夢広がるまち大宮
上野から電車で30分足らずの場所にある大宮。これまで友人に会いに数回訪れた事はあり、駅の中や周りはファッションビルやデパートなどお店が充実していて便利なイメージがある。しかしその程度の知識だけであって、ほとんど知らないと言っていいだろう。
もしこの辺りで観光するとしたら、一体どこを勧められるのだろうか?
東口を出たところで可愛いトトちゃんがお出迎え
トトちゃんの下には「夢ひろがるまち大宮」の文字。期待が高まる
ちなみに東口(古い方)はこんな感じ。この写真じゃ分からないですが人通りはかなり多し。
地元の人のお薦め1:「大宮でしか見られないカラス」
最初に向かう事にしたのは大宮公園。園内には無料の動物園があり、日本ではそこでしか見られない珍しいカラスがいるというのだ。
今回は大宮在住の友人がつきあってくれる
そのカラス情報を提供してくれたのは、大宮在住である友人の旦那さん。ついでに「この辺りには何も無いと思うよ」と寂しい事も言っていたそうだ。それを伝える友人も、どちらかというと同意見の様子。
それは地元民ならではの冷めた意見か、現実なのか。期待と不安が入り混じりつつ、とにかくその動物園に向かう事にした。
道すがらに気になったもの
目を引く店構え。特注ケーキを扱うお店のようだ。
面白そう!作っておいてもらって後で食べられないかな
可愛いのもあれば渋いものもある
特注は一週間前のオーダーですか、そうですよね…
東口駅前には賑やかなアーケードの通りがいくつかあり、主に飲食店が並んでいた。さらにその先を進むと古着屋、和菓子屋、酒屋といった小さな自営店が並ぶ。
その中で目が留まったのはファンシーな店構えのケーキ屋さん。どうやらイラストなど用意すればオリジナルケーキを作って貰えるようだ。もちろん、急に行ってすぐに作れるものでは無かったが、近所にこんなお店があれば何かのお祝いに試してみたいなと思った。
今度はオレンジが目立つ建物が気になったので寄ってみる
Jリーグの「大宮アルディージャ」ショップだった
お昼の時間だけど、けっこう人がいる。人気なんだなあ
そして私はピンバッチを発見し、どちらを買おうか迷う(悩んだ末左を購入)
ここに来てみて、商店街のあちこちにたなびいていたオレンジの旗は、この大宮アルディージャを応援するものだったのだと気づく。駅前にいた銅像のトトちゃんもそういえばリスだ。どうやら大宮はリス押しのようだ。
もともと旧大宮市のマスコットキャラがこの太ったリス(スペイン語でArdilla)だったらしい
今や人気はスマートなアルディくんにとって変わった様子
旅先でピンバッチを集めている私は、そんな大宮のシンボルであるリスの入った限定バッチを手に入れ、ちょっとウキウキしていた。しかし同じくピンバッヂを集めているはずの友人は「私はいいや」と冷め気味だ。やはり近所のものは購入意欲をかきたてられないものなのだろうか。
大宮といえばここ、氷川神社
今回たずねた人全員がまずお勧めしてくれた場所だ
アルディージャショップから信号を渡ってすぐの所に大きな鳥居が見えた。隣のさいたま新都心駅から神社までを繋ぐ長い参道になっているという。
単純だけど、こういう風景は一気に観光気分のテンションにさせてくれる。
ここは京都か鎌倉か
参道の感じが鎌倉の鶴岡八幡宮を連想させる。さらに、小ぶりではあるが竹林があったりと日本ならではの風景が見られ、ちょっとした旅気分が味わえた。
突如現れる竹林
木漏れ日に癒される~
すぐ終わっちゃいますけどね
おだんご屋さんもある
歯に海苔がつきやすそうなお団子だ
カラスを見に行くという目的にたどり着く前にこんな癒しスポットがあるとは。駅前の雑踏とはうって変わり、一気に穏やかな雰囲気に包まれる。
落ち着くわー
そもそも「大宮」の地名の所以はこの氷川神社なんでしょうね
この日は天気が良く、神社の朱色と木々の濃い緑が光り輝き、歩いているだけで気持ちが良い。まだ大して周ってないけどここは大宮のパワースポットと言ってもいいのではないかと思った。
巨木にパワーをもらっている人がいた
そしてようやく辿り着いた動物園
途中で寄り道をしていた為、普通に歩けば20分程の所が既に1時間以上が経過していた。それってつまり見所が多いという事かな。
さて、いよいよ本来の目的である珍しいカラスとご対面の時がきた。
前情報によればここは無料という事もあり小規模らしいので、問題のカラスの所まで迷う事は無さそうである。
園内に入って左側が鳥類。一つ一つケージの中を覗いて確認し、カラスを探す。ああ、日本ではここにしかいないというカラス、いったいどんな感じなのだろうか。もしかして白いとか?
