F1カーに翼を付けたら飛ぶって聞いた
速い車の代表と言えばF1カーだ。最高時速は300km/hを超える。一度だけF1鈴鹿グランプリを見に行った事があるのだが、キーン!という音が近づいてきたと思ったら一瞬で目の前を通り過ぎた。これは車の音じゃない、飛行機の音だと思った。
今思ったんだけど、アラレちゃんのキーン!ってあれか、F1の真似してたのか。
当時持ってたデジカメで何百枚も撮った中でたまたま撮れてた一枚。
F1カーに翼を付ければ空を飛ぶって話をよく聞く。たしかに音は完全に飛行機だし飛びそうな雰囲気もある。
でも実際のF1カーに翼を付けて飛ぶか試させてください!なんて言ったら、いつもニコニコしてる佐藤琢磨選手でさえマジギレしそうだ。それは恐い。
ここは代替手段を考えなくては、という事でタイトルの「ミニ四駆に翼を付けたら飛ぶか?」である。
速そうなのを買って来た(つもり)。
ミニ四駆を買ってきた
僕の記憶がたしかならば、ミニ四駆はその小ささにしては驚異的なほど速く走る。
僕が子供の頃もミニ四駆のブームはあったのだが、流行り物に興味がない子供だったので全く手を出さなかった。おこづかい少なかったし。
という事で、35歳にして初めてミニ四駆を買った。昔のミニ四駆はシャフトが入ってたらしいが、今のはモーターが真ん中にあって直接車輪のギアを回すミッドシップ型になっていた。さすが21世紀だ。
買ったのはミニ四駆PROのキーンホークJr。PROだしキーンだしホークだしJr.だ。すごく速そうじゃないか。値段もビックカメラで660円。安い。
では早速組み立てますか。
結構パーツが多い。こんなん小学生が作るのか。すごい。
ボディに貼るシールに名前シールがあった。さすが子供向け。
1時間くらいで完成。ちょうかっけー。ボディにシール貼るのが一番面倒くさかった。
翼を作るのだ
完成したミニ四駆に単に翼っぽい板を付ければ飛ぶという訳では無い。ちゃんと揚力を生み出す翼を付けなければ飛ばないのだ。
航空力学のホームページを読んで勉強した結果、揚力を生むにはベルヌーイの定理という物を利用するらしい事が判った。
翼の断面を横から見た図。翼の上と下で空気が流れるスピードが違うと浮くそうな。
翼の断面を見ると下が平らになっていて上がふくらんでいる。翼が前に進むと空気が翼の上下に分けられ、下の空気は翼を抜けるまでの距離が短いので遅く、上は距離が長いので速くなる。すると、翼の上は下より気圧が低くなるのだそうだ。これをベルヌーイの定理と言うらしい。
で、翼の上の気圧が低くなると、下から押し上げる力が生まれる。これを揚力という。多分。って事は、下が平らで上がふくらんでる物を翼にすれば良いのだろう。おそらく。
全体に曖昧な雰囲気が漂うのは、僕の頭がこういうのを理解するのに向いてないからだ。
なにか翼の材料に良い物は無いだろうかとゴミ箱を探したら良い感じの素材があった。食品トレイだ。
凄く翼っぽいので採用した。
食品トレイの下の部分を塞げばかなりベルヌーイの定理っぽい形になる。これをミニ四駆に付ければ飛ぶのは約束されたも同然だろう。
現物合わせで工作をするのは当サイトではよくある事です。
裏側を塞いだ。翼完成。
リアウイングはいらない。
ミニ四駆に付ける
出来上がった翼をミニ四駆に付けるわけだが、その前にいらないパーツを外す事にした。車体の後ろに付いているリアウイングは、車体を地面に押し付けるダウンフォースを発生させるためにあるので今回はいらないっていうか邪魔なので取り外した。
したら、なんだか良い穴が出てきたのでそこに割り箸を突っ込んでみた。
翼を付けるのに利用できないか。
割り箸を挿してみた。
前のバンパーには小さい穴がいくつかあったので、それをドリルで広げてそこにも割り箸を突っ込んでみた。
