特集 2011年10月20日

この木なんの木なんじゃもんじゃの木

なんじゃもんじゃの木とは、いったいぜんたいどんなもんじゃ
なんじゃもんじゃの木とは、いったいぜんたいどんなもんじゃ
私の実家から割と近い距離の所に、「なんじゃもんじゃの木」と呼ばれる巨木がある。

小学校の頃、そのおもしろな響きに誘われて、友達と自転車で出かけた思い出の木だ。

最近、ふとその木の事を思い出した。懐かしいなと思って調べてみると、私の知っているもの以外にも、なんじゃもんじゃの木は複数存在するそうなのである。
1981年神奈川生まれ。テケテケな文化財ライター。古いモノを漁るべく、各地を奔走中。常になんとかなるさと思いながら生きてるが、実際なんとかなってしまっているのがタチ悪い。2011年には30歳の節目として歩き遍路をやりました。2012年には31歳の節目としてサンティアゴ巡礼をやりました。(動画インタビュー)

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私の知っているなんじゃもんじゃ

私となんじゃもんじゃの木との出会いは、小学校の廊下に張られていた、市の全域地図であった。

それは我が町、綾瀬市を詳細に記載した地図であり、特に市役所や図書館など、ランドマークを強調しているのが特徴的だった(綾瀬市について、詳しく知りたい方はこちらの記事をご参照ください)。

その地図の南西端に、「なんじゃもんじゃの木」と記されていたのだ。
頭に描いたなんじゃもんじゃのイメージ
頭に描いたなんじゃもんじゃのイメージ
変な名前の木があるらしいという事で、なんじゃもんじゃの木は瞬く間に私の友達の間で話題となった。見に行ってみようという声が上がったのも、当然の成り行きだったのかもしれない。

しかし、なんじゃもんじゃの木は、私たちの住んでいる地域からは少しだけ距離がある。いや、大人からすれば大した距離ではないのだが、子どもだけで市から出た事などなかった小学生の私にとって、それはまさに未知の領域だったのだ。

私たちは、お小遣いで買った駄菓子を持ち寄り、自転車でなんじゃもんじゃの木を目指した。幼き日の、スタンドバイミーである。
綾瀬市の中心、市役所から西へと向かう(当時はまだ、この市役所は無かった)
綾瀬市の中心、市役所から西へと向かう(当時はまだ、この市役所は無かった)
住宅街を走り抜けて――
住宅街を走り抜けて――
なかなか良い雰囲気の並木道を南へ行く
なかなか良い雰囲気の並木道を南へ行く
私たちは、帰り道が分からなくならないように、意識的に大きな道を通ってなんじゃもんじゃの木に向かった。誰の提案だったかは思いだせないが、確かそうしたと思う。

初めて通る道ではあったが、好奇心の方が勝っていたのだろう、不安はさほどなかったように記憶している。

始めて見る並木道は、とても新鮮だった。木の根でデコボコした歩道を走っている最中、この並木がずっと続けば良いなと思ったが、すぐに途切れてしまい、がっかりした。
並木を抜けた所に、前述の綾瀬記事で紹介した高座豚のお肉屋さんがある
並木を抜けた所に、前述の綾瀬記事で紹介した高座豚のお肉屋さんがある
程無くして、道の雰囲気ががらりと変わった
程無くして、道の雰囲気ががらりと変わった
工業団地に入ったのだ
工業団地に入ったのだ
さらに進むと、道の向こうに木々の緑が見えてくる
さらに進むと、道の向こうに木々の緑が見えてくる
工業団地の持つ、どこか荒涼殺伐としたアウトローな雰囲気にドキドキしながら、私たちは自転車を走らせた。

しかし、本当にこんな場所に、なんじゃもんじゃの木などあるのだろうか。引き返した方が良いのではないだろうか。そんな言葉がポツポツ出始めてきた頃、私たちの目の前にその巨木が姿を現したのだった。
あった!なんじゃもんじゃの木だ
あった!なんじゃもんじゃの木だ
でっかいぞ、なんじゃもんじゃ
でっかいぞ、なんじゃもんじゃ
正式には、ハルニレという種類の木らしい
正式には、ハルニレという種類の木らしい
神奈川県の名木百選にも選ばれている
神奈川県の名木百選にも選ばれている
なんじゃもんじゃの木の横にある案内板によると、なんじゃもんじゃの木というのは通称で、正式にはハルニレという。

