特集 2012年3月8日

エスカレーターをクッキーにして詰め合わせたい

ここまで長い道のりであった
ここまで長い道のりであった
お菓子の季節である。
毎年バレンタインデーからホワイトデーまでの期間、手作りグッズやらかわいいラッピングやら、甘いものであふれかえる街の浮かれに乗じて、「なにかお菓子など作ってみようかしら」という気持ちがふつふつとわいてくる。
去年は高架橋脚をクッキーにしたが、今年はその気持ちを、私の人生の友、エスカレーターにぶつけてみたい。
1984年うまれ、石川県金沢市出身。邪道と言われることの多い人生です。東京とエスカレーターと高架橋脚を愛しています。

前の記事:そのとき日本海では

> 個人サイト 東京エスカレーター 高架橋脚ファンクラブ

ウエハースがエスカレーターのステップにみえる

エスカレーター、お菓子、エスカレーター、お菓子と唱えながら歩いていたら、ウエハースがエスカレーターのステップにみえてきた。あのクリート(溝)の入り具合といい質感といい、ウエハースではエスカレーターのステップを模して作ったといっても過言ではないのではないか。
と思ってひさしぶりにウエハースを買ってきてしげしげと見たら、わりとちがってた。あれ?
と思ってひさしぶりにウエハースを買ってきてしげしげと見たら、わりとちがってた。あれ?
縦横比がぜんぜん違うのはいいとして、スリットが斜めでしかもチェックに入っている。これはいけない。エスカレーターのクリートは巻き込まれ防止という重要な役目を持っている。これがなかった時代には安全のために横に降りる方式だったのだ。斜めなんてありえない。
ニューヨークはメイシーズデパートの現役木製エスカレーターにもしっかりクリート。
ニューヨークはメイシーズデパートの現役木製エスカレーターにもしっかりクリート。
しかし実物をみるとぜんぜんウエハースじゃなかったな。ともあれ、まずはこのステップをなんとかお菓子で再現したい。ウエハース以外にもつかえそうなものをいくつか買ってきた。
スーパーのお菓子売り場で「縦横比的にこれか?」とインスピレーションがわいた、ココナッツサブレ。
スーパーのお菓子売り場で「縦横比的にこれか?」とインスピレーションがわいた、ココナッツサブレ。
が、並べてみるとウエハースとの実力の差が如実にあらわれた(ウエハースは縦横比をそろえてカット済み)。
が、並べてみるとウエハースとの実力の差が如実にあらわれた(ウエハースは縦横比をそろえてカット済み)。
どちらがエスカレーターかといわれたら確実に右ではないか。
どちらがエスカレーターかといわれたら確実に右ではないか。
ウエハースのエスカレーターっぽさは、クリートの有無ではなかったっぽい。なんというか、四角四角とした質感が、並のお菓子には真似のできない無機物感を演出している。
というわけでカウンターのココナッツサブレはあっという間に単なるおやつになりさがり、やはり大本命のウエハースにエスカレーターになっていただくことにした。
このまんまでも私にはけっこうエスカレーターなのだが
このまんまでも私にはけっこうエスカレーターなのだが
よりわかりやすくするとこういうことだ
よりわかりやすくするとこういうことだ
クリートとデマケーションライン(黄色いやつ)をチョコペンで表現してみた。あんまりな出来だが、これでもマシなほうである(4つしかまともなのができなかった)。
本当は、デマケーションラインの入り方で判別できる、各メーカーのステップの微妙な違い(上の写真は、一応日立とその他メーカーのステップが交互に並んでいる。なにが一体どうしてそうなのかはこちらを見てください)を再現するつもりだったが、わたしのお菓子スキル的にそういう細かい芸当は到底無理、とやってみて3秒で理解したので、今回は質より量作戦に出ることにする。