前後に4本挿してみた。これで翼を固定できそう。
翼に割り箸を装着。これとミニ四駆を合体させるのだ。
翼は少しだけ後ろを下げて装着した。前からの風を揚力に変えやすくする為だ。専門用語で迎え角というらしい。飛行機はベルヌーイの定理だけでは飛ばなくて、迎え角も重要らしい。
完成、ミニ四駆飛行機。
完成したそれは、もう間違いなく飛ぶフォルムをしている。これで飛ばなかったら嘘だ。
思えば、この企画を企画会議で話したときに担当編集の石川さんは「絶対飛ばないです」って言っていた。担当ではない編集部の工藤さんは「飛びますよ!」って言ってくれた。
果たしてどっちが正しいか。
じゃーん、完成です。
飛ばすぜ
次のページでは完成したミニ四駆飛行機を飛ばしてみたいと思います。上手くいったら2ページで記事終わっちゃうな。4ページ書かなきゃいけないのにねぇ。
飛ぶ事が約束された実験(現時点で)
ベルヌーイの定理的にもバッチリだし、迎え角もとってあるし、走らせれば飛ぶ事はもう間違いない。
では早速飛ばしちゃおうかね。
絶対飛ぶわ、この時はそう思ってましたね。
格好良く飛ぶシーンをムービーでご覧ください。向かい風を祈る!(飛行機は向かい風の方が離陸しやすいんですよ)
こんなはずでは・・・。
予想外の結果。
全然飛ばないし壊れた
勢いよく走ったミニ四駆は全然飛ばずに地面を走り、結局転倒して翼が外れた。完全に失敗である。ガーン。まさかの結果に目の前が真っ暗になった。
だが安心して欲しい。こんな事もあろうかと、秘密兵器その1を用意してあるのだ。
リーチーウームーイーオーン電池ー。大きさは単3電池と同じくらい。
上の写真の充電式リチウムイオン電池は1本で3.7Vある。普通の乾電池が1本で1.5Vなので2倍ちょっとの電圧だ。2本で7.4V。
家で試しにミニ四駆にセットしてスイッチを入れたら、凄い勢いで車輪が回って10秒くらいで焦げ臭い匂いがしてきた。モーター壊れる!と思って慌ててスイッチを切った。
※・・・リチウムイオン電池をミニ四駆に使うのは色々危険そうなので真似しないでください。
出来れば使いたくなかったが、石川さんの言葉通りに失敗するのはしゃくなので使う事にした。
では、2回目の失敗もムービーでご覧ください。
またしても失敗。
たしかに勢いはあったが
モーターが廻る音が全然違うし、スピードもあるし勢いもあったがいかんせん飛ばなかった。地面の上で大暴れしたあげく、結局翼を放り出して走っていってしまった。そんなに束縛がいやか。君は尾崎豊か。
えーい!ダメだダメだ!
でもご安心を。こんな事もあろうかと、秘密兵器その2を用意してあるのです。
期せずして顔のようになってしまった。
翼っぽいものを工作しておいた
食品トレイで空飛べたらボーイング787とかいらねーんだよ!誰だ、食品トレイで飛行機作れるとかいったのは(はい、僕です)。
そんな事は最初から百も承知だったので、別にダンボールで翼っぽい物を作っておいた。
今度はこれを使ってみたいと思います。まぁ、これは飛ぶでしょ。形も翼っぽいし。
これ、絶対飛ぶ。だって格好良いし。
しかも、さっきの失敗を活かして翼を支える割り箸を瞬間接着剤で固定した。これで分離しちゃう事もあるまい。
実際に走らせる前に、こんな風に飛ぶはず、っていうイメージビデオを撮影してみました。本番前の余興という事でご覧ください。
前置きはこれくらいにして、では早速成功の様子をこれまた動画でご覧ください。
ミニ四駆は飛んだ
見事にミニ四駆が飛ぶシーンを見ていただけだろうか。ん?飛んでないじゃないかって?いやいや、飛んでましたよ。間違いなく飛んでた。僕にはそう見えた。飛んでないとか言う人はすり潰しますよ。
納得出来ない?それなら次のページで飛んでたシーンの解説をするのでよく見て欲しい。
これは夢だとしても、飛んでたよね?