あれ、このケージは何もいないみたい…?
案内を見てみると、イエガラスと書かれてる!ここなのか!どこどこ?
ガーン…
なんと、ほんの2ヶ月前にイエガラスのクロちゃんはお亡くなりになっていた。
後で調べたところ、どこか遠くの国からやってきたらしきクロちゃんは大阪港で捕獲された後「こんにちは」「かーさん」「あほー」など人真似をしてTVに出演する程の人気者だったらしい。そして驚く事にその捕獲されたのは31年前の事。その時既に大人だったらしいからかなりの長老ガラスだったのだ。あー残念!会ってあほー!と言われたかった…(
クロちゃん情報)
せっかくなので気になるガリガリタイムとペロペロタイムを見ていく事にしよう
大宮を代表するはずのクロちゃんの死にショックを受けつつ、ちょうど園内イベントが見られる時間が近かったので見ていくことにした。
園内には他にも昼寝中のアナグマや
ツキノワグマがいる(これはドングリ回収ボックス)
埼玉の地鶏「タマシャモ」。説明の所に「歯切れが良く美味です」と書かれていた。切ないぞ。
クジャクはいないけど自分がなれる。
笑うハイエナ
日本では6箇所、関東ではこの動物園にしかいないというブチハイエナによるガリガリタイム。なんでもこのブチハイエナは、ワニに次いで噛む力が強力らしい。
飼育員さんが生態を分かりやすく教えてくれたあと、いよいよガリガリタイムの時がきた。
牛の骨を用意
興奮しているのかウロウロと落ち着かないハイエナ
まあ想像どおりこのイベントは、ハイエナがまるでお煎餅かのようにバリボリと牛の骨を食べるのを見るのがメインである。
しかしそれよりも面白かったのは飼育員さんが骨を差し出した時のハイエナの反応だ。ちょっとしか撮れなかったけど動画におさめたのでご覧いただきたい。
このようにハイエナは、エサを前にすると爆笑しているような声を発するのだ。見ている方も思わずつられて笑ってしまいハイエナに親近感が湧いた。
でもあっというまに骨を食べるハイエナ…やっぱり怖い
その後引き続き、ツキノワグマのペロペロタイム。小屋中に隠された食べ物やハチミツをクマが見つけるという、運動も兼ねたイベントだった。
ハチミツが塗られた場所をなめるクマ
胸の月模様も見える。手の裏も可愛らしい。
ただ眺めにやってきた無料の動物園で、こうして工夫を凝らし楽しませてくれるとは意外であった。
それと、クマのエサを隠すために檻の中に入る飼育員さんを眺める図というのも、ある種おかしかった。
人間を眺める人間
さて、もう2時過ぎだ。そろそろお腹が空いてきたので何か食べたい所。しかし見渡す限り食事ができそうな場所はなく、それより気になるものが目に入る。
昭和を感じる飛行船
それは動物園の目の前にあった
寂れているようでいて、大人気
虚ろな表情のパンダが気になる
そこは子供向けの乗り物が集った場所だった。主に、100円とかコインを入れてただ上下左右に動くだけのあの乗り物が並ぶ。昭和の匂いを感じながら、子供の頃はたったそれだけで何故楽しめたのだろうと、かつての自分の気持ちが分からず胸がキュンとなる。
自分、もうずいぶん大人だもんな。
とか言いつつ並ぶ
この遊園場、上部分にある乗り物は大人でも乗れるようだ。別に童心に戻りたいわけでもないが、普段外で気軽にグルグル周る機会は無いし、この公園を上から眺めてみたいと思い乗ってみる事にした。(大人200円)
いちおう友人も誘ったが半笑いで遠慮されたので一人で向かう。
ドアは自分で開けて自分で閉めるタイプ。
一人で乗っている私に気をつかいながら、親子が前に乗ってきた
子供にありがちな「前の席に座りたい!」欲求は無いので誰かが乗ってくる事を考えて控えめに後ろの席に座る。
すると案の定、後から親子が「すみません、いいですか?」と気をつかいながら同乗してきた。周りから見た時の寂しさは半減するので、もちろんウェルカムである。
ワーイ!