よし、もっといろんなエスカレーターを作って、詰め合わせにしようではないか。
この判断により私はこれから3日くらい眠れない夜を過ごすことになる。
いったん広告です

床板の模様をスタンプにするのが夢だった

ステップにつづいて再現したいのは、やはりなんといっても、エスカレーターに乗る手前の銀色の床板の部分である。ステップ同様、ここの模様にも各メーカーごとに違いがあって(やはり詳しくはこちらを見てください)、私はそれぞれのメーカーにお気に入りの模様がある。
まずは各メーカーの模様を模写。右上はついでに模写した激レアな日立と東芝の筆記体ロゴ。
まずは各メーカーの模様を模写。右上はついでに模写した激レアな日立と東芝の筆記体ロゴ。
筆記体ロゴはゆくゆくなんとかするとして、まずは模様だ。どのメーカーの床板も、小さな形が連続して全体を成している。かわいい。

というわけでクッキーである。型押しである。
今回エスカレーター床板模様の型になっていただくのは、にんじんさん。
今回エスカレーター床板模様の型になっていただくのは、にんじんさん。
芋版の要領で、にんじんをクッキーの型にするというナイスアイディアである(私が考えたわけではなく検索したら出てきた)。
特になにも考えず、果物ナイフでいきなり彫ったが、無茶だろ?と思ったわりには、そんなに大変ではなく楽しい作業であった(お行儀が悪い以外は)。
これはシンドラー特有の正方形模様。押したとき凸になるよう、凹で彫る。
これはシンドラー特有の正方形模様。押したとき凸になるよう、凹で彫る。
国内主要メーカー6社の模様がそろい踏み!!
国内主要メーカー6社の模様がそろい踏み!!
さてクッキーである。これも検索して、できるだけお手軽なレシピで挑んだにも関わらず、最初に作った生地が絶妙にマズい感じの仕上がりになり、これは二夜目であることを告白する。薄々そうではないかと感じていたが、私は、ややというよりかなりの料理下手らしい。ちなみに人参スタンプは大事にとっておいたが一晩ですっかりしなびて役に立たずもう一度作ったことも告白する。
そんな紆余曲折を経たクッキー生地にスタンプを押印!
そんな紆余曲折を経たクッキー生地にスタンプを押印!
おお!
おお!
うおお、東芝だ!
うおお、東芝だ!
※実物はコチラ。
※実物はコチラ。
ワアア!フジテックだ!!
ワアア!フジテックだ!!
※実物はこちら。
※実物はこちら。
各社の床板がそろった!
各社の床板がそろった!
感動である。あの大好きな床板がこんなに身近に再現できるとは!並べて見られる日がくるとは!!
このスタンプ、永久保存版にして手紙とかにも無駄に押しまくりたいところであるが、前述のとおり、一夜にしてしなびるのであった。儚い。
焼いてみたら模様が消滅という事態は避けられた(そういうクッキーも過去に何度か作ったことがあります)
焼いてみたら模様が消滅という事態は避けられた(そういうクッキーも過去に何度か作ったことがあります)
いったん広告です

エスカレーターのステッカーがとにかくかわいい

さて、もうひとつクッキーにしたいものが残っている。
日本エレベーター協会公認の、エスカレーターステッカーである。
こういうやつをいっぱい撮りためているのだ私は(例によって以前詳細な記事も書いたのでよろしければご参照ください http://portal.nifty.com/2011/03/19/a/)
こういうやつをいっぱい撮りためているのだ私は(例によって以前詳細な記事も書いたのでよろしければご参照ください
これは、いま流行りのアイシングクッキーというやつで再現しよう。そうだ、丸形だし、カラフルだし、クッキーにぴったりではないか!
フリーハンドで簡単に模写したところそれっぽい感じになったので、気を良くしてしまったのが運の尽き。
フリーハンドで簡単に模写したところそれっぽい感じになったので、気を良くしてしまったのが運の尽き。
水に混ぜるだけというアイシング専用のパウダーも買ってきたが
水に混ぜるだけというアイシング専用のパウダーも買ってきたが
いざ、この大ざっぱな図案を見るだに、まったくできる気がしない。
いざ、この大ざっぱな図案を見るだに、まったくできる気がしない。
初めは簡単な模様から始めましょう、という丁寧な説明書きを完全無視しての、無茶な図案5種類である。いったいどうしようというのかね。
大胆に省略しつつ、クッキングペーパーの上からなぞった。
大胆に省略しつつ、クッキングペーパーの上からなぞった。
右下のほうにある筆記体ロゴのわかりやすい失敗作は、今後登場の機会はないので無視していただきたい。ちなみに、単に食紅を混ぜるだけなのにとんでもない色になってどうしようもなくなったり、絞り袋の上からアイシングがはみ出してきて台所中を青に染めたりといった惨事があったことも記録しておく。写真はない。

