特集 2012年1月14日

箸より重いものを持たない生活

最終的にこうなります
最終的にこうなります
箸より重いものを持ったことがない、という表現がある。大きな家に住むお嬢様が言いそうな表現だ。

僕もそんなことを言ってみた。
僕の苗字は地主だし、そんなことを言ったらとてもしっくり来ると思うのだ。そこで、箸より重いものを持たない生活を送ってみようと思う。
1985年福岡生まれ。思い立ったが吉日で行動しています。地味なファッションと言われることが多いので、派手なメガネを買おうと思っています。(動画インタビュー)

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> 個人サイト Web独り者 彼女がいる風の地主恵亮

箸の重さは

箸より重いものを持ったことがない、という表現はお金持ちを連想させる。そんなことをサラりと言う女の子は間違いなくお嬢様だ。家では犬を飼っていると思う。
そんなお嬢様はチワワを飼っていると思う
そんなお嬢様はチワワを飼っていると思う
僕もそんな生活を送ってみたい。
しかし、そんな生活は送ることは可能なのだろうか。眠たくてどうしようもない状態で考えても、箸より重いものは次から次に浮かんでくる。
だって箸は25グラムしかないのだ
だって箸は25グラムしかないのだ
重そうな箸を買ってきて計ってみると箸の重さは25グラムしかなかった。25グラムより重いものを持たない生活。想像がつかない。飼っているチワワを抱き上げることもできないではないか。ハムスターすらムリだ。
スプーンも使えない(30グラム)
スプーンも使えない(30グラム)
スプーンの重さを調べると30グラムと箸より重かった。スプーンも使えないのだ。これでは、お金持ちなのに全然優雅でない生活を送ることになる。食べたら太る、でも食べたい…のようなストレスまみれの生活になるだろう。
スプーンが使えないし、カップも持てないので、
スプーンが使えないし、カップも持てないので、
箸にヨーグルトつけて舐めるというびんぼっちゃまのような生活
箸にヨーグルトつけて舐めるというびんぼっちゃまのような生活

むしろ貧乏臭いという発見

とはいうものの「箸より重いものを持ったことがない」と言いたいがために、そんな生活を送ってみた。そして気付いたことは、むしろ貧乏臭いだった。オシャレなスターバックスも、カップが持てないので、遭難者の救出直後みたいになってしまう。
オシャレなスタバのはずが、
オシャレなスタバのはずが、
オシャレから遠い存在に
オシャレから遠い存在に
それでも僕は「箸より重いものを持ったことがない」と言いたい。せっかく僕の苗字は地主なのに、今の生活レベルではその地主に説得力がない。実家も借家だ。僕が「箸より…」と言えば苗字も手伝って、周りは僕のことを壮絶なお金持ちと思ってくるはずなのだ。
こういう器で食事している生活を感じさせないようにしたい!
こういう器で食事している生活を感じさせないようにしたい!

逆転の発想

では、どうれば箸より重たい物を持たない生活を送れるのか。いろいろ考えた結果、箸を重くすればいいことに気が付いた。「箸より重いものを持ったことがない」を冷静に分析すれば、箸の重さについての記述はない。箸の重さは自由なのだ。
ということで釣具屋さんに走り、
ということで釣具屋さんに走り、
おもりを買って来た
おもりを買って来た
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重い箸を作る

箸より重たいものを持たないために、頑張って生活レベルを上げるという方法もある。「箸より…」は本来はそっちの意味だ。しかし、僕の頑張りは箸を重くする方向に、新横浜から名古屋へ向かう新幹線「のぞみ」のようにノンストップで走り出した。
ホットボンドでおもりをつける
ホットボンドでおもりをつける
とても細かい作業だ。その様子を落ち着いて見てみると、お金持ちとはかけ離れているように思える。しかし、こういう積み重ねが「箸より重たい物を持たない生活」へとつながるのだ。千里の道も一歩からである。
駅から徒歩25分のワンルーム(自宅)でせっせと作業する
駅から徒歩25分のワンルーム(自宅)でせっせと作業する
そして完成!
そして完成!
好意的にみればシルバーアクセサリーのような箸が完成した。握ってみるとずっしりと重く、今まで使ってきた箸とはその重みが全く異なる。

