのだが、いかんせん優等生すぎるというか、おれが計画しました感がちょっとある。

もっとこう、川があって仕方なくとか、崖のせいでやむを得ず、みたいなのを探したくなる。そんな人情を分かって頂けるだろうか。

やむを得ない事情たち

いくつかのパターンをぽんぽんと紹介しよう。

まずは川沿いだ。
川がいかにも邪魔
ライター大山さんに教えてもらった袋小路。川沿いを歩いていて細い道に入ると、行き止まりになるんじゃないかという嫌な予感を感じるものだがその典型みたいな例といえよう。

つづいて線路が邪魔なパターン
西武多摩川線さえなければ…
すぐ右下に道が見えてるのに、線路のせいで道をつなげることができない。お向かいの家まで行こうと思ったらぐるっと約900メートルも大回りしないといけないのだ。線路め…。

続いて住宅密集パターン。
出口ないよねという物件
都市部にありがちだが、住宅が密集すぎて単純に出口がなくなってる場合もある。

続いて農地。
これは美しい
横浜市の袋小路なのだが、そこにいたるまでの道筋も美しい、袋小路界の宮沢りえ的な存在である。

上の地図で写真に切り替えると分かるが、まわりはぜんぶ畑。なので道がつくれない。畑に囲まれた宮沢りえである。
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広域の袋小路たち

南船橋のすぐ北に、こんなところがある。
一見ふつうだが
よく見ると、全体としては右上を唯一の出口とする一級の袋小路になっている。

ここは実は厩舎なのでややズルなのだが、こんなふうにある範囲への出入口が限定されているという視点で見ると、より広い袋小路が見つかる場合がある。

これは極端な例だが、たとえばお台場。
このまんなかの埠頭
ここも大きな袋小路と言えないこともない。あるいは江ノ島もそうだ。

そのほか、自ら閉ざす袋小路という例もある。冒頭の目白もそうだし、昔の吉原の遊郭もまわりにお堀があって袋小路の構造になっていた。
青い所がお堀になってる
青い所がお堀になってる
最近では、高級住宅地のまわりに塀をめぐらせて出入口を限定したゲーテッドコミュニティというのもあって、これも自らを閉ざした袋小路と言えなくもない。冒頭の目白の例もその一つだ。

袋小路をさがしてみよう

最後に、袋小路の探し方をお伝えしよう。どんなスキルが必要になるか分からないこの不安定な時代、いつか役立つときが来るかもしれない。

まず地図の縮尺は小さめがいいです。具体的には、グーグルマップならズームレベル16。
これがその縮尺の、国立駅付近の地図。

この中央付近に、1級の袋小路が3つあるのだが、分かるだろうか。

これが分かればもう安心だ。

制約があるから袋小路になる

道路は、ほっておくとどんどん繋がろうとする。それが道路の気持ちだ。

だから、畑があったりして繋がれないままの道路はたぶんむずむずしてる。そして畑がなくなればすぐにでも繋がってしまうだろう。

袋小路は、制約がある間だけの仮の姿なのかもしれない。
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