特集 2019年11月5日

気持ちがこもりすぎる手作りツナと手作りマヨのツナマヨおにぎり

気持ちがこもりすぎます。

マヨネーズは簡単に自作できて、しかもすごくおいしいらしい。子どもと一緒に見たEテレの料理番組でやっていた。

普段市販のものを使うのが当たり前になっている調味料や食材、作ってみると意外と簡単だしおいしいのだ。そういえばツナも手作りするとすごくおいしいらしい。

ということは、手作りのマヨネーズと手作りのツナのツナマヨのおにぎりってとんでもなくおいしいんじゃないか。

1987年東京出身。会社員。ハンバーグやカレーやチキンライスなどが好物なので、舌が子供すぎやしないかと心配になるときがある。だがコーヒーはブラックでも飲める。動画インタビュー

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おいしそうだが作るのは自分だ

そう、手作りのものはおいしい。市販の味が当たり前になっているものだったらなおさらである。

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そしてツナマヨは掛け算な感じがする。すごくおいしいものとすごくおいしいものの掛け算。

こんなにハードルを上げて大丈夫なのか。手作りはおいしいと連呼しているが、ノルウェーの料理上手なおばさんの手作りではない。料理が面倒臭くて納豆ご飯ばかり食べている僕の手作りである。大丈夫なのか。

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マヨネーズができない

しかし、僕が作らないと僕が考えたおにぎりが食べられない。不安だけど作ってみよう。スーパーに行ってマグロや卵を買ってくる。

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まずマヨネーズから作る。

卵黄にお酢や塩を加えて泡立て器で混ぜる。なお、この記事では詳しいレシピは紹介できない。僕もインターネットのレシピを見て初めて作るからだ。

ここで紹介するのは、料理に失敗した時の初心者の心の動きである。そういう記事なのだ。

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最初の材料を混ぜたら、少しずつ油を加えながら混ぜる。

この工程で、とろみが出て白っぽくなっていくらしい。

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とろみが出ず、白っぽくならなかった。

混ぜ方が足りないのかなーと思って30分ほど混ぜていたが、黄色いシャバシャバした液体がシャバシャバ音を立てて踊るばかりであった。

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だんだん胸の奥がざわざわしてくる。

あ、これなんか難しいやつだな、そう思った。

【マヨネーズができないとこうなる】

  • 胸がざわざわする

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「乳化」が起きていない

黄色いシャバシャバした液体ができた。舐めるとマヨネーズらしき味がするけど、水っぽくておいしくない。

インターネットで調べると、これはよくある失敗らしい。成功したマヨネーズは「乳化」という、水と油(マヨネーズの場合は酢と油)が混ざる現象が起きていて液体にとろみがつく。

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起きないとこうなる。

乳化が起きない原因としては下の2つがあるらしい。

  • 卵が常温でなかった
  • 油を入れるペースが早かった

どっちも心当たりがあった。冷蔵庫から出してすぐ使った卵に、油をジャーっと入れて混ぜていた。清々しい。納得の0点である。

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 復活させる方法もある

この失敗した液体はもったいないなー思っていたら、なんとこれを復活させるレシピがインターネットに載っていた。すごい。

インターネットのレシピを見て料理する、という話をインターネットに堂々と載せてどうするのだ、と少し思ったけど成功させたい気持ちが勝るのであまり迷いはなかった。

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どうするのかというと、今度は卵黄だけを混ぜ、それに少しずつ失敗した液体を加えればいらしい。乳化が起きてとろみがつき、白っぽいマヨネーズの色になるはず。

今度は卵を常温にした。そしてしっかり混ぜられるようにハンドミキサーを用意した。

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黄色いシャバシャバの液体ができた。

常温にした卵黄を混ぜ、それに少しずつシャバシャバの液体を加えて、最初よりちょっと多いシャバシャバの液体ができた。シンプルな世界。

誰もいない家で「ダメだ!」と大きな独り言が出た。混んでいる居酒屋で店員さんを呼ぶときぐらいの声量である。少し上を向いて目をつぶり「ダメだ!」と言った。

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そして冷蔵庫からマヨネーズを出して写真を撮り、
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ソファーに横になって天井を見た。

なんでマヨネーズの写真を撮ったんだろう。あまりに失敗しているので、一度本物が見たくなったのかもしれない。

【マヨネーズができないとこうなる】

  • 大きな独り言がでる
  • 市販のマヨネーズの写真を撮る
  • 横になって天井を見る
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ツナを作ろう 

少しうとうとするぐらいソファーで横になっていた。気分を変えるためにツナを作ることにする。

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マグロ。塩を振って冷蔵庫に置いて水気を抜いた。
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オリーブオイルとニンニクを入れてしばらく火にかける。

ツナには乳化とやらが必要ないので安心感がすごい。あの全然起きない乳化という現象が必要ない料理が楽しい。乳化しなくても認められる喜び。

【マヨネーズができないとこうなる】

  • 乳化のない料理が楽しい

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ツナを火にかけながらマヨネーズの失敗した液も焼いてみた。やたら余った白身も足している。

オムレツみたいになったらおいしいかもしれない。

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簡単に焦げた。sadness。

見た目は悪いけど味はおいしかった。

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白身だけを焼いた霊魂のような物体も食べた。

マグロを煮る間、失敗した液体を工夫して食べようとしたり、手作りマヨネーズの解説動画を見たりしながら過ごした。

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着々とツナができていく。

弱火でコポコポ煮立つオリーブオイルの音が優しくて、マヨネーズが作れない僕を励ましているようだった。

【マヨネーズができないとこうなる】

  • 失敗した液体を焼いて食べようとする
  • 優しい音がすると自分を励ましていると思うようになる
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励ましているかどうかは置いといて、とにかくツナができた。ほぐして食べてみる。

