特集 2012年4月6日

沼津港で深海魚食べ歩き

カジュアルに、食おうぜ深海魚!
カジュアルに、食おうぜ深海魚!
以前にバラムツという深海魚を釣って食べる記事を書いた。
その取材の中で、沼津港には深海魚を食べさせてくれるお店がいくつもあることを知ったのだが、当時は本命の取材にばかり気を回して結局食べずじまいになってしまった。ずいぶん惜しいことをしたものだと今更になって後悔していたのだが、幸い再び静岡を訪れる機会に恵まれた。今度こそ食べまくってやろう。腹がはち切れるまで。深海魚を。
1985年生まれ。生物を五感で楽しむことが生きがい。好きな芸能人は城島茂。(動画インタビュー)

前の記事:都会のオアシス、観賞魚店で水草を愛でる

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沼津は深海推し

なんで沼津で深海魚?と疑問に思う方も多いだろう。
実は駿河湾は世界一深い湾で、深海魚の好漁場なのだ。
日暮れ直前にようやく沼津港へ到着。
日暮れ直前にようやく沼津港へ到着。
港には水産物の直売所や食事処が豊富で観光客も楽しめる。
港には水産物の直売所や食事処が豊富で観光客も楽しめる。
で、港周辺を歩いているとやたら目に飛び込んでくる深海魚の文字。
で、港周辺を歩いているとやたら目に飛び込んでくる深海魚の文字。
おお、季節は移れど相変わらず深海魚の提供はあるようだ。一安心である。

一軒目:Donどこ丼 駿河湾深海魚丼

手始めに「港八十三番地」へ。
手始めに「港八十三番地」へ。
このモール「港八十三番地」内には今話題の沼津深海魚水族館がそびえているほか、港内の深海魚料理を供するお店が集中しているのだ。文字どおりの意味でディープなスポットといったところか。
ヘビーなようでポップな店名、「Donどこ丼」。
ヘビーなようでポップな店名、「Donどこ丼」。
ガッツリ系は胃袋に余裕のあるうちに食べとこうということでまずは丼屋さんをセレクト。
席に着くなり、「駿河湾深海魚丼」を注文する。
OH!深海魚料理なのに意外と鮮やか!
OH!深海魚料理なのに意外と鮮やか!
僕はこの後もまだまだ深海魚を食べなければならないので、盛りをかなり軽くしてもらったのだが、それでも運ばれてきた深海魚丼はすごいボリュームだ。
乗っている具材はアブラボウズ、アブラゴソ(ヒウチダイ)、ユメカサゴ、キンメダイ、メヒカリ(アオメエソ)、ホタルイカ、生サクラエビ(!)、アカザエビなどなど。なるほど。深海魚&深海生物目白押しである。
沼津ではアブラゴソと呼ばれているヒウチダイ。大きな頭と口がいかにも深海魚!
沼津ではアブラゴソと呼ばれているヒウチダイ。大きな頭と口がいかにも深海魚!
ユメカサゴという深海魚のから揚げ。迫力。
ユメカサゴという深海魚のから揚げ。迫力。
高級食材として有名なアカザエビも実は深海産。生で丸ごと乗っている。味が濃い!
高級食材として有名なアカザエビも実は深海産。生で丸ごと乗っている。味が濃い!
個人的に一番気に入った食材がこのアブラボウズの刺身。名前通り脂がたっぷりのっている。
個人的に一番気に入った食材がこのアブラボウズの刺身。名前通り脂がたっぷりのっている。
深海生物らしい特徴ある生前の姿を保ったままの食材が多く、眺めていて楽しい。なかなか箸がつけられない。
もちろん味もおいしい。深海魚だからといって「ケミカルな味がする!」とか「未体験な味!」とかいうことはなかった。いわゆる「普通においしい」というやつだ。
舌を通して覗いてみると、深海は案外そう遠い場所ではないように思える。
ちなみに深海魚について詳しく解説してくださった店長の中田さんは当サイト、デイリーポータルZをよく読んでくださっているそう。ありがとうございます!ごちそうさまでした!
ちなみに深海魚について詳しく解説してくださった店長の中田さんは当サイト、デイリーポータルZをよく読んでくださっているそう。ありがとうございます!ごちそうさまでした!
取材協力
Donどこ丼
TEL:055-951-8211

