特集 2012年2月18日

きのみきのままハーフマラソン

オシャレなジーンズとシックな靴で走ります
オシャレなジーンズとシックな靴で走ります
マラソンをするとなると、クツやウェアを揃えなければならない。また日頃からの練習も必要となるだろう。フルマラソンなら約42キロだし、ハーフでも約21キロなのだから、それは仕方がないのかもしれない。

しかし「ちょっと寄ってく」と喫茶店に入る感覚で走れないものだろうか。何の練習もなく、普段着で。物は試しと、喫茶店感覚でハーフマラソンを走ってみようと思う。
1985年福岡生まれ。思い立ったが吉日で行動しています。地味なファッションと言われることが多いので、派手なメガネを買おうと思っています。(動画インタビュー)

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> 個人サイト Web独り者 彼女がいる風の地主恵亮

思い立った瞬間にマラソン

歩いていると本屋があって「ちょっと寄って行くか」なんてことがある。なんとなく喫茶店に入ることもあるだろう。どちらも当初はそんな予定はなかったけれど、気が向いたから入るわけだ。
予定にないコーヒーを飲んだりしますよね
予定にないコーヒーを飲んだりしますよね
そんな感じでマラソンをできないだろうか。極稀にあるのだ。朝起きると「なんかマラソンしたいな~」と思うことが。しかし、マラソンはクツやウェアなどを揃えなければならない。練習だって必要だろう。そう考えるとマラソンの敷居は高い。
マラソンする人はみなそれようの格好をしている
マラソンする人はみなそれようの格好をしている
しかし、そう思っているだけで実は普段着で、練習なしでも走れるのかもしれない。だって右足を前に出し、次に左足を前に出すの繰り返し。とても簡単なことではないか。衝動買いのように衝動マラソンも可能だと思うのだ。
この格好で走ります
この格好で走ります
ということで、ハーフマラソンを何の練習もなく、普段着で走ってみようと思う。でも、ハーフを走ってぜんぜん問題ないようだったら、そのままもうハーフ走ってフルマラソンにしたっていいと思っている。走れる気がするのだ。
走り出します
走り出します
現在12時です(14時にはゴールできるかなと)
現在12時です(14時にはゴールできるかなと)

800メートルの輝き

荒川の河川敷を走る。クツは普通のクツ。服装も僕がオシャレだと思っているいつも通りのものだ。この格好で原宿に行ったこともあるし、新幹線に乗ったこともある。もう逆にマラソンができない方が不思議だ。練習だって必要ない。前述のように足を左右順番に前に出すだけなのだ。
軽快な走りではないか!
軽快な走りではないか!
ハーフなんて朝飯前ですよ!
ハーフなんて朝飯前ですよ!
キツい!(険しい顔)
キツい!(険しい顔)
驚く程にキツかった。
走り出して数百メートルはハーフマラソンどころか、空だって飛べる気がした。時間はちょうど12時。晴れわたる空の下、平和な時間が流れ、多くの人が笑顔でそんな時間を過ごしていたと思う。僕も例外ではなかったけれど、わずか800メートルで例外になった。
苦しくて、暑かった
苦しくて、暑かった
ここからはもう泥仕合。こんなに早く結果が出るとは思わなかった。練習なしでのマラソンはムリだ。一日のほぼすべてを、冬眠中のクマのようにパソコン前で過ごす僕には行き過ぎた罰ゲームのようだった。
でも意地で走り出す!
でも意地で走り出す!

服装自由の可能性を模索

ここまでで分かったことは練習なしでのマラソンはムリということ。まだクツやウェアを揃えなくてもマラソンは可能か? という疑問は残っている。もし普段着で可能ならば、お金のかからない趣味になるので、マラソンの敷居は下がるはずだ。
なので、普段着で走りますが、もう死ぬほどキツい!
なので、普段着で走りますが、もう死ぬほどキツい!
800メートルでキツくなり、その状態から残り約20キロを走る。2歳児でもため息をつくだろうと思うほどの絶望感。これが残り3キロとかならまだいい。しかし残りは20キロ。チンバンジーでもため息をつく。
キチンとしたランナーたちとすれ違う
キチンとしたランナーたちとすれ違う
ハーフマラソンは市民ランナーには人気の種目らしく大会も多い。この日も大会が開かれていて、みんなキチンとした格好で一心不乱に走っていた。僕のような格好はいない。でも、格好は関係ないのでは? と思っている。練習は必要だけれど。
キツくてスカイツリーどころではなかった
キツくてスカイツリーどころではなかった
マラソンは水泳のように抵抗を考える必要はないと思う。だから格好なんて自由なんだよ! と思っていたら、胸が痛み始めた。胸の中が痛いのではなく表面が痛い。どうやらシャツですれているらしい。
胸が痛い!
胸が痛い!
こんなに胸が痛いの初めてだった。誰かに恋焦がれているわけではない。そういう胸の痛さではなく、「東京は日本の首都です」のような分かりやすいストレートな痛さ。キチンとしたウェアなら痛くなかったのかもしれない。
この後、ずっと左ちくびを気にしながら走った
この後、ずっと左ちくびを気にしながら走った

走る僕、歩くおじいちゃん

ランナーズハイというものがあって、キツくてもある程度するとそのキツさに慣れるものだと思っていた。しかし、実際に走ってみると、ずっとキツくそのキツさは走った距離に比例して増していった。地獄にそういう罰がある気がした。
手元がマラソンの授業中の女子みたいになっていた
手元がマラソンの授業中の女子みたいになっていた
しかしどんなにキツくても僕は走った。そのスピードはなかなかのもので、走る僕を歩くおじいちゃんが抜いていった。そんなことがあるのかと自分でも驚いたが、おじいちゃんは間違いなく歩きで僕を抜いた。
足が痛い!
足が痛い!
足も痛くなった。10キロ付近から怪しくなりゴールする頃にはもう歩けないほどだった。右足が特に痛くて引きずって走った。やはりマラソンにはそれようのクツが必要なのだ。僕はこのクツでいろいろな場所に行き不満を感じたことはなかったけれど、マラソンでは不満しか感じなかった。
右足を引きずり、左ちくびを守るランナー
右足を引きずり、左ちくびを守るランナー
ゴール付近、もうハーフマラソンを走ったランナーのようではなかった。何か大事な戦いを終えた戦士のようだった。たかが21キロでこうなるとは自分の体力のなさに驚いた。分かったことは、マラソンには練習は必要だし、ウェアもクツも必要という机の前で3分くらいで分かっちゃうような結果だった。
ゴールした僕
ゴールした僕
ちなみにスタート地点の僕(この元気は800メートルで消えてました)
ちなみにスタート地点の僕(この元気は800メートルで消えてました)

3時間41分

マラソンをなめていた。ハーフ走って余裕だったらフル走ろう! と盛り上がっていた前日の自分を殴ってあげたい。ハーフでこの感じだ。帰ってから右足を確認するとあざになっていて、しばらくは上手く歩けなかった。クツは絶対に必要だ。マラソンは簡単な競技でないことを改めて知ることができた。それにしてもハーフに3時間41分。歩いた方が速いのではないだろうか。
ゴールした時刻(かかりすぎ)
ゴールした時刻(かかりすぎ)
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