なんでも、ハルニレは神奈川県の平地にほとんど生えておらず、地元民が知らない木、見た事ない木という事で、なんじゃもんじゃと呼ばれるようになったそうだ。

ちなみにこの木は、江戸時代初期の寛永年間、江戸幕府第三代将軍、徳川家光のお抱え医師であった半井驢庵(なからいろあん)が、この地を賜った際、屋敷に植えたものであるという。
この広場が半井驢庵の屋敷跡なのだろうか
この広場が半井驢庵の屋敷跡なのだろうか
なんじゃもんじゃの樹勢は今もなお盛ん
なんじゃもんじゃの樹勢は今もなお盛ん
当時はこのウロに入れた気がするのだが……
当時はこのウロに入れた気がするのだが……
樹齢は実に350年以上。その高さは20メートルと、堂々としたものである。今見ても大きく感じるが、小学生だった頃の私にとっては、さらに巨大に感じた事だろう。

根元には大きな空洞が開いており、現在は木を守る為か封鎖されてしまっているが、当時はこの樹洞の中にもぐりこみ、友達と目的地に到着した喜びを分かち合った記憶がある。

とまぁ、昔の思い出なんざを交えつつ、なんじゃもんじゃの木を紹介させていただいたが、調べてみると、なんじゃもんじゃと呼ばれる木は、これ以外にも結構存在するようなのだ。

ならば、見に行ってみようじゃないか。
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大和市深見神社のなんじゃもんじゃ

先ほどのなんじゃもんじゃの木は、私の実家がある綾瀬市と、その西隣の海老名市との境を成す道路沿いにあったのだが、今度は綾瀬市の東隣、大和市に存在するなんじゃもんじゃの木である。

それは大和市の中心である小田急線大和駅から、徒歩で15分ほどのところにある深見神社にそびえ立つ。
なかなか立派な大和駅の東口
なかなか立派な大和駅の東口
そこからまっすぐ東へ進む
そこからまっすぐ東へ進む
国道246号線を越えて、小学校を横切る
国道246号線を越えて、小学校を横切る
その先の十字路を左折すれば
その先の十字路を左折すれば
社叢が茂る深見神社に到着
社叢が茂る深見神社に到着
今度は先ほどとは違い、思い出とかは特に無いのだが(始めてくる場所なので当然だが)、まだ見ぬなんじゃもんじゃに出会えるというだけで、わくわくするものだ。
なかなか趣深いたたずまいの神社だ
なかなか趣深いたたずまいの神社だ
江戸時代の石碑もある
江戸時代の石碑もある
ちなみにこの深見神社は、平安時代に編纂された延喜式神名帳に記されている、相模国13社のうちの一つである。

それはすなわち、とても古い、由緒正しい神社であるということだ。

さぁ、そんな深見神社のなんじゃもんじゃとは、どんなもんじゃ?
社殿の左に立つノッポな木が、深見のなんじゃもんじゃ
社殿の左に立つノッポな木が、深見のなんじゃもんじゃ
とりあえず、記念撮影
とりあえず、記念撮影
こちらもまたハルニレ、そして神奈川県百名木の一つだ
こちらもまたハルニレ、そして神奈川県百名木の一つだ
この深見のなんじゃもんじゃも、先ほどの有馬のなんじゃもんじゃと同様、ハルニレの木であった。神奈川県百名木の一つに数えられているのも同じである。