アニメGIFで見てくださいよ
まずは車体が前から浮いてまた着地するシーン。そこだけ抜き出してアニメGIFにしてみました。前から受けた風で車体が持ち上がっている。4輪全てが浮いた時点で前進する力を失うのですぐに着地してしまうが、これを飛んだと言わずして何というのだろうか。
飛んでます、飛んでます。
ムービーから切り出したので画質は悪いが、ちゃんとミニ四駆が宙に浮いている画像もあった。
飛んでる!(墜落する瞬間だけど)
バランスが悪いので宙に浮いてもすぐにバランスを崩して落ちてしまう。また、推進力が車輪のみなので浮いた瞬間失速してしまうのも飛行機としては問題だ。持続して飛ぶにはやはりプロペラやジェットエンジンが必要になる。が、それを付けてしまうとミニ四駆で無くなってしまうので今回は自重した。
どう見ても飛んでいるよね。
静止画じゃ説得力に欠ける。そこで、飛んでるシーンをスロー再生した動画も用意した。
どうだい?ミニ四駆は翼を付ければ飛ぶんだぜ。
見事に飛びました
スローで見ればちゃんと風を受けて機体が浮いているのがわかって貰えたと思う。ミニ四駆に翼を付ければ飛ぶのだ。
車輪が地面から離れた瞬間に失速してしまうので宙を舞うまではいかなかったが、飛んだと言っても過言ではない程度には飛んだと思う。思いたい。思わせてください。
まだ後ろのバンパーが地面に残ってると言われれば、まぁそうですね、というしかない。あと、飛んだって言うか跳ねてるだけだよねって言われれば、これも否定は難しい。
実際、翼が取れた後も地面の凹凸でジャンプして宙に浮いてたし。
キミは知ってたかい?僕らは翼が無くても飛べるんだ。
一瞬なら結構宙に浮いていた。だから写真に撮れば飛んでいるようにも見える。手口としては、あぐらをかいた状態で飛び跳ねた一瞬を写真に撮って空中浮揚した!ってのと近い。
飛んだ様に見える。
浮いてるね。
なにしろ楽しかった
撮影は楽しかった。手にカメラを持ってミニ四駆を走って追いかけて動画を撮った。ミニ四駆は小さいクセしてなにしろ速い。かなり苦労したが、同時に楽しかった。
ミニ四駆を追いかけるのは、なにか原始的な楽しさがあった。
走るミニ四駆が一瞬浮いたり、急に方向転換したりする。それを追いかけるのが妙に楽しかったのだ。
追っかけ。ミニ四駆の新たな楽しみ方である。ただし、誰もいないだだっ広くて周りに囲いがある場所でないと追っかけは出来ない。
何となく行った場所で追っかけを楽しめた僕はラッキーだったのかも知れない。くれぐれも車道の近くでやらないように。
撮影後、走りすぎて気持ち悪くなったけどな。
一朝一夕で飛べるほど航空力学は甘くない
問題点はいくつもある。翼の形、取り付ける位置、重心、浮いた後の推進力、などなど。それを航空力学素人の僕が2,3日で解決出来るわけ無いので、飛ばなくて当たり前なのである。
でもミニ四駆は何度か飛びかけたし、跳ねて宙に浮いた。見方を変えれば飛んだとも言えるわけで、編集部の石川さんは「絶対飛ばない」って言ってたけど、絶対飛ばないと言い切れるほどには飛ばなかったわけではないので、今回は「ミニ四駆は翼を付ければ飛ぶ」という事で一つよろしくお願いします。
完全なミニ四駆飛行機?それを作るのは未来の技術者(またはライター)、そう、君の出番なのだ!(と、子供番組みたいに締めてさようなら)