 

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「ああ、なるほど!」と思った。

すごくいいマグロの煮物だ。言われなければ、あの缶詰のツナと同じものと分からないと思う。しっかりした魚の味と柔らかい食感でとてもおいしい。手作りの出来立てのツナ、すごく贅沢な食べ物です。ご飯に乗せて醤油をかけたらそれだけでずっと食べられる。

元気が出た。あとはマヨネーズである。

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ついでに失敗した液体でブロッコリーを食べたらおいしくて、また少し元気が出た。

そろそろできてもいいだろう

いよいよ他にやることもないのでマヨネーズ作りを再開する。ツナを作りながら考えていた最後の作戦はこうだ。

  • 卵は手で温めて常温にする
  • 卵黄だけを混ぜて油を加え、とにかく乳化を起こす
  • 作りながら液の様子を観察できる、泡立て器で混ぜる
  • 想像を絶するほど慎重に油を加える
  • さすがに乳化してるだろう、という段階まで行ったら失敗した液を少しずつ加えてマヨネーズの味にする

色々なサイトを見て得た情報である。最初の作り方とだいぶ違う。

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卵を手で温める。これだけは自分で考えたテクニック。

今までぬるま湯につけて手早く常温の卵を作っていたのだけど、中までしっかり温まっていなかったかもしれない。あと、こうやると卵に気持ちがこもるので成功しそうな気がする。

あまりに成功させたくて非科学的なことを言い出している。

【マヨネーズができないとこうなる】

  • 材料に気持ちを込めだす

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そして乳化が起きやすいらしいので、卵黄だけを先に混ぜ、ものすごく慎重に油を入れていく。

卵黄だけ混ぜているので、当然液にはとろみがある。このとろみが乳化によるものなのか、卵黄そのもののとろみなのか分からなくて怖い。怖い怖いと思いながらも、数滴ずつ油を入れてしつこく混ぜる。

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まだよく分からない。怖い。

うまく行っていないかもしれない作業を根気強く続ける怖さったらない。もう落ちてるかもしれない橋をそろりそろり渡っているのだ。橋がないと自覚した瞬間谷底に落ちる。

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なんか、でもいい感じがする!

白っぽくなってとろみがついてきた。マヨネーズだ!

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食べてもマヨネーズだった。卵の味がしてモッタリしたいいマヨネーズ。

マヨネーズを作るコツが分かった。卵をちゃんと常温にして、これでもかというくらい慎重にしつこく混ぜる。

ねるねるねるねみたいにはできないのだ。ねるねるねるねみたいにマヨネーズができると思っている方はこれだけしっかり覚えていただきたい。マヨネーズは、ねるねるねるねみたいにはできない。

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ビンに入れた。今、一番大切なビン。

やっとおにぎりを作る

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やっとここまできた。
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手作りのツナと手作りのマヨネーズをお米で包む。
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アホほど時間をかけたツナマヨのおにぎりである。
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苦労の味がする。

「ツナマヨ」とは呼びたくないな、と思った。いいお魚の煮物にいいソースがかかったやつだ。コース料理に出てきそうなものがおにぎりに入っている。どちらも出来立てだし大変だったことを知っているのでなおおいしい。

これは泣ける。泣けるおにぎりである。

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後日、公園で食べた。
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手で温めた卵のことを思い出しながら食べる。
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やはり泣ける。

人に食べてもらおう

いいものができたので人に食べてもらいたい。

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1歳の子どもに小さいおにぎりを作った。
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少しかじった後、勢いをつけて僕の膝に座ってすごい勢いで食べ始めた。

無人島から生還した人の最初のまともな食事、みたいな勢いで食べた。嬉しかったので「イスに座って食べなさい」と言えなかった。服や床が米だらけになった。

妻もおいしいおいしいと言って食べてくれた。

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ライターの北向さん(左)、江ノ島さん(右)にも食べてもらった。

ちゃんと魚の存在感がある、マヨネーズの味しかしないツナマヨと違う、味が優しい、などの感想をもらった。嬉しい。

家族の時は気がつかなかったのだが、手作りのおにぎりを食べてもらうのって恥ずかしい。ご飯が柔かい、人んちのおにぎりだ、と言ってもらって初めて気が付いた。

このおにぎりにはマヨネーズができなくてソファーに横になったことや、ツナを煮る油の音が優しかったこと、そんな個人的な経験が詰まって、ご飯に包まれて握られている。それを手で持って食べられているというのは、なんだかすごく小っ恥ずかしいことなのだ。小学校の頃の卒業文集を読まれてるみたいだった。

いや、おにぎりを食べてもらうこと自体はそんなに恥ずかしいことではないのかもしれない。徹底的に手間をかけてしまい、気持ちが乗りすぎたおにぎりだからこういうことが起きたのだ。

【マヨネーズができないとこうなる】

  • 人に食べてもらう時、なんだか恥ずかしくなる

手間をかけて一瞬一瞬を愛おしむ丁寧な生活、これはすごくいいものであると同時に小っ恥ずかしいものだった。


小っ恥ずかしさ

おにぎりを食べてもらうのがとにかく小っ恥ずかしかった。「もう1回作れたら、もっと上手にできるのになー」と思いながら二人を眺めていた。

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食べてくれてありがとうございました。
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やってみようという方へ。このツナとマヨはかなり味がなだらかなので具に胡椒を振るとよりおいしいです。
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