二軒目:浜焼きしんちゃん 深海魚の浜焼き

深海丼をかき込んで腹の虫はいくらか落ち着いた。
続いては深海魚を単体でじっくりと味わってみたい。それから、やはり未調理の生の姿を拝んでみたい。
提灯に「深海魚」の文字。これは飲兵衛じゃなくてもふらっと入ってみたくなる。
提灯に「深海魚」の文字。これは飲兵衛じゃなくてもふらっと入ってみたくなる。
というわけで次に入ったのが、お客さんが自分で魚を焼くスタイルの「浜焼き」を供するこちらのお店、「浜焼きしんちゃん」。もちろんメニューには豊富な深海魚が揃っている。
左からデン(オオメハタ)、メヒカリ(アオメエソ)、メギス(ニギス)。いずれも味自体はくせがなくて美味。
左からデン(オオメハタ)、メヒカリ(アオメエソ)、メギス(ニギス)。いずれも味自体はくせがなくて美味。
深海魚3種を注文。でもなんだか普通の魚っぽい…?
口がびよーんと伸びたり
口がびよーんと伸びたり
喉の奥がなぜか真っ黒だったり
喉の奥がなぜか真っ黒だったり
ああ、ごめん。よくよく見たらあんたらやっぱ深海魚だわ。目がやたら大きかったり、皮膚が異様に弱かったり、普段見慣れている魚たちとは違う点がいくつもある。
いつまでたっても魚を食べずにあれこれいじくって観察していると、見かねた店員さんが深海魚の解説を持ってきてくれた。親切だ。
いつまでたっても魚を食べずにあれこれいじくって観察していると、見かねた店員さんが深海魚の解説を持ってきてくれた。親切だ。
観察を終えるといよいよ焼いて食べるわけだが、これが難しい!片面を焼いてひっくり返そうとするとボロっと崩れてしまう。
おいしい!でもきれいに焼くのが難しい!
おいしい!でもきれいに焼くのが難しい!
小魚を焼くくらいなんてことないだろうと思うだろうが、やってみればわかる。恐ろしく身がもろいのだ。特にメヒカリとメギス!深海での浮力の確保のためか普通の魚より筋肉中の水分が多いのだろう。

食べてみても、なるほどフワフワと柔らかい。
ただ焼くだけであっても、深海魚を自分で調理すると新鮮な発見があって楽しい。これはぜひ大勢で飲みながら囲みたい一皿だ。きっと盛り上がるに違いない。だって俺、一人でも超盛り上がってたし。
取材協力
浜焼きしんちゃん
TEL:055-954-0605

三軒目:活けいけ丸 深海魚のにぎり

さて、二軒でかなりの種類の深海魚を制覇できた。そろそろマッコウクジラさんあたりとと深海魚の味談義もできるのではと思いあがったが、ここにきて魚料理の王者、「寿司」を食べていないことに気付く。これではマッコウさんに「生の深海魚の味も知らんくせに…。」と鼻で笑われてしまうではないか。
深海魚握ります!の文字。そいつぁいいや!握ってくれい!深海魚!!
深海魚握ります!の文字。そいつぁいいや!握ってくれい!深海魚!!
というわけで回転寿司店の活けいけ丸の暖簾をくぐった。
活気に満ち満ちた店内。
活気に満ち満ちた店内。
店員さん一同による大きな「いらっしゃい!!」に圧倒される。すげえ元気!それになんだか皆さんとても仲が良いようで、カウンターの中も外も実に楽しそう。回転寿司といえば良くも悪くも徹底してシステム化されているチェーン店しか知らなかったので、「こんなお店もあるんだ!」と嬉しくなった。
聞いたこともない名前のエビが平然と流れてくる。これもやっぱり深海産だそうだ。
聞いたこともない名前のエビが平然と流れてくる。これもやっぱり深海産だそうだ。
さっそく「今日のオススメ深海魚をいくつか握ってください」とオーダー。なんだそれ。しれっと言ったけど、たぶん日本中でこのお店でしか通用しない日本語だぞ。
左上から時計回りにユメカサゴ、トウジン、アブラゴソ(ヒウチダイ)、デン(オオメハタ)。
左上から時計回りにユメカサゴ、トウジン、アブラゴソ(ヒウチダイ)、デン(オオメハタ)。
で、出てきたのがこちらの4皿。
いずれもきれいな白身。とても個性的な見た目の深海魚とは思えない。むしろ無個性すぎるくらいだ。どの皿がどの魚かなかなか覚えられず、何度も店員さんに聞いてしまった。
いまさら顔が引きつる。まぶたが腫れまくっているのと左手がラッパーみたいになっているのはスルーしてください。
いまさら顔が引きつる。まぶたが腫れまくっているのと左手がラッパーみたいになっているのはスルーしてください。
変わった食材を口にするのは割と慣れているつもりだったが、生の深海魚はちょっと緊張した。が、いざ口にしてみれば拍子抜けするような美味しさだった。いずれも本当に淡白で上品な味わい。でもたとえばヒウチダイはみずみずしくて後味が爽やか、デンは甘く、とろりと溶けるような肉質であるといったようにそれぞれの深海魚に確実に個性がある。僕のスキルではその辺を詳細に紹介することはできそうにないので、興味のある方は直接足を運ぶことをお勧めする。
取材協力
回転寿司活けいけ丸
TEL:055-964-2777