しかし、全体の雰囲気というか、印象が若干違う。有馬のなんじゃもんじゃは根元が発達したガッチリ系だったが、こちらはすらりとしたスマート系でノッポ。

樹齢は400年とこちらの方が古いのだが、そのスタイルの違いは、育った環境の違いだろうか。同じ種類でも、随分違うものだ。
樹高は30メートルと、有馬の1.5倍ほどだ
樹高は30メートルと、有馬の1.5倍ほどだ
葉の茂り具合は、こちらより有馬の方が上だろうか
葉の茂り具合は、こちらより有馬の方が上だろうか
境内には他にも巨木が多いが……
境内には他にも巨木が多いが……
なんじゃもんじゃの木には注連縄が張られ特別扱い
なんじゃもんじゃの木には注連縄が張られ特別扱い
ここ深見のなんじゃもんじゃは、神社の御神木として非常に大切にされている。

その周囲には鎖が巡らされており、直に触れ合う事ができないのが残念ではあるが、まぁ、御神木なのだから仕方無い。触らぬ神に祟りなし、とも言うしね。

さて、これまで神奈川県中央部にある二本のなんじゃもんじゃの木を見てきたが、お次は神奈川県以外のなんじゃもんじゃ、東京都調布市にあるものを見に行こう。
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調布市深大寺のなんじゃもんじゃ

さて、小田急線と京急を乗り継いで、調布駅にやってきた。

ここからバスに乗って、調布市の北部にある深大寺(じんだいじ)に向かう。目指すべきなんじゃもんじゃは、その境内にあるそうなのだ。
深大寺行きのバスに乗り15分程
深大寺行きのバスに乗り15分程
人が多くて活気のあるお寺ですな
人が多くて活気のあるお寺ですな
門前では巨大な麩菓子が目を引いた
門前では巨大な麩菓子が目を引いた
奈良時代に創建されたという深大寺は、浅草の浅草寺に次ぐ東京都の古刹という事で参拝者も多く、また門前には名物の蕎麦屋がずらりと並んでおり、平日にも関わらずなかなかの盛況ぶりである。
とりあえず本堂にお参り
とりあえず本堂にお参り
「木」の形の燭台が気になった
「木」の形の燭台が気になった
このホウキのお化けみたいなものも気になった
このホウキのお化けみたいなものも気になった
おそらく、なんじゃもんじゃとは何の関係も無いだろうが、気になって仕方が無かったので、売店の女性にこれらについて尋ねてみた。

この燭台は、木を扱う植木屋さんが奉納したものだから、木の形だという事。ホウキのお化けは孔雀垣といい、花などを飾ったりするものだそうだ。

丁寧に教えて頂き、とても為になったが、やはりなんじゃもんじゃの木とは何の関係も無かった。
っていうか、どこだ、なんじゃもんじゃの木は
っていうか、どこだ、なんじゃもんじゃの木は
境内は広く、そして木ばかりだ
境内は広く、そして木ばかりだ
なんじゃもんじゃ、Where are you?
なんじゃもんじゃ、Where are you?
一面の緑に目を癒されながら、なんじゃもんじゃを探す。しかし、見当たらない。

有馬のなんじゃもんじゃ、深見のなんじゃもんじゃは、いずれも大変な巨木であった。遠くからでも一目見れば分かるような、そんな存在感を示していた。

しかし、ここ深大寺のなんじゃもんじゃは、場所が分からない。どこだ、どこにいるんだ、なんじゃもんじゃは。
……むむっ、あの立て札が怪しい!
……むむっ、あの立て札が怪しい!
ビンゴ!なんじゃもんじゃ、発見
ビンゴ!なんじゃもんじゃ、発見
YES!ナンジャモンジャ!
YES!ナンジャモンジャ!
深大寺のなんじゃもんじゃの木は、これまでのものとは違っていた。木の太さとか、高さとか、そんな瑣末な違いではなく、そもそも木の種類自体が違っていた。どうりで、見つからないワケだ。

こちらのなんじゃもんじゃは、ヒトツバタゴという木だそうだ。春には真っ白な花が咲き乱れ、まるで雪をかぶったようになるらしい。

立て札に開花時の写真が載っていたが、それは確かに不思議な光景で、この花に馴染みの無い人ならば、「これはいったい、なんじゃもんじゃ」と言ってしまうに違いない。
ほぉ、ヒトツバタゴか……
ほぉ、ヒトツバタゴか……
春にはライトアップやコンサートもあるようだ
春にはライトアップやコンサートもあるようだ
なるほど、なんじゃもんじゃの木というのは、あくまで珍しい木に付けられる愛称であり、木の種類は一定ではない事が分かった。