年を重ね乾いた心になったとしても、こういうものに乗っていると誰かに手を振りたくなるものらしい。もちろん私は友人に向けて手を振った。
隣の親子と一緒に手を振る。まるで自分の夫と子供のように感じてくる
本物のお母さんはビデオをまわしていた
幸せ家族の思い出に無理やり入りこんだ私と違和感を感じとった子供
最初の3周ほどは見慣れぬ地の上からの眺めや、幸せ親子の疑似体験ができて楽しかった。しかし10周ほどで止まる頃には手を振るのにも飽き、若干気持ち悪くなってしまった。
「気持ち悪いねー!」と前にいる他人の親子に共感を求める訳にもいかず、無言で飛行船を後にした。やっぱり子供向けの乗り物に一人で乗るのはちょっと寂しいもんだなと思った。今後気をつけよう。
飛行船から見えた梅の花きれい
ところで大宮に着いてから、寄り道ばかりしてカラス情報以外に地元の人に聞いていなかった。お腹も空いたことだしお薦めの食事どころを聞いてみよう。
代表的な料理が浮かばない大宮で、果たしていったい何をお薦めされるのだろうか?
アルディージャショップに戻り聞いてみる
「あまり知らないんですよねー」とタウンガイドを見始める店員さん
さっきよりちょっと手が空いている様子のアルディージャショップの店員さんに、近場の美味しい所を聞いてみる。
しかし皆さんお弁当派だといってあまりよく知らないという。それでも何とか思い出してもらい挙がったのは、駅前にあるというイタリアンレストラン。生パスタが美味しく、雰囲気も良かったとの事。友人に道を覚えてもらい向かった。
地元の人のお薦め2:生パスタ屋さん
あった、ここだ!
ガーン…
惜しくも、10分前に閉店したようだった。
カラスに引き続き、またしてもお薦めにめぐりあう事ができなかった。昨年の八広駅周辺で感じた焦燥感がジンワリとやってくる。これは…マズいパターンの予感がする。
仕方が無いので今度は駅のインフォメーションで聞いてみることに。
食事どころとお薦めスポットを聞き込み
パンフを色々出してくれた
「特徴の無い街ですから…」
インフォメーションのお姉さんはすぐに大宮公園をお薦めしてくれた。しかしそこには既に行った旨を伝えると、「そうですか…」といっていくつかパンフを出してくれた。
私が行きたいのはガイドに載っている場所というより地元の人が知る穴場だったのだが、一応手にとって見たところ隣の駅にある有名らしき鉄道博物館や、さいたま市全域に渡る大まかな地図や案内だった。
困り気味のお姉さん
スポットも食事どころも、とても親身に考えてくれるがなかなか出て来ない。最終的には「大宮はどこにでもあるお店ばかりで、これといった特徴の無い街なので…難しいです」とギブアップの様相だ。
それでも粘って何か引き出そうと、私が生パスタを食べ損ねた話をすると、そいえば有名なイタリアンのお店がありますよと紹介してくれた。よし、そこに行こう!
地元の人のお薦め3:有名なイタリアンピザ
今度は反対の西口に出た。駅から5分ほどの所にあるイタリアン「サルヴァトーレ クオモ」
店員さんイチオシ「ピッツァ世界コンペティション最優秀賞受賞」のピザをいただく
チェリートマト、バジル、モッツァレラのシンプルなピザだ。メニューを見てみると「世界コンペティション三年連続受賞」と輝かしい経歴がサラっと書かれている。
オリーブオイルがダクダク。でもサッパリしてて凄く美味しい!