問題があるとすれば「箸より…」から連想するお金持ちではなく、昭和のスポ根マンガの主人公にピッタリな箸になったことだろうか。
450グラム
450グラム

世界が広がった

スポ根マンガの主人公にピッタリ、という時点で「箸より重いものを持ったことがない」から連想するお金持ちは遠くオホーツクに消えた気もするけれど、結果的には同じことになるはずだ。
重い!
重い!
箸が25グラムから450グラムになったことで、人間らしい食事をできるようになった。25グラムでは器を持つことができず、口を器に持っていく必要があった。しかし、450グラムになったことで器が持てるのだ。こういう喜びを感じることができるのも箸が重くなったおかげだ。
25グラム
25グラム
450グラム
450グラム

問題点もある

25グラム箸から450グラム箸への進化は、糸電話からポケベルへの進化のようであったが、問題点もある。500mlのペットボトルが飲めないのだ。せっかく行儀がいい食事風景になったのに、外では酔っ払いの午前1時半みたいな風景になってしまう。
箸より重いものをもたない生活でのペットボトルの飲み方
箸より重いものをもたない生活でのペットボトルの飲み方
また450グラム箸は持つ部分がおもりで太くなりすぎ、上手く物がつかめないというもはや箸ではないという問題も抱えている。重いしつかめない。何一ついいところがないのだ。同窓会に呼ばれないような箸なのだ。
先と先の距離がこれ以上縮まらない
先と先の距離がこれ以上縮まらない

よりスポ根に

箸の太さを変えずに、さらに箸を重くするにはどうすればいいのか悩んだ。名古屋に向けて走り出した「のぞみ」だけれど、浜松あたりで飛び降りることも考えた。しかし本当のお金持ちになることはムリだ。僕に残された道は、この問題をクリアするしか残っていないのだ。
ゴムを使うことにしました
ゴムを使うことにしました
ゴムを箸に付けて、もう一方を柱か何かくくりつければゴムの伸縮性により、箸が重くなるのではないだろうか。

もう完全にスポ根。大リーグボール養成ギブスの世界だ。この状況ではお金持ちとしての要素は見当たらないけれど、結果はともに「箸より重いものを持ったことがない」となる。
箸にゴムを付けて、
箸にゴムを付けて、
もう一方をベンチにくくりつけ、(柱がなかったので)
もう一方をベンチにくくりつけ、(柱がなかったので)
「箸より重いものを持ったことがない養成ギブス」完成!
「箸より重いものを持ったことがない養成ギブス」完成!
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行きは重くて、帰りは軽い

「箸より重いものを持ったことがない養成ギブス」が完成した。実際に使ってみると確かに重い。料理までの距離がすさまじく遠く感じる。
すごい重い!
すごい重い!
帰りは軽い
帰りは軽い
料理までの距離は箸が重いおかげで遠いが、その反面、口までの距離は驚く程に近い。行きは夜行バス、帰りは飛行機のような感じだ。勢いが良すぎて箸が刺さりそうになる。
掴んだ次の瞬間には、
掴んだ次の瞬間には、
こうなる
こうなる
とにかく重い箸だった。付き合っている女性から「なんか重い」という理由でフラれても納得しなければならないほど重い。この箸を使ったことで「基本的に箸より重いものを持ったことがない」と言っても問題ないと思う。
とにかく重かった!
とにかく重かった!

重さをダイレクトに味わう

箸にゴムではなく、手首にゴムを付けてダイレクトにこのゴムの力を味わってみようと思う。せっかくスポ根っぽくなったので、もうスポ根に走ってみようと思ったのだ。
食事はパンとコーヒーにしました
食事はパンとコーヒーにしました
さらに両手首にゴムをつけた。自由が急に無くなった。よくこれを箸につけていたな~と思うほど、体全体が後ろに引っ張られる。胸を張って「箸より重いものを持ったことがない」と言って問題ないと思った瞬間だ。
コーヒーを飲む!
コーヒーを飲む!
大惨事!
大惨事!
コーヒーがすごい勢いで顔にやって来て対処できなかった。スポ根の主人公と、「箸より重いものを持ったことがない」お金持ちはどちらも大変なんだと気が付いた。
コーヒーの匂いがする男になりました
コーヒーの匂いがする男になりました

箸より重いものを持ったことがない

とにかくこれで箸より重いものを持ったことがない、と言えるようになった。本来の「箸より重いものを持ったことがない」は金持ち具合を表現する比喩だけれど、この方法なら金銭的な努力をせずとも、その表現そのものを体験できる。本日から「箸より重いものを持ったことがない」と胸を張って言っていこうと思う。
もう翼に見えるよね
もう翼に見えるよね
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