四軒目:cafe176 桜えびのシフォンケーキ

深海魚をしこたま食べて膨らんだお腹をさすりながら港八十三番地を出ると一軒の洒落たカフェが目に入った。
漁師の街のカフェ。
漁師の街のカフェ。
僕は基本的におしゃれ空間にあまり縁のない人間なので、スルーしてしまうつもりだった。しかし…。
桜えび…シフォンケーキ!?
桜えび…シフォンケーキ!?
看板になんと「桜えびシフォンケーキ」の文字が。サクラエビといえば駿河湾名物の深海性エビだ。これも深海グルメか。いや、この際深海とかそんなことはどうでもいい。ケーキにエビが入っていること自体が問題だ。これは食べてみなければ。
盛り付けがおしゃれすぎてビビる。
盛り付けがおしゃれすぎてビビる。
「さ、桜えびの…ケーキください…。」と恐る恐る注文すると、おしゃれ空間にふさわしいイケメン店長がこれまたおしゃれな物体を運んできてくれた。
目で見ても生地にサクラエビが入っているのがわかる。
目で見ても生地にサクラエビが入っているのがわかる。
盛り付けの美しさに気を取られながらも一口食べると、優しい甘さとともにサクラエビの香ばしい風味が広がる。
「あ、サクラエビって甘いお菓子にも合うんだ…。」と思った。大発見をした気分だった。
正直言うと、食べるまでは「ずいぶん奇をてらったメニューだな…。」と思っていたのだが、それは間違いであったとすぐに悟った。店長は「面白いから」ではなく、「おいしいから」サクラエビをケーキに使ったのだと。
世界広しと言えど、スイーツの材料を深海に求めている例はこのケーキくらいのものではないだろうか。
個性的でありながら、味の方も客観的に見て高レベルなおいしさである。沼津に来たら必ずまた食べに来ようと思った。おしゃれ空間苦手だけど。
取材協力
cafe176
TEL:055-963-0176

五軒目:かにや沼津港店 高足ガニの押し寿司

デザートまで食べてお腹も心も満ち足りた。ここで帰ってもいいのだが、せっかくだからこの満足感を誰かと分かち合いたい。そうお土産である。
カニ料理のお店かー。通り過ぎかけたところ…。
カニ料理のお店かー。通り過ぎかけたところ…。
巨大なカニの甲羅が大量に干してある。
巨大なカニの甲羅が大量に干してある。
おお、これは世界最大のカニ、タカアシガニじゃないか!タカアシガニは深海に棲むカニとしても有名だ。まさか食べられるとは。
店内には幅3メートルの巨大水槽。中にはたくさんのタカアシガニがうごめく。
店内には幅3メートルの巨大水槽。中にはたくさんのタカアシガニがうごめく。
水量4tという大水槽に驚いていると、「本店にはこの4倍の水槽があるよ。」と店長。スゲー!
写真を撮りまくっていたら水槽から一パイ取り出して持たせてくれた。感激だ。
写真を撮りまくっていたら水槽から一パイ取り出して持たせてくれた。感激だ。
初めてまじまじと観察したタカアシガニは確かにカニなんだけど、やっぱり普通のカニとはどこか違う、堂々とした雰囲気を持っていた。たとえばこのカニはオスだったのだが、いわゆるカニの「ふんどし」に何やらもっこりとした立派な突起があり、思わず「タカアシガニさん!」と敬意を込めて呼びたくなった。何を言っているんだ。
ちなみに食べた後の甲羅は魔除けのお面にするらしい。お店の前で干していたのはこのためか。
ちなみに食べた後の甲羅は魔除けのお面にするらしい。お店の前で干していたのはこのためか。
高足ガニの押し寿司。2,100円とお手頃ながら貴重なタカアシガニの肉がぎっしり。味も◎。
高足ガニの押し寿司。2,100円とお手頃ながら貴重なタカアシガニの肉がぎっしり。味も◎。
他のお店を渡り歩いた後の訪問と言うことで、オススメの定食やコース料理を頂くにはもうお腹はパンパンだったし財布はスカスカだったのでお土産に押し寿司を頂いて帰ったのだが、カニの味をしっかりたっぷり楽しめて非常においしかった(消費期限中に渡せる友人がいなかったので結局自分で食べた)。よし、今度来た時は殻付きのを食べるぞ!
取材協力
お食事処かにや沼津港店
TEL:055-941-6682

深海魚は人を選ばない

今回食べ歩いた深海魚料理に共通して言えるのは「クセが無くておいしい」ということ。彼らの見た目のイメージからは想像できないことだが事実である。皆さんも沼津に行く機会があったら、物怖じせずにぜひ試してみていただきたい。見かけで判断しちゃいけないのは人も魚も同じだときっとわかるはずだ。
マグロのテールシチューを出しているお店があった。すごく食べたかったけど、この時すでに胃袋にみっちり深海魚が・・・。
マグロのテールシチューを出しているお店があった。すごく食べたかったけど、この時すでに胃袋にみっちり深海魚が・・・。
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