……となると、ハルニレやヒトツバタゴ以外にも、なんじゃもんじゃと呼ばれている木があるかもしれない。もう少し、調査をする必要があるようだ。

というワケで、あともう一件、なんじゃもんじゃの木を見に行こうと思う。
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逗子市神武寺のなんじゃもんじゃ

最後のなんじゃもんじゃは、またもや我らが神奈川県。三浦半島の付け根に位置する、逗子市の神武寺に存在する。

神武寺もまた調布の深大寺同様、奈良時代に創建されたと伝わる古刹である。どうやらなんじゃもんじゃの木は、古い神社や寺院がお好きなようだ。いや、そういう場所に巨木が残りやすいというだけの話か。
東逗子駅に到着。日が暮れるので急ごう
東逗子駅に到着。日が暮れるので急ごう
坂道を登って山の方へ
坂道を登って山の方へ
しばらく歩くと参道の入口を発見
しばらく歩くと参道の入口を発見
登っていくと……あぁ、完全に山だ
登っていくと……あぁ、完全に山だ
しかも、険しい山道だ
しかも、険しい山道だ
登り始めて15分、ようやく山門が見えた
登り始めて15分、ようやく山門が見えた
息を切らせながら薄暗い山道を15分くらい歩き、何とか神武寺にたどり着いた。

登山道は岩が露出しており、それが湿り気を帯びていて非常に滑りやすい。何度かスッテンとやってしまった。いやぁ、三浦半島の山をなめたらいかんですな。
境内の風景も凄い
境内の風景も凄い
まさに山寺といった雰囲気
まさに山寺といった雰囲気
おぉ、これまた古そうなお堂だ
おぉ、これまた古そうなお堂だ
うむ、これはなかなか良いお寺だ。派手さは無いが、着実に年月を重ねてきた、そんな年季を感じられる。

有名な深大寺とは違い、参拝者は犬の散歩のおじいさんくらいだが、まぁ、その分、のんびりできるというものだ。

おっと、そうだ、なんじゃもんじゃの木を探さねば。そう思い、境内に視線を巡らせてみると……今度は一発で分かった。
仁王門の横という、とても分かりやすい位置にそびえるなんじゃもんじゃ
仁王門の横という、とても分かりやすい位置にそびえるなんじゃもんじゃ
これもやはり、神奈川県の名木百選
これもやはり、神奈川県の名木百選
この神武寺のなんじゃもんじゃは、ハルニレともヒトツバタゴとも違う、ホルトノキという種類だそうだ。またもや、新手の登場である。

ホルトノキは、西日本には自生しているそうだが、関東では珍しいようで、なんじゃもんじゃと呼ばれたらしい。
樹齢は約400年、樹高は20メートルだそうだ
樹齢は約400年、樹高は20メートルだそうだ
ヘソのようなウロがちょっと不気味
ヘソのようなウロがちょっと不気味
柵が設けられているのは、落書きとかを防ぐ為か
柵が設けられているのは、落書きとかを防ぐ為か

珍しい巨木、それがなんじゃもんじゃ

結局は、その土地に自生していない珍しい木が、なんじゃもんじゃと呼ばれるようだ。

今回は四本のなんじゃもんじゃの木を訪ねてみたが、なんじゃもんじゃと呼ばれる巨木は他にも存在しており、関東地方に広く分布しているらしい。

なんだか良く分からない、だからなんじゃもんじゃの木。そんなあいまいな通称を持つ巨木たちを追いかけるのも、なかなか良いものだ。そんな事を思いながら、家路についた。
なんじゃもんじゃという名前のお好み焼き屋、もんじゃ焼き屋、結構多いよね
なんじゃもんじゃという名前のお好み焼き屋、もんじゃ焼き屋、結構多いよね
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