これを一晩乾かしてから、クッキーの上に再度アイシングを利用して貼付けるというわけなのだが
はがそうとすると待ってましたといわんばかりに容赦なくくずれるのであった。失敗につぐ失敗。もうお菓子づくりなんて金輪際やるものか。
はがそうとすると待ってましたといわんばかりに容赦なくくずれるのであった。失敗につぐ失敗。もうお菓子づくりなんて金輪際やるものか。
大きな写真で載せるのがやや憚られる出来ではあるが、できた。
大きな写真で載せるのがやや憚られる出来ではあるが、できた。
失敗作と比較すればやや上達のほどがうかがえる筆記体ロゴは
失敗作と比較すればやや上達のほどがうかがえる筆記体ロゴは
都内では数カ所でしか見られない、コレや
都内では数カ所でしか見られない、コレや
コレを元にしています。満足だ。
コレを元にしています。満足だ。
ここまでで四苦八苦して3日くらい経過したので最初のウエハースのこととかわりと忘れてた。
ここまでで四苦八苦して3日くらい経過したので最初のウエハースのこととかわりと忘れてた。
1個ずつ包装します。
1個ずつ包装します。
いったん広告です

完成した、夢の詰め合わせ

エスカレーター詰め合わせ、完成。
エスカレーター詰め合わせ、完成。
私は透明の箱が好きなのである。透明の箱に入れてあるだけで、ちょっとイイもの、て感じがする。しかしこの詰め合わせはヤバかった。自分で詰めといてなんだが、ひとたび開けばでてくるわでてくるわ、夢の数々。
おわー、エスカレーターのステップがお菓子になっているよ!
おわー、エスカレーターのステップがお菓子になっているよ!
ああ、あの超絶レアな筆記体ロゴまで!
ああ、あの超絶レアな筆記体ロゴまで!
このスクエア模様はまちがいなくシンドラー!
このスクエア模様はまちがいなくシンドラー!
わたしの愛するフジテック!
わたしの愛するフジテック!
ゴム靴注意!
ゴム靴注意!
衝突防止板にぶつかるかわいそうなひと!
衝突防止板にぶつかるかわいそうなひと!

甘くて食べられる幸福と失敗

はりきって言おう、食べちゃうのがもったいないぜ!!!
はりきって言おう、食べちゃうのがもったいないぜ!!!
いままでどんなにかわいいくまやらウサギやらのお菓子を前にしても、「食べちゃうのかわいそう~♪」と言いながら頭からかじってきた私だが、今回こそは言おう、食べるのがもったいない!本当にもったいない!!

これはアレだ。よく結婚式に配られる、新郎新婦ゆかりのなにかがお菓子になったやつだ。
アレの意味がよくわからず、それこそ即座に頭からボリボリ食べてたけどいまならわかる。自分の好きなものが、甘いお菓子になって、食べちゃうこともできる状態は、一点の曇りもない幸福なのである。たとえこれを作るのに絵に描いたようなわかりやすい失敗を積み重ねていようともだ。

世の中にこんなにも自分に向いていない仕事があるとは驚異であった。もはや、パティシエ、ショコラティエの皆さんを尊敬するというよりも、「将来の夢はケーキ屋さん」と無邪気に語る女の子すら尊敬できる心境である。
▽デイリーポータルZトップへ

デイリーポータルZを

 

▲デイリーポータルZトップへ バックナンバーいちらんへ
↓↓↓ここからまたトップページです↓↓↓