そんな世界レベルのピザが大宮にあるとは凄い!と思うと同時に、東京にも店舗がありそうだなという疑念が浮かぶ。スマートフォンで検索してみると…ビックリするほどあちこちにあった!北海道から九州まで!(
店舗情報)
地元の人のお薦め4:金のロケットビル
なかなかたどり着けない大宮オリジナルスポット。しかし諦めず、会計の時に若い男性店員さんにお薦めの場所は無いかと聞いてみる。うーん…と悩んだあと、「カラオケとかですかね?」と意外な回答が返ってきた。
カラオケとパルコかあ
その回答はとても意外な所を突いており面白かったのだが、今私が求めているのは大宮にしかない見所である。「たとえば、変わった建物とか…」と適当なことを言ったところ「あ、ロケット型ビルがありますよ」と教えてくれた。
そういうのそういうの!
あった!でも何でロケット?
近づいて見てみると塾やダイニングバーが入った雑居ビルだった。後で調べてヒットした当サイトの「
ちょっと見てきて」コーナー情報によれば、バブル時代の産物らしく(納得!)本来は美術館にする予定だったみたいだ。目印にはいいよね。
最後の砦、交番で聞く
怒られたりしないかな、とちょっと緊張しつつ聞いてみる
最後に頼ったのは駅の交番。「何かありましたか?」と心配してくれる婦警さんに「いや、あの、何もなくてですね」と変な切り出しで事情を伝え、地元の隠れた名所を聞いてみる。
すると、隣にいたおまわりさん2人も「ほー、面白いね。それは確かに俺達の腕の見せ所だな」と一緒に考えてくれた。それから何分か、交番に人が来るまで「あれは?-浦和だよそれ」「じゃああれは?-もう無いよそれ」といった風に頭を捻ってくれた。なかなか浮かばず悔しそうでもあった。
外を見ると、もうすぐ日が暮れそうだった。「どこか景色のいい所とかでも良いのですが」と言うと一生懸命ガイドブックをめくってくれていた婦警さんが「この時間は見れるか保証できないけど…」とあるスポットを教えてくれた。
最後にそこに向かってみる事にした。
下は在来線、上は新幹線の線路。その間を通る大栄橋を登ると左手に見えるらしい
ここか!
うーんマニアック!
地元の人のお薦め5:車両基地の修理現場
婦警さんは「ここでたまに車両の修理風景が見られるんです」と教えてくれたのだった。残念ながら修理は行われていなかったが…それでも、単なる車両基地ではなく「修理風景」というマニアックな紹介をしてくれたのが嬉しかった。確かにあまり見られる光景ではない。
大宮散策終了
こうして、大宮散策の一日は終わった。 (さらに駅回りを歩いたのだが特筆することは無かった)
新規開拓があまり出来ず残念そうな友人
インフォメーションの女性が言った「特徴の無い街」という言葉が2人の心に残った。確かに大宮駅周りには、聞いたことのあるお店のチェーン店が並んでいる。何でもあるけど、「特徴」は無い。
しかし少し歩いてみれば、大宮には、緑が癒してくれる氷川神社があり、親子やハイエナの笑い声が聞こえる公園がある。今日話かけた人たち全員がまず浮かんだのも大宮公園だった。だから自信を持って「大宮公園!」と言っていいのではないだろうか。
これから、満開の桜があの広い公園いっぱいに咲くそうだ。
アバウトすぎるお惣菜屋さんがいつ開店するかも気になる所
やっぱり楽しい人頼りの旅
今回お薦めされたのは珍しいカラス(ご臨終)、生パスタ(貸切で閉店)、世界で認められたピザ(ただし全国で食べられる)、電車車両修理(やっておらず)といった、不発気味の結果が多かった。
しかしそれもまた人頼りの旅の醍醐味だろう。聞く相手やタイミングによって結果が変わってくるのだから。次はどの街の人に頼ろうか。
数日後、うちのポストにあのピザの広告が入っていた。わざわざ大宮で食べたのに宅配もしてるほど有名だったのか…